ソードディグアウター

ミゴノ助

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幼年期編

旗立ての呼吸 煽りの型

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「土塊よ、我が意の元に姿を変え人形ヒトガタを為せ、傀儡生成モデリング・ドール

 遠征の翌日、高くなりつつある太陽に照らされながら約束通りメイからゴーレムを創る魔法
 ―の前段階にあたる『傀儡生成モデリング・ドール』の魔法を習っていた。


 用意された粘土に向かい呪文を詠唱し、その名の通り人形をイメージしながら魔法を構築していく。
 そうして集中すること数十秒、二十センチ程のつちにんぎょうが出来上がる。

(HGサイズくらいの大きさなのに結構魔力を喰うな、それに……)

「坊っちゃま、また集中が甘くなっておりますよ。ほら、そこです」

 メイにつつかれるとたちまち皹割れはじめ、たちまち元の土塊に還ってしまう。

「……っあぁ!キツいなこれ……」

 同時に集中していた糸が途切れてしまい、弱音を吐きながらヘナヘナとその場にへたりこんでしまう。

「こ、ここまで難しいなんて」

「坊っちゃまが望んだのでございますよ?」

 魔法の代名詞とも言えるゴーレムを創る魔法はその前段階でさえとんでもない量の魔力を要し、かつ繊細な操作を求められる。

(これ、メイが怪訝な顔をするわけだよ。難易度が半端じゃない。なんで普及してないと思ったらこういうことか……)

 何処かの影武者アーティストの言葉ではないが指先一つで何十キロの重りをつけながら針の穴を通すような精密さの要求水準に脳が沸騰してくる。

「う……ふぅ……」

「坊っちゃま!」

 頭と魔力を酷使したせいか熱中症になったように額を押さえると不意に足の力が抜け、後ろからメイに支えられる。

「あ、ありがとメイ」

「やはり、この魔法は坊っちゃまには早すぎるようです。少し休憩しましょう」

 その言葉に甘えてフラフラと木陰へと移動すると自然な動作でメイが膝枕をしてくれる。



 水魔法でハンカチを濡らして目元に乗せられると強ばった神経が冷たさで解れていくのを感じる。


「ふぅ……」


 木陰の涼しさに加え、後頭部に感じるメイの太腿の軟かい感触と僅かに鼻腔をくすぐる甘い薫りが体の芯から疲れを取ってくれる気がして無意識のうちに声が漏れる。

(あ、なんか良い匂いがする。前世含めるとアラサーなんだけど初めてこんなに女っ気を感じたのはどうなんだか)

 中高と男子校、大学はサークルと授業でこそ女子はいたものの趣味に走りすぎて男友達しかつくれずすごして社会に出てからは仕事に忙殺され寝に帰るだけの生活。
 そんな無味乾燥な毎日だったのが自棄酒の果てに嫌な奴はいるものほメイドさんにお世話してもらって、そのうえ魔法まで使えるようになった。
 修行はスパルタで厳しいが上達も肌で感じられ


(でも流石にやり過ぎたな。今日は天気も良いしすこし休んでも)

 うとうとと微睡みに落ちそうになったその瞬間____。

「よぉ。こんなところでメイドに膝枕とはいい御身分じゃないか」

 今生で一番聞きたくない奴の声が木陰に不法侵入し、反射的に飛び起きる羽目になった。

「ビー、うわっ?!」

「坊っちゃま……!」

 耳につんざく不快感に追いたてられて上体を起こしたせいで膝枕をしてくれていたメイの胸部装甲に頭を掠めてしまいお互いに気まずい空気が漂い始める。


「ご、ゴメンっメイ!」

「お前は何をやっているんだ?」

 コントのような出来事と思わず漏れ零れたビートの呟きで一気に雰囲気が台無しとなってしまう。





「ン!っンン!!まぁいい。リドル、お前最近調子いいそうじゃないか?ええ?」

 わざとらしい咳払いで無理矢理話を本筋に戻すとビートは脈略も薄く凄み始める。

「いえ、まだまだ兄上の足下にも及ばない未熟者ですよ」

 一応、形式上は、腹違いとはいえ兄なのでへりくだった物言いで返すとビートはフンッ、と鼻を鳴らし傲岸不遜に言い放つ。 

「そう身構えるなよ。どの辺りが未熟なのかこの不出来な兄に教えて欲しいだけなのだか、らっ!」

 慇懃な仕草でかぶりを切ると不意に懐から何かを顔に投げつけられる。

「っ!何をし……」

「坊っちゃま!いけません!!」

 反射的に顔に貼りついたモノを取ろうと手を伸ばすとメイから制止の声が上がる。

「拾ったな。これで成立だ」

 ビートの勝ち誇ったようなを聞きながら手のなかのモノを見てみる。

「手袋?」

 何故手袋を投げて来たのか困惑するとメイがそっと耳打ちしてくる。

(坊っちゃま、これは決闘の申し込みです)

(え?嘘、でしょこんなので?断れないの)

 ビートに隙を見せないようにこちらも小声で返す。
(無理です。正式の決闘の申し込みですし坊っちゃまは手袋を拾ってしまわれたので……)

 一先ず穏便に拒否できないか訪ねるが返ってきたのは無情だった。

「そう、慌てるなよ。何もお互い死ぬまで戦おうという訳じゃないさ、ちょっと稽古をつけてやろうと思ってな」

 いけしゃあしゃあと決闘で逃げられないようにしておきながら稽古に託つけたタコ殴り宣言をする。

「時間は明日の正午、練兵場でだ。父上達には了承をつけてあるから逃げるんじゃないぞ」

 一方的にそう告げると最早此処に用はないと言わんばかりに足早に立ち去っていく。


「……」



「……」






「「……はぁ……」」


 残された俺達は顔を見合せ、お互いにため息をつく。


「ねぇ、兄上って暇なの?」

「いえ、あれは恐らく近頃の坊っちゃまの御活躍に嫉妬なされているでしょう」

 メイと二人して愚痴りあい、不満をはきだしあうとこの後の事について話し合う。

「そもそも決闘ってどういう感じのモノなの?」

 自分の知っている決闘のルールは西武劇の早打ちか某魔法使い宜しくお辞儀して切り合うぐらいしか知らないため、素直にメイに質問してみる。

「基本的には立会人のもとで行われる一騎打ちですね。誇りと名誉を重んじ自らの力のみで戦う事を良しとするものでビート様が申し込まれたのはで闘う様式のものです」

「その口振りだと魔法や小道具は使っちゃいけないってこと?」
 メイの口振りから小細工は使ってはいけないのだと察せる。
 恐らくビート屑兄はこれを狙っている。
「はい、これは最近の騎士道精神を重んずる貴族の間で流行しているものです。私達から見れば生温いことこの上無いルールでございますがビート様はこれを得意とされております」

 魔法と小細工抜きの正面対決なら負けることはないと考えて逃げ道を封じた上で得意分野の勝負に持ち込んだのだと思うが……。

(搦め手なし、か……。一応習ったのは殺意の高い古武術みたいな実戦向きの技ばかりだし、制圧用の方はアイツとの体格差を考えるとかからないかもしれないしどうしたものか)

 そこまで考えた時、ふと頭に過るものがあった。

「メイ、魔法禁止の範囲って何処まで?聖剣は大丈夫だよね」

「禁止の範囲ですか?私もそこまで詳しいわけではありませんが直前に魔法や薬物を使っていないか確かめると聞きます。聖剣についてはビート様も使うでしょうから問題はないかと……あぁそういうことですか」

 説明していくうちに考えが回ったようでメイも納得の様子を見せる。

 前世での知識に加えて母上鬼軍曹からの扱きと格闘の技術を叩き込まれたため、ある程度の躊躇(目潰し急所狙い等)を捨てれば勝つことはできると思うがそれでは外聞が悪い。
 そこで思い付いたことがあったが、何処までやっていいかわからないので魔法の練習を切り上げて二人して母上の元に向かうのだった。


















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