俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨

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1章 魔法少女とは出逢わない

1章72 火の粉は舞い、戦火は広がり、震える魂は ③

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 美景台の住宅街。


 ふくよかな中年女性が三人の子供を連れて必死に走っていた。


「――あぁ……っ⁉」


 子供の内の一人が転んでしまう。


「あらヤダよ⁉」


 オバチャンは慌てて子供に駆け寄った。


「ちょっとアンタ大丈夫かい⁉ すぐに立つんだよ……!」

「う、うぇぇ……、ボクもう走れないよぉ……」

「男が泣くんじゃないよ!」


 叱咤激励を飛ばしつつも、内心ではオバチャンももう厳しいかとも感じていた。オバチャンはチラリと目線を動かして他の子供たちの様子も確認する。

 ここまで結構な時間と距離を走って化け物たちから逃げてきた。子供の体力ではこれ以上はもう走れないだろう。


「なんてこったい……」


 思わず嘆きが漏れるが、だからといって子供たちを見捨てるわけにもいかないし、諦めるわけにもいかない。

 だが――


「――う、うわぁっ⁉ オバチャン! ゾンビがぁ……っ!」

「なんだい⁉」


 子供の叫びに反応して前を見ると、もうすぐそこまで追手が迫っていた。


「くっ……!」


 悔しそうに呻いてオバチャンは子供たちをその豊満すぎる肉体の背後に匿う。


「アンタたちここはオバチャンに任せて逃げな!」

「で、でも……」


 そうして逡巡している内にゾンビの一体が近づいた。


「あらヤダよ⁉」


 オバチャンは戦闘者ではない。

 義憤から子供を庇っているが、だがそこまでだ。

 迫り来る恐怖の前に身体を硬直させてしまう。

 このままでは襲われるのを待つばかりだ。


 しかし――


 ニュッと。


 オバチャンのふとましい身体の脇から白スーツのボンタンが伸びる。

 クロコダイル柄のトンガった革靴の底がゾンビの腹に叩きつけられた。


「な、なんだい……⁉」


 オバチャンは半ば茫然としながら、もんどりうって倒れるゾンビから背後へと視線を遣ると――


「どうもぉ~っ! 皐月組こうづきぐみですぅ~っ!」


 この近所を拠点にする暴力団、皐月組の構成員である辰のアニキがニカっと嗤った――




「――オバチャン! よ、よかったぁ……」


 その様子は遠く離れた美景港にもアスの魔法の映像で届いており、愛苗は安堵の息を漏らした。


「なんだあのニンゲンども……、まさか魔物とやろうってのか?」


 同じ映像がクルードの目にも映っており、不可解そうに不機嫌そうに眉間に皺が寄った。


 街の住人がグールの脅威に襲われる。

 それは一方的な蹂躙になるかと思われたが、どうやら違う状況が始まったようだ。

 その様子が映像に映し出されていく――





「――フォルァッ! フラァッ!」

「ワレェどこのシマで燥いでんじゃボキャア……ッ!」


 アニキが一発カマした瞬間後ろから飛び出してきた子分二人は、倒れたゾンビに威嚇の鳴き声を上げながらストンピングを繰り出す。

 子分たちの様子に満足気に頷いたアニキは、可能な限り爽やかそうにニカっとした笑みをカタギの方々へ向けた。


「どうもカタギのみなさん御機嫌よう。いつもお世話になっております、皐月組ですぅ。ところでみなさん何かお困りのことでも? そんな時はワシら皐月組にお任せを! どんなトラブルでも一回最低10万円から……、って、なんじゃい。後藤のオバハンかい」


 慣れた調子でペラペラと営業文句を述べようとしていたが途中で相手の正体に気付き、アニキは元の口調でオバチャンに話しかけた。


「タツぅっ! アンタ! こいつら何とかしておくれよ……っ!」


 どうも顔見知りのようでオバチャンは後続のゾンビたちを示してヤクザ者たちを頼る。


「アァン……?」


 アニキは眉間に皺を寄せて迫り来るゾンビ軍団を睨みつけた。


「なんやコイツら、小汚いのがうじゃうじゃと集まり寄ってからに……。オゥコラァッ! オドレらなんのマネじゃあ⁉ まさかウチにカチコミにきよったかダボがァッ⁉」


 すかさず威嚇の鳴き声をあげるがゾンビたちには通じない。

 ズリズリと足を引き摺りながら近づいてくる。


 子分のリュージがススっとアニキの横に控えた。


「アニキ! たぶん違うと思うぜ!」

「アァ? ほんじゃなんや? ルンペンの反乱か? コイツら革命でも起こそうっちゅうんかい?」

「い、いや、アニキそうじゃなくって、コイツらルンペンじゃ……」

「まぁええわ。オウ! オドレら出てこォ……ッ!」


 リュージの話を最後まで聞かず、早合点したアニキは塀の中へ怒鳴りつける。

 その塀の向こうは皐月組の屋敷、親分の自宅兼組の本部だ。


 アニキの声に呼応し、門を開けてガラの悪い男たちがゾロゾロと出てくる。


「おぅ、出番やぞクズどもォ……! 何の為にワシらカタギさん達からミカジメもろとるか、わぁーっとるな?」

「ヘイ、アニキィ!」

「何人かにシマを廻らせェ。他にも襲われてるカタギがおったら屋敷に避難させろや」

「ヘイッ!」


 アニキの指示に威勢のいい返事をして何組かの三人組スリーマンセルが町に散る。


「ガハハハハッ! 久々のデカイ喧嘩じゃあ! ブチくらわしたらァ……ッ!」

「アニキ! チャカ持ってきました!」

「馬鹿野郎ッ!」


 屋敷から拳銃を持ってきた子分がスッとそれを差し出してくると、アニキは子分を殴りつけた。


「喧嘩にそんなモン出すんじゃあねェよボケがァ!」

「アニキィ! これ、アニキのヤッパッス!」

「アホンダラァ!」


 今度は別の子分が刃物を差し出してきたが、やはりアニキは子分をぶん殴った。戦いが始まる前に二人の兵隊が白目を剥いて転がる。


「ドスもポン刀もいらんわァ! ワシを誰や思うとんのじゃァ! ステゴロじゃボケェ……ッ!」


 そして子分たちを置き去りに、辰のアニキは戦闘切ってゾンビの集団に走っていき、嬉々とした表情でいの一番に殴りかかった。



 こうしたゾンビたちとの接敵が起こっているのは下町の住宅街だけではない。

 県道沿いのホームセンター。

 ゾンビの群れに集られていた入り口の自動ドアのガラスがついに破られ、店内への侵入を許してしまった。


「イヤァーーッ⁉」


 客の避難を誘導していた若い女性店員が逃げ遅れ、腰を抜かしてしまう。

 そこへ一体のゾンビが迫る。


「しゃあ……ッ!」


 しかし、女性の前に一人の若者が飛び出し、ゾンビを殴りつけた。

 金の刺繍が入った黒のテカテカジャージに休日でもビッとキマったリーゼント。

 モッちゃんだ。


「オメェら入り口塞げッ!」

「「オォッ!」」


 モッちゃんの指示が飛ぶと二人の仲間がガラガラとショッピングカートを押して入り口に詰まるゾンビに体当たりした。

 その成果でゾンビたちは店の外へ転がる。

 僅かなその隙にカートやゴミ箱など、その辺にある物を手当たり次第搔き集めて入り口の閉鎖にかかった。


 完全に塞いだとは言い難いが、だがゾンビたちの侵入を遅らせることは出来そうだ。

 しかし、店内には侵入済みのゾンビがまだ数体居る。


「ネエちゃん立て! 逃げるぞ!」

「わ、わたし……腰が、ごめんなさ……」


 仲間たちが作った隙にモッちゃんは女性店員を非難させようとするが彼女は立ち上がれないようだ。

 手間取っている内に、ゾンビがもう一体襲いかかってきた。


「クソッ……!」


 モッちゃんは慌てて応戦しようとするが、そこへ増援が現れた。


「パラリラパラリラパラリラパラリラ……ッ!」


 なにやら奇怪な音声を自身の口で自演しながら、スーパーマンの飛行のような姿勢でショッピングカートに乗ったサトルくんだ。


「あいてっ!」


 ガシャーンっと大きな音を立ててゾンビを撥ねるとサトルくんも車体から転げ落ちて尻もちをつく。


「サトル! 助かったぜ!」

「いいってことよ、モッちゃん!」


 痛そうにお尻を押さえていたサトルくんだが、モッちゃんに礼を言われると照れ臭そうに鼻の下を人差し指で擦った。


「モッちゃん! ここはオレに任せてそのスケを!」

「サトル⁉」
「すけ……?」


 サトルくんは素早く立ち上がると、驚くモッちゃんと首を傾げる女性店員の前に立つ。

 そして懐から取り出したチャリチェーンをヒュンヒュンさせて、迫るゾンビたちを威嚇した。


「オラァ! テメェら“ダイコー”ナメてんのかァ! ヒキニクにしちまうぜェ⁉」


 当然そんな脅しは正気の心がないゾンビには通じない。

 ズリズリと近づくゾンビの顔面にサトルくんはチャリチェーンを叩きつけた。


 すると、グチュリと肉が崩れて頬骨が露わになる。

 サトルくんは真顔になりゾンビの崩れた顔を見てから、自分の手に持つチャリチェーンをジッと見た。

 チェーンにこびりついていた肉片がボトリと床に落ちる。

 サトルくんはパチパチと瞬きをしてからガターンと腰を抜かした。


「あばばばば……、ヤベェ、ヤベェよぉ……っ」

「オ、オイ、サトル!」

「モッちゃーん、オレ、人をヒキニクにしちまったよぉ……、オレってカンベツ入れられんのかなぁ……?」

「バ、バカ……! どう見たって人じゃねえだろ。コイツらはこないだのネズミと同じバケモンだよ……!」

「え? こないだ……?」

「うわああああっ⁉」


 サトルくんが首を傾げると入り口の方から悲鳴があがる。

 ゾンビの侵入を阻んでいた仲間たちだ。


 一度転がったゾンビたちが再び立ち上がって入り口に集まってくると、その数の差に押し合いは劣勢になっていた。


「こうしちゃいられねェ……!」


 モッちゃんは女性店員の肩に手を置いて目を合わせる。


「ネエちゃん!」

「は、はい……!」

「キチィかもしんねェけど、頑張って動いてくれ!」

「え?」


 若干頬を染めながら戸惑う女性店員にモッちゃんは伝える。


「ここはオレたちがシノぐ! その間に避難させた客の中から力ありそうな男を集めてくれねェか⁉」

「えっと、その、それでどうすれば……?」

「男ども使ってあっちのデッカイ商品棚をここに移動させろ! あれで入り口塞ぐぞ!」

「は、はい……!」

「あと車運転できるヤツも! この店って商品入れる時によ、トラック用の入り口あったろ⁉ こっちで引き付けてる間にそっから女子供を車に乗せて逃がすんだよ! 頼めるか⁉」

「わ、わかりました……っ! あの、あなたは……?」

「ヘッ――」


 女性店員の上目遣いにモッちゃんは得意げに笑い立ち上がる。

 そしてガバっと股を開くと45度の角度で女性店員を見下ろし、ポッケから出した櫛でビッとリーゼントをキメた。


「オレァ、“ダイコー”の二年! サガワっつーもんだ!」

「モッちゃんはこの辺シメてんだ! 覚えとけよな! ズべ公!」

「サトルくん、女性にそんなことを言うものじゃないよ。それより、頼んだぜネエちゃん!」

「は、はい!」



 女性店員はフラつきながらも走り出す。

 その背を見送るとサトルくんがスッと何かを差し出してきた。


「モッちゃん! イイモノあったぜ! ドーグだ!」

「これは……、鉄パイプか! でかしたぞサトル!」

「へへっ、さっき店の奥でパクったんだ」


 二人は鉄パイプをグッと握りしめる。


「おし、サトルはコイツらぶっ殺せ! オレは入り口のヤツらブチのめしてくる!」

「わかったぜ! モッちゃん!」


 そうして二人はゾンビに意気揚々とエモノを手に襲いかかった。






「――モッちゃんくん……、サトルッスくん、みんなも……っ!」


 決死の抵抗を始めた彼らの雄姿は愛苗の目にも届いていた。


「あのニンゲンたち、まさか魔物と正面から戦うつもりですか?」


 対照的にアスは不愉快さを表す。


「この街の連中は頭がおかしいんだ」


 無感情に喋りながら弥堂は別の映像へ眼を向ける。

 そこでもまた同じような光景が映されていた。





 一升瓶がゾンビの後頭部に叩きつけられてガラスが砕ける。


「ざけんなオラァッ! なにテメェうちのキャストに手ェ出してんだ! ボケがボケがボケがァ……ッ!」


 割れた酒瓶を投げ捨てて、倒れたゾンビの腹を蹴りまくっているのはぶちギレ華蓮さんだ。

 元ヤンのキャリアを活かした気合の入った蹴りをハイヒールでぶちこむ。


 すると――


「ア?」


――ぶちゅっと音を立てて高いヒールがゾンビの鳩尾に突き刺さる。

 恐る恐る足を引っこ抜くとぬちゅっとした粘液がヒールから垂れた。


「うっ……⁉ キ、キモチワリィ……っ」


 ドン引きした華蓮さんは若干冷静になり店内の様子を見る。


 すぐ近くではキャーキャー喚きながら、唐揚げ用の熱した油をオタマで掬ってゾンビにぶっかけるバニーさんがおり、それを居酒屋の店主が必死に止めていた。

 店の入り口はフロント係のマサルくんが懸命にテーブルで抑えているが、破られるのは時間の問題に見えた。それに窓や入口の隙間からどんどんとゾンビが侵入してくる。

 華蓮さんは親指の爪を噛んで思考する。


「数が多いわね……。黒瀬くん!」

「……仕方ありませんね」


 女王の声に従って動いたのは、こんな時でも表情を崩さないメガネマネージャーだ。


 黒瀬マネージャーはスーツの内ポケットから犬笛のような形状の笛を取り出しそれを吹く。

 ピュイーっと間抜けな音が鳴ったと同時――


「――ぶるぁああああああっ!」


 居酒屋の業務用冷凍庫を突き破って中から巨体が踊り出る。

 Club Void Pleasureのベテランキャストであり、敏腕マネージャー黒瀬の虎の子であるゴリ美さんだ。


「なんでウチの冷凍庫からゴリラが⁉」


 破壊された冷凍庫に頭を抱える店主を尻目にゴリ美さんは店内で暴れるゾンビに襲いかかる。

 その逞しい腕をブン回すと脆いゾンビの上半身と下半身は引き千切れた。


「――いまだっ!」


 ゴリ美さんが生み出したそのチャンスを逃さなかったのはエスコートバニーのマキさんだ。


 マキさんは入り口を抑えるマサルくんにサッと素早く近づくと、彼のズボンの後ろポッケからスマホをくすねる。

 そしてゾンビ集団にスススと近づき、先頭の中年ゾンビおじにそのスマホを渡した。


「あー……?」


 ゾンビおじは首を傾げてスマホの画面を見る。

 そこに表示されていたのはチャット画面だ。


 すると、その画面にポツ、ポツっと新規メッセージが増えていき、その着信速度は加速する。


「あー……⁉」


 秒速0.7件ほどの勢いで増えていく鬼メッセにゾンビおじは慄いた。


 そこに書かれているのは、『おきた』『美容院いった』『ネイルした』『ねむい』などのクッソどうでもいいメッセージだった。

 そこにもう一つ届く。


『なんで返事くれないの?』


 ゾンビおじは思わず画面から目線を逃がし顔を上げる。

 すると上げた目線の先、居酒屋のキッチンの入り口が目に入った。


 壁に骨ばった指がかかり、異常に伸びた爪がカリカリとそれを引っ掻く。

 暖簾の隙間から覗くギョロリとしたガン開きの目玉がゾンビおじを見つめていた。


 敏腕マネージャー黒瀬の懐刀である、特級呪物のメンヘラ“ホネ香”さんだ。


「なんでウチのキッチンに亡霊が⁉」


 再び店主が頭を抱えるのと同じタイミングで、最早正気の心などないはずのゾンビたちがズザザっとドン引きする。


「ゴアアアアアアァァァッ!」

「う、うわあぁぁあっ⁉」


 それを隙と見たゴリ美さんが両腕を広げてゾンビたちに強烈なタックルを仕掛ける。

 ブルドーザーのようにゾンビたちを引き摺り、入り口の壁をぶち壊しながら外へと押し出した。

 ついでに巻き添えを喰いそうになったマサルくんは泡を喰って脇に退避する。


「今です――っ!」


 黒瀬は素早くレーザーポインターを取り出すと、ホネ香さんの目ん玉に向けてカチカチと二回赤外線レーザーを照射した。


「なぁんで他のオンナとぉぉぉ……っ!」


 するとホネ香さんは狂ったような絶叫をあげて、ガッリガリの手足を蜘蛛のように動かし外へ飛び出して行く。


 そちらを見ようともせず、黒瀬は落ちていた割れた酒瓶を拾うと倒れて藻掻いているゾンビに近づいた。


「ふむ……」


 銀縁の眼鏡の奥で実験動物を見下ろすようにしながら、ゾンビの顔面を滅多刺しにする。

 すると、やがてゾンビは動かなくなった。


「なるほど……」

「う、うわぁ……」


 その結果に頷く黒瀬の残虐な所業にマキさんがドン引きする。


「マサル。ビア樽を」

「はいただいまー!」


 床に転がっていたマサルくんは条件反射で立ち上がり威勢よく返事をする。

 そしてバーカウンターの中に入ると繋がっていたホースを毟り取ってビア樽を持ってくる。


 黒瀬はそれを無言で受け取ると、他の倒れているゾンビの頭に叩き落し頭部を潰す。ゾンビはその一撃で動かなくなった。


「ふむ、頭を潰すと効率がよさそうですね」


 満足げに呟きながら黒瀬は店の外へ出る。

 表では子飼いの怪獣たちがゾンビの群れを相手に大暴れしていた。


 黒瀬は店の前に立ち、その様子を冷たい目で見る。

 ポケットから滅多に吸わない煙草を取り出し、口に一本咥えて火をつける。

「ふぅー」と重く煙を吐き出した。


「さて、お客様がた。ウチは基本的に“カケ”はやってないんですよ。不払いの会計分、キッチリと血を流してもらいましょうか」


 冷徹な瞳に飛び散る肉片を映した――






「――な、なんですかアレは? 式神……? それとも魔物? まさか在野の“退魔師エクソシスト”が……⁉」

「んなわけねえだろ」


 人外の活躍を見せるゴリ美さんとホネ香さんの映像にアスが驚愕の声をあげると、弥堂は呆れ気味に斬って捨てた。

 思い通りに事が進まなかったことで苛立つアスにさらに言葉を投げつける。


「人間なんてどいつもこいつもクソッタレだが、この街はとりわけクズが多い……」


 アスは横目で弥堂を睨む。


「人の姿をしたモノをオモクソぶん殴るのに一切の躊躇がない、そんなクズがな」


 無貌の瞳で事実を伝える弥堂へ、アスは嘲りを返す。


「フン、多少の抵抗が出来たところで所詮はニンゲン。グールの数はまだまだ多い。時間の問題なのは変わりません」

「確かに。『時間の問題』かもな」

「ほら。言っている間にさっそく圧されていますよ」


 そう言ってアスは得意げに住宅街の映像を指した。


 確かにそこには劣勢の人々の姿が映っている。

 人知れない場所で戦う弥堂や愛苗だけでなく、美景の地全体が人外のモノどもの襲撃により危機に陥っていた。
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