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学生編 4年生
夏祭り
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帰国してから数週間。
蓮の家
いつものメンバーが集まりお菓子にジュース、ノンアルコールビールが散らばる。今日は忙しい優真に配慮して昼から"飲まない飲み会"で集まっていた。
とはいえテーブルには買ってきた総菜やコンビニスイーツが雑多に並んで、すっかり宅飲みの空気。
「なぁ、蓮~!こないだのお土産のチョコウエハース、もうないの?めちゃうまだったからまた食べたいんだけど!!」
アキがスナック菓子を開けながら机の上を見渡す。
「あー、あれ?残ると思う?優真が全部食べたわ、すぐに」
蓮は笑いながら答えた。ゆーまくーん、とアキの声が恨めしそうに響く。
「…!蓮さん?!っていうか半分は蓮さんが食べてたじゃないですか!でもアキさんごめんなさいっ」
優真は反論しながらもアキに頭を下げる。
「いや!!!ゆーまくん可愛いから許すわ!その代わりまた行ったら買ってきてぇ~!」
「アキ、お土産もらったんだからわがまま言わないの」
ユキは気にしないでねと手を振った。
その中で、ハルがふいに思いついたように声を上げる。
「そうだわ!せっかく夏だし、今度みんなでお祭り行かない?」
「え!?いいじゃん!屋台!花火も見れる!」
アキは瞬間的に食いつく。
「……人混みは苦手だ」
陸は眉をひそめる。
「なに言ってんのよ陸。私の浴衣姿を見られるチャンスよ?」
ハルがさらりと言った途端、陸は短く息を呑み、少し間をおいて「……行く」とだけ返した。
「わぁ、お祭り久々ですね!あ…でもおれ、浴衣持ってないですけど」
優真が嬉しそうにしながらしかし最後は困ったように言うと、すかさず蓮が口を開いた。
「ある」
「……えっ?」
「買ってある」
一瞬で空気が止まる。
「買ってあるんですか?!」
優真の声が裏返った。
蓮は紙袋を引っ張り出して、当然みたいに言った。
「前に撮影で使ったブランドのやつ。サイズ合わせて取り寄せといた」
「わざわざそんなっ…」
驚く優真の耳元に、蓮が低く囁いた。
「似合うのが浮かんだから。……俺が見たいだけ」
「~~~~っ!!!」
両手で顔を覆って真っ赤な顔で縮こまる優真。
「ぶははっ!蓮マジやべぇ!」
アキはテーブル叩いて爆笑。
ユキは「……正直だね、蓮は」と言いながらも少し笑った。
「ふふ、いいわねぇ……」
ハルは頬に手を当ててうっとりとため息をつく。
陸も隣で頷いた。
こうして、次の集まりは夏祭りに決定した。
――
当日
優真は机に広げたノートや資料を前に、鉛筆を握ったまま止まっていた。
やりたいことは決まったが、特別何かが進展したわけでもなく日々に追われる。
(……お祭り行きたいって言ったけど、就活に卒論にやることいっぱいなのに……ほんとに行っていいのかな)
小さなため息が漏れる。
「優真」
背後から声がして振り返ると、すでに浴衣姿の蓮が優真の分の浴衣を手にしていた。
「蓮さん、おれ、行きたいって言いました、けど、やっぱりやることたくさんあって…」
「はは、なんて顔してんの。……ほら、立って」
ためらう間もなくシャツとズボンを脱がされ、浴衣に着替えさせられる。
最後に腰紐をきゅ、と締められた。
鏡の前に並ぶと、紺地の浴衣を着た二人が映り込んだ。
「……わ、」
(いつもとちがう…!)
優真は思わず息を呑む。
「な?」
蓮が鏡越しに目を細めた。
「これでも、まだ行きたくないって言う?」
胸がどくんと鳴って、優真は耳まで赤くしながら小さな声を絞り出した。
「……行きたい、です」
「はは、正直でいい!」
蓮が後ろから襟元を直す指先に、熱がじわっと広がる。
「忙しいからこそ、ちゃんと息抜きな?」
(蓮さんだって、蓮さんのほうが忙しいのに気を遣わせちゃったなぁ…)
頬が熱いまま、優真はただ頷いた。
――
夕暮れ、駅前の広場。
提灯の赤い光がぽつぽつ灯り始める。
「蓮!ゆーまくーん!」
一番に手を振ったのは紺の甚平のアキ。
すでにりんご飴を片手にご機嫌でつづける。
「やっぱみんな浴衣だな!」
優真くん、似合ってる!と黒の甚平を着たユキも目を細めた。
「……あら、似合ってるじゃない!」
ハルが涼しい顔でうちわを仰ぎながら微笑んだ。
淡い水色の水彩花柄の浴衣がふわりと揺れる。
陸もグレーの浴衣を着てハルの肩を抱いていた。
「優真、今日は大人っぽいな」
「ちょ、いつもは子供ってこと?!」
陸の一言に優真は言い返しながらも笑った。
――
焼きそば、たこ焼き、わたあめ。
アキが屋台をはしごして、ユキが呆れ顔で財布を押さえる。
ハルは陸が射的で獲ったぬいぐるみを大事に抱え、陸はそんなハルの下駄を気にして足下をチラチラと見ている。
みんなで笑いながら歩く中、蓮はどうしても優真のことばかり目で追ってしまう。
浴衣の襟からちらっと覗く鎖骨。提灯に照らされて汗がきらっと光る首筋。
人混みに押されて肩が触れるたび、変な熱がこみ上げる。
「……優真」
「?」
気まずそうに蓮が頭を掻く。
「ちょっと、抜けよ」
「えっ!?みんなまだいるのに……」
「無理。我慢できねぇわ…」
低い声に有無を言わせず、蓮は優真の手を掴んで人混みから離れた。
――
神社の裏手
人混みから抜けた途端、しんとした静けさと蒸し暑さだけが残る。
遠くで鳴る太鼓と、ぱん、と花火が弾ける音。
「れ、蓮さん……っ、ここで……っ」
優真顔を息を切らし、真っ赤にしながら蓮へおずおずと尋ねた。
「そ、ここで」
短い答えのあと、石垣に押し付けられ、背にざらついた感触が伝わる。
帯を解かれた浴衣がゆるみ、胸元がはだけて、熱を帯びた肌が夜風に晒された。
「っ……や……」
首筋に張り付いた前髪を蓮が指でかき上げ、そのまま吸い付く。
「……あつ……っ」
頬から耳まで赤く火照り、汗が光を反射して煌めいた。
「浴衣ってさ、崩れると……また違っていいな、」
囁きと同時に、胸元から鎖骨に舌が這う。
ぱぁん、と花火が大輪を咲かせ、優真の赤く上気した顔を一瞬だけ照らした。
「ひゃっ……っ、やめ……っ、外……」
「はは、さすがにここまでは来ないって」
帯が完全に落ち、浴衣が肩からずるりと滑り落ちる。
露わになった白い肩に、蓮の手が強く食い込んだ。
「も…れんさ……っん……っ」
「……かわいい」
蓮の指が優真の後ろを探り、滑り込む。
じゅ、と汗と滴る先走りの混じる音。
「ん、あっ……」
優真の髪は頬に張り付き、潤んだ瞳がとろんと揺れた。
その顔に花火の赤や金の光が瞬いて、蓮は胸をぎゅっと掴まれる。
「優真、いつもより……えろ…」
「っ……も、もう、恥ずかしいから言わないで……くださっ…ん、」
熱を押し込まれた瞬間、優真の体が跳ねた。
「あっ……っ!!」
ドォン、と夜空に大輪の花火。
重なるように優真の声が震えた。
ぱちゅ、ぱちゅ
水音が響く。
浴衣の裾はすでに腰まで乱れ、太ももに夜風が当たる。
その白い脚を蓮が強く掴み、深く突き入れる。
「んっ……っ、や……おく…っ」
優真は縋るように蓮の腕を掴んだ。
「…あーやば…優真…気持ちいい?」
蓮は片手で自分の髪を掻き上げると、とろける優真から視線をそらさず問いかけた。
「……っ、あ、あっ…きもち…い、」
嘘はつけない、月明かりに照らされ涙と汗で濡れた優真顔。
普段より幼くも、大人びても見える、壊れそうな色気がそこにはあった。
蓮の興奮が抑えきれないぎらついた瞳に優真もあてられてしまう。
(あ…これ……海外でしたときの蓮さん…目が逸らせない…)
「は、優真……っ…かわいい…」
「っや……っ、れん…さん…っ」
蓮の囁きに、優真の身体はびくびく震え、髪が首筋に張り付いて汗が滴った。
激しく奥を突けば優真がなにか言いたそうに口をぱくぱくさせる。
「?」
蓮が腰の動きを少し緩め、優真の顔を覗き込むと、
『だいすき、』
快楽と幸福に翻弄され涙を浮かべる優真の濡れた唇が声にならない言葉を放った。
(…反則だろ、)
蓮は胸の奥がぐっと締め付けられる。
その顔は前に見た広告写真で優真に微笑む自分と同じだった。
愛おしそうな顔をする優真を見て、蓮はさらに昂る自身を抑えられなかった。
「あ…っ?!な、で…またおっきく…」
優真は蓮の胸をトン、と叩くが蓮はその手を絡め取り離さなかった。
「大好き、優真」
優真の代わりに声に出して耳元でそっと囁く。
最後の大輪が夜空に散る瞬間、二人も同時に果てた。
――
浴衣はすっかり乱れ、肩も胸元もあらわなまま。
頬を紅潮させた優真は蓮の胸に崩れ落ち、息を荒げている。
「……れん、さん……っ、外だったのに…」
「大丈夫。誰にも見られてねぇ…はず」
(神社…バチあたりかもな)
はず?!と声を裏返す優真の髪を撫でながら、蓮はぐしゃぐしゃになった浴衣ごと強く抱き締めた。
蒸し暑い夏の夜に、花火の余韻と月の光が重なり合っていた。
――
「遅かったじゃん!どこ行ってたのさ!」
射的の景品を両手に抱えたアキが真っ先に突っ込んでくる。
「わぁ……っ!」
優真は肩をびくつかせ、咄嗟に視線を逸らす。
浴衣の襟はきちんと直したはずなのに、どうしても顔が熱くなる。隠しきれない色香が漂った。
「え、まさか……そういうこと?!外?!外でやってきたのか!?」
アキの声が広場に響き、周囲の視線が一斉に集まった。
「馬鹿!アキ、声っ……!」
蓮は慌てて口を塞ごうとするが、時すでに遅し。
「ふふ、でも愛されてるねぇ」
ユキが笑いながらわたあめを口にした。
「ふふ、ひと夏の思い出ね…?いいわね、陸」
ハルが扇子で口元を隠して囁く。
「……っ!」
隣の陸は耳まで真っ赤になり、視線をそらした。
「お前らほんと……」
蓮が片腕で優真の肩を抱き寄せ、言い放った。
「あーーもーーー見んな、優真が減る!」
その瞬間、ドーンと祭りを締める最後の花火が夜空に咲いた。
湿った夏の夜風、浴衣の裾が揺れる。
「おぉ…」
一斉に花火を仰ぐ仲間たちの横顔が、火花の明かりにほんの一瞬鮮やかに照らし出された。
蓮と優真は互いに見つめ合い、こっそり指を繋いだ。
夜空に咲く花火の音と、仲間たちの笑い声が重なり、忘れられない夏の思い出がまた新しく増えたのだった。
蓮の家
いつものメンバーが集まりお菓子にジュース、ノンアルコールビールが散らばる。今日は忙しい優真に配慮して昼から"飲まない飲み会"で集まっていた。
とはいえテーブルには買ってきた総菜やコンビニスイーツが雑多に並んで、すっかり宅飲みの空気。
「なぁ、蓮~!こないだのお土産のチョコウエハース、もうないの?めちゃうまだったからまた食べたいんだけど!!」
アキがスナック菓子を開けながら机の上を見渡す。
「あー、あれ?残ると思う?優真が全部食べたわ、すぐに」
蓮は笑いながら答えた。ゆーまくーん、とアキの声が恨めしそうに響く。
「…!蓮さん?!っていうか半分は蓮さんが食べてたじゃないですか!でもアキさんごめんなさいっ」
優真は反論しながらもアキに頭を下げる。
「いや!!!ゆーまくん可愛いから許すわ!その代わりまた行ったら買ってきてぇ~!」
「アキ、お土産もらったんだからわがまま言わないの」
ユキは気にしないでねと手を振った。
その中で、ハルがふいに思いついたように声を上げる。
「そうだわ!せっかく夏だし、今度みんなでお祭り行かない?」
「え!?いいじゃん!屋台!花火も見れる!」
アキは瞬間的に食いつく。
「……人混みは苦手だ」
陸は眉をひそめる。
「なに言ってんのよ陸。私の浴衣姿を見られるチャンスよ?」
ハルがさらりと言った途端、陸は短く息を呑み、少し間をおいて「……行く」とだけ返した。
「わぁ、お祭り久々ですね!あ…でもおれ、浴衣持ってないですけど」
優真が嬉しそうにしながらしかし最後は困ったように言うと、すかさず蓮が口を開いた。
「ある」
「……えっ?」
「買ってある」
一瞬で空気が止まる。
「買ってあるんですか?!」
優真の声が裏返った。
蓮は紙袋を引っ張り出して、当然みたいに言った。
「前に撮影で使ったブランドのやつ。サイズ合わせて取り寄せといた」
「わざわざそんなっ…」
驚く優真の耳元に、蓮が低く囁いた。
「似合うのが浮かんだから。……俺が見たいだけ」
「~~~~っ!!!」
両手で顔を覆って真っ赤な顔で縮こまる優真。
「ぶははっ!蓮マジやべぇ!」
アキはテーブル叩いて爆笑。
ユキは「……正直だね、蓮は」と言いながらも少し笑った。
「ふふ、いいわねぇ……」
ハルは頬に手を当ててうっとりとため息をつく。
陸も隣で頷いた。
こうして、次の集まりは夏祭りに決定した。
――
当日
優真は机に広げたノートや資料を前に、鉛筆を握ったまま止まっていた。
やりたいことは決まったが、特別何かが進展したわけでもなく日々に追われる。
(……お祭り行きたいって言ったけど、就活に卒論にやることいっぱいなのに……ほんとに行っていいのかな)
小さなため息が漏れる。
「優真」
背後から声がして振り返ると、すでに浴衣姿の蓮が優真の分の浴衣を手にしていた。
「蓮さん、おれ、行きたいって言いました、けど、やっぱりやることたくさんあって…」
「はは、なんて顔してんの。……ほら、立って」
ためらう間もなくシャツとズボンを脱がされ、浴衣に着替えさせられる。
最後に腰紐をきゅ、と締められた。
鏡の前に並ぶと、紺地の浴衣を着た二人が映り込んだ。
「……わ、」
(いつもとちがう…!)
優真は思わず息を呑む。
「な?」
蓮が鏡越しに目を細めた。
「これでも、まだ行きたくないって言う?」
胸がどくんと鳴って、優真は耳まで赤くしながら小さな声を絞り出した。
「……行きたい、です」
「はは、正直でいい!」
蓮が後ろから襟元を直す指先に、熱がじわっと広がる。
「忙しいからこそ、ちゃんと息抜きな?」
(蓮さんだって、蓮さんのほうが忙しいのに気を遣わせちゃったなぁ…)
頬が熱いまま、優真はただ頷いた。
――
夕暮れ、駅前の広場。
提灯の赤い光がぽつぽつ灯り始める。
「蓮!ゆーまくーん!」
一番に手を振ったのは紺の甚平のアキ。
すでにりんご飴を片手にご機嫌でつづける。
「やっぱみんな浴衣だな!」
優真くん、似合ってる!と黒の甚平を着たユキも目を細めた。
「……あら、似合ってるじゃない!」
ハルが涼しい顔でうちわを仰ぎながら微笑んだ。
淡い水色の水彩花柄の浴衣がふわりと揺れる。
陸もグレーの浴衣を着てハルの肩を抱いていた。
「優真、今日は大人っぽいな」
「ちょ、いつもは子供ってこと?!」
陸の一言に優真は言い返しながらも笑った。
――
焼きそば、たこ焼き、わたあめ。
アキが屋台をはしごして、ユキが呆れ顔で財布を押さえる。
ハルは陸が射的で獲ったぬいぐるみを大事に抱え、陸はそんなハルの下駄を気にして足下をチラチラと見ている。
みんなで笑いながら歩く中、蓮はどうしても優真のことばかり目で追ってしまう。
浴衣の襟からちらっと覗く鎖骨。提灯に照らされて汗がきらっと光る首筋。
人混みに押されて肩が触れるたび、変な熱がこみ上げる。
「……優真」
「?」
気まずそうに蓮が頭を掻く。
「ちょっと、抜けよ」
「えっ!?みんなまだいるのに……」
「無理。我慢できねぇわ…」
低い声に有無を言わせず、蓮は優真の手を掴んで人混みから離れた。
――
神社の裏手
人混みから抜けた途端、しんとした静けさと蒸し暑さだけが残る。
遠くで鳴る太鼓と、ぱん、と花火が弾ける音。
「れ、蓮さん……っ、ここで……っ」
優真顔を息を切らし、真っ赤にしながら蓮へおずおずと尋ねた。
「そ、ここで」
短い答えのあと、石垣に押し付けられ、背にざらついた感触が伝わる。
帯を解かれた浴衣がゆるみ、胸元がはだけて、熱を帯びた肌が夜風に晒された。
「っ……や……」
首筋に張り付いた前髪を蓮が指でかき上げ、そのまま吸い付く。
「……あつ……っ」
頬から耳まで赤く火照り、汗が光を反射して煌めいた。
「浴衣ってさ、崩れると……また違っていいな、」
囁きと同時に、胸元から鎖骨に舌が這う。
ぱぁん、と花火が大輪を咲かせ、優真の赤く上気した顔を一瞬だけ照らした。
「ひゃっ……っ、やめ……っ、外……」
「はは、さすがにここまでは来ないって」
帯が完全に落ち、浴衣が肩からずるりと滑り落ちる。
露わになった白い肩に、蓮の手が強く食い込んだ。
「も…れんさ……っん……っ」
「……かわいい」
蓮の指が優真の後ろを探り、滑り込む。
じゅ、と汗と滴る先走りの混じる音。
「ん、あっ……」
優真の髪は頬に張り付き、潤んだ瞳がとろんと揺れた。
その顔に花火の赤や金の光が瞬いて、蓮は胸をぎゅっと掴まれる。
「優真、いつもより……えろ…」
「っ……も、もう、恥ずかしいから言わないで……くださっ…ん、」
熱を押し込まれた瞬間、優真の体が跳ねた。
「あっ……っ!!」
ドォン、と夜空に大輪の花火。
重なるように優真の声が震えた。
ぱちゅ、ぱちゅ
水音が響く。
浴衣の裾はすでに腰まで乱れ、太ももに夜風が当たる。
その白い脚を蓮が強く掴み、深く突き入れる。
「んっ……っ、や……おく…っ」
優真は縋るように蓮の腕を掴んだ。
「…あーやば…優真…気持ちいい?」
蓮は片手で自分の髪を掻き上げると、とろける優真から視線をそらさず問いかけた。
「……っ、あ、あっ…きもち…い、」
嘘はつけない、月明かりに照らされ涙と汗で濡れた優真顔。
普段より幼くも、大人びても見える、壊れそうな色気がそこにはあった。
蓮の興奮が抑えきれないぎらついた瞳に優真もあてられてしまう。
(あ…これ……海外でしたときの蓮さん…目が逸らせない…)
「は、優真……っ…かわいい…」
「っや……っ、れん…さん…っ」
蓮の囁きに、優真の身体はびくびく震え、髪が首筋に張り付いて汗が滴った。
激しく奥を突けば優真がなにか言いたそうに口をぱくぱくさせる。
「?」
蓮が腰の動きを少し緩め、優真の顔を覗き込むと、
『だいすき、』
快楽と幸福に翻弄され涙を浮かべる優真の濡れた唇が声にならない言葉を放った。
(…反則だろ、)
蓮は胸の奥がぐっと締め付けられる。
その顔は前に見た広告写真で優真に微笑む自分と同じだった。
愛おしそうな顔をする優真を見て、蓮はさらに昂る自身を抑えられなかった。
「あ…っ?!な、で…またおっきく…」
優真は蓮の胸をトン、と叩くが蓮はその手を絡め取り離さなかった。
「大好き、優真」
優真の代わりに声に出して耳元でそっと囁く。
最後の大輪が夜空に散る瞬間、二人も同時に果てた。
――
浴衣はすっかり乱れ、肩も胸元もあらわなまま。
頬を紅潮させた優真は蓮の胸に崩れ落ち、息を荒げている。
「……れん、さん……っ、外だったのに…」
「大丈夫。誰にも見られてねぇ…はず」
(神社…バチあたりかもな)
はず?!と声を裏返す優真の髪を撫でながら、蓮はぐしゃぐしゃになった浴衣ごと強く抱き締めた。
蒸し暑い夏の夜に、花火の余韻と月の光が重なり合っていた。
――
「遅かったじゃん!どこ行ってたのさ!」
射的の景品を両手に抱えたアキが真っ先に突っ込んでくる。
「わぁ……っ!」
優真は肩をびくつかせ、咄嗟に視線を逸らす。
浴衣の襟はきちんと直したはずなのに、どうしても顔が熱くなる。隠しきれない色香が漂った。
「え、まさか……そういうこと?!外?!外でやってきたのか!?」
アキの声が広場に響き、周囲の視線が一斉に集まった。
「馬鹿!アキ、声っ……!」
蓮は慌てて口を塞ごうとするが、時すでに遅し。
「ふふ、でも愛されてるねぇ」
ユキが笑いながらわたあめを口にした。
「ふふ、ひと夏の思い出ね…?いいわね、陸」
ハルが扇子で口元を隠して囁く。
「……っ!」
隣の陸は耳まで真っ赤になり、視線をそらした。
「お前らほんと……」
蓮が片腕で優真の肩を抱き寄せ、言い放った。
「あーーもーーー見んな、優真が減る!」
その瞬間、ドーンと祭りを締める最後の花火が夜空に咲いた。
湿った夏の夜風、浴衣の裾が揺れる。
「おぉ…」
一斉に花火を仰ぐ仲間たちの横顔が、火花の明かりにほんの一瞬鮮やかに照らし出された。
蓮と優真は互いに見つめ合い、こっそり指を繋いだ。
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