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学生編 3年生
避暑
しおりを挟む大学3年生恒例のゼミ合宿で、優真は山奥の研修施設にいた。
蝉の声と青々とした木々。涼しい風が吹くのに、課題のレポートと向き合う教室は熱気でむわっとしていた。
教授は容赦なく「昼までに各自発表の下書きをまとめるように」と言い残して出ていく。
優真はノートをにらみながら、自分のテーマを書き込んでいた。
――「異文化で暮らす課題と国際交流」。
海外で暮らした時の孤独や壁を、きちんと言葉にしたいと思った。
(…うーん…頭が回らない。朝聞いたばっかなのに、蓮さんの声…聞きたいな)
胸の奥がむずむずした。
昼の休憩時間、友人たちが外でバドミントンをする中、優真はこっそりスマホを確認する。
『あと2時間で撮影終わる、疲れた~』
『夜、電話できそう?』
画面に並ぶ蓮からの短いメッセージ。
それだけで体の奥が熱くなる。
――
一方そのころ、蓮は都内のスタジオで照明を浴びていた。
シャツを捲りあげ、カメラに向ける眼差しは鋭い。
彫師としての刺青のイメージを隠すことなく堂々と晒し、また、モデルとしての肉体と表情で魅せる。
「いやー、最高っすね蓮さん!こっちも、こっちのショットもどっちも選べないなぁ~特にこの切ない顔!」
スタッフがはしゃぐ中、蓮は片手で髪をかき上げながら軽く笑った。
(夜までめちゃくちゃ長く感じるな…)
レンズ越しの視線の奥に浮かぶのは、合宿で会えない優真の顔だった。
――
夜。
優真はみんなが風呂に入るタイミングを見計らって、自分もバスタオルを抱え部屋を抜け出した。
行く先は風呂ではなく給湯室。入るとそこは静まり返っていて、冷蔵庫のモーター音だけが響く。
スマホが震えた。
表示された名前を見ただけで、心臓が跳ねる。
「……蓮さん」
「よぉ。声、元気そうだな?」
受話口から聞こえるいつもの低い声に、胸がぎゅっと締め付けられる。
「今日、昼間ゼミで発表準備してました。みんなで暑いねって言いながら。なんか修行みたいで…」
「はは、頑張ってんじゃん。俺は一日中ポーズ決めさせられて、同じような写真めちゃくちゃ撮ったよ。インタビューで前と同じこと訊かれてさ。正直ヘトヘトだわ」
「ふふ、モデルって大変なんですね…。ほんとにお疲れ様です…」
「お前もだろ。…なぁ、まだ1日目だよなぁ」
「はい。あと3日あります」
「だーーー…寂しいな」
「……おれもです。いつもは会えなくても同じ部屋にいるから一緒にいるみたいですけど、離れてるとなんか違って」
「わかる。…でも、電話って新鮮だな」
そんな他愛もない、でも大切な会話を積み重ねていく。
一瞬の静寂。お互いに息遣いだけが重なる。
「今、どこ?」
「……給湯室です」
「そっか。俺、優真とやってみたいことがある」
「?…なんですか?」
蓮は低く笑って囁いた。
「電話えっち」
「なっ……っ!」
思わず大声が出て、慌てて口を塞ぐ優真。
「なにを……ほんと蓮さんって!」
「仕方ないじゃん?優真不足なんだよ…忙しくシャッター切られてばっかだと、もう考えることそれくらいしかないだろ…」
「……っ、」
胸の奥が熱くなって、逃げ場がなくなる。
――
「まず、口に指入れて。俺にキスされるみたいに舌いじってみ?」
「……っ、そんな……」
(早速ハードルが高すぎる…)
恐る恐る指先を口に含む。
唾液が滲んで、じゅる、と小さな音が鳴る。
「ん…っ…」
「……そうそう、可愛い声」
耳元で蓮の声が落ちるたび、優真の中心が熱を帯びていく。
「次は乳首。気持ちいいように触って、摘んだり、こすったりしてみて」
シャツ越しに指を当て、言われたままに弄ぶ。先端がじわりと硬くなり、呼吸が乱れていく。
「っ、ぁ……んっ……」
「はは。声、えっちだね」
「や、やめて……っ」
優真が無意識にズキズキするほど膨れた自身へ手を伸ばそうとした、その瞬間。
「……違うよな?」
蓮の低く重い声がした。
「…っ、」
「前じゃなくて。後ろに、そのまま指入れてみようか?」
蓮の言葉の意味はわかる、しかしなんてことを言うんだと優真は面食らった。
「む、無理です!おれ、自分でなんて……!」
「でも、それじゃ気持ちよくなれないだろ?」
蓮の声が低く絡みつく。焦らされるみたいに、じわじわ耳に伝わり断れなくなっていく。
「……っ、」
震える指で後ろを探り、ためらいながら押し入れる。
「中指でいいよ……どう?」
「ん、あっ…っ、」
狭い熱に、指がきゅっと締め付けられる。
「前立腺、探そうか。中で指、ちょっと曲げてみて」
「っん…ぁ、ちが、う……」
優真はおずおずと内側をなぞるが、何度も空振りする。
「んっ、あっ……だめ、ここもちが…ぅ、わかん、ない……っ」
もどかしさに声が震え、眉が寄る。
恥ずかしくて泣きそうだった。
「……ぃや、蓮さんの手じゃないと……おれ、やっぱ無理…」
小さな弱音が受話器越しに洩れた。
すぐに蓮の声が返ってくる。
「はは。大丈夫。……優真の手ちっちゃいからなぁ…もうちょっと奥まで中指入れてみて。あと少しだけ、」
優真は導かれるまま、ためらいながらも指を押し込む。
「……んっ、くっ……っ」
狭い熱に指がきゅっと締め付ける。
「今度はお腹側に、指先を少し曲げてみて」
「っ……ここ……?やっぱ、違……」
自分の手じゃどうしても奥に届かない気がして、胸がじわっと苦しくなる。
しかし何度か探って、ふと指先が一点を掠めた瞬間。
「ひゃ……っ?!…あ、あぁっ……!」
視界がぱちぱちと白く弾け、腰が勝手に跳ねる。
とろりと先走りが垂れ、細い指をさらに濡らした。
「……はっ、見つけたな」
「っ、や……なに、自分でっ…」
息を荒げる優真の声に、蓮が笑う。
「ほらな、優真でもできる…はぁ、かわいすぎ。俺もすぐ触りたい」
その声にまた優真の中心からはとぷ、と先走りが滴り落ちる。
ふと静かになり、電話の向こうから、くちゅ、くちゅと蓮の音が混ざった。
「優真の声、やばいな……聞こえる?…俺も触ってる」
「っ、も、そんなの…聞かせないで……っ」
(余計ほしくなる…)
聴覚からも与えられる刺激に優真の腰はゆるゆると動いてしまう。
「……次はさ、前立腺…トントンしてみて。擦ってもいいよ、俺がやるみたいに」
拒否なんて、できるわけがなかった。
蓮が与えてくれる快楽が心地よいと知っているから。
「っ、あ、んあぁっ……っ!」
何度かそこを指で叩き、擦る度に全身が痺れるような快感に支配されていく。
「蓮さん……おれ、もう……!」
「まだ。……あーでも、俺もそろそろやばい…」
電話越しに互いの呼吸が荒く絡み合う。
「…優真…一緒にイける?」
「……っはい…蓮さ…んっ、あ、おれっ…ぁ…あ…」
同時に喉の奥から声が溢れ、それぞれの欲望を吐き出した。
「……優真、」
「……っ、はぁ……蓮さん…」
余韻の中、蓮の熱い声が耳に残る。
「本当に今すぐ抱きしめたい。……寂しいなぁ」
「……おれもです。蓮さん不足で、どうにかなりそう」
「ふふ、可愛い。あと3日、長いけど頑張ろうな」
「……はい」
給湯室の小さな明かりの下で、優真はスマホを胸に押し当てた。
寂しさと、確かなぬくもりと、行為の余韻と。
全てを抱えたまま、深呼吸をする。
秘密の夜は、静かに更けていった。
――
寂しさもありつつ、蓮と繋がってるようなそんな感覚。
2泊3日を無事過ごせた優真にとって、思った以上にこの合宿は有意義だった。
仲間の前でテーマを話す緊張感や、真剣に議論する空気も学べた。
しかし、なにより強く残ったのは蓮と離れていた寂しさだった。
電話で声を聞けても、同じ部屋で顔を見て暮らしているときとはまるで違う。
離れた時間や空気が、優真の中にいる蓮の存在の大きさを余計に刻みつけた。
帰ってきた優真を、蓮は目を細めながら迎え入れる。
「…おかえり、」
その声を聞いただけで、優真は自分の居場所がここにあることを改めて感じた。
蓮が煙草に火をつけながら口を開く。
「なぁ優真。……お前、電話で自分でできるようになったろ?」
「っ、な、なんで帰ってきて早々にその話するんですかっ!?」
優真は荷解きをしながら顔を真っ赤にして抗議する。
「え?だって盛り上がったじゃん?今度さ、俺の目の前でやってみせてよ」
「すると思います?!?!?!?!大体そういうのは蓮さんの仕事じゃないですか?!」
「へぇ、俺の仕事なんだ?」
「…っ、知りません!!!」
笑い声と抗議とで部屋が満ちる。
秘密の夜の余韻はまだ、熱を残していた。
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