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海外編
夏休みと仕事(2)
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エンジンの低い唸りが、静かな振動になって機内を満たしていた。
雲の切れ間から射す光が、窓のブラインド越しにシートを薄く照らす。
三列並んだ真ん中のブロック――
左からリアム、蓮、優真と並び座っている。
ビデオ通話から数日後、バタバタと荷造りをしているうちに夏休みは始まった。
距離が近くなれば簡単に会えると思っていた優真の家族ともまだ会えていないまま、何の縁なのか日本に向かっている。
蓮はテーブルを出し、ノートを開きペンを走らせていた。
空気と紙の境目をなぞるように、柔らかな線が滑る。
白の上に黒い線が現れるたび、形ではなく“温度”のようなものが生まれた。
リアムが身を乗り出して覗き込み、声をひそめる。
「ねぇ、それ……何描いてるの?」
蓮は視線を上げずに答える。
「服のデザイン。コラボのやつ。
……“光を着る”って、テーマにしようと思って」
「光を着る、ねぇ……」
リアムは腕を組んで、真剣な顔を作る。
「神々しいね。……で、何をイメージしてんの?」
「身体の動きに合わせて光の当たり方が変わるだろ?そしたら服のデザインの見え方が変わる、みたいなやつ。…タトゥーみたいに、形と流れを見せたい」
リアムが思わず口笛を鳴らす。
「やっぱ出るね、前の職業の名残。線が……なんか、生きてる」
蓮は短く笑った。
「はは、手が覚えてるだけ」
そう言いながら、無意識にペンを持ち上げペン先に触れる。
それは昔、針の感覚を確かめるときにしていた癖だった。
優真はその動きを見ながら、少しだけ頬を緩めた。
「……すごいですね。描いてるとき、やっぱ別人みたいです。
もともとの蓮さん、なんですけど…」
「もっと褒めていーよ?」
「……はい。真剣な顔、好きです」
「お、積極的」
優真が慌てて姿勢を正し、リアムが笑いを噛み殺す。
「ユーマ、キスする?!」
「お前は黙ってろ」
蓮が無表情でリアムを一瞥すると、リアムは慌てて手を上げた。
「はいはい、俺はこっちでマジメに準備してるから」
そう言ってノートを開くと、そこには大きな文字で"Food Wish List"(食べたいものリスト)と書かれていた。
たこ焼き、ラーメン、うな丼、メロンソーダ、冷やし中華、プリンパフェ。
さらに次のページには、"List of places to visit"(観光したい場所)
――鎌倉・浅草・花火大会・メイドカフェ。
蓮がペンを止めて横目で見た。
「なんだよその自由研究みたいなノートは」
優真が小さく吹き出し、肩を揺らす。
リアムが嬉しそうにその反応を見て、さらにノートのページをめくった。
"Free time"
午前:浅草
午後:カフェ
夜:ナイトプール(*Can't swim)
「リアム、泳げないのにプール行くんか?」
蓮がナイトプールの文字を指差しニヤリと笑う。
「だって、水着見たいじゃん!」
優真がため息をつく。
「やっぱりそんな感じなんですか…」
「ユーマの」
リアムがポツリと続けた。
「…っておれのですか?!行きませんけど?!」
「えー?着よう?俺持ってきたよ!可愛いやつ…」
蓮が軽く額を押さえて笑う。
「お前がいると、騒がしいわほんと」
「それ、褒め言葉として受け取る!」
蓮はふっと息を吐き、テーブルに置いていたスマホを手に取る。
(やべ、バタバタしててすっかり忘れてた…)
文字を打ち込み、送信した。宛先は馴染みのメンツだった。
――『日本、帰ってる』
送信音が鳴ると、即座に通知が鳴り止まなくなる。
犯人はアキだった。
《マジ!?》
《は!?帰国!?》
《仕事?遊び?両方?》
《お土産リスト準備していい?え?もう飛行機?》
優真が横で覗き込み、くすっと笑った。
「……アキさん、楽しそうですね」
「だな。アキしか打ってこねぇ、うるせぇな?」
蓮がスケッチブックを閉じ、シートに背を預けた。
その横顔は、穏やかで、少し眠そうだった。
リアムがその様子を見て、ペットボトルを掲げる。
「日本へ向けてカンパーイ!」
「機内で乾杯すんな」
優真が笑いながら、蓮の肩に頭を預ける。
「……楽しみですね」
「うん、夏の日本…ちょっと離れてただけなのに懐かしいな、」
外は、まるでその言葉を確かめるように光を増していく。
雲の海が切れて、遠くに淡い青が滲み始めた。
イギリスから、日本へ。
3人を乗せた機体は、確かに“再会”へ向かっていた。
――
飛行機のドアが開いた瞬間、空気が変わった。
まだ外に出ていないのに感じる、肌にまとわりつくような湿気。
東京の夏は、イギリスの乾いた風を一瞬でかき消した。
「……あー、これだよこれ!」
リアムが空気を吸い込みながら、両腕を広げた。
「日本の空気!湿度の重さ…!!」
「それな…」
蓮が半眼のまま呟く。
キャリーケースの取っ手を握る手が、じんわり汗ばむ。
優真はハンカチを取り出して蓮の手に渡す。
「蓮さん、どうぞ。汗かいちゃいますね」
「ん、ありがと」
そのやり取りを見て、リアムが即座にからかう。
「ほら出たよ、ユーマ!ママじゃん!」
「お前、空港で騒ぐな」
「リアムさんもハンカチどうぞ」
「家宝にするね…」
リアムは両手で優真からハンカチを受け取ると、頬をすり寄せた。
人波を抜け、到着ロビーを出たその瞬間――
「みんなー!こっちこっち!」
手を振る声に、蓮は反射的に顔を上げる。
スーツ姿の男――神崎だった。
相変わらず爽やかで、きれいな格好をしていた。
隣では秘書の水端が、無言でスマホを操作している。
「社長、お久しぶりです。
…わざわざ、空港にまで迎えに来たんですか」
蓮が頭を下げると、優真も一緒にぺこりと一礼した。
「そりゃ来るよ!うちの"顔"が一時帰国だもの!」
リアムが手を振りながら前に出た。
「カンザキ!ハロ~!」
「おおっリアム!顔見たかったよ~!
何年前だった?!最後に会ったの…!」
神崎は両手を広げ、そのままリアムを勢いよく抱きしめた。
「はー、相変わらずいい匂いする!」
「カンザキ、嗅がないでよ~」
(社長とリアムさんの関係って、何…?!)
優真は呆気にとられていた。
周囲の人がクスクス笑う中、水端が小声で注意する。
「社長、ハラスメントです」
「いやいや、久々の再会にハグぐらい!」
だが神崎は止まらない。
「じゃあ次は優真くんだね!」
「えっ!?い、いえそんな!」
優真がタジタジになる前に、社長の腕が伸び――
抱き寄せられた。
「よく帰ってきたねぇ!おかえりー!
タケちゃん元気だった??あ、石嶋猛!」
「ちょ、ちょっと社長っ……!いや、石嶋さんは元気でしたけどっ…」
次の瞬間、ドスッと乾いた音が響く。
水端のローキックが社長のふくらはぎに炸裂した。
「変な手つきでした」
「いたっ!?違う違う!愛情表現だって!」
社長がふくらはぎをさすると、リアムが涙を流しながら爆笑する。
「ハハハッ!カンザキ最高!ニホン最高!」
蓮は頭を押さえた。
「……優真こっちおいで。
社長ブーストしてるな?」
「元気で何よりです」
優真が苦笑しながら言う。
神崎はケロッと立ち直り、パンと手を叩いた。
「さてさて!暑い中ありがとうね。まずはホテル行って休んで、それから打ち合わせ。
LUCENTとの合同ミーティング、明日の午後だから!」
「明日から仕事なんすね」
「そう。夏休みは仕事の先にね!」
リアムが首をかしげる。
「カンザキ、さっき“夏休み”って言ったのに“仕事”って単語、なんで?」
「それはね、リアム…我々は日本人だからだよ」
得意げに腕を組む神崎の横で、水端が淡々と補足する。
「なお、明日は午前中にプレス撮影もあります」
「やっぱり日本人働きすぎだね!」
リアムがやれやれと溜息を吐いた。
蓮が苦笑しながら頭を掻く。
「結局働くんすね、俺」
「私は蓮くんを手放さないよ!」
神崎がにこりと笑うと、水端がため息をついた。
「社長、キモいです」
優真は笑いをこらえきれず、肩を震わせていた。
その様子を見て、神崎が満足気に言う。
「いやぁ、やっぱり賑やかだね。いいチームだ!」
蓮は半分呆れたように笑いながらも、心の奥が少し温かくなるのを感じていた。
イギリスではまだ手探りの熱が、湿度と一緒に押し寄せる、日本のホーム。
リアムが窓の外を見上げる。
「うわぁ……空、眩しい!ブルーが綺麗だねぇ」
その声に、蓮も優真も自然と顔を向けた。
――
カフェ"アウレア"。
昼下がりの陽射しが柔らかくカウンターを照らしていた。
ハルがカップを拭き並べるカウンターには陸、アキ、ユキ、玲央といつもの顔ぶれが集まっている。
エスプレッソマシンの蒸気が低く唸り、キャラメルの甘い香りが店内を満たしていた。
「ねぇ、これ……見て」
ユキがスマホを掲げた。
画面には、たった一行のメッセージ。
――『日本、帰ってる』
「え?」
ハルの手が止まり、カップを持ったまま固まった。
その直後、テーブルの上のスマホが一斉に震え始める。
返信の嵐。犯人はアキだった。
《マジ!?》
《は!?帰国!?》
《仕事?遊び?両方!?》
《お土産リスト準備していい?え?もう飛行機?》
「アキ!!!」
ハルがふきんを振りながら叫んだ。
「うるさいわね!! 一人で連投しないでよ!!」
「だってテンション上がるじゃん!?!?待って、既読つけてくれるまで打つから!あ、既読ついた!スルーされるじゃん…」
陸が苦笑しながらカウンター越しに自分のマグを差し出した。
「ハル、落ち着け。ちょっとコーヒー飲め」
「ん、ありがとう……」
玲央が吹き出し、ユキがコーヒーを啜りながら笑う。
「ねぇもうアキの通知だけミュートにしたら?」
「それは可哀想かなって」
ハルがふぅと一息つきながら返す。
「ハルはつまり俺のこと好きってことじゃん!」
「それはないな」
陸が割り込む。
「アキ、うるさいって言ってるでしょ!!」
わちゃわちゃとしたやり取りの中、ふと玲央がぽつりと呟いた。
「……でも、ほんとに帰ってくるんすね」
その一言で場の空気が少しだけ変わる。
「“日本、帰ってる”の一文だけで全部済ませるあたり、蓮っぽいね」
ユキが肩をすくめる。
「……ほんと、心臓に悪いわ、」
ハルが深く息をつきながらも、唇の端に微笑を浮かべた。
次に震えたのは玲央のスマホだった。
「……あ、ニュース出てます」
全員が身を乗り出して画面を覗き込む。
『AUREA×LUCENT 期間限定コラボイベント開催!
ゲストデザイナー兼1日店長で蓮が来日』
アキがテーブルを叩き爆笑した。
「やっぱり仕事かーい!!」
「蓮さん、休めてるのか…?」
陸が首を傾げる。
ハルはスマホを横目に溜息を吐いた。
「……なんでこう、唐突なのよ。
もうちょっと事前に言えばいいのに!」
「ハルがぷりぷりしてる~」
アキがニヤニヤとからかうとハルは「してない!」とバックヤードに足を向けた。
その喧噪の中、玲央がまっすぐ顔を上げた。
「……行きましょ!蓮さんに会いに」
アキが即座に立ち上がる。
「決まり!サプライズ突撃だ!!!」
「表参道の方のLUCENTだよ」
LUCENTは何店舗かあるが、今回はカフェから近かった。
「……近いな、」
陸はアキが余して押し付けたパンケーキを頬張りながら呟いた。
ハルはため息をつきながら、それでも少しだけ笑う。
「ほんと、あなた達って……でも、いいわ。
サプライズ、しましょうか」
アキが満面の笑みで両手を叩いた。
「やったー!じゃあハルのカフェ発・お出迎え隊出発だ!」
玲央がスマホを握りしめながら嬉しそうに言う。
「……久しぶりに、蓮さんに会えるんすね…」
カップの中のコーヒーが、夏の日差しを受けてきらりと光る。
カフェの扉が開き、お客さんが入ってくる。
午後の風が音を運び、みんなの笑い声が外に溶けていった。
――
翌日
LUCENT本社。
ガラス張りの会議室には午後の光が差し込み、テーブルに並ぶ水のグラスが細かく光を反射していた。
LUCENTのロゴが映ったモニターの前で、神崎が満面の笑みを浮かべている。
「――というわけで!アウレア×LUCENTのコラボ、いよいよ実現です!」
テンションはいつもどおり絶好調だった。
蓮は腕を組みながら、手元のスケッチブックをめくる。
リアムはその隣でペンを回す。一人で観光しようと思ったものの、暑さに耐えかねて涼しいオフィスに逃げた結果、会議に同席する運びとなった。
優真はそっと小声で「……すごい勢いですね」と呟いた。
水端は黙ってキーボードを叩きながら小さく溜息を吐いていた。
LUCENT側のディレクターが言う。
「今回のコラボ、100着限定でいきましょう。
そもそもギリギリなんですけど、うちとしても蓮さんとのお仕事でさらに認知度高めていきたいので…」
「おお~!いいねそれ!」
神崎はディレクターを指差しウィンクした。
「テーマは“光を纏う”でどう?どう!?響くでしょ!」
「……まだテーマ言ってないんですけどね。概ね俺もそんな感じでした、」
蓮の冷静な返しに、一同笑みが漏れた。
広げたスケッチブックをテーブルの真ん中に差し出す。
風を切るような筆致の線と、光のように柔らかく滲むインクの跡。
どこか儚く、それでいて力強い。
LUCENTの担当が息を呑む。
「……これ、飛行機の中で?」
「はい、下書きですけど…。
身につける人や場所、時間によって顔を変えるような服とか、どうかなって…」
「すごい、即決でこれにしましょう」
神崎がぱんっと手を叩いた。
「はい決定!これ採用!」
「サンプル確認はどうします?」
水端が勢いづく神崎を止めに入った。
しかし、「いらない!勢いだよ!」と一蹴されてしまった。
リアムが手を上げる。
「カンザキも勢いがあるね!」
「そう!それ!」
(それで済む話じゃないと思うけどな…)
優真が蓮の方をちらっと見ると、楽しそうに笑っていたので口には出さなかった。
和やかな空気の中、LUCENT側の進行担当が手元の資料を確認しながら、さらっと口を開いた。
「こちらの方でも生産ラインの手配済みです。
蓮さんのデザインが確定したので、明日には試作、試作に問題がなければ量産、明後日のイベント本番前には準備完了させる感じですね。
蓮さん達の滞在スケジュールも考えると…」
「え?」
蓮の顔から微笑みが消えるも、神崎が得意げに指を立てた。
「そう!現場はもう全部動いてる!
会場も押さえてるし、あとは当日よろしく!
握手会も盛り上がると思うよ~!」
「……握手会も、ですか?」
優真が確認する。
「そうそう。LUCENTとの合同イベントだし、ファンとの交流も大事だからね!なに、商品渡すときに握手したらいいんだよ~」
水端も確認する。
「明後日ですよね?」
「うん、そう!」
リアムが首を傾げた。
「つまり、1日店長って言ってたけど…実働3日どころじゃないよね?」
蓮がゆっくりと椅子にもたれた。
少し諦め気味の笑顔を浮かべ、なんとかなれといった感じだった。
「……計算、合わないすね」
神崎は全く動じない。
「今の蓮くんならできるよ!任せた!」
そして笑顔のまま、颯爽と会議室を出ていった。
ドアが閉まる音が響く。
沈黙。
リアムが珍しく面食らう。
「カンザキ、段々雑になってない?」
水端は机を片付けながら、淡々と返す。
「いつものことです…しかしながら、すみません、」
蓮は顔を両手で覆い、息を長く吐くと、困ったように笑った。
「……ありがたいことだよな、頑張るか」
「…おれ、とりあえず飲み物買ってきます!」
(蓮さん、大丈夫かな)
ガラス越しの午後の光が、積み上げられた布の束を照らした。
雲の切れ間から射す光が、窓のブラインド越しにシートを薄く照らす。
三列並んだ真ん中のブロック――
左からリアム、蓮、優真と並び座っている。
ビデオ通話から数日後、バタバタと荷造りをしているうちに夏休みは始まった。
距離が近くなれば簡単に会えると思っていた優真の家族ともまだ会えていないまま、何の縁なのか日本に向かっている。
蓮はテーブルを出し、ノートを開きペンを走らせていた。
空気と紙の境目をなぞるように、柔らかな線が滑る。
白の上に黒い線が現れるたび、形ではなく“温度”のようなものが生まれた。
リアムが身を乗り出して覗き込み、声をひそめる。
「ねぇ、それ……何描いてるの?」
蓮は視線を上げずに答える。
「服のデザイン。コラボのやつ。
……“光を着る”って、テーマにしようと思って」
「光を着る、ねぇ……」
リアムは腕を組んで、真剣な顔を作る。
「神々しいね。……で、何をイメージしてんの?」
「身体の動きに合わせて光の当たり方が変わるだろ?そしたら服のデザインの見え方が変わる、みたいなやつ。…タトゥーみたいに、形と流れを見せたい」
リアムが思わず口笛を鳴らす。
「やっぱ出るね、前の職業の名残。線が……なんか、生きてる」
蓮は短く笑った。
「はは、手が覚えてるだけ」
そう言いながら、無意識にペンを持ち上げペン先に触れる。
それは昔、針の感覚を確かめるときにしていた癖だった。
優真はその動きを見ながら、少しだけ頬を緩めた。
「……すごいですね。描いてるとき、やっぱ別人みたいです。
もともとの蓮さん、なんですけど…」
「もっと褒めていーよ?」
「……はい。真剣な顔、好きです」
「お、積極的」
優真が慌てて姿勢を正し、リアムが笑いを噛み殺す。
「ユーマ、キスする?!」
「お前は黙ってろ」
蓮が無表情でリアムを一瞥すると、リアムは慌てて手を上げた。
「はいはい、俺はこっちでマジメに準備してるから」
そう言ってノートを開くと、そこには大きな文字で"Food Wish List"(食べたいものリスト)と書かれていた。
たこ焼き、ラーメン、うな丼、メロンソーダ、冷やし中華、プリンパフェ。
さらに次のページには、"List of places to visit"(観光したい場所)
――鎌倉・浅草・花火大会・メイドカフェ。
蓮がペンを止めて横目で見た。
「なんだよその自由研究みたいなノートは」
優真が小さく吹き出し、肩を揺らす。
リアムが嬉しそうにその反応を見て、さらにノートのページをめくった。
"Free time"
午前:浅草
午後:カフェ
夜:ナイトプール(*Can't swim)
「リアム、泳げないのにプール行くんか?」
蓮がナイトプールの文字を指差しニヤリと笑う。
「だって、水着見たいじゃん!」
優真がため息をつく。
「やっぱりそんな感じなんですか…」
「ユーマの」
リアムがポツリと続けた。
「…っておれのですか?!行きませんけど?!」
「えー?着よう?俺持ってきたよ!可愛いやつ…」
蓮が軽く額を押さえて笑う。
「お前がいると、騒がしいわほんと」
「それ、褒め言葉として受け取る!」
蓮はふっと息を吐き、テーブルに置いていたスマホを手に取る。
(やべ、バタバタしててすっかり忘れてた…)
文字を打ち込み、送信した。宛先は馴染みのメンツだった。
――『日本、帰ってる』
送信音が鳴ると、即座に通知が鳴り止まなくなる。
犯人はアキだった。
《マジ!?》
《は!?帰国!?》
《仕事?遊び?両方?》
《お土産リスト準備していい?え?もう飛行機?》
優真が横で覗き込み、くすっと笑った。
「……アキさん、楽しそうですね」
「だな。アキしか打ってこねぇ、うるせぇな?」
蓮がスケッチブックを閉じ、シートに背を預けた。
その横顔は、穏やかで、少し眠そうだった。
リアムがその様子を見て、ペットボトルを掲げる。
「日本へ向けてカンパーイ!」
「機内で乾杯すんな」
優真が笑いながら、蓮の肩に頭を預ける。
「……楽しみですね」
「うん、夏の日本…ちょっと離れてただけなのに懐かしいな、」
外は、まるでその言葉を確かめるように光を増していく。
雲の海が切れて、遠くに淡い青が滲み始めた。
イギリスから、日本へ。
3人を乗せた機体は、確かに“再会”へ向かっていた。
――
飛行機のドアが開いた瞬間、空気が変わった。
まだ外に出ていないのに感じる、肌にまとわりつくような湿気。
東京の夏は、イギリスの乾いた風を一瞬でかき消した。
「……あー、これだよこれ!」
リアムが空気を吸い込みながら、両腕を広げた。
「日本の空気!湿度の重さ…!!」
「それな…」
蓮が半眼のまま呟く。
キャリーケースの取っ手を握る手が、じんわり汗ばむ。
優真はハンカチを取り出して蓮の手に渡す。
「蓮さん、どうぞ。汗かいちゃいますね」
「ん、ありがと」
そのやり取りを見て、リアムが即座にからかう。
「ほら出たよ、ユーマ!ママじゃん!」
「お前、空港で騒ぐな」
「リアムさんもハンカチどうぞ」
「家宝にするね…」
リアムは両手で優真からハンカチを受け取ると、頬をすり寄せた。
人波を抜け、到着ロビーを出たその瞬間――
「みんなー!こっちこっち!」
手を振る声に、蓮は反射的に顔を上げる。
スーツ姿の男――神崎だった。
相変わらず爽やかで、きれいな格好をしていた。
隣では秘書の水端が、無言でスマホを操作している。
「社長、お久しぶりです。
…わざわざ、空港にまで迎えに来たんですか」
蓮が頭を下げると、優真も一緒にぺこりと一礼した。
「そりゃ来るよ!うちの"顔"が一時帰国だもの!」
リアムが手を振りながら前に出た。
「カンザキ!ハロ~!」
「おおっリアム!顔見たかったよ~!
何年前だった?!最後に会ったの…!」
神崎は両手を広げ、そのままリアムを勢いよく抱きしめた。
「はー、相変わらずいい匂いする!」
「カンザキ、嗅がないでよ~」
(社長とリアムさんの関係って、何…?!)
優真は呆気にとられていた。
周囲の人がクスクス笑う中、水端が小声で注意する。
「社長、ハラスメントです」
「いやいや、久々の再会にハグぐらい!」
だが神崎は止まらない。
「じゃあ次は優真くんだね!」
「えっ!?い、いえそんな!」
優真がタジタジになる前に、社長の腕が伸び――
抱き寄せられた。
「よく帰ってきたねぇ!おかえりー!
タケちゃん元気だった??あ、石嶋猛!」
「ちょ、ちょっと社長っ……!いや、石嶋さんは元気でしたけどっ…」
次の瞬間、ドスッと乾いた音が響く。
水端のローキックが社長のふくらはぎに炸裂した。
「変な手つきでした」
「いたっ!?違う違う!愛情表現だって!」
社長がふくらはぎをさすると、リアムが涙を流しながら爆笑する。
「ハハハッ!カンザキ最高!ニホン最高!」
蓮は頭を押さえた。
「……優真こっちおいで。
社長ブーストしてるな?」
「元気で何よりです」
優真が苦笑しながら言う。
神崎はケロッと立ち直り、パンと手を叩いた。
「さてさて!暑い中ありがとうね。まずはホテル行って休んで、それから打ち合わせ。
LUCENTとの合同ミーティング、明日の午後だから!」
「明日から仕事なんすね」
「そう。夏休みは仕事の先にね!」
リアムが首をかしげる。
「カンザキ、さっき“夏休み”って言ったのに“仕事”って単語、なんで?」
「それはね、リアム…我々は日本人だからだよ」
得意げに腕を組む神崎の横で、水端が淡々と補足する。
「なお、明日は午前中にプレス撮影もあります」
「やっぱり日本人働きすぎだね!」
リアムがやれやれと溜息を吐いた。
蓮が苦笑しながら頭を掻く。
「結局働くんすね、俺」
「私は蓮くんを手放さないよ!」
神崎がにこりと笑うと、水端がため息をついた。
「社長、キモいです」
優真は笑いをこらえきれず、肩を震わせていた。
その様子を見て、神崎が満足気に言う。
「いやぁ、やっぱり賑やかだね。いいチームだ!」
蓮は半分呆れたように笑いながらも、心の奥が少し温かくなるのを感じていた。
イギリスではまだ手探りの熱が、湿度と一緒に押し寄せる、日本のホーム。
リアムが窓の外を見上げる。
「うわぁ……空、眩しい!ブルーが綺麗だねぇ」
その声に、蓮も優真も自然と顔を向けた。
――
カフェ"アウレア"。
昼下がりの陽射しが柔らかくカウンターを照らしていた。
ハルがカップを拭き並べるカウンターには陸、アキ、ユキ、玲央といつもの顔ぶれが集まっている。
エスプレッソマシンの蒸気が低く唸り、キャラメルの甘い香りが店内を満たしていた。
「ねぇ、これ……見て」
ユキがスマホを掲げた。
画面には、たった一行のメッセージ。
――『日本、帰ってる』
「え?」
ハルの手が止まり、カップを持ったまま固まった。
その直後、テーブルの上のスマホが一斉に震え始める。
返信の嵐。犯人はアキだった。
《マジ!?》
《は!?帰国!?》
《仕事?遊び?両方!?》
《お土産リスト準備していい?え?もう飛行機?》
「アキ!!!」
ハルがふきんを振りながら叫んだ。
「うるさいわね!! 一人で連投しないでよ!!」
「だってテンション上がるじゃん!?!?待って、既読つけてくれるまで打つから!あ、既読ついた!スルーされるじゃん…」
陸が苦笑しながらカウンター越しに自分のマグを差し出した。
「ハル、落ち着け。ちょっとコーヒー飲め」
「ん、ありがとう……」
玲央が吹き出し、ユキがコーヒーを啜りながら笑う。
「ねぇもうアキの通知だけミュートにしたら?」
「それは可哀想かなって」
ハルがふぅと一息つきながら返す。
「ハルはつまり俺のこと好きってことじゃん!」
「それはないな」
陸が割り込む。
「アキ、うるさいって言ってるでしょ!!」
わちゃわちゃとしたやり取りの中、ふと玲央がぽつりと呟いた。
「……でも、ほんとに帰ってくるんすね」
その一言で場の空気が少しだけ変わる。
「“日本、帰ってる”の一文だけで全部済ませるあたり、蓮っぽいね」
ユキが肩をすくめる。
「……ほんと、心臓に悪いわ、」
ハルが深く息をつきながらも、唇の端に微笑を浮かべた。
次に震えたのは玲央のスマホだった。
「……あ、ニュース出てます」
全員が身を乗り出して画面を覗き込む。
『AUREA×LUCENT 期間限定コラボイベント開催!
ゲストデザイナー兼1日店長で蓮が来日』
アキがテーブルを叩き爆笑した。
「やっぱり仕事かーい!!」
「蓮さん、休めてるのか…?」
陸が首を傾げる。
ハルはスマホを横目に溜息を吐いた。
「……なんでこう、唐突なのよ。
もうちょっと事前に言えばいいのに!」
「ハルがぷりぷりしてる~」
アキがニヤニヤとからかうとハルは「してない!」とバックヤードに足を向けた。
その喧噪の中、玲央がまっすぐ顔を上げた。
「……行きましょ!蓮さんに会いに」
アキが即座に立ち上がる。
「決まり!サプライズ突撃だ!!!」
「表参道の方のLUCENTだよ」
LUCENTは何店舗かあるが、今回はカフェから近かった。
「……近いな、」
陸はアキが余して押し付けたパンケーキを頬張りながら呟いた。
ハルはため息をつきながら、それでも少しだけ笑う。
「ほんと、あなた達って……でも、いいわ。
サプライズ、しましょうか」
アキが満面の笑みで両手を叩いた。
「やったー!じゃあハルのカフェ発・お出迎え隊出発だ!」
玲央がスマホを握りしめながら嬉しそうに言う。
「……久しぶりに、蓮さんに会えるんすね…」
カップの中のコーヒーが、夏の日差しを受けてきらりと光る。
カフェの扉が開き、お客さんが入ってくる。
午後の風が音を運び、みんなの笑い声が外に溶けていった。
――
翌日
LUCENT本社。
ガラス張りの会議室には午後の光が差し込み、テーブルに並ぶ水のグラスが細かく光を反射していた。
LUCENTのロゴが映ったモニターの前で、神崎が満面の笑みを浮かべている。
「――というわけで!アウレア×LUCENTのコラボ、いよいよ実現です!」
テンションはいつもどおり絶好調だった。
蓮は腕を組みながら、手元のスケッチブックをめくる。
リアムはその隣でペンを回す。一人で観光しようと思ったものの、暑さに耐えかねて涼しいオフィスに逃げた結果、会議に同席する運びとなった。
優真はそっと小声で「……すごい勢いですね」と呟いた。
水端は黙ってキーボードを叩きながら小さく溜息を吐いていた。
LUCENT側のディレクターが言う。
「今回のコラボ、100着限定でいきましょう。
そもそもギリギリなんですけど、うちとしても蓮さんとのお仕事でさらに認知度高めていきたいので…」
「おお~!いいねそれ!」
神崎はディレクターを指差しウィンクした。
「テーマは“光を纏う”でどう?どう!?響くでしょ!」
「……まだテーマ言ってないんですけどね。概ね俺もそんな感じでした、」
蓮の冷静な返しに、一同笑みが漏れた。
広げたスケッチブックをテーブルの真ん中に差し出す。
風を切るような筆致の線と、光のように柔らかく滲むインクの跡。
どこか儚く、それでいて力強い。
LUCENTの担当が息を呑む。
「……これ、飛行機の中で?」
「はい、下書きですけど…。
身につける人や場所、時間によって顔を変えるような服とか、どうかなって…」
「すごい、即決でこれにしましょう」
神崎がぱんっと手を叩いた。
「はい決定!これ採用!」
「サンプル確認はどうします?」
水端が勢いづく神崎を止めに入った。
しかし、「いらない!勢いだよ!」と一蹴されてしまった。
リアムが手を上げる。
「カンザキも勢いがあるね!」
「そう!それ!」
(それで済む話じゃないと思うけどな…)
優真が蓮の方をちらっと見ると、楽しそうに笑っていたので口には出さなかった。
和やかな空気の中、LUCENT側の進行担当が手元の資料を確認しながら、さらっと口を開いた。
「こちらの方でも生産ラインの手配済みです。
蓮さんのデザインが確定したので、明日には試作、試作に問題がなければ量産、明後日のイベント本番前には準備完了させる感じですね。
蓮さん達の滞在スケジュールも考えると…」
「え?」
蓮の顔から微笑みが消えるも、神崎が得意げに指を立てた。
「そう!現場はもう全部動いてる!
会場も押さえてるし、あとは当日よろしく!
握手会も盛り上がると思うよ~!」
「……握手会も、ですか?」
優真が確認する。
「そうそう。LUCENTとの合同イベントだし、ファンとの交流も大事だからね!なに、商品渡すときに握手したらいいんだよ~」
水端も確認する。
「明後日ですよね?」
「うん、そう!」
リアムが首を傾げた。
「つまり、1日店長って言ってたけど…実働3日どころじゃないよね?」
蓮がゆっくりと椅子にもたれた。
少し諦め気味の笑顔を浮かべ、なんとかなれといった感じだった。
「……計算、合わないすね」
神崎は全く動じない。
「今の蓮くんならできるよ!任せた!」
そして笑顔のまま、颯爽と会議室を出ていった。
ドアが閉まる音が響く。
沈黙。
リアムが珍しく面食らう。
「カンザキ、段々雑になってない?」
水端は机を片付けながら、淡々と返す。
「いつものことです…しかしながら、すみません、」
蓮は顔を両手で覆い、息を長く吐くと、困ったように笑った。
「……ありがたいことだよな、頑張るか」
「…おれ、とりあえず飲み物買ってきます!」
(蓮さん、大丈夫かな)
ガラス越しの午後の光が、積み上げられた布の束を照らした。
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