異世界転移したら猫獣人の国でした〜その黒猫は僕だけの王子様〜

アベンチュリン

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クリスマスマーケット

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 僕達は、城下町で1番大きなクリスマスツリーの前で待ち合わせした。

 この国のツリーオーナメントは、前世でも通常飾られている物の他に魔女のモチーフが飾られている。何か意味があるのだろうか?セオドールに聞いてみよう。

 セオドールがテディの出立でやって来た、インナーはモスグリーンのタートルネック、ダークグレーのジャケットに黒のトレンチコートを来ている。

 何だかいつもより大人っぽくて、ドキドキする。声は変えてテディのものだけれどセオドールだとすぐにわかる。

「ルカ、待たせたか?」

「ううん、さっき来た所」

 ルカはタメ口に徹する。二人はクリスマスマーケットを散策した。
 早速気になっていたことを聞いてみた。

「ねぇ、テディ。魔女のオーナメントは何か意味があるの?」

「あぁ、それは猫獣人の創造主魔女クレア様だ」

「へぇー、創造主様なんだ。そう言えば、皇城もツリーは飾るの?」

「飾るぞ、大きなツリーを3つも飾る」

「へぇー、見てみたいなぁ……」

「エントランスのツリーは一般公開しているから見にくればいい。クリスマスから年始まで、皇族行事が過密なんだ。……冬休み中デートも出来ないかもしれない」

 テディ姿のセオドールは口を尖らせて尻尾をテシテシと地面を叩き、残念そうな表情だ。
 冬休み中も会いたいと思ってくれるのがなんだか嬉しくて、顔がによによしてしまう。

「この国のクリスマスは家族一緒に過ごすのが定例だもんね、皇族行事のお勤め頑張ってね」

 そろそろ何か食べようか?と話し、ホットドッグとホットチョコレートを購入して、公園のベンチに座る。

「ホットチョコレート温まるねー」

「ちょっと甘いな……」

 カップに息を吹きかけて冷まそうとするルカを、柔和な眼差しで見つめるセオドール。

 ふと見ると、隣のベンチにレオとアカギツネがいた、初めて見るアカギツネは確か冒険者だって聞いたけど。ライダースジャケット姿で何だか軽薄そうなオスだな。

「レオが居たから、ちょっと話して来る」

 ルカはセオドールに告げて、レオの元に手を振りながら駆け寄る。

「レオ来てたんだ!」

「おぅ、ルカじゃん! 一緒にいる人初めてみたけど彼氏?」

「え! あっ、そうじゃないんだけどね……」 

 ルカは後頭部を摩りながら愛想笑いを浮かべて、もごもごと話す。

「そうそう! 前に話した、この人が彼氏のアランだよ」

「初めまして! ルカです」

「ちぃ~す」

 うわー、チャラ、年上か!?耳ピアスが沢山付いててサングラス……、正直この人の何処がいいの?と思ってしまう。
 
 アカギツネはサングラスを下げて、ルカの顔を覗き込んだ。

「へぇ~、可愛いじゃんこれから3人で遊ばねー?」

 可愛い⁉︎ レオがいるのに失礼じゃないか⁉︎
 猫は老若男女、万国共通、千差万別どんな猫も可愛いが……、僕はいたって普通の猫顔だ。
 
 ルカはアランに腕を掴まれると、隣のベンチから怒気を孕んだ視線が向けられ、不穏な雰囲気が漂ってくる。
 セオドールが立ちあがると、ツカツカとやってきて、ルカに触れているアランの手をつかむ。

「連れから手を離せ!」

 セオドールがアランを睨む、テディ姿で凄んだ顔も男前だ。

「冗談だよ、冗談。行こうぜ、レオ」

 アカギツネはルカからさっと手を離し、掌をヒラヒラと振る。
 レオは僕に近づいて耳打ちをした。

「良い彼氏出来たじゃん」

 レオはルカに片眼を瞑り、片手で謝ってから、反対の腕をアカギツネに回しその場を去っていく。
 レオは殿下の変化へんげに気づいていないようだった。 
 ルカは言われた言葉に羞恥して赤い頬を隠すように、そっぽを向いたまま、セオドールの手を取る。

「もう少しマーケット見ていこ!」

 午後は妹達に頼まれたクリスマスカードとツリーに飾るオーナメントを2つ買った。



 夕方、セオドールが行きたい所があるといい、皇族専用の馬車で四十分程で、小高い丘の麓に着いた。丘を登っていくと頂上は、一面に帝都が一望出来る景色の良い場所で、そこには大きなガジュマルの木が一本立っている。

 寒風が吹いて、ルカは身震いする。

「我のコートに入れ」

 セオドールに誘われ、トレンチコートの脇に入る。
 いつの間にかセオドールの姿に戻っていた。
 彼の体温が暖かい……、ドクドクと心臓の音が聞こえそうなほど近くで恥ずかしい……。前にも感じた甘い匂いがする。

「我は学院を卒業したら、帝国騎士団に入団し、第一騎士団長の皇兄殿下ラファエルに忠誠を誓う、この国を守る為に……」

 セオドールは帝都を見ながら、とても豪猛な表情だった、見ているとこちらが粛然たる思いになる。

「とても誇らしいです殿下、どうかお身体だけはご自愛下さい……」

 ガジュマルの大木を寒風が吹き抜けてゆく、城下のイルミネーションがより一層煌めいていた。
 
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