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第197話 差し出された手
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私はバベッチから差し出された手をただ見つめていた。
バベッチの後方では、ティアとハンスが未だにもがいている姿があった。
それを見て私は一度瞳を閉じて、小さく深呼吸をし再び瞳を開けバベッチが差し出して来た手に、私の手を伸ばす。
そして私はバベッチの手を弾く様に振り払った。
「そんな手、掴むわけないでしょ」
バベッチは私のその行動に、ほとんど驚く事なくただ冷静に弾かれた手を見ていた。
すると突然小さく笑い出す。
「何がおかしいの?」
「いや、振り払ってくれて良かったなと思ってね」
「どう言う事?」
「俺が好きなリーリアは、あんな提案に乗る様な奴じゃないからさ。もし、手を取られていたら君を殺していたかもしれない」
そうバベッチは笑顔で語る姿に、私は少し寒気がした。
これは本当に私が知っているバベッチなのだろうか? こんな事を笑顔で言う事が出来た奴じゃないからこそ、こんなにも嫌な寒気がするのかもしれない。
「……私を試したと言うの?」
「そうだな、結果的にはそうかもね。でも、君が君のままで安心したよ。協力者を探していると言うのは本当だけどね」
「それで、これからどうするつもり? ハンスにティアも拘束して、この場で王国乗っ取りでも始めるの?」
その言葉に何故かバベッチは少し驚いた顔をしていた。
「そんな訳ないだろ。別に俺は今の国王を殺して乗っ取りたいわけじゃない。それに親友を殺す様な事はしないよ。2人はリーリアとの話を邪魔されたくないから、ああしてるだけだよ」
「なら、どうやって王国を乗っ取る気なの?」
「それは言えないな」
するとバベッチは、私に背を向けてティアとハンスの方を見て呟いた。
「そろそろ限界かな? 今日はここまでだね」
「バベッチ! 貴方をここから逃がす訳には行かない!」
私は背後を見せたバベッチを取り押さえようと手を伸ばすが、その手は空を掴んだ。
バベッチはその場で飛び上がり、ベランダの手すりに着地した。
「久しぶりに話せて良かったよリーリア。直接会いに来たかいがあったってもんだ」
そう言ってバベッチが指を鳴らすと、ティアとハンスを拘束していた奴らが一斉に2人を解放し、その場から一瞬で消えて行く。
「バベッチ!」
ハンスがそう叫ぶが、既にバベッチはベランダの手すりから後方へと倒れて行く所であった。
「次は、もっと近い立場で話しているかもね。それまでお別れだ。マイナにもよろしくね」
その直後バベッチは、完全にベランダから飛び降りて行った。
私は振り返ってそれを見届けるだけで、その場から動く事が出来なかった。
だが、そんな私の横をティアが走り抜けて行きベランダの下を覗き込み、バベッチの降りて行った方を確認すると振り返って来た。
「何をしているのリーリア! 追うのよ! ハンス!」
「分かってる!」
するとハンスは魔法を唱え、一足先にバベッチが飛び降りて行った方へと同じ様に飛び降りて行き追跡を始めた。
それと同時にハンスは、通信用魔道具を使い誰かへと通信をとり始めた。
私は直ぐに動けず、その場で固まっているとティアが近付いて来て腕を掴んで引き寄せて来た。
「しっかりしなさい。色々と考えるのは後よ、今はあのバベッチを追って捕らえる。ただそれだけを考えなさいリーリア」
「そうね……分かったわティア」
その後ティアは軽く頷くと、その場で魔法を唱えハンスの後を追いかけて行った。
私も同じ様に魔法を唱えて追いかけようとした時だった。
背後から夫である、エリックの気配を感じ振り返るとそこにはエリックの姿があった。
「あなた……」
私は発動した魔法を一度止めると、エリックは何も言わずに近付いて来た。
そしてエリックは私の肩に片手を置いて来て、口を開いた。
「何をしているだ、リーリア。私に構わず行きなさい。リーリアにとって大切な事なんじゃないのか?」
「はい……必ず戻ってきます!」
私はそれだけ言って、再度魔法を唱えてティアたちの後を追った。
残ったエリックはそのまま何も言わずにリーリアを見送った後、室内へと戻って行った。
「(やっぱり、追って来ますか)」
バベッチは、建物の屋根を走り移り飛びながら逃走していた。
だが、後方からハンスを始めティアにリーリアまで追跡して来ている事を知りバベッチは小さくため息をついた。
「(さて、このまま簡単に逃がしてくれそうにはない相手で困ったな)」
屋根伝いを走りつつバベッチは、下の方を見て人々が少なからず出歩いている事に目をつけ、そのまま下へと降りて行き人混みを縫う様に逃走し始めた。
「あいつ、下に降りたな。ティア、聞こえるか? バベッチは下の通りに降りて逃走を続けてる。俺はこのままあいつを追う。ティアたちは回り込んでくれ」
ハンスは腕に付けて通信用魔道具でティアと連絡をとる。
そのままハンスは屋根伝いにバベッチの追跡を行っていた。
「分かったわ。それとリーリアから、バベッチは分裂する魔法を使うそうよ。絶対にとは言わないけど、目を離さない様にねハンス」
「了解だ。それじゃ、そっちも頼むぞ」
「えぇ」
そこで通信は一度切れる。
ハンスはそのまま上から、下の通りを走るバベッチから目を離さず追跡していたが、バベッチが途中で細い路地に入って行くのを見て直ぐにハンスも下の通りへと降りて追跡を続けた。
ティアとリーリアは、ハンスの指示のもとバベッチを挟み撃ちにして捕らえる為、最短ルートで先へと回り込み始めるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「うっ~ん……少し食べ過ぎたかな?」
私は慰労会で出された食事を少し食べ過ぎたと感じ、一度慰労会会場から出てホテル前の道を気分転換に歩いていた。
「にしても、あんなにも色んな人と話せるのはいい催しだな。何と言うか、視野が広がる的な感じだ」
私は仲間たち以外にも、他の学院の生徒たちとも話せた事に凄く満足していた。
「よし、戻ったら代表選手たちにも話を聞いてみるかな。特に王女と戦った人から、あの時の事を詳しく聞いてみたいし」
そうして私が慰労会会場前の道を歩き、会場へと戻ろうとした時だった。
目の前から、突然誰かが走ってぶつかって来た。
「いっててぇ……誰だよ急にぶつかって来たのは……って、フェルト?」
「あったた……あ、クリスか。すまん慌てて」
「まぁ、怪我がなかったからいいけど。何でフェルトは外にいるの? こう言うのは先に居るもんだと思ってたけど」
「いや~ちょっと寮で仮眠してたら寝過ごしてね」
「ふ~ん。珍しい事もあるんだね。で、急いで来たってことか」
「そう言う事。で、良かったら会場まで案内して欲しんだけどいいかな?」
私はフェルトからの頼み事に、別に断る理由もなかったので引き受けて一緒にホテルへと戻り始めた。
すると私の目の前に突然、お母様が現れて私は驚いてしまう。
「お、お母様!?」
「クリス」
「リーリア、見つけた?」
「いいや。そうだ、クリス。ここにウェイターの服を着た人が来なかった?」
「いいえ。見ていませんけど」
私は一緒にいたフェルトの方を見るが、フェルトも見ていないので首を横に振った。
するとお母様の後方にいる人がお母様に話し掛けていたが、フードの様な物を被っていたので誰なのかは分からなかった。
「分かったわ。ありがとうクリス」
それだけ言うと、お母様は急いで何処かへともう1人の人と一緒に立ち去っていた。
何だったんだ? 誰か探しているようだけど? ウェイター? ん~よく分からないけど、今お母様を手伝えることはなさそうだよね。
「お~いクリス。何してんだ? 早く案内してくれ」
「あぁ、ごめん。今行くよ」
そのまま私は、フェルトを連れてホテルの慰労会会場へと案内するが、途中でフェルトが足を止めた。
「どうしたの?」
「あ~悪い。ニックに渡す物があったんだが、それを持ってくるの忘れてた。ここまで案内してもらって悪いが、一度寮に帰るわ」
「え、ちょっとフェルト?」
するとフェルトは、そのまま来た道を走って戻って行った。
私はその後ろ姿をただ少し口が開いた状態で見ていた。
な、何だったんだ……
そう私が呆然していると、ふと隣に誰かがやって来た。
「そんな所で何してるんだクリス?」
「いや、フェルトがさ」
「ん? 俺?」
「へ?」
その言葉に私は驚き真横を向くと、そこには先程別れたばかりのフェルトが立っていた。
「え? ええ? えー!? どど、どう言う事?」
「え? 何がだよ?」
「いやだって、フェルト今、え? 何でいるの?」
「何でって慰労会だからいるに決まってるだろ。急に何言ってんだ?」
私は今横にいるフェルトと先程走り去って行ったフェルトの方を、交互に見ていたが何が何だか分からず混乱していた。
どうなんってのよー! これ!?
バベッチの後方では、ティアとハンスが未だにもがいている姿があった。
それを見て私は一度瞳を閉じて、小さく深呼吸をし再び瞳を開けバベッチが差し出して来た手に、私の手を伸ばす。
そして私はバベッチの手を弾く様に振り払った。
「そんな手、掴むわけないでしょ」
バベッチは私のその行動に、ほとんど驚く事なくただ冷静に弾かれた手を見ていた。
すると突然小さく笑い出す。
「何がおかしいの?」
「いや、振り払ってくれて良かったなと思ってね」
「どう言う事?」
「俺が好きなリーリアは、あんな提案に乗る様な奴じゃないからさ。もし、手を取られていたら君を殺していたかもしれない」
そうバベッチは笑顔で語る姿に、私は少し寒気がした。
これは本当に私が知っているバベッチなのだろうか? こんな事を笑顔で言う事が出来た奴じゃないからこそ、こんなにも嫌な寒気がするのかもしれない。
「……私を試したと言うの?」
「そうだな、結果的にはそうかもね。でも、君が君のままで安心したよ。協力者を探していると言うのは本当だけどね」
「それで、これからどうするつもり? ハンスにティアも拘束して、この場で王国乗っ取りでも始めるの?」
その言葉に何故かバベッチは少し驚いた顔をしていた。
「そんな訳ないだろ。別に俺は今の国王を殺して乗っ取りたいわけじゃない。それに親友を殺す様な事はしないよ。2人はリーリアとの話を邪魔されたくないから、ああしてるだけだよ」
「なら、どうやって王国を乗っ取る気なの?」
「それは言えないな」
するとバベッチは、私に背を向けてティアとハンスの方を見て呟いた。
「そろそろ限界かな? 今日はここまでだね」
「バベッチ! 貴方をここから逃がす訳には行かない!」
私は背後を見せたバベッチを取り押さえようと手を伸ばすが、その手は空を掴んだ。
バベッチはその場で飛び上がり、ベランダの手すりに着地した。
「久しぶりに話せて良かったよリーリア。直接会いに来たかいがあったってもんだ」
そう言ってバベッチが指を鳴らすと、ティアとハンスを拘束していた奴らが一斉に2人を解放し、その場から一瞬で消えて行く。
「バベッチ!」
ハンスがそう叫ぶが、既にバベッチはベランダの手すりから後方へと倒れて行く所であった。
「次は、もっと近い立場で話しているかもね。それまでお別れだ。マイナにもよろしくね」
その直後バベッチは、完全にベランダから飛び降りて行った。
私は振り返ってそれを見届けるだけで、その場から動く事が出来なかった。
だが、そんな私の横をティアが走り抜けて行きベランダの下を覗き込み、バベッチの降りて行った方を確認すると振り返って来た。
「何をしているのリーリア! 追うのよ! ハンス!」
「分かってる!」
するとハンスは魔法を唱え、一足先にバベッチが飛び降りて行った方へと同じ様に飛び降りて行き追跡を始めた。
それと同時にハンスは、通信用魔道具を使い誰かへと通信をとり始めた。
私は直ぐに動けず、その場で固まっているとティアが近付いて来て腕を掴んで引き寄せて来た。
「しっかりしなさい。色々と考えるのは後よ、今はあのバベッチを追って捕らえる。ただそれだけを考えなさいリーリア」
「そうね……分かったわティア」
その後ティアは軽く頷くと、その場で魔法を唱えハンスの後を追いかけて行った。
私も同じ様に魔法を唱えて追いかけようとした時だった。
背後から夫である、エリックの気配を感じ振り返るとそこにはエリックの姿があった。
「あなた……」
私は発動した魔法を一度止めると、エリックは何も言わずに近付いて来た。
そしてエリックは私の肩に片手を置いて来て、口を開いた。
「何をしているだ、リーリア。私に構わず行きなさい。リーリアにとって大切な事なんじゃないのか?」
「はい……必ず戻ってきます!」
私はそれだけ言って、再度魔法を唱えてティアたちの後を追った。
残ったエリックはそのまま何も言わずにリーリアを見送った後、室内へと戻って行った。
「(やっぱり、追って来ますか)」
バベッチは、建物の屋根を走り移り飛びながら逃走していた。
だが、後方からハンスを始めティアにリーリアまで追跡して来ている事を知りバベッチは小さくため息をついた。
「(さて、このまま簡単に逃がしてくれそうにはない相手で困ったな)」
屋根伝いを走りつつバベッチは、下の方を見て人々が少なからず出歩いている事に目をつけ、そのまま下へと降りて行き人混みを縫う様に逃走し始めた。
「あいつ、下に降りたな。ティア、聞こえるか? バベッチは下の通りに降りて逃走を続けてる。俺はこのままあいつを追う。ティアたちは回り込んでくれ」
ハンスは腕に付けて通信用魔道具でティアと連絡をとる。
そのままハンスは屋根伝いにバベッチの追跡を行っていた。
「分かったわ。それとリーリアから、バベッチは分裂する魔法を使うそうよ。絶対にとは言わないけど、目を離さない様にねハンス」
「了解だ。それじゃ、そっちも頼むぞ」
「えぇ」
そこで通信は一度切れる。
ハンスはそのまま上から、下の通りを走るバベッチから目を離さず追跡していたが、バベッチが途中で細い路地に入って行くのを見て直ぐにハンスも下の通りへと降りて追跡を続けた。
ティアとリーリアは、ハンスの指示のもとバベッチを挟み撃ちにして捕らえる為、最短ルートで先へと回り込み始めるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「うっ~ん……少し食べ過ぎたかな?」
私は慰労会で出された食事を少し食べ過ぎたと感じ、一度慰労会会場から出てホテル前の道を気分転換に歩いていた。
「にしても、あんなにも色んな人と話せるのはいい催しだな。何と言うか、視野が広がる的な感じだ」
私は仲間たち以外にも、他の学院の生徒たちとも話せた事に凄く満足していた。
「よし、戻ったら代表選手たちにも話を聞いてみるかな。特に王女と戦った人から、あの時の事を詳しく聞いてみたいし」
そうして私が慰労会会場前の道を歩き、会場へと戻ろうとした時だった。
目の前から、突然誰かが走ってぶつかって来た。
「いっててぇ……誰だよ急にぶつかって来たのは……って、フェルト?」
「あったた……あ、クリスか。すまん慌てて」
「まぁ、怪我がなかったからいいけど。何でフェルトは外にいるの? こう言うのは先に居るもんだと思ってたけど」
「いや~ちょっと寮で仮眠してたら寝過ごしてね」
「ふ~ん。珍しい事もあるんだね。で、急いで来たってことか」
「そう言う事。で、良かったら会場まで案内して欲しんだけどいいかな?」
私はフェルトからの頼み事に、別に断る理由もなかったので引き受けて一緒にホテルへと戻り始めた。
すると私の目の前に突然、お母様が現れて私は驚いてしまう。
「お、お母様!?」
「クリス」
「リーリア、見つけた?」
「いいや。そうだ、クリス。ここにウェイターの服を着た人が来なかった?」
「いいえ。見ていませんけど」
私は一緒にいたフェルトの方を見るが、フェルトも見ていないので首を横に振った。
するとお母様の後方にいる人がお母様に話し掛けていたが、フードの様な物を被っていたので誰なのかは分からなかった。
「分かったわ。ありがとうクリス」
それだけ言うと、お母様は急いで何処かへともう1人の人と一緒に立ち去っていた。
何だったんだ? 誰か探しているようだけど? ウェイター? ん~よく分からないけど、今お母様を手伝えることはなさそうだよね。
「お~いクリス。何してんだ? 早く案内してくれ」
「あぁ、ごめん。今行くよ」
そのまま私は、フェルトを連れてホテルの慰労会会場へと案内するが、途中でフェルトが足を止めた。
「どうしたの?」
「あ~悪い。ニックに渡す物があったんだが、それを持ってくるの忘れてた。ここまで案内してもらって悪いが、一度寮に帰るわ」
「え、ちょっとフェルト?」
するとフェルトは、そのまま来た道を走って戻って行った。
私はその後ろ姿をただ少し口が開いた状態で見ていた。
な、何だったんだ……
そう私が呆然していると、ふと隣に誰かがやって来た。
「そんな所で何してるんだクリス?」
「いや、フェルトがさ」
「ん? 俺?」
「へ?」
その言葉に私は驚き真横を向くと、そこには先程別れたばかりのフェルトが立っていた。
「え? ええ? えー!? どど、どう言う事?」
「え? 何がだよ?」
「いやだって、フェルト今、え? 何でいるの?」
「何でって慰労会だからいるに決まってるだろ。急に何言ってんだ?」
私は今横にいるフェルトと先程走り去って行ったフェルトの方を、交互に見ていたが何が何だか分からず混乱していた。
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