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1章 魔法少女とは出逢わない
1章78 弥堂 優輝 ②
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弥堂 優輝は普通の中学生だった――
東京都江東区で生まれて育ち、普通に善良で、普通に狡い時もあり、勉強も運動も普通の範疇――本当に普通のクソガキだった。
性格は気が弱く臆病で争いや揉め事が苦手で、そうならないように動く傾向があり逃げることもあった。
少し内向的だったので、自分を主張することが不得手だった。
家族構成は父、母、クソガキ、妹の四人家族。
ごく一般的な家庭だった。
いや、今でならわかるが、普通よりは恵まれていた家庭だった。
両親共働きで父は省庁務め、所謂官僚を目指すエリートだった。母も母で独立起業を目標に経営コンサルの会社に勤めていた。
だから裕福な家庭だったに違いない。
職業だけ聞くと夫婦ともに堅物でおっかさそうにも聴こえるだろうが、少なくともクソガキの記憶には、それに該当するような両親の姿はない。
父は野球が好きだった。
初戦で敗退したが甲子園にも出たことが一度だけあったようで、テレビやネットで試合を観戦するのが好きだった。
だから本当はクソガキにも野球をやって欲しかったのだと思うが、クソガキは別のスポーツをやりたがった。
父はほんの少し残念そうな顔をしたと思う。
だが次の日には二人分のグローブと小さなボールを仕舞い、二人分のシューズと大きなボールを買ってきてくれた。父とクソガキの分だ。
母は多分今でいうバリキャリというやつだったのかもしれない。
もう彼女本人から話を聞くことはできないのでわからないが、多分自分のキャリアというものに拘りがあったと思う。
だからクソガキと妹の出産は彼女のそのキャリアの足を引っ張ったことだろう。事実としてそうだと思う。
だが母はそんな素振りは全く見せなかった。
出産に必要な休みと転職のタイミングを上手く合わせて器用にステップアップしたのだと思う。
平日に試合があっても嫌な顏などせずに弁当を用意して送り迎えをし応援をしてくれた。
少し口煩いところもあったが母親などそんなものだろう。
たぶんクソガキの勉強の成績に彼女は不満を持っていたと思う。でも声や口調を荒げてなにかを強制するようなことはなかった。
それは母の性格的にそうだったのではなく、おそらく彼女の自制心でそうしていたのだと思う。
だから臆病なクソガキが母を恐がることなどなかった。
妹は大人しい子だった。
クソガキよりもさらに内向的で、怖がりで恥ずかしがりで引っ込み思案だったが、とても優しい子だった。
だが、そういうところが目を付けられやすかったのか、幼稚園の時に少しイジメの標的にされたことがあった。
イジメといっても世間で事件になるような過激なものや陰湿なものではなく、大人しい子にちょっかいをかけてふざけていたのが悪ノリになり始めたくらいの、小さなガキにはよくあるものだった。
当時小学生のクソガキはビビりながら必死に園児たちを威嚇して彼らをやっつけた。
今思い出すと、小学生が幼稚園児をイジメているだけにしか見えない絵面だし、非常に情けなく恥ずかしいと俺は感じる。
だが、クソガキにとっては、自分が妹を守ったという小さな誇りだった。
そんなわけで弥堂 優輝というクソガキは何の問題もなく、一つも落ち度もないような環境で暮らしていた。
父も母も間違いなくクソガキを愛してくれていて、それと同等の愛情を妹にも向けていた。
家族みんな仲が良く、疑う余地がないほど幸福だった。
だが、クソガキは自分の生活に不満を感じていた。
中学1年生の2学期頃の話だ。
クソガキは好きなスポーツに打ち込んでいた。
小学2年から始めて、中学になっても部活に入って続けていた。
始めた当初はボールを追っかけて友達と走り回っているだけで楽しかった。
それをしているだけで憧れの選手と同じことをしているつもりになれて、クソガキはとても満足していた。
その時のクソガキは比較的他の子供よりも背が高く足が速い方だったので、活躍を見込まれて毎回試合に出してもらっていた。
だが次の成長期に乗り遅れたのか、何年かする内に背も足の速さも他の子どもたちに追い抜かれていった。
そしてそれを覆す体力や技術があったわけでもないので、クソガキは段々と試合に出られなくなっていった。
中学生になったクソガキは多分今の水無瀬よりも小さくて、女の子にも女の子扱いされるような情けないヤツだった。
クソガキは、自分はそれが好きなのでそれを続けることは間違ってないと、半ば自分に言い聞かせるようにして部活に入る。
だが、夏休みを過ぎた頃には、中学からそのスポーツを始めた連中の中でセンスやフィジカルのある奴――そいつらにも敵わないと感じ始めていた。
だから、自分が思い描いた自分と、現実とのギャップに打ちのめされ始めた時期だったのだ。
それは別に誰にでもあることで、誰しもが通る道で、何も特別なことじゃない。
しかしそんなことはリアルタイムで本人にわかるものでもない。それも誰しもが経験することだ。
つまり、クソガキは自分には才能がないのではと感じ、そしてそのことによって出来上がっている現実というものに不満を感じていたのだ。
誰のせいでもなく全てクソガキのせいだ。
クソガキはそのスポーツが好きだった。
今の俺が記憶を視てみても「そうだ」と認めてやれるくらいには好きだった。
そして俺から視ても、クソガキなりには頑張っていたと思う。
だが、そんなものだろう。
クソガキはそれが好きだったが、生活の総てを、自分の総てをそれに捧げられるほどの狂気は無かった。
だから普通にそれ以外のこともするし、興味も向ける。
その頃のクソガキが好んでいたのは、一部のアニメ、漫画、小説だった。
一部というのは、全般的に広いジャンルを網羅するほどそれらが好きだったわけではなく、特定の一つのジャンルにハマッてそれらを観るようになったということだ。
当時の友達に借りてからハマったそのジャンルは所謂“異世界転生もの”というやつだ。
日本で何の取り柄もなくうだつの上がらないボンクラが、ある日突然大した理由もなく別の世界に飛ばされてしまったり、或いはその世界で生まれ変わったりして、新しい自分として生きていくという物語だ。
その際に大抵の場合『チート』と呼ばれる“加護”のようなチカラを得て、それは大抵比類なきチカラで、そしてそのチカラを使い好き放題に振舞って生きていくというのが殆どだった。
俺は“こう”なっちまってからは、過去にクソガキが見ていたそういったモノを、酷く下らないと唾棄していた。
だが、廻夜部長から必ず履修するようにと渡された作品の中には、過去にクソガキが好んでいた作品もかなり含まれていたので、作品としては優れていたのだと思う。
部長が薦めたのだからそれは間違いがないので認めなければならない。
当時、何の取り柄も無くうだつの上がらなかったクソガキは、自分がそのまま何の取り柄も無くうだつの上がらないボンクラなまま大人になってしまうのではと、不安と不満を抱えていた。
だからそういった作品の中で、自分と同じような主人公たちが活躍する姿を見るのは痛快なものがあったのだろう。
そして自分もそうなりたいと朧げに考え、自分がそうなった姿を想像したりもしていた。
もちろん本気じゃない。
クソガキはバカなガキだったが、ぼんやりとそう思っただけで、そんなことが現実にあるわけがないと、その程度の分別は持っていた。
だが、憧れはあった。
大好きな有名選手に憧れるのと一緒で、異世界でチートで無双して可愛い女の子たちや多くの大人にチヤホヤされる英雄に憧れた。
それは恥ずかしいことだが、事実なので認めなければならない。
そんな、不安や不満を抱きながらもクスリでもキメたみたいに浮かれ、『ここではない何処か』と『特別に為った自分』なんていう幻想を夢見ているバカなクソガキにある日出来事が起こる。
部活が終わった後の下校中、その帰り道――
いつもの帰り道を通りながら、お気に入りの禁呪について思いを馳せていたクソガキの目の前におかしなモノが突然顕れる。
住宅街の中にある何の変哲もない道路。
そのど真ん中の空間が裂けていた。自分の背より少し大きいくらいの裂け目。
門は無いが、ちょうどアスが杖を使って創り出したあの裂け目と似たようなモノだ。
当然ただの中学生であるクソガキには見覚えのないモノであるし、現実にありえるはずのないモノだ。
だがクソガキには既視感があった。
ちょうど昨晩に観たアニメにあったモノだからだ。
当然、だからといって、そのアニメと全く同じモノであるはずがない。
創作の物事が現実に起こり得るはずがない。
そして、もしも、“そう”だった場合に、何が起こるか、“その先”に何が在るのか――
クソガキはそれを知っていた。
だから、これは――
この一場面に於いては、他に誰も悪くはなく、あのイカレ女にすら責任を問うことは出来ない。
一から十まで総て俺の――クソガキのせいだ。
だが、仕方ないじゃないかと、思わず言い訳したくなる。
そんなことを言ったら多くの人に軽蔑されるだろうことがわかっていたとしても言いたくなる。
だって、この時、クソガキは『思い通りにならない現実』の解決を、『此処ではない何処か』の『違う自分』に求めていたのだから。
その時クソガキは、「止まってる状態ならお前の左足は中々いいな」と小学校時代のコーチに褒められた数少ない言葉を思い出した。
まず右足を浮かして前に置き、それから左足を浮かして“そのナカへ”突っこんだ。
自分の意思で道を踏み外したのだ。
さて、その結果どうなったかというと、もうわかるだろう。
だからといって、それで済ますわけにもいかない。
こんなことは非常に情けないことであるし、こんなことを告白するのは心底恥ずかしいことなのだが、自分と向き合うと決めた以上は絶対にこの事実は――自分の仕出かしたこの失敗は無視することは出来ない。
俺は――
日本で、日本人の両親の間に生まれ、なに不自由なく育ててもらっていたのに、中学一年生のある日、弥堂 優輝は異世界に召喚された。
ルビアのことを語った時に話したセラスフィリアの言葉。
売った者と買った者だけでなく、売られた者も同罪。
クソガキは自分で自分を売り飛ばしたのだ。
ダブルで有罪――本当終わってるぜ。
だが、異世界に飛び込む瞬間は大きな光に包まれていて、何もかもが眩んでしまいクソガキは胸を躍らせていた。
どこにでもいる普通の中学生は幻想の中へと消えた。
東京都江東区で生まれて育ち、普通に善良で、普通に狡い時もあり、勉強も運動も普通の範疇――本当に普通のクソガキだった。
性格は気が弱く臆病で争いや揉め事が苦手で、そうならないように動く傾向があり逃げることもあった。
少し内向的だったので、自分を主張することが不得手だった。
家族構成は父、母、クソガキ、妹の四人家族。
ごく一般的な家庭だった。
いや、今でならわかるが、普通よりは恵まれていた家庭だった。
両親共働きで父は省庁務め、所謂官僚を目指すエリートだった。母も母で独立起業を目標に経営コンサルの会社に勤めていた。
だから裕福な家庭だったに違いない。
職業だけ聞くと夫婦ともに堅物でおっかさそうにも聴こえるだろうが、少なくともクソガキの記憶には、それに該当するような両親の姿はない。
父は野球が好きだった。
初戦で敗退したが甲子園にも出たことが一度だけあったようで、テレビやネットで試合を観戦するのが好きだった。
だから本当はクソガキにも野球をやって欲しかったのだと思うが、クソガキは別のスポーツをやりたがった。
父はほんの少し残念そうな顔をしたと思う。
だが次の日には二人分のグローブと小さなボールを仕舞い、二人分のシューズと大きなボールを買ってきてくれた。父とクソガキの分だ。
母は多分今でいうバリキャリというやつだったのかもしれない。
もう彼女本人から話を聞くことはできないのでわからないが、多分自分のキャリアというものに拘りがあったと思う。
だからクソガキと妹の出産は彼女のそのキャリアの足を引っ張ったことだろう。事実としてそうだと思う。
だが母はそんな素振りは全く見せなかった。
出産に必要な休みと転職のタイミングを上手く合わせて器用にステップアップしたのだと思う。
平日に試合があっても嫌な顏などせずに弁当を用意して送り迎えをし応援をしてくれた。
少し口煩いところもあったが母親などそんなものだろう。
たぶんクソガキの勉強の成績に彼女は不満を持っていたと思う。でも声や口調を荒げてなにかを強制するようなことはなかった。
それは母の性格的にそうだったのではなく、おそらく彼女の自制心でそうしていたのだと思う。
だから臆病なクソガキが母を恐がることなどなかった。
妹は大人しい子だった。
クソガキよりもさらに内向的で、怖がりで恥ずかしがりで引っ込み思案だったが、とても優しい子だった。
だが、そういうところが目を付けられやすかったのか、幼稚園の時に少しイジメの標的にされたことがあった。
イジメといっても世間で事件になるような過激なものや陰湿なものではなく、大人しい子にちょっかいをかけてふざけていたのが悪ノリになり始めたくらいの、小さなガキにはよくあるものだった。
当時小学生のクソガキはビビりながら必死に園児たちを威嚇して彼らをやっつけた。
今思い出すと、小学生が幼稚園児をイジメているだけにしか見えない絵面だし、非常に情けなく恥ずかしいと俺は感じる。
だが、クソガキにとっては、自分が妹を守ったという小さな誇りだった。
そんなわけで弥堂 優輝というクソガキは何の問題もなく、一つも落ち度もないような環境で暮らしていた。
父も母も間違いなくクソガキを愛してくれていて、それと同等の愛情を妹にも向けていた。
家族みんな仲が良く、疑う余地がないほど幸福だった。
だが、クソガキは自分の生活に不満を感じていた。
中学1年生の2学期頃の話だ。
クソガキは好きなスポーツに打ち込んでいた。
小学2年から始めて、中学になっても部活に入って続けていた。
始めた当初はボールを追っかけて友達と走り回っているだけで楽しかった。
それをしているだけで憧れの選手と同じことをしているつもりになれて、クソガキはとても満足していた。
その時のクソガキは比較的他の子供よりも背が高く足が速い方だったので、活躍を見込まれて毎回試合に出してもらっていた。
だが次の成長期に乗り遅れたのか、何年かする内に背も足の速さも他の子どもたちに追い抜かれていった。
そしてそれを覆す体力や技術があったわけでもないので、クソガキは段々と試合に出られなくなっていった。
中学生になったクソガキは多分今の水無瀬よりも小さくて、女の子にも女の子扱いされるような情けないヤツだった。
クソガキは、自分はそれが好きなのでそれを続けることは間違ってないと、半ば自分に言い聞かせるようにして部活に入る。
だが、夏休みを過ぎた頃には、中学からそのスポーツを始めた連中の中でセンスやフィジカルのある奴――そいつらにも敵わないと感じ始めていた。
だから、自分が思い描いた自分と、現実とのギャップに打ちのめされ始めた時期だったのだ。
それは別に誰にでもあることで、誰しもが通る道で、何も特別なことじゃない。
しかしそんなことはリアルタイムで本人にわかるものでもない。それも誰しもが経験することだ。
つまり、クソガキは自分には才能がないのではと感じ、そしてそのことによって出来上がっている現実というものに不満を感じていたのだ。
誰のせいでもなく全てクソガキのせいだ。
クソガキはそのスポーツが好きだった。
今の俺が記憶を視てみても「そうだ」と認めてやれるくらいには好きだった。
そして俺から視ても、クソガキなりには頑張っていたと思う。
だが、そんなものだろう。
クソガキはそれが好きだったが、生活の総てを、自分の総てをそれに捧げられるほどの狂気は無かった。
だから普通にそれ以外のこともするし、興味も向ける。
その頃のクソガキが好んでいたのは、一部のアニメ、漫画、小説だった。
一部というのは、全般的に広いジャンルを網羅するほどそれらが好きだったわけではなく、特定の一つのジャンルにハマッてそれらを観るようになったということだ。
当時の友達に借りてからハマったそのジャンルは所謂“異世界転生もの”というやつだ。
日本で何の取り柄もなくうだつの上がらないボンクラが、ある日突然大した理由もなく別の世界に飛ばされてしまったり、或いはその世界で生まれ変わったりして、新しい自分として生きていくという物語だ。
その際に大抵の場合『チート』と呼ばれる“加護”のようなチカラを得て、それは大抵比類なきチカラで、そしてそのチカラを使い好き放題に振舞って生きていくというのが殆どだった。
俺は“こう”なっちまってからは、過去にクソガキが見ていたそういったモノを、酷く下らないと唾棄していた。
だが、廻夜部長から必ず履修するようにと渡された作品の中には、過去にクソガキが好んでいた作品もかなり含まれていたので、作品としては優れていたのだと思う。
部長が薦めたのだからそれは間違いがないので認めなければならない。
当時、何の取り柄も無くうだつの上がらなかったクソガキは、自分がそのまま何の取り柄も無くうだつの上がらないボンクラなまま大人になってしまうのではと、不安と不満を抱えていた。
だからそういった作品の中で、自分と同じような主人公たちが活躍する姿を見るのは痛快なものがあったのだろう。
そして自分もそうなりたいと朧げに考え、自分がそうなった姿を想像したりもしていた。
もちろん本気じゃない。
クソガキはバカなガキだったが、ぼんやりとそう思っただけで、そんなことが現実にあるわけがないと、その程度の分別は持っていた。
だが、憧れはあった。
大好きな有名選手に憧れるのと一緒で、異世界でチートで無双して可愛い女の子たちや多くの大人にチヤホヤされる英雄に憧れた。
それは恥ずかしいことだが、事実なので認めなければならない。
そんな、不安や不満を抱きながらもクスリでもキメたみたいに浮かれ、『ここではない何処か』と『特別に為った自分』なんていう幻想を夢見ているバカなクソガキにある日出来事が起こる。
部活が終わった後の下校中、その帰り道――
いつもの帰り道を通りながら、お気に入りの禁呪について思いを馳せていたクソガキの目の前におかしなモノが突然顕れる。
住宅街の中にある何の変哲もない道路。
そのど真ん中の空間が裂けていた。自分の背より少し大きいくらいの裂け目。
門は無いが、ちょうどアスが杖を使って創り出したあの裂け目と似たようなモノだ。
当然ただの中学生であるクソガキには見覚えのないモノであるし、現実にありえるはずのないモノだ。
だがクソガキには既視感があった。
ちょうど昨晩に観たアニメにあったモノだからだ。
当然、だからといって、そのアニメと全く同じモノであるはずがない。
創作の物事が現実に起こり得るはずがない。
そして、もしも、“そう”だった場合に、何が起こるか、“その先”に何が在るのか――
クソガキはそれを知っていた。
だから、これは――
この一場面に於いては、他に誰も悪くはなく、あのイカレ女にすら責任を問うことは出来ない。
一から十まで総て俺の――クソガキのせいだ。
だが、仕方ないじゃないかと、思わず言い訳したくなる。
そんなことを言ったら多くの人に軽蔑されるだろうことがわかっていたとしても言いたくなる。
だって、この時、クソガキは『思い通りにならない現実』の解決を、『此処ではない何処か』の『違う自分』に求めていたのだから。
その時クソガキは、「止まってる状態ならお前の左足は中々いいな」と小学校時代のコーチに褒められた数少ない言葉を思い出した。
まず右足を浮かして前に置き、それから左足を浮かして“そのナカへ”突っこんだ。
自分の意思で道を踏み外したのだ。
さて、その結果どうなったかというと、もうわかるだろう。
だからといって、それで済ますわけにもいかない。
こんなことは非常に情けないことであるし、こんなことを告白するのは心底恥ずかしいことなのだが、自分と向き合うと決めた以上は絶対にこの事実は――自分の仕出かしたこの失敗は無視することは出来ない。
俺は――
日本で、日本人の両親の間に生まれ、なに不自由なく育ててもらっていたのに、中学一年生のある日、弥堂 優輝は異世界に召喚された。
ルビアのことを語った時に話したセラスフィリアの言葉。
売った者と買った者だけでなく、売られた者も同罪。
クソガキは自分で自分を売り飛ばしたのだ。
ダブルで有罪――本当終わってるぜ。
だが、異世界に飛び込む瞬間は大きな光に包まれていて、何もかもが眩んでしまいクソガキは胸を躍らせていた。
どこにでもいる普通の中学生は幻想の中へと消えた。
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