2人の少女(作者の覚書)

mizumori

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ベアトリーチェ・ダナー子爵婦人

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 わたくしはベアトリーチェ・ダナー子爵婦人、王太子殿下の愛妾ですわ。

 まあ、皆様わたくしのことを心配くださっているの、お優しいのね。
でも大丈夫。王太子殿下がすべて采配してくださるそうなので、心配は要りません。それに、今わたくしは満ち足りておりますの。この国でそのように思える貴族の女性はどのくらいいるのでしょうね。それを考えたら、この時間がもう何年も続いているわたくしは幸せだと思います。

 わたくしが殿下と初めてお目通りさせていただいたのは、御歳14歳の砌、わたくしが人生で一番に不幸な時でした。
わたくしはとある伯爵家に生を受けました。幸せな日々でした。でもそれは長くは続きませんでした。母が亡くなったのです。そして後妻に来たのは同じ伯爵家の令嬢でした。そして母は男爵令嬢、何故、男爵令嬢の母が伯爵家嫡男と結婚できたのかは存じませんが、義理の母は男爵家の母を蔑み、わたくしのことを下賤のなり上がりものの娘として扱いました。

 特に虐げられたわけではありませんが、必要最低限の物しか与えられずに育ち、13歳の時には60歳近い老男爵の下に行かされました。多分お金で売られたのだと思います。そして7年後には主人が亡くなり、世話係兼妾のような生活も終わりをつげました。

 ただ、そこの跡取り息子は、追い出すだけではなく、仕事も見つけてくれました。それが殿下に女性を教えることです。勿論男爵家などが、そのような雲の上の方の元には参れません。でもここでわたくしの元伯爵令嬢という出自が役に立ちました。

 3人の未亡人が並んだ中で殿下がわたくしを選んでくださったときはとても嬉しかったものです。
これで安楽な生活ができる、いままではどこにいても最低限の物しか与えられなかったのです。
女として一度ぐらいは華やかな生活をしてみたいと思いましたの。

 さっそくにわたくしは書類上、会ったこともない子爵と結婚しました。跡取りもいる方です。

 そうそう、殿下はとても美しくて、大人びた方でした。前の髪の薄い、太った夫とは全然違います。
いまでは美しい青年になられた殿下が求められる時、わたくしは、これは夢ではないかと思うこともあります。

 きっと貴族の婦人で一度でも殿下に求められたいと思わない方はいないでしょう。
あの女に、成上がりの男爵の娘といわれたわたくしが、すべての女性の憧れである殿下に求められる、女と生まれてこれ程の喜びはないと思います。

 たまに私室のソファーでわたくしに膝枕をさせるときもあり、そういう時にこそ重責を和らげる為に、愚痴でもお話くださるとよろしいのにと思いますが、そのようなことは一切ございません。
寂しくもありますが、王となられる方はこうでなくてはいけないのかと、その厳しさに切ない思いがいたします。

 それでも、今一番お側にいるのはわたくしです。もうしばらくはこの立場を堪能させていただこうと考えています。

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