とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第5話 寮対抗魔力腕比べ(後編)

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 そして次の日、大きな花火の合図と共に寮対抗魔力腕比べが中庭にて開催された。
 この日初めて私は、別の寮生をじっくりと見た。

 校舎内でもあまり別の寮生と会う事はなかったので、かなり新鮮であった。
 寮ごとにイメージカラーをどこかしらに身につけていたので、判別はしやすく、どの寮も他の寮をライバル視している雰囲気だった。
 それに、中庭には出店など出ていたり学院の女子もいたりと、お祭り見たいになっていた。

「何か思っていたより、お祭り感が強いな」
「そりゃね。女子も見てたりするし、自分が凄いと魅せられるとこだし、他にも商売もできてひと儲けする奴もいるから」
「おいクリス。あまり他の寮に近付くんじゃねぇぞ。あいつら、何すか分からないからな」

 トウマがアルジュの話を聞いて、少しお祭り感に浮かれている私を注意する。
 そこに見るからに暑苦し奴らがやって来る。

「よぉ、トウマ。聞いたぞ、今回はルークの奴がでないで、お前が出場するそうだな」
「げぇ、ダンデ…」
「まぁ、せいぜい笑いものにならない程度に頑張ってみるんだな。無理だろうと思うがな! あははははは」

 両腕を組み高笑いして、その場から赤い鉢巻きを巻いたダンデは、取り巻きたちと去って行った。

「おやおや、あの噂は本当だったんだな」

 次に現れたのは、黄色いカチューシャを付けセミロングの髪を後ろで三つ編みしている、カモメ寮のスバンとその取り巻きだった。

「次はスバンか。何のようだよ、試合前にお前も笑いに来たのか?」
「いえいえ。私は、貴方が女性用下着を着用していたのが、本当だったのだと知って笑いに来たのですよ」
「なぁっ!!」
「所詮、そのような下着を付けている所に、我々が負けるわけないだろう。あー後、お前の趣味はバラさずにしてやりますよ」

 スバンがトウマの耳元で何かを囁くと、トウマはその場で膝を付いてしまう。
 何か口から出ていく様な幻覚が、私には見えたので小さく合掌をした。
 更にそこへ、紫色に爪をデコレーションしている人物や現れる。

「おや、オオカミ寮の代表者は試合前にノックアウトしたのか?」
「何か陰気臭いと思ったら、スネーク寮のゲイネスじゃないか。やだやだ、臭いが移ったらたまらないよ」

 そういって、スバンたちはその場を立ち去った。

「ふん、お前の方が香水臭くてたまらいっての…ん? もしかして、君がオオカミ寮に新しく入った転入生か?」
「え…お、おう。クリスだ、よろしく」
「ふーん。あっそ。ヴァンの奴より技量が上だったそうだね。でも所詮ヴァンより上なだけだし、相手にもならないだろうから、せいぜいそこで膝付いている奴より頑張ってよ」

 ゲイネスは、私を見て鼻で笑うと、挨拶もせずにその場から立ち去った。
 その態度に少しカチンと来てしまい、絶対にあいつには負けないと後ろ姿を睨み返した。
 すると、まもなく寮対抗魔力腕比べが始まるとアナウンスが流れ、代表者が集まるように指示された。
 私は膝から崩れ落ちたトウマを引きずって、集合場所へと向かった。

 数分後には、中庭中央にて寮対抗魔力腕比べが始まった。
 3部門で各部門で1位には3点、2位には2点、3位なら1点、最下位は0点と振られ、3部門終了時合計点が高い寮の優勝だというルール説明がされた。
 初めは質量部門から始まった。
 
 内容は、魔力を溜められる装置に3分間で、どれだけ質の良い魔力が溜められるかの競技であった。
 うちの寮からは、ガウェンが出場した。
 結果は、惜しくも2位であり、1位はカモメ寮のスバンであった。
 ガウェンの魔力の質は4人中でトップではあったが、量がスバンより劣っていた為、僅差で負けてしまった。


 現在順位
 1位 エメル寮(カモメ寮)   3点
 2位 オービン寮(オオカミ寮) 2点
 3位 イルダ寮(スネーク寮)  1点
 4位 ダイモン寮(ライオン寮) 0点


 次の部門は、力部門であった。
 力部門では巨大な岩目掛けて、一番威力の高い魔法をぶつけどけだけ破壊できるかの競技であった。
 うちの寮は、すでに抜け殻に近いトウマが出場し、更に運悪く順番が最後になっていた。
 結果は言うまでもなく、最下位であった。
 トウマも何とか岩を砕く様な魔法を放つも、砕けずにヒビが入るのみで、周囲からは鼻で笑われたり、笑いをこらえる者もいた。

 ちなみにそれのほとんどが、うちの寮の仲間たちであり、トウマがかわいそうになった。
 もちろん1位は、ライオン寮のダンデであり、正拳付きで岩を木っ端微塵にして、会場を沸かした。
 本人はルークが参加していないからと、力を抜いていたと公言していた。


 現在順位
 1位 エメル寮(カモメ寮)   4点
 2位 イルダ寮(スネーク寮)  3点
 2位 ダイモン寮(ライオン寮) 3点
 4位 オービン寮(オオカミ寮) 2点


 そして、遂に最後の部門である技量部門の時間が迫っていた。

「このままじゃ、1位になれないぞ! お前にかかってるぞ、クリス!」
「お前ならやれるぞ! 俺の筋肉も応援しているからな!」
「筋肉はどうでもいいが、クリス俺の分も含めてあいつらに見せつけてやってくれ!」

 ライラックとリーガ、そして半べそのトウマが私にエールを送ってくれた。

「まぁ、気楽に楽しんできなよ。君の数値ならトウマみたいにはならないと思うからさ」
「アルジュの言う通り、ゲイネスにコテンパンにされても誰も文句は言わないよ」
「あ、ありがとう二人とも」

 クラス内ではトップの数値だっただけに、少し期待している人もいれば、最下位にならなければいいと言う奴もいた。
 だけでも私は、直前に私を馬鹿にしたゲイネスだけには、絶対に負けないと闘志を燃やしていた。
 1人で集合場所へ向かう途中に、ヴァンが待ち伏せをしていたのか出くわしてしまい、私は少したじろいだ。
 試合前に変な毒でも吐かれたら、面倒だなと思いつつ、何か用かと問いかけた。

「僕に勝って寮対抗戦に出るんだ、無様な姿をさらしたら君を潰すぞ」
「潰すって…もう脅迫では…」
「どう受け取ってくれても僕は構わない。僕に怯えて、退学してくれてもいいくらいだ」

 捨て台詞の様にすれ違いに言うと、そのまま立ち去ってしまった。
 あの言いぐさは好きにはなれないが、何となく彼なりの応援なんではないかと一瞬だけ思った。
 一瞬だけね。

 そして、技量部門の競技代表者が集まり、それぞれの正面に巨大な氷の塊が置かれた。
 どうやら試合内容は、氷の造形勝負になったようだ。
 内容はアルジュたちに聞いていた通り、前年と同様のものだった。

 一番繊細で、綺麗な氷の造形を作った者が評価されると説明され、スタートの合図が鳴る。
 ライオン寮とカモメ寮は、合図と共にすぐに作業に入った。
 ゲイネスは、その2人の代表者が四苦八苦して作っている姿を見て敵じゃないと思ったのか、私の方を次に見て来た。

「転入生は何を造るのかな?」

 少し挑発気味な発言だったので、私は逆に先に造って実力の差を見せてくれと言ってやった。
 するとゲイネスは、笑いながら挑発かと言われたので、私はそうだと言い返すと、いいだろうと呟いた。
 直後ゲイネスは、両手を氷の塊に向け魔力を流し始めると、氷がどんどんと削らて行く。
 そして、氷の塊が最後には薔薇の花束が造形された。
 薔薇は花びら一枚一枚、細かく造形されていた。
 周囲からは、驚きと声援の声が聞こえた。

「どうだい? これが、実力の差さだよ。転入生に、これを越えられる造形ができるかな?」

 ゲイネスの造形を見た、ライオン寮とカモメ寮の代表者は、戦意喪失していた。
 だが私は違った。

「なんだ、あんだけ凄いぞとか言ってた癖に、薔薇の花束だけか」
「何?」
「俺がもっと凄い造形を見せてやるよ」

 私は片手を氷の塊に向けて、目を閉じて魔力を流し始めた。
 造形する物のイメージと、魔力をその通りに動かすイメージを同時に行った。
 そして私が造形し終わった物を見て、ゲイネスは愕然としていた。

「ば、馬鹿な! こんなものを造形出来るだと!? あり得ない」

 周囲からは、唖然と驚きの声が聞こえていた。
 そう私が造形したものは、この学院を上空から見た模型だ。
 木の枝やタイルなど、細かい所まで再現したため評価者も驚いていた。
 その後、最終順位も決まり総合順位が発表された。


 最終順位
 1位 エメル寮(カモメ寮)   5点
 1位 オービン寮(オオカミ寮) 5点
 3位 イルダ寮(スネーク寮)  4点
 3位 ダイモン寮(ライオン寮) 4点


「あれ、同率だとどうなるんだ?」
「サドンデスでもやるんじゃないか?」

 各寮が最終順位で、ざわついていると学園長が、アナウンスで結果を伝えた。

「同率の場合は、特別ポイントを半分ずつにして配布とする。これにて、寮対抗魔力腕比べを終了とする」
「え~」

 カモメ寮とオオカミ寮の寮生がブーイングしている中、ゲイネスはその場で呆然としていた。
 私としては、魔力操作は昔から得意でやっていた事だから、少し本気でやりすぎたかもしれないと反省していた。
 ゲイネスの造形も普通からすると、物凄い技量が必要なものだと分かっていた。
 だけど、勝負事で馬鹿にされたことで、相手に敬意も払えず力を見せびらかす様に振る舞った事を、私は後悔していた。

 私はゲイネスに近付き、さっきは少し言い過ぎたと謝罪した。
 だが、ゲイネスは勝者に情けを掛けらたと思い激情する。

 次の瞬間、ゲイネスが造形した氷の薔薇の花束が崩れ出す。
 ゲイネスの感情が急に高ぶった事で、残った魔力が暴走し、氷の薔薇の花束が維持できず少し大きな氷の粒が私の頭部に向かって飛んで来た。

 突然の事に、私は対応する事が出来ず氷の粒が頭に数発直撃してしまい、その場で倒れて気を失ってしまった。
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