グールムーンワールド

神坂 セイ

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CHAPTER Ⅲ

第136話 北部奪還戦争⑥

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「では、誰か穴を掘れ!」

 行動目標が決まると、千城が指示を飛ばした。

(あ、結局そうなるのね)

「相変わらず人任せだな……。隊長! あっちは地面が剥き出しの場所があります! 移動しましょう!」   

「うむ!」

 御美苗はさすがと言うかすぐさま千城の指示に対応した。
 今オレたちのいる場所はコンクリートの瓦礫が大量にあり、魔術でも穴を掘るのは難しいようだ。
 少し先に土が見えている開けた場所があったので、そこでユウナと天沢が早速魔素を練り始めた。

三重帝級土岩槍トライテラストーンランス!!」

 ユウナが魔術を唱えると、地面がベコンとへこみ、そのままなだらかな穴が開いていった。

「おお!凄い!」

「あ、ありがとうございます。佐々木さん」

「では、私が水冷魔術を。二重帝級水冷散弾ダイテラアイスショット!!」

 今度は天沢が氷結の魔術を唱え、見た感じ凍りついたがっしりとした洞穴が出来上がった。

「うむ! では安城! 剣を巨大化して支えを頼むぞ!」

「はいはい、分かりました、よ!」

 アオイが魔素を込めた剣は、半径2メートル程の洞穴の上下に突き刺さった。

「よし、行くぞ!」

 千城は先陣を切って迷いなく穴の中へと入っていった。

(ほんと、行動力は凄いよな……)

 ユウナの魔術は一発でだいたい30メートル程の長さの穴を開けられるらしい。アオイが剣でつっかえ棒を作りながら少し進んだ所で行き止まりとなった。

「うむ! では次はどっちだ! 御美苗!」

「え? オレですか?」

 御美苗がなんでオレに聞くんだという反応をした。

「当たり前だ! お前はそういう能力が有るだろう!」

「いや、別にそんなものは……」

「なんだ気付いてないのか? お前は空間識別能力者だぞ! 第6感覚持ちだろう!」

「……」

 御美苗は驚いている。

(え?御美苗さんが?初めて聞いたぞ)

「あの、空間識別能力ってどんなものなんですか?」

 御美苗班の北岡が千城に質問した。

「空間識別能力は一言で言うと方向感覚が以上にいい! こう言った土中、もしくは水中、空中で的確に目的とする場所、方向を肌で感じとることができる! 御美苗が投擲攻撃が得意なのもその能力のお陰だ!」

「なるほど。確かにコウは……」

 そう相づちを打つのは阪本だ。

「地下通路の場所を感じとれ! お前ならできる!」

(そういう第6感覚もあるのか……? どうでもいいけど千城さんの声がでかくてうるさいな……)

「それと、柊、佐々木も御美苗を補助しろ!」

「え?」

「お前達は自分で分かっているだろう! 強化聴覚で何か反響音でも感じとれ!」

「……私は千城隊長に強化聴覚持ちだとは話したことはありませんが……、何故知っているんですか?」

 柊は不思議そうに千城に聞いた。この感じだと、強化聴力持ちだとは部隊の個人資料にも明かしていないのだろう。

「知らん! 勘だ!」

「柊さん、これも千城さんの第6感覚ですよ、急ぎましょう」

「罪深いあなたには何も言われたくないわ」

「そ、そうですか……」

 オレと柊が少し話しをしていると、御美苗が少し左前方を指指した。

「こっちです。確かに分かります……」

「うむ! 柊、佐々木! どうだ!?」

「いや、正直分かりません。何も聞こえません」

 オレは正直に答えた。

「私も。多分まだ遠すぎるのだと思いますが」

「では仕方ない向こうにもう少し深く穴を掘るぞ! 月城!」

「は、はい。三重帝級土岩槍トライテラストーンランス!」

 オレたちは同じようにしてさらに数十メートルを進んだ。もうすでに穴の中は真っ暗なので北岡と須田が灯りの魔術を使っている。

 さっきと違うのは、行き止まりの少し向こうからカラカラと石か何かが転がる音がしたことだ。

「聞こえます! この先に空洞があるみたいです!」

「私も聞こえます。佐々木くんと同じ意見と言うのが癪にさわるけど。確かに」

(それは別に言わなくてもいいんじゃ……)

「よし! 進むぞ!」

 千城は柊の小言は無視して掘削の指示を出した。

 ユウナが再度穴を掘ると、広い空間に繋がった。これが地下鉄が走っていた線路だろう。

「やった。さすが御美苗さん!」

「いや、オレも驚きだよ」

「うむ! では新センダイ都市の防壁はどっちだ?」

「こっちです!」

 穴を掘り進めて地下道に出たが、どっちに進めば都市に行けるのかは正直もう分からない。

 オレたちは御美苗の誘導で地下鉄を進むが、至るところが落盤して通路が一部埋まったり、全く進めなかったりしていた。

何度か程そう言った場所から横穴、時には上に穴を掘り、とうとう都市の防壁の真下くらいだと言う場所までたどり着いた。
 もう自分たちがどこをどう進んでどこにいるのかは分からなくなっていた。

「この上が防壁です」

(凄いな、なんで分かるんだ?)

「うむ! では、佐々木! S級を感知しろ!」 

「は、はい」

 オレは意識を集中して敵を探った。確かに真上に大量のグールがいるようだが、S級の反応は見つからなかった。

「ぐぐぐ、ど、どこだ?」

 さらに辺りの気配を探ると、とうとうS級の気配を探知することが出来た。
 かなり魔素を消費しているも感じる。

「み、見つけた! 壁の上だ! 防壁の上に微弱なS級の反応があります!」

「いたか! では距離は? 方向は指で示せ!」

「は、はい。こっちの方向に、およそ120!」

「うむ。では、今回はスピード勝負だ。縦穴を掘り、一気に防壁を昇る。そして御美苗、柊、結城、オレで飛翔して敵を葬る。他の隊員は縦穴を出たら周囲の敵を迎撃。安城、天沢、佐々木は消耗が激しいようだ。阪本、北岡、須田。湊、長谷川で迎撃に当たれ」

 千城はオレたちに的確な指示を出す。いつもながらだが、この指示は感覚だけで決めているのからすごい。

「了解です」

「では、掛かるぞ。刻々と状況は悪化している!」

 千城の号令にユウナが斜め上方向に穴を掘り、また同じように天沢とアオイが洞穴を補強した。

「よし! 飛び出すぞ! 月城!」

「はい!帝級土岩槍テラストーンランス!!」

 ユウナが斜め上方向に向かい、三度目の魔術を使うとベコンと穴が開き、日の光が入った。その瞬間、千城は上空へと飛び出した。続けてセイヤ、御美苗、柊も穴から飛び出して行った。

(セイヤ! 頼んだ!)

 オレたちも急いで穴から地上へと這い出た。この辺りはもう防壁の内側だ。
 防壁の外側には大量のグールがいるのが分かっていたが、内側はまばらだ。だいたい数十体ほどのグールしかいない。
 だが、A級やB級のグール達がオレたちに気付き、突進してきた。

「ここはオレたちに任せて下さい!」

 柊班の長谷川がそう言うと、湊と共にグールの迎撃を始めた。もちろん御美苗班の阪本、北岡、須田も周囲のグールに激しい攻撃を開始した。

(お、オレも何かしたいけどさっきの魔素感知で疲労が……)

ぞくり 

 オレはここで壁の上にいるS級が迷彩を解いたことを感知した。千城達の攻撃も始まったのだろう。これで阿倍野達からも敵の姿は見えたはずだ。

 少しして、オレたちの周りのグールは取り敢えず殲滅することができた。後は上のS級を倒せば討伐軍と阿倍野の動きを取り戻せる。

 オレが上を見上げると、みんなの激しい戦闘を感じ取れた。しばらくすると、とうとうS級の気配が消えた。

(やった! みんながS級を倒したんだ!)

 オレが内心喜んでいると、上から千城達が戻ってきた。セイヤ、御美苗、柊も無事だが、少し傷は負ってしまったようだ。
 S級グールとは言え、さすがにS級隊員と3人のAA級隊員が相手ではひとたまりもなかったのだろう。

「少し手こずったな! だが、S級は討伐した! ここから反撃開始だ!」
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