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幼年期編
この世知辛い現実にアディオスを!
しおりを挟む午前11時、町に人があふれる昼時の少し前に1人の男が帰宅する。
「あぁ……しんっど………」
極度の疲労に思わずそう呟きながら玄関のドアをまわすと靴を脱ぎ捨て荷物を放り、乱れた服もそのままに畳にへたりこむ。
ハァっ、溜息一つつけば帰路のコンビニで買い込んだストロング系チューハイをあけグッと呷る。
「……なにやってんだろ、俺」
キツいアルコールが血管に回り脳神経を弛ませると不意に自分への不満と境遇の疑問を漏らし出す。
取り立てて裕福ではないが不自由のない家庭に育ち、大学までストレートに進学できた。
そして大学では文系の学部で優秀と迄はいかなかったが落ちこぼれる事もなく小説、ゲームにアニメとオタク趣味を嗜みサークルの仲間内で盛り上がりそれなりに楽しいキャンパスライフを送って無事に卒業し社会に飛び立てた筈だった。
そんな人生にケチが付いたのは就職活動からだ。
元来の真面目な性格から単位を落とすことこそなかったが自身の興味のあることしかしてこなかったため社会で認められるアピールポイントがなく、何とか卒業までに就職できたもののそれが苦難の始まりだった。
面接時に聞かされていた職から別現場への強制異動となり、昼夜となく酷使され心身共に疲弊していく。
繰り返される昼夜の逆転に体内時計は狂い拘束時間の長さから転職も出来ず僅かな給料を頼りに酒に溺れ、そのまま何をするわけでもなく眠ることだけが休息となっていた。
「仕事に就けさえすればどうにかなると思ってたのになぁ……っっチクっショウ……」
500mlロング缶をあっという間に一本飲みきり二本目を開けながら学生時代の楽しかった記憶に浸る。
楽しみと希望があった日々に思いを馳せると余計に現状の酷さが際立ち、何もできないでいる自分自身への不甲斐なさが悪態となって零れる。
「何でこんなことになっちまったんだろうなぁ……」
半ばわかりきっている疑問をアルコールの酩酊感に任せて虚空に投げ出し、ふぅと嘆息すると両膝を叩きヨロヨロと力を入れる。
「漸くの休みなんだ、どうせ何も出来やしないんだから……久しぶりにゲームでもするか」
そう言って開き直ると疲れた体に鞭打ち、酔いざましとばかりにアルコールと共に買っておいたクリーチャーリアクターを口にする。
エナジードリンク特有の独特な甘さが体の怠さを僅かなりと癒し、アルコールで蕩けた脳に染み渡ると久しく起動すらしていなかった筐体に電源をいれるため立ち上がろうとして_______。
「……あれ?」
急激に足元が覚束なくなりそのまま倒れ込むと急激に睡魔が襲いかかってくる。
「……結局こうなるのかよ……」
そう呟くのを最後に普段と同じく疲れに身を任せ意識を闇に落とすのだった。
享年25才 急性アルコール中毒により死亡
それがこの男の短い今生の最後であった。
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