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社会人編
幕引き
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夜。
夏は終わりかけだがまだ暑い。
リビングに冷房の低い音が響く。
蓮のスマホが震え、ハルからのメッセージが届いた。
『今度のショーで、モデルをやめることにしたわ。
たくさん助けてもらって本当にありがとう。』
文字を目で追った瞬間、胸の奥がざわつく。
ソファに腰を下ろしながら、蓮は目を閉じた。
(……そうか、)
ハルの顔がいくつも浮かんでくる。
16歳で初めて会ったときの、生意気なくせにどこか寂しげな目。
撮影現場で無理に笑っていた姿。
モデルとしての輝きと裏腹に、スポンサー絡みで不安定で傷だらけだった時期。
(あいつ、ずっと背負ってきたもんな)
しかしここ数年、その姿はだんだん変わっていった。
陸と一緒にいるときの、あの安心しきった笑顔。
肩の力が抜けて、やっと「女の子」でいられるようになった横顔を見たときはなんとも言えない感情が湧いた。
蓮は小さく息を吐いた。
『お疲れ。ずっとかっこよかったぞ』
そう打ち込んで指を止め、もう一言付け足してから送信した。
『俺もそのうち、大事なこと言うから』
既読がつく。
返ってきたのは、短く鋭い言葉だった。
『とうとう優真と結婚でもする?(笑)』
「……わかんのかよ、」
苦笑し、スマホを伏せる。
――
「蓮さん、今日のご飯どうします?」
キッチンから夕飯の支度をしようとしていた優真が顔を出した。
「……ハル、モデルやめるって」
蓮は短くそう告げた。
「え……」
優真から驚きの声が漏れる。
そしてハルのいろんな顔が浮かんだ。
自分が20歳になったばかりの頃、サプライズで誕生日を祝ってくれた、あの大人びた笑顔。
どう反応していいか分からず固まってしまったのに、ハルはまるでお姉さんのように優しく接してくれた。
(あのとき、本当に嬉しかったな……)
陸と付き合い始めてからはまた違う顔を見せるようになった。
甘えて拗ねる、可愛い素の表情。
愛されている人の幸福がにじみ出る笑顔は羨ましいと思うこともあった。
(……きっと、これからはもっと自由に笑えるんだろうな)
蓮はソファに背を預け、ぼんやり天井を見上げながら言った。
「あいつ、ガキの頃からいろんなもん背負ってきただろ。
でも今度は、自由に生きられるんじゃねぇかなって。陸もいるしさ、」
優真は胸の奥がじんわり熱くなり、そっと笑みを浮かべる。
「そうですね……。陸とハルさん、もっと幸せになれますよね」
蓮は黙って頷き、テーブルに置いた麦茶をひと口。
窓の外では夏の夜風が揺れ、風鈴がかすかに鳴った。
ハルの歩いていく新しい道を、2人は静かに祝福した。
夏は終わりかけだがまだ暑い。
リビングに冷房の低い音が響く。
蓮のスマホが震え、ハルからのメッセージが届いた。
『今度のショーで、モデルをやめることにしたわ。
たくさん助けてもらって本当にありがとう。』
文字を目で追った瞬間、胸の奥がざわつく。
ソファに腰を下ろしながら、蓮は目を閉じた。
(……そうか、)
ハルの顔がいくつも浮かんでくる。
16歳で初めて会ったときの、生意気なくせにどこか寂しげな目。
撮影現場で無理に笑っていた姿。
モデルとしての輝きと裏腹に、スポンサー絡みで不安定で傷だらけだった時期。
(あいつ、ずっと背負ってきたもんな)
しかしここ数年、その姿はだんだん変わっていった。
陸と一緒にいるときの、あの安心しきった笑顔。
肩の力が抜けて、やっと「女の子」でいられるようになった横顔を見たときはなんとも言えない感情が湧いた。
蓮は小さく息を吐いた。
『お疲れ。ずっとかっこよかったぞ』
そう打ち込んで指を止め、もう一言付け足してから送信した。
『俺もそのうち、大事なこと言うから』
既読がつく。
返ってきたのは、短く鋭い言葉だった。
『とうとう優真と結婚でもする?(笑)』
「……わかんのかよ、」
苦笑し、スマホを伏せる。
――
「蓮さん、今日のご飯どうします?」
キッチンから夕飯の支度をしようとしていた優真が顔を出した。
「……ハル、モデルやめるって」
蓮は短くそう告げた。
「え……」
優真から驚きの声が漏れる。
そしてハルのいろんな顔が浮かんだ。
自分が20歳になったばかりの頃、サプライズで誕生日を祝ってくれた、あの大人びた笑顔。
どう反応していいか分からず固まってしまったのに、ハルはまるでお姉さんのように優しく接してくれた。
(あのとき、本当に嬉しかったな……)
陸と付き合い始めてからはまた違う顔を見せるようになった。
甘えて拗ねる、可愛い素の表情。
愛されている人の幸福がにじみ出る笑顔は羨ましいと思うこともあった。
(……きっと、これからはもっと自由に笑えるんだろうな)
蓮はソファに背を預け、ぼんやり天井を見上げながら言った。
「あいつ、ガキの頃からいろんなもん背負ってきただろ。
でも今度は、自由に生きられるんじゃねぇかなって。陸もいるしさ、」
優真は胸の奥がじんわり熱くなり、そっと笑みを浮かべる。
「そうですね……。陸とハルさん、もっと幸せになれますよね」
蓮は黙って頷き、テーブルに置いた麦茶をひと口。
窓の外では夏の夜風が揺れ、風鈴がかすかに鳴った。
ハルの歩いていく新しい道を、2人は静かに祝福した。
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