俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨

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2章 バイト先で偶然出逢わない

2章18 WEAR CAT ②

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「――何故、福市博士がフォーカスされるのか。敵からも味方からも……」


 今回の仕事をする上で重要なそれを佐藤が語る。


「確かに弥堂君が言ったとおり、レシピは既にある。なのにそっちではなく博士が狙われるのは、実は単純な話なんだ。賢者の石アムリタは福市博士にしか作れない」

「どういう意味だ?」

「同じ素材、機材、手順でやっているはずなのに、彼女しか成功させられないんだ」

「何故だ?」

「それがわかってないんだよお。何故か彼女しか賢者の石アムリタを作れないんだ」


 妙な話だと弥堂だけじゃなく他の者も怪訝な顔をする。

 あまり興味がなかったが、ここで弥堂は一度肝心のブツについて聞いてみることにした。


賢者の石アムリタとはどういった形状のモノなんだ?」

「液体らしい。さっき説明を省いたけれど、生命力を活性化させる不老不死の薬擬きが賢者の石アムリタじゃない。正確に言うならそれのメインの原料となる成分を賢者の石アムリタと定義しているらしい。偶々最初にそれを調合して作ったのがガンの特効薬で、それが不老不死の薬の出来損ないになってしまったというわけだ」

「まるで他のモノにも使えるような言い方だな」

「当然それを模索するだろうね。というか既にしているはずだ」

「確認だが、その女でないと作れないのは原材料の賢者の石アムリタの方か? それともその後のモノか?」

「原材料の方だ。何かを作れたって話も聞いていないけど、原材料があればそれの転用は他の人間にも可能なようだね。だけど何を作るにしても――」

「――その女が居ないと原材料が用意出来ない。だから狙われる、か」

「そのとおりだよ」


 特定の個人にしか作れない世界中の権力者が欲しがるようなモノ。

 それが賢者の石アムリタ


 思っていたよりもロクでもない話だなと弥堂が眉を顰めるとウェアキャットが口を開く。


「ねぇ、博士にしか作れない。だから彼女は厳重に守られてる。それはわかったんだけどさ……」

「うん。なんだい?」

「そのことが敵にも漏れてるってことは……」

「既に内部にスパイが潜り込んでいるってことだ」

「そういうことだね」

「ス、スパイって……、当たり前のことみたいに言うんだね……」


 当然のことのように頷く弥堂と佐藤にウェアキャットは渇いた笑いを漏らす。


「ビビったなら今からでも下りろ」

「そ、そういうわけにはいかないよ……! こんな大きな仕事ボクだって逃さないから!」


 弥堂が横目を向けてそう言うと、ウェアキャットは取り繕ったように主張した。

 弥堂もそれ以上強く下りることを薦めたりはしない。

 彼の反応を見てどの程度“やれる”のか、その経験や実力などを測っただけだ。


 ウェアキャットのリアクションを見るに、この仕事は彼の想定以上にヤバイものだと感じているようだ。

 そして彼の“引き具合”から、こういった種類の争いごとへの経験は少ないと見抜く。


(能力とやらを頼みにしている素人か……)


 そのように一旦評価する。

 しかし、情報の漏洩に気づいた点から――


(――それなりに頭は回りそうだな)


――とも、評価する。


(だが、それにしても……)


 製法も製造の機材もあるのに、発明をした福市博士本人にしか原材料の調合が出来ない。

 そのことの説明が弥堂には思いつかなかった。

 それに、佐藤やなんなら博士が所属する専門的な研究機関にもその理由がわかっていない――そのことがどうにも不自然に思える。


 この世界の専門的で賢い者たちにわからないこと。

 一つだけ弥堂に思い当たることがあった。


(――“加護ライセンス”……?)


 弥堂が飛ばされた異世界でも、一部の特別な加護を持つ錬金術師にしか調合が出来ないモノなどがあった。

 それと似たような話なのではと考えるが――


(考えても無駄か)


――今ここで考えてもわからないし、博士本人に会ったとしても“加護ライセンス”を鑑定する手段もない。

 それなら考えるだけ無駄なことだと切り捨てた。


「続けてくれ」


 そして佐藤に発言権を戻す。

 弥堂とウェアキャットの理解を確かめて、佐藤は次の話に移った。


「じゃあ、この流れで次は“敵”について話そうか」

「えっと、他所の国が攻めてくるってことだっけ?」

「うーん、それはちょっと語弊があるね」


 この部屋に乱入してくる前に盗み聞きしていたと言っていたウェアキャットの認識を佐藤は苦笑いして訂正する。


「確かに日本やアメリカ以外の国が狙ってくると想定しているけど、なにも日本国内でそれらと戦争をしろって話じゃないよ。僕らのすることはあくまで護衛さ」

「……? なにか違うの?」

「中国やロシアなどが怪しいって言ったけれど、それらの正規軍が襲ってくるわけじゃあない。当たり前だけどね。そんなことしたら普通にオモテで戦争になってしまう」

「じゃあ襲ってくるのは?」

「うん。強奪に来るのは傭兵やテロリストなどの混合チームだろうね。全然関係ない国籍の人たちがいっぱい混ざった足のつかない実行部隊。仮にこれを潰しても犯人に依頼をした大元に罪や責任は問えない」

「な、なにそれ……」

「俺たちも同じだろ」

「え?」


 嫌悪感を滲ませたウェアキャットに弥堂が言うと、彼は唖然とした。


「お互い様なことだ。勝っても負けても困らない消耗品をぶつけ合う代理戦争のようなものだ。これはそういう話だぞ」

「…………」

「ちょっと言い方が過激だし、代理戦争って謂うと少々語弊があるけれど。でも、確かにそういう話だよ」

「でなければ、こんな場末の怪しい探偵事務所に持って来るような話じゃない」


 ウェアキャットが弥堂の言葉の真偽を視線で佐藤に問うと、彼も強くは否定しなかった。


「連中の招き入れや拠点の提供をしているのは外人街か?」

「そうだね」

「そいつらは何故協力している?」

「傭兵は単純にお金。テロリストたちは宗教絡みだね」


 弥堂と佐藤の話は進んでいく。


「宗教とは?」

「最初に話した仏教やヒンドゥー教。そこから派生したいくつかのカルト集団の参加が確認されている」

「確認とは?」

「元々はね、護衛の艦をデコイで沖縄に入れるつもりだったんだ。そういう風にリークもしていた。ほら? あそこって海外の人が侵入しやすいじゃない? 普段は大体は中国や韓国とかそっちの人たちばっかりなんだけど、リーク後は南や東南の方のアジア人種が増えた」

「そいつらを攫って吐かせたのか」

「慣れない土地でお困りのようだから事情をお聞きしたんだよお」

「それで? どんな宗教なんだ?」


 体裁を繕う佐藤の言葉など聞かずに弥堂は先を促す。

 苦笑いしながら佐藤は続けた。


「インド神話のアムリタって雑に話すと、神々が敵対する種族と一緒に作って完成した後に奪い合ってる不死の薬なんだよね。そんで手に入れて独占したのは神々の方だ。でも、それって敵対種族からしたら冗談じゃないよね? 作るのに協力したのにさ。つまり――」

「――その敵対種族とやらを信仰している集団ってことか?」

「そうだね。その敵対種族のことをアスラ族って言うんだけど、それを信仰している。さっき言った神々っていうのが“デーヴァ神族”、それと敵対するアスラも神族なんだよね。だけど悪魔のような存在として一般に広まっている。だから。これを言ったら本人たち怒るだろうけど、僕たち外野から見ると悪魔信仰みたいなもんだよね」

「だが、そいつらは自分たちの神にアムリタの所有権があると考えているんじゃないのか?」

「そう。彼らからしたらデーヴァ神族に騙し取られたようなもんだ。実際アムリタをデーヴァ神族に奪われた後も、盗もうとしたり色々やってたみたいだし」

「何千年前のことか知らんが、神を名乗るくせに迷惑な連中だな」

「まったくだよお」


 肩を竦める弥堂のジョークに佐藤も笑ってみせた。

 ウェアキャットは黙ってジッと聞いている。

 実感を追い付かせているのかもしれない。


「多分、アムリタって名前を付けたのがよくなかったんだろうね」

「あぁ、そういうことか。それなら仕方ないな」

「ん? それでわかるのかい?」


 弥堂の理解の速度に佐藤は片眉を上げる。


「アムリタは自分たちの神のもの。それを別の神の支配圏の人間が持つこと、または自分たちのアムリタとは別のアムリタが存在していること――教義上それは許されないし、許すわけにはいかない。だったらどうするか? 考えるまでもない。カルトってそんなもんだろ」

「ははっ、確かに。キミの言う通りだよ。詳しいんだね」

「昔ちょっとカルトにイジメられたことがあってね。詳しいってほどじゃない」

「へぇ、どこの神さまかな?」

「別に。どこにでも在る、どこにも居ない神さ」

「ふぅん……」


 細まった佐藤の瞼の奥の目に、興味の色が灯る。

 弥堂はそれを受け流した。


「ともかく、そのカルト集団を唆したのは中国だ。僕はそう見ている」

「だから外人街や沖縄か。関わってくるヤツが多くて面倒だな」

「そういうことだね。まぁ、勿論他人様のモノを奪いに来る連中が悪いのは間違いがないってのは大前提。だけど、アメリカもよくなかったよね。彼らも箔が欲しかったんだろうけど、未完の不死薬をアムリタだなんて……。ちょっとイキがっちゃったね」

「金がもらえるんなら、俺は誰が敵で誰が味方でも構わないさ」


 皮肉げに笑みを歪めた佐藤に弥堂は肩を竦めてみせた。


「ウェアキャット君。キミも大丈夫かな?」

「……うん。問題ないよ。続けて」


 すっかり黙ってしまっていた彼に佐藤が確認をとると、ウェアキャットは慎重に――だが強い意思を持って頷いた。


「相手は多国籍な傭兵――戦争のプロたちと、カルト集団。それらからアメリカと協力して福市博士と賢者の石アムリタを守る。ここまではいいね? それじゃ、次は僕たちのスタンスを説明するよ?」


 話がさらに進む。

 ふと気になって横目を向けてみると、御影所長が気絶しそうな顔色をしていた。

 弥堂がそれを無視して佐藤に目線を戻すと、隣からなにかジトっとした視線が刺されているような気がした。

 当然それも無視する。


「さんざ脅かすようなことを言ったけどね、僕たちはゲスト参加みたいなものなんだ」

「ゲスト?」

「そう。日本の中での事なのに、おかしな話だよね」


 皮肉げに笑う佐藤に弥堂は眉を顰めた。

 その表情を察して佐藤は詳しく話す。


「面倒なナワバリがあるのさ。元々はアメリカの特殊部隊――“G.H.O.S.Tゴースト”って言うんだけどね? ここの仕事だったのさ」

「ゴースト?」

「そう。まぁ、今回問題になってる“アムリタ”みたいな、ちょっと眉唾なモノを取り扱う専門機関だ」

「日本で謂う“お前たち”だな?」

「ふふふ」


 弥堂のカマかけに佐藤は不敵に笑うのみだ。


「今回その“G.H.O.S.Tゴースト”がガードに付いて米国を発った。護送は海軍の艦が担当した。その最中に襲撃を受けたわけだから海軍の面子もある。日本は今回場所を貸したり協力をしてあげている立場だけど、国同士の力関係を考えるとあちらを立てなければならない」

「うげ、メンドくさ……」

「大人は面倒なのさ。そして、それでも僕たちにも面子がある」


 嫌悪感を露わにするウェアキャットに苦笑いをしてから、佐藤は声に一層真剣みをのせた。


「本当は沖縄をデコイに横須賀に入って合流をするはずだった。それがこんなことになってしまったから博士と護衛は直接こっちに入ることになった。それに合わせて滞在先のスケジュールも急遽合わせる必要が出来た。その協力が日本政府に要請された」

「安全なヤサを用意するまで預かれって?」

「近いね。政府は要請を受けて、その実務が僕たちの組織に回ってきた。オジさんはその末端ってわけだよ」

「外交とか防衛の問題じゃないのか? 警察や自衛隊じゃなくお前らなのか?」

「警察や自衛隊も当然動くけど、ほら? 専門的な世界の話だからさ」

「……そっちが優先されるのか」


 想像していたパワーバランスとの乖離を修正する。

 京都とやらの関わりも気になったが、迂闊に聞いて藪蛇になることは避けた。


「博士たちは海上でこっちの用意した物に乗り換える。元の船と護衛のいくつかは予定通り沖縄へ。残りは横須賀。どっちも囮にして本命は日本で保護」

「それも漏れてないといいな」

「多分大丈夫だと思う。急遽こっちで用意したプランだから、それが漏れて対応してくるだけの時間が敵側にもないはずだよ。少なくとも日本に上陸をするまでは」

「そうか。問題はその後か」

「そういうこと。主要人物たちと護衛本隊は秘密裏に美景の新港に入って、用事を済ませてから横浜のドッグに向かう」

「わざわざダミーを向かわせた場所に近づくのか?」

「本当は横田基地から帰って欲しいんだけど、ほら? あそこは空軍だからさ」

「つまらないことに拘っている場合じゃないだろ――ってのも言うだけ無駄なんだろうな」

「そうそう」


 辟易としたものを感じるが、どこの世界でもそんなものかと割り切る。


「だからつまり、用事が終わって横浜のドッグに受け渡すまでのほんの一日か二日。その期間彼らは美景に滞在する。その間の護衛に僕たちも出向して協力をするってのが任務だ。ついでに場所まで提供する」

「頼りにされすぎてて冥利に尽きるな」

「まったくだよお。涙が出ちゃうね。本当ならそういうのに対応する僕たちの専門チームもあるんだけど、生憎タイミングが悪かった。悪すぎた。だから僕が方々のツテを使って、ここに外注しにきたってわけ」

「なるほどな」


 どこまでが本当かは怪しいが、それらしい背景のストーリーが弥堂にも見えてきた。


「だけど、基本的に“G.H.O.S.Tゴースト”さんは僕たちを戦力としては必要としていない。隠れ家さえ用意してくれればそれでいいって。だけど、僕たちとしても当然そうはいかないよね?」

「あー……、言う通りにして放置して、それで何かがあったら……」

「そうそう。その時はアメリカの政府側から責任を追及される。現場の僕たちも日本の政府のお偉いさんに怒られちゃう。だから、何も起きなかったとしても形上同行しないわけにもいかないんだよお」

「それも面子……、本当にメンドくさいんだね……」

「そうだね。でも、それだけでもないよ?」

「え?」


 小首を傾げるウェアキャットに佐藤は真摯さの感じられる声音でゆっくりと話す。


「福市博士は日本人だ。アメリカの大学で成果を出したのは悔しいけれど、それでも彼女の国籍は日本人のままだ。まぁ、今回の来日の目的に国籍変更の手続きも含まれてはいるんだけど、それでも今の彼女は日本人なんだ……」

「…………」

「アメリカさんと仕事をしている日本人の要人が、日本滞在中にその身に何かが起きる。そんなことは絶対にあってはならない。オマケ扱いだけど、主力が居ないけど。それでも僕たちはやれることを全部やって全力で彼女を守らなければならない。本当に面倒くさいけどさ。その面倒くさいことを国民のためにやるのが公務員で、そしてオジさんは公務員だからね……」

「オジさん……」

「ふふ、キミは素直ないい子だね」


 佐藤の言葉に感じ入るウェアキャットに、佐藤はどこか照れ臭そうに苦笑いした。

 弥堂は興味なさそうに聞き流して何も言わなかった。


「さて、整理するよ。大目標は“福市博士”と賢者の石アムリタの無事を確保。どっちかしか選べないのなら博士を優先。絶対に許容できないのが、博士がテロリストどもに渡ること」

「ふむふむ……」

「さっきも言ったけど、アメリカの“G.H.O.S.Tゴースト”とのこの共同任務に成功したらプラス報酬。失敗しても手付金の返還はなし。そして成功しなかったとしても場合によってはボーナス有だ」

「うん、わかったよ」
「…………」


 契約書の存在しない契約が締結された。


 話は纏まったとウェアキャットや佐藤は肩の力を抜く。

 御影所長は床に膝を着いてソファの背もたれに額を押し付けていた。


 佐藤とウェアキャットの間で少し緩い会話が行われる。


「理想を言えば博士が日本に残ってくれて日本で成果を出してくれればいいんだけどねえ……」

「なにそれ」

「ほら、さっきも言ったけれど、ちょっと悔しいじゃない? ここのところ我が国は他国に後れをとりがちだし」

「わかんなくもないけど、でも言ってる場合じゃないし。まずは人命優先でしょ?」

「ははは、そのとおりだね。それに、国籍を盾にして博士と薬の所有権をアメリカ相手に主張したら大変なことになっちゃうからね。あくまで理想だよ。理想。妄想に近い夢物語さ」

「あははー……」


 捕らぬ何とかの皮算用とばかりにポンっと腹を打って笑う佐藤に、ウェアキャットは渇いた愛想笑いをした。

 佐藤はしばらく黙ったままの弥堂に声をかける。


「キミも大丈夫かな? 弥堂君」

「――確認だ」


 佐藤のその声に半ば被せる形で、弥堂は口を開いた。

 ジロリと佐藤の顏を視る。


「護衛対象は博士本人と薬の二点のみ。死守すべきは博士が敵に渡ること。間違いないな?」

「間違いないよ」

「依頼が失敗にならない条件は、博士を誰にも渡さないこと――そうだな?」

「…………」


 弥堂のその質問に横で聞いていたウェアキャットが首を傾げた。


「キミ同じこと繰り返し聞いてない? 成功しなくてもとか、さっき佐藤さんが全部言ってたじゃん。わかってないなら後でボクが教えてあげようか?」

「黙ってろ。わかっていないのはお前の方だ」

「はぁ? なんだよそれ」

「うるさい黙れ。それより答えろ佐藤」

「ふふ、キミの言う通りで間違いがないよ」

「そうか。了解した」


 ウェアキャットの親切心を弥堂が跳ねのけると、佐藤は深い笑みを見せた。

 弥堂はここで正式に仕事を受ける旨を発言する。


「ふふふ、キミは素直じゃない子だねえ」

「そんなことはない。それは酷い誤解だ」


 適当な答えを返しながら――


(――このタヌキめ)


――心中では吐き捨てる。


 どこの世界でも役人とはこんなものかと辟易ともした。


 だが、これは思ったよりも自分にとって都合のいい話になりそうだと期待も寄せる。

 この依頼は現在の自分たちにとって、状況を逆転できるチャンスであると弥堂は捉えていた。


 とはいえ、


(この男、やはり場慣れしてやがる……)


 決して侮りも油断もせぬよう改めて気を引き締めることにする。


 そうして脳裡で佐藤 一郎に関する警戒と評価を上げながら――


 どこか納得のいかない様子のウェアキャットを宥める佐藤をジッと視て、弥堂は次の話を待った。
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