【完結】愛を刻んで

さか様

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社会人編

素顔

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ベッドのシーツはまだ温もりを残していた。

カーテン越しの秋めいた朝の日差しが、乱れた髪と薄く汗ばんだ肌をやわらかく照らしている。

優真はうつ伏せで枕を抱えて隣でスマホをいじる蓮をぼんやり眺めていた。

さっきまで激しく体を重ねていたのに、今は落ち着き払って画面をスクロールしている蓮の姿がなんだか可笑しくて愛おしく思える。

「……うわ」

不意に発せられた声。
顔をしかめた蓮に、優真は首を傾げる。

「どうしました?」

「……見て、これ」

スマホを差し出されて覗き込んだ瞬間、優真は言葉を失った。

SNSのタイムラインはスクロールしても同じような内容で溢れていた。
テレビで流れたばかりのスマホのCM映像が切り抜かれ、投稿されリポストもついている。

《レンレンメロすぎ》
《タトゥーかっこよ、その前に顔良すぎ…ありがとうレンレン》
《蓮のここの横顔天才すぎる》
《蓮×リアム最強》
《レンレン好きすぎる…#須磨蓮》

「れ、レンレン……?!」

思わず声を裏返す優真。
見れば「#須磨蓮」がトレンド上位に入っている。

「多少は覚悟してたけどさ…」

蓮は額に手を当てて、その表情は喜びなのかなんなのかよく読めない。

「なんか可愛いですよ? レンレン……パンダみたいです!」

「生きていて1回も言われたことないね。
レンレンって…2回呼ぶ意味あんの?」

「ふふっ……」

ぷっと噴き出してしまい、優真は口を押さえる。
(照れてる蓮さん、なんだか可愛いなぁ)

だが、胸の奥はくすぐったく温かい。
誰よりも誇らしい人が、こうしてくだらないあだ名に振り回されてる姿を、自分だけが間近で見ている。

「……笑った?」

低い声だが顔は釣られて笑いそうな蓮。
 
「ふふっ……すみません。でも……可愛くて」

優真はそのまま素直に伝える。

「可愛いやつに可愛いって言われちゃったな~」

あーあ、と言いながら、蓮は画面をスワイプして通知を切った。
だがその耳が赤いのを、優真は見逃さなかった。

(……蓮さん、照れてる…)

街もSNSも蓮を称えている。

しかし、蓮の素顔を知っているのは優真だけなのだろう。

不安や嫉妬に揺れることもあるし、くだらないあだ名に赤くなることもある。

「……優真、」

不意に名前を呼ばれ、顔を上げた瞬間、額に軽いキスが落ちた。

「いいな、こういうの」

「……っ」

耳まで真っ赤になった優真は、胸の鼓動をごまかすように布団に潜り込んだ。

――

午後

外の空気は夏の名残を残しつつも、風にほんのり秋の匂いが混じっていた。

蓮と並んで歩きながら、優真は足元を見て小さく眉を下げた。

「……靴、だいぶくたびれてきちゃいました」

少し色褪せて、底も擦れているスニーカー。
蓮が不意に足を止めて、横目で優真を見下ろした。

「じゃあ買おうよ。……おそろいとか、どう?」

「えっ……おそろい……?!」

思わず声が裏返る。

蓮は当たり前みたいに言いながら、店のガラス扉を押し開けた。

「なんかよくない?いい年してだけどさ、俺そういうの憧れてた」

「……っ!」
(今日の蓮さん、ずっと可愛い…)

胸の奥が一気に熱くなり、優真は慌ててついていった。

店内で、蓮が試着したスニーカーを軽く足で鳴らす。

「おー、いい感じだな」

隣で同じ型を履いた優真も、鏡を見ながら頷いた。

「わ…。すごく軽いです」

鏡に映る二人の足元。
まったく同じ靴を並べて立つ光景に、胸の鼓動が高鳴り、心が満たされる。

(……ほんとに、おそろいだ…これからももっと、おそろいの物、増えるかな)

――

会計を終えて店を出た途端

「キャー!ほんとにいた!レンレンだ!」

「ほんとだ、やば……!実物かっこよすぎ!」

ざわめく声に、優真の心臓が跳ねる。
視線が一気に蓮へ集まった。

「隣、マネージャーさんかな? 可愛い~!」

「……っ!」

優真の耳が一瞬で真っ赤に染まる。
(……やっぱり、マネージャーに見えるんだ……)

蓮も横目でその光景を捉え、苦く思う。
(……またか。俺の隣にいるのは、恋人だけど、)

ほんの一瞬、互いに同じ痛みを抱いた。
けれど蓮は自然な仕草で優真の腰に手を添える。

「……優真、おいで、」

低い声が、ざわめきを遠ざけるように耳に落ちた。

「……っ」

胸が熱くなり、優真はただ小さく頷くことしかできなかった。

――

その後立ち寄ったデパ地下

ガラスケースに並ぶ色とりどりの惣菜を前に、優真の目がきらきら輝く。

「わぁ……どれも美味しそうです!」
 
「好きなの選べ。……俺はこの肉、気になるな」

蓮もガラスケースを指差し、微笑む。

「じゃあ……ポテトもつけましょう。あ、あとサラダも!」

買い物袋を両手に下げて外に出る頃には、空はオレンジ色に染まりはじめていた。

「……こうやって並んで歩くの、久しぶりな気がします」

優真がぽつりと呟いた。
蓮は横を歩きながら、買い物袋を片手に軽く笑う。
 
「撮影続きだったからな。今日はおそろいも買えたし、いい日だろ?」

「……はい!」

優真はロサンゼルスで感じた寂しさをそっと手放した。

両手にぶら下げたデパ地下の袋が揺れ、カサカサと小さな音を立てる。

「ふふ、いい買い物しましたね」

優真が笑顔で袋を持ち上げる。

「……だな、」

蓮はその横顔をちらりと見て、思わず目を細めた。
光を受けた優真の頬は赤みを帯びて、夕陽の中でやけにきれいに見える。

(……まただ、)

「どうしました?」

視線を感じ取って、優真が首を傾げる。

「いや。……可愛いから」

「……なっ!…またそういうっ…」

歩道で立ち止まりそうになった優真を見て、蓮は肩を揺らして笑った。

――

帰宅して、買った靴を揃えて玄関に置き、惣菜を台所で広げる。

「先に、シャワー浴びちゃいますね」

と優真が言おうとした瞬間。

背後から抱き寄せられ、耳元に蓮の熱っぽい声が落ちた。

「……先に、したいんだけど」

「っ……」

こういう時、何年経っても心臓が跳ねてうるさい。
優真は顔を赤らめて回された蓮の手に自分の手を重ねる。

「……あ、まって……」

小声で零しても、耳まで真っ赤になっているのは自分でも分かる。

蓮は首筋に唇を寄せて、舌先でそっとなぞった。

「出かけてる間もずっと待ったよ、」

「…ん、…っあ……」

震える声が零れ、足から力が抜ける。

そのまま導かれる様にソファに押し倒された。
シャツのボタンを外され、胸元に落ちる熱い口づけ。

「ん……っ、蓮さん……」

背を反らすたび、布地が肌を擦って甘い痺れが広がる。
蓮の指が迷いなく下腹に伸び、ズボンの上から優真をなぞった。

「はは、もうこんなに熱くなってんね?」

蓮がいたずらっぽく笑う。

「あ、だって…」

顔を覆って首を振る優真。
けれど蓮は容赦なくその耳元に囁いた。

「抱かれる準備、ちゃんとできてんじゃん」

「っ、ん……蓮さ、ん…」

息を乱しながら、優真は腕を伸ばし蓮の首にしがみつく。

「……も、そうやってすぐ、……」

「ん?なに?」

くすっと笑いながら唇を塞がれ、すべての言葉は甘い舌に絡め取られてた。

触れられるたび体が熱を孕み、互いの昂ぶりは張り詰めていく。

優真はズボンを引き下ろされ、露わになった脚を押し広げられる。視線が絡んで目が離せない。
世間が称賛する男が自分だけを見つめ、自分だけを抱く。
えもいわれぬ愛おしさを感じる。

「……優真」

低い声に名を呼ばれただけで、胸がじんと熱くなる。

「……っ、はい」

涙ぐんだ瞳で応えると、蓮は先走りで濡れた自身を優真の後ろに擦り付け解していく。

「あ、あ…それだめっ…」

「はは、腰揺れてる…きもちいいね?」

何度目かの擦り付けのあと、そのまま深く貫かれた。

「っ……ぁああっ!」

「………っ」

何度も奥まで届くたび、ソファが軋む。
水音がリビングに響き、互いに求め合い続ける。

「あ…ん……、蓮さっ…も…」

角度を何度も変えられ、深く、浅く、いいところだけを突く蓮の動きに翻弄される優真。

たまらず蓮の手を握ると、やさしく握り返された。

「は、優真…出すね、」

律動が速くなり、動きが大きくなる。

「あ、あ、あ、イっちゃう…蓮さん……」

蓮が優真の中に愛を注ぐと同時に優真も震えながら果てた。

――

しばしの余韻のあと、ふと優真が顔を上げた。

「……あ、そういえば今日……みんな来るって言ってませんでした?!」

その一言に、蓮が一瞬固まり、そして目を丸くする。

「……あ」

二人して飛び起き、換気して慌てて浴室へ向かう。
シャワーの音が重なり、バタバタと着替える声が響いた。

――

ピンポーン

玄関のチャイムが鳴る
オートロックを越えてドアを開けると、珍しくハルが先頭でずかずかと入ってきた。

後ろには陸、アキ、ユキの姿。

「お邪魔するわよ。
…あなたたち……なんかホカホカしてるわね。
まさか……」

「わーーーー!!!」

優真は真っ赤になって声を張り上げる。

蓮はソファに腰を落としながら、にやりと笑った。

「……そのまさかだな」

蓮の一言に、場が一瞬フリーズした。

「も~ほんと仲いいわね!!」

ハルがにやにやしながら蓮のわき腹を小突いた。

アキは大声で笑い転げ、ユキは耳まで赤くして目を逸らす。

「……ほかほか?まさか?」

陸は腕を組んで眉間にしわを寄せる。

優真は顔を覆ったまま、心臓が爆発しそうになっていた。

「わーーーー!違……違……っ、違くないですけど……っ!!」

「認めたーーー!!」

アキの大声がリビングに響き、ユキまで思わず肩を震わせた。

蓮は肩を揺らしながら、優真の背中を軽く叩く。

「もうバレてんだから隠す必要ないだろ」

「っ……蓮さんは黙っててください!!」

――

落ち着きを取り戻した頃、ハルがパンッと手を叩いた。

「はい、じゃあ本題に入るわよ。来月アウレアで何があったかしら~?」

ハルの視線が蓮に向く。

「あー……ハロウィンパーティか?」

蓮は少し考えてから短く答える。

「そういえば、ポスター貼ってましたね!」

優真が思い出したように声を上げる。

「それそれ!仮装してたら友達も連れてきていいやつだろ?!俺、アウレアの空気吸いたいわ~」

アキが身を乗り出し大げさに言う。

「ふふ……僕も、行ってみたいかも」

ユキは控えめに微笑んだ。

「俺は、そういうのは……」

陸が渋い顔で言いかけると、ハルがすかさず割り込んだ。

「え~? 私のコスプレ見たくない~?」

唇に指を当て陸にウインクする。

「……ぐ……コスプレ……」

陸は言葉を詰まらせ、視線を逸らした。

「ぎゃはは!正直陸!!」

アキが机を叩いて大爆笑する。ユキも思わず口元を押さえた。

「というわけで、採寸させてね」

ハルはにやりと笑って、手に持っていたメジャーをパチンと伸ばした。

「蓮から!」

「はいはい」

蓮は涼しい顔で立ち上がり、両腕を軽く広げる。

「ほんと無駄のない筋肉よねぇ。相変わらず」

ハルは楽しそうにメジャーを走らせながら、うんうんと頷いた。

(蓮さんとハルさん…絵になるなぁ。でもさっきまで、おれ、蓮さんと…)

優真はその様子をぼーっと見つめる。

「はは、優真なに?いつも見てるのにそんなに見つめて。穴あくわ」

蓮がにやりと笑って優真をからかう。

「な、なんでもないです!!」

ソファに縮こまる優真。

アキは「おーい何照れてんだよ!」と大笑いし、ユキは口元を押さえてくすっと笑う。

陸は眉を寄せ、咳払いをした。

「じゃ、次は優真ね」

そう言ってハルは手際よく肩幅を測り、胸にメジャーを回す。

服の上からなのに、さっきまでの熱がまだ肌に残っている気がして、優真の心臓は勝手に早くなる。

(っ……だめだ、考えないようにしないと……)

「はい、胸囲」

メジャーがぴたりと当たった瞬間、蓮の手で触られた感覚を思い出した。

「んっ……!」

思わず声が漏れてしまう。

「あら?あらら~?もしかして…?!」

ハルは目を細めて優真の顔をのぞき込んだ。

「ハルさんっ…!もー!」

優真は耳まで熱く染めながら身じろぎをした。

「可愛いのと可愛いのがイチャついてんぞ!!」

アキが騒げばユキもくすっと笑う。

そこで蓮がすっと立ち上がった。
ハルからメジャーをひょいと奪い取り、代わりに優真の肩に手を置く。

「……確認させてね、優真」

低い声でそう言い放った。

「「「「またァ?!?」」」」

ハル、アキ、ユキ、陸、全員が同時に叫ぶ。

「お前ら、どんだけヤるんだよ!」

アキが腹を抱えて笑い、ユキも苦笑する。

「同棲っていいわね、陸?!」

ハルは目を輝かせ陸を見やった。

「……同棲、か。」

陸は顎に手を当てしばし考える素振りを見せる。

優真は穴があったら入りたい勢いで、真っ赤な顔を両手で隠し、蓮は涼しい顔でメジャーを指先で弄ぶ。

残りの優真の採寸を終わらせたところでハルはお楽しみに、と陸と双子を連れてマンションをあとにした。



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