17 / 23
終章【失われた奇跡という名の物語】
X章ep.16『すべてがゼロになる』
しおりを挟む
壬晴とフィニスは完全なる同化を果たした。
その力は女神フウラの加護たる『奇跡』により『終末』から『原点回帰』へと在るべき真の姿へ回帰する。
それこそがルシアが望んだ救済の力。
「……何だ、それは?」
その邪悪な面貌にオメガは狼狽の色を滲ませる。
快復どころではない。壬晴は『穢れ』さえも克服した。
身に纏う黒い波動は虹色の輝きへと変わり壬晴を包み込んでいる。これまで彼を蝕んでいた『終末』は明らかに真逆の、別の物へと変化していた。
「これがルシアが願っていた奇跡の力だ」
壬晴は神斬刀を右手に提げながら、ゆっくりとオメガへと脚を進ませた。
「まったく、巫山戯たことを……!」
オメガは刻印の力を次々と行使する。縦横無尽に断ち切る『亜空切断』の刃は壬晴に触れる前に消失。『破壊光線』『煉獄』も不可視の壁に阻まれ無効化された。
何が起きているのか、そんな光景を前にしてオメガは怒りを滾らせ歯軋りする。
それでも尚と攻撃を繰り返し『聖なる剣』の顕現。その刃は壬晴に向けた瞬間に破砕された。
壬晴に対する攻撃はその悉くを無力なものへと変えられてしまう。
「…………っ!?」
オメガの瞠目、そして困惑。
壬晴は腕を前方に差し出し、再度奇跡の力を発動する。
「能力覚醒……『原点回帰』」
壬晴が腕を振るうと、オメガの背面に浮かぶ刻印がすべて砕け散った。
六つの災厄は呆気なく無へと帰す。
有り得ない、とオメガは目の前の出来事を受け入れることが出来ずにいた。
世界を混乱に陥れた災厄の力がこうも容易く消滅するなど。刻印さえも形残らず消し去ることなど有り得るはずがない。
オメガの額に青筋が浮かび上がる。壬晴が口にする『奇跡』とやらの所業に沸き立つ怒りを抑えきれずにいた。
「貴ッ様ぁああ!!」
激情に駆られたオメガはルインの銃口に黒い波動を纏わせ撃ち放つ。
しかし、それさえも壬晴が指差す動作だけで破裂して消えた。気付けば手許のルインは何の予兆もなく解体され、オメガに残る武装はデリーターのみとなる。
壬晴とオメガはやがてゼロ距離へと。
ひとつの武装だけを片手に提げた両者は睨み合う。そして示し合わせたように両者が同時に刃を振り上げ、渾身の力が激突した。
「お前はいったい何だと言うのだ!!」
神斬刀がデリーターに亀裂を差し込んでいく。
「ただの人間だよ……願いを持つだけの」
壬晴はそう応えて、デリーターを砕くと無防備となったオメガの胴体を斬り裂いた。『ゼロ』の力が込められた一撃はオメガの身を霞の如く朽ちらせていく。
「この我が……まさか……」
櫻井創一との因縁、そして過去の己との決別。
その二つを壬晴は乗り越えた。
無念にも手を伸ばしながら消え去って行くオメガの最後を壬晴は静かに見届ける。
「お休みオメガ……お前は人間達の誤ちだった。もうお前が生まれて来ないことを願うよ……」
戦いは幕を閉じた。
PVPエリア制限時間の五分を迎え、いま領域が解放される。
その力は女神フウラの加護たる『奇跡』により『終末』から『原点回帰』へと在るべき真の姿へ回帰する。
それこそがルシアが望んだ救済の力。
「……何だ、それは?」
その邪悪な面貌にオメガは狼狽の色を滲ませる。
快復どころではない。壬晴は『穢れ』さえも克服した。
身に纏う黒い波動は虹色の輝きへと変わり壬晴を包み込んでいる。これまで彼を蝕んでいた『終末』は明らかに真逆の、別の物へと変化していた。
「これがルシアが願っていた奇跡の力だ」
壬晴は神斬刀を右手に提げながら、ゆっくりとオメガへと脚を進ませた。
「まったく、巫山戯たことを……!」
オメガは刻印の力を次々と行使する。縦横無尽に断ち切る『亜空切断』の刃は壬晴に触れる前に消失。『破壊光線』『煉獄』も不可視の壁に阻まれ無効化された。
何が起きているのか、そんな光景を前にしてオメガは怒りを滾らせ歯軋りする。
それでも尚と攻撃を繰り返し『聖なる剣』の顕現。その刃は壬晴に向けた瞬間に破砕された。
壬晴に対する攻撃はその悉くを無力なものへと変えられてしまう。
「…………っ!?」
オメガの瞠目、そして困惑。
壬晴は腕を前方に差し出し、再度奇跡の力を発動する。
「能力覚醒……『原点回帰』」
壬晴が腕を振るうと、オメガの背面に浮かぶ刻印がすべて砕け散った。
六つの災厄は呆気なく無へと帰す。
有り得ない、とオメガは目の前の出来事を受け入れることが出来ずにいた。
世界を混乱に陥れた災厄の力がこうも容易く消滅するなど。刻印さえも形残らず消し去ることなど有り得るはずがない。
オメガの額に青筋が浮かび上がる。壬晴が口にする『奇跡』とやらの所業に沸き立つ怒りを抑えきれずにいた。
「貴ッ様ぁああ!!」
激情に駆られたオメガはルインの銃口に黒い波動を纏わせ撃ち放つ。
しかし、それさえも壬晴が指差す動作だけで破裂して消えた。気付けば手許のルインは何の予兆もなく解体され、オメガに残る武装はデリーターのみとなる。
壬晴とオメガはやがてゼロ距離へと。
ひとつの武装だけを片手に提げた両者は睨み合う。そして示し合わせたように両者が同時に刃を振り上げ、渾身の力が激突した。
「お前はいったい何だと言うのだ!!」
神斬刀がデリーターに亀裂を差し込んでいく。
「ただの人間だよ……願いを持つだけの」
壬晴はそう応えて、デリーターを砕くと無防備となったオメガの胴体を斬り裂いた。『ゼロ』の力が込められた一撃はオメガの身を霞の如く朽ちらせていく。
「この我が……まさか……」
櫻井創一との因縁、そして過去の己との決別。
その二つを壬晴は乗り越えた。
無念にも手を伸ばしながら消え去って行くオメガの最後を壬晴は静かに見届ける。
「お休みオメガ……お前は人間達の誤ちだった。もうお前が生まれて来ないことを願うよ……」
戦いは幕を閉じた。
PVPエリア制限時間の五分を迎え、いま領域が解放される。
0
あなたにおすすめの小説
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる