とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第509話 取り出した物

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 そして翌日、ルークとクリスの模擬戦が行われる事は昨日の時点で広まり、朝からオービン寮前には他の寮生たちが集まり始めていた。

「うわ~すげえ。こんなに見物人がいるのか」
「これ、何か売ったら金というか、ポイント取れそうだな」

 ライラックとリーガが寮を出て周囲の状況に驚いていると、後ろからアルジュとガウェンがやって来る。

「二人の戦いの凄さは他の寮にも伝わっているし、実力のある二人が模擬戦をするとなれば見たいと思う人がいるのは当然だろ」
「昔から考えればこうやって他の寮生が交わって何かを見る事すらあり得なかったが、寮の関係性も皆の考え方も変わっているんだなと実感出来るな」
「何大人ぶった事言ってるんだ、ガウェン」

 アルジュのツッコみにガウェンが少しうろたえる。
 そのままアルジュたちは寮の前の芝生へと移動すると、フェルトが模擬戦会場を整えている姿があった。

「何やってるんだ、あいつ」
「物好きだよな。頼まれてもないのに、模擬戦場を確保してるんだとよ」

 そこにニックとピースが現れる。
 ニック曰く、誰よりも早く寮を出て芝生にて模擬戦会場を分かりやすく作ったらしい。
 作ったといっても、芝生に線を引き見物しやすいようにしただけであった。

「それで今は他の見物人たちを誘導しているんだとよ」
「何でそこまでしてるんだ、あいつが」
「なんでも面白そうな展開だからって、口にしてたけど俺にはよく分からん」

 ニックの言葉にアルジュは「ふーん」と相づちしガウェンは黙ったまま聞いていた。
 その後会場では模擬戦が始まるまで、ワイワイと賑わっていると遂に寮から主役の一人が登場する。

「え、何これ? 何事?」
「今日クリスとルークの模擬戦を見に来た人らしいよ」
「らしいよって、ただの模擬戦に人来過ぎでしょ」

 クリスがシンに対し驚きながら話していると、見物人たちがクリスの登場に盛り上がる。
 その反応に対しクリスは恥ずかしながらも、軽く頭を下げながら移動して行く。

「お、今日の主役の到着か」

 ライラックがやって来たクリスに声を掛け、クリスがライラックたちに気付く。

「見物人多いが、頑張れよ~」
「模擬戦やるのに上着来たままやるのか?」
「まあゴーレム勝負だし、そこまで動きやすさは関係ないからね。それに外だし、さすがに上着なしじゃね」

 リーガの問いかけにそう答えると、見物人たちがまた騒ぎ始めた。
 クリスたちは騒いでいる方へと視線を向けると、寮の方面であったのでルークが出て来たのだと察する。
 皆が察した通り、見物人たちが道を開けそこをルークが歩いてやって来るとクリスを見つけ声を掛けた。

「こんな大事になるとはな。どうするクリス、今からでも場所を変えるか? 人に見られながらじゃやりづらいだろお前も?」
「まぁね。でも、誰かに見られながら戦うのは初めてじゃないし、気にしなきゃ大丈夫。でもルークがもし負けた時に、大勢に見られるのが嫌っていうなら今から場所変えてもいいぞ」
「そうかよ。それじゃ、さっさと始めようぜ。時間には早いが、お互いいるんだしいいだろ?」
「そうだな」

 ルークの提案にクリスも同意し、中央へと向かって行く。
 すると二人の元にフェルトが駆け寄って行き、何かを話し始めた。

「そろそろ始まるのか。ニックはどっちが勝つと思う?」
「ルークの奴だろ。クリスがどれだけ強くなろうと、あいつも強くなっているんだ。普通に考えればそうなるだろ。アルジュは違うのか」
「僕も同じだけど、クリスには何か起こしてくれそうという雰囲気があるから、もしかしたらって考えてしまうんだよね」
「もしかしたら、ね……」

 皆が二人の方を見ていると、フェルトが話を終えこちらに合流して来た。
 そして中央にいる二人に声を掛けた。

「それじゃ、起動させるよ。ほいっと」

 直後、見物人たちと中央にいる二人を分かつように簡易結界が展開される。
 それはよく試験などで使用される、周囲に被害が出ない様にする結界であった。
 結界内にはルークとクリスのみとなり、結界越しに皆が見物する形となった。

「おいフェルト、お前これどうしたんだ?」

 ニックの問いかけにフェルトが笑顔で答えた。

「どうしたって、ちょっと借りて来ただけさ。大丈夫、盗んだ訳じゃないから」
「これ試験とかで使う魔道具の一種だろ? よく借りられたな」

 アルジュが驚いていると、フェルトはクリスが寮前で模擬戦する許可を取る際に、一緒にダメもとで申請したら何故かそれに許可が下り今日拝借してきたらしい。
 出入りは自由となっており、基本的に内部からの魔法攻撃や攻撃で生じ飛ぶ物を内部で閉じ込める仕様となっている。
 そんな話をしていると、遅れてトウマがやって来る。

「ここに居たのか皆」
「何してたんだ、もうすぐ始まるぞトウマ」

 ライラックに対しトウマは「トイレに行っててな」と答え、結界内にいるルークとクリスを少し不安そうに見つめていると、シンがトウマの表情が目に入り声を掛けた。

「何か気になる事でもあるの、トウマ?」
「え、あ、いや。病み上がりでクリスが無茶しないか心配なのと、ルークがやり過ぎないかなって」
「トウマの心配する気持ちも分かるよ。でも今回は模擬戦だし、仮に危なくなったら皆もいるし止められるから心配しないで見守ろう」
「……ああ。そうだな、そうだよな」
「(ちょっと俺があいつらの事気にし過ぎただけだよな)」

 そんな風な事を思いながらトウマは見つめるのだった。

「じゃ、ルールは昨日決めた通りで。制限時間五分のゴーレム勝負三本勝負」
「うん。どちらかのゴーレムの戦闘不能もしくは、制限時間後にゴーレムの状態がより良い方の勝利」
「それじゃ互いに定位置について、ゴーレム生成し終えてから開始だな。合図は」
「さっきフェルトがやると引き受けてくれたから、俺の方にフェルトに合図を送る。ルークも準備出来たら声掛けて」
「分かった」

 ルークはそう答え、自分の位置へとクリスに背を向けて歩き始める。
 クリスも同じく背を向けて歩き出すかと思われたが、クリスはそのままルークが離れて行くのを見つめていた。
 結界外の皆は何故クリスが動かないのかとざわつき始めると、クリスは片手を上着の内側に伸ばす。
 そして次に上着の内側から出て来た手には、短剣が握られていた。
 直後クリスはルークの目掛け走り出し、手にした短剣をルークの腰目掛け勢いよく突き刺したのだ。
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