とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
117 / 564

第116話 お願い事

しおりを挟む
 ルークがぶつかってしまった相手は、オービン寮第3学年のヒビキ・スノークであった。

「ん? 確かお前は、オービンの弟……ルークだったか?」

 不機嫌な表情で睨むヒビキに対し、ルークは立ち上がりもう一度謝罪をする。

「はぁ~もういい。デートの邪魔だ、さっさと行け」

 ヒビキの隣には、妖艶の美女と言えるようなロングヘアーの女性がおり、ヒビキと腕を組んでいた。
「何、ヒビキの知り合い?」
「えぇ、学院の後輩です」
「へぇ~結構カッコいいのね。顔だちも良いし、体格も良いわね」

 と言って、その女性は髪を耳にかける動作をしながらルークとトウマを覗き込む様に顔を近寄せた。
 トウマは恥ずかしく思ったのか目線を外すが、ルークはうろたえる事無く「では、急いでいるんで」と言って、その場から離れ直ぐに黒いローブを来た奴らを追う。
 それを追いかける様に、トウマも一礼してから急いでルークを追った。

「え~もう行っちゃうの。残念」
「何で後輩に靡いちゃうのよ、メイナさん。俺があんなに口説いても靡かなかったのに」
「ごめんって、つい仕事の癖で」

 メイナと呼ばれる女性は、あざとい表情でヒビキに答えると軽くため息を漏らすヒビキ。

「急に仕事モードになるの止めて下さいよ。今日は、素のメイナさんとデートしてるんですから」
「そうだったね。ごめん、ごめん。でもヒビキも先輩なら、さっきみたいにあからさまに不機嫌な顔したらダメじゃない」
「いいですよ、俺は別に男に好かれたい訳じゃないんで。それより、早く次の所に行きますよ」

 ヒビキはメイナを優しくリードする様に歩き出すと、メイナはヒビキの腕にピタとくっ付いて歩いて行った。
 その頃、ルークたちは完全に黒いローブを来た奴らを見失っていた。

「ダメだ、全然見当たらない……どうするルーク」
「くそっ……」

 その場で考えだすルークに、トウマは一度学院に戻ってタツミ先生と合流すべきと提案をする。
 だが、すぐにはルークは頷かずに、どうにか黒いローブを来た奴らを追う事を考えていた。
 その真剣な表情を見たトウマは、ある事を思っていた。

「(ルークの奴、クリスの事が余程心配なんだな……確かに心配なのは分かるが、いつものルークならもう少し冷静に考えるはず。ここまで焦って行動はしないんだが……)」

 トウマは今まで付き合いから、友達と言う存在を無下にするような奴ではなかったが、ここまで深入りする様な事もなかった為、少し驚いたのと同時にクリスの存在がルークにとって大きいものなのだと改めて感じていた。
 するとトウマは、ひとまず話を聞かないルークに話を聞いてもらう為に両肩に手を置いて、意識を向けさせた。

「聞けルーク。確かにクリスは心配だが、このまま2人で追うよりタツミ先生や他の人に手伝って貰う方が、確実に見つかるはずだ。まだ奴らも、この街からは出てないだろうし。だからこそ、街から出る前に……あっ」
「?」

 突然トウマが何かを思い出したかの様に、話が止まる。
 そしてトウマはルークから手を離し、暫く考えた後口を開いた。

「ルーク! あるぞ、見失ったあいつらを追いかける手段が! ……あっ、でもちょっと大変と言うか、難しいかも……」
「え?」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「どう、なかなかいい所だったでしょ、メイナさん」
「そうね。来た事ない所だったし、凄く良かったわ。よく知ってるわねヒビキ」

 ヒビキとメイナは、カフェ・スイーツ店から出て楽し気に会話をしていた。

「いた! ヒビキ先輩!」

 そこに2人のデートを邪魔する様に、無粋な声が聞こえて来てヒビキは足を止め不機嫌な顔になる。
 そして振り返るとそこには、手を振って近づいて来るトウマとルークの姿があった。

「あら? さっきの後輩たちじゃない?」
「……うん、そうだね……」

 ヒビキはメイナにバレない様に、近づいて来るトウマたちを睨み目線で「デートの邪魔をするな!」と訴える。
 トウマは一瞬それに気付き足が止まるも、ルークはうろたえずヒビキの元へとずかずかと近付て行く。

「ヒビキ先輩、お願いが」
「嫌だ」

 ルークが話し終える前に、ヒビキは内容も聞かずに断る。
 その後も同じ様なやり取りが続き、2人は互いに睨む様に見つめ合う。

「ちょ、ちょっと待ってルーク。先に事情を話してからだろが」

 トウマが止めに入るも、2人は聞く耳を持たず互いに睨み合っていた。
 するとそれを隣で見ていたメイナが、話しに割り込んで来た。

「ほらヒビキ、後輩が頼って来てるのに先輩としてその態度はどうなの?」
「メイナさん。さすがにこればかりは、言う事は聞けないな。今はデート中なので、後輩たち話すよりもデートの方が優先度が高いんですよ」
「っ……そう言えばヒビキ先輩は、寮内では目立ちたがりで、女癖が悪いで有名でしたよね?」
「あ? 俺はこう見えても純愛だ。二股みてぇな事はしねぇ」
「そんなこと言って、いつも見かけると違う女性といるじゃないですか」

 その言葉にヒビキは耐え切れず、ルークの胸ぐらを掴む。

「てめぇにああだ、こうだ言われる筋合いはねぇんだよ。オービンの劣化野郎」
「っ!」

 ルークはヒビキの言葉にカチンと来て、ヒビキの胸ぐらを掴みかかるがすぐに手放した。
 するとルークは暫く黙った後、先程言った事を急に謝罪した。
 向かいかかって来ると思っていたヒビキは、あっけにとられルークの胸ぐらから手を離した。
 そのままルークは頭を下げたままお願い事を口にし始めた。

「ヒビキ先輩。デートをしている所本当に申し訳ありませんが、俺たちに貴方の力を貸してください」
「は? 俺の力だと?」

 ルークは一度顔を上げると次は、ヒビキのデート相手であるメイナに軽く頭を下げる。

「せっかく楽しんでいる所申し訳ありませんが、ヒビキ先輩を俺たちに貸してください」
「お、お前! メイナさんに何言ってやがる」

 ヒビキが頭を下げているルークに手を伸ばそうとすると、それをメイナが止めた。
 ルークの姿を見てメイナは何かを感じたのかヒビキの介入を止めたのだった。

「ヒビキの先約は私よ。今日の為にオシャレも予定を調整したりと色々したのに、はいどうぞと言うと思ってるの?」
「いいえ。ですから、お願いをしているのです。貴方が今独占しているヒビキ先輩を、俺たちに貸してください」
「嫌よ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...