夫が愛人を妻にしたいので、私に離婚をしろと迫ってきました。

マミナ

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夫が愛人を妻にしたいので、私に離婚をしろと迫ってきました。

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リリア・アルネは夫のロナード伯爵令息の事が好きだった。
親同士の決めた結婚でも彼の妻としてずっと夫婦仲睦まじく暮らしていけるかもしれない。
ロナードも結婚した当初は穏やかで優しい人だった。

でも、私の両親が流行り病で他界した時からロナードはリリアに対しての態度が変わり始めた。


彼女がロナードに話しかけてもわざと無視したり、たまに返事をしたかと思えば始終怒った様に睨みつけて来るのでおろおろするか俯いて黙ってしまうのが日常になりつつある。

「ロナード、あなたはどうして、返事をしてくださらないのですか。」
そう問い詰めると、
「考え事をしているんだ、黙っててくれないか!」
彼は怒って突っぱねてしまう。

それだけではない。彼はリリアに食事や寝室を別々にすると提案してきたり、彼女のやる事なす事にいちいち口出しをし、
「お前は頭がいいだよな~。だったらこの書類を片付けてくれよ!」
と問答無用で自分の仕事をリリアに押しつけて勝手に何処かへとでかける事が多くなった。

リリアの方は最初、
「出来ません。ロナード、この書類を書くのはあなたの大事な仕事ではないのですか!しないまま出掛けるのは許される事ではありません。」

声を震わせながら何度も注意をしていたが、彼は全くと行っていいほど聞く耳持ってはくれない。
それどころか、
「何か文句があるのか、うるさいなあ。こんな地味な仕事をやりたくないに決まっているだろ!しかもお前は学院での成績は俺よりも良かったんだから、変わりにやってくれたって別にいいだろ。だがもしお前がどうしても駄目なのだと聞かないのなら、両親に言いつけて別れてもらうからな。」

剣幕した表情で怒鳴り散らしたので、それ以来彼には強く言えないままでいる。

その状態がしばらく続き、ある日リリアはロバートから呼び出された。

そこには、ロバートと知らない綺麗な女性が目の前にいる。
リリアは夫・ロバートを訝し気に見つめて、
「ロバート、あなたはまた愛人を連れて来たの、これで5人目よ、いい加減にして頂戴。」

彼女はロバートが仕事や友人と用事だと言って嘘をつき、娼館に入り浸っては何人もの愛人を作り彼の寝室に連れ込んでいる事を知っていた。

ロバートはその度に豪華なプレゼントや小遣いを惜しげもなくあげてしまうので、多額の出費がかさみ、妻のリリアには一切相談する事をせず、甘やかしてくれる両親にその都度、援助をしてもらっていることも。

気付いていないとでも思っているのだとしたら間違いもいいとこだわ!

愛人を連れて来たロバートは、彼女に対して、
「俺はもうお前とはもう別れて、愛人であるバーバラを新しい妻に迎えたいと思っている。リリア、お前に対しての愛はもうない、今この場で離婚をしてくれ。」

は………どういう事で御座いますの……。

私は、何か、悪い事をしましたのでしょうか……。

結婚をした時、あなたは私を幸せにしてくださると……。

「どうして、私と離婚をしたいと思って居ますの。どうしても、納得できませんわ!!ロバート!今までどれだあなたに尽くし、我慢をしてきたかわかっていらっしゃるのでしょうか!!」

茫然自失になりながらもリリアは必死に言い返す。

リリアに対してロバートは、
「本当の事を言ってやるよ!俺はお前の事なんて初めから好きじゃなかったんだ。リリア、陰気臭いし、真面目なだけで大して美人でもないお前とは結婚なんてしたくはなかったんた。それでも結婚をし、夫婦となったのはお前の両親が同じ伯爵家であり一緒になった方がメリットがあったからだ。それなのに、たかだか流行り病で死んでしまうなんて、最悪も良いところだ。」
激しい怒りで、
「両親のいないお前等、もう用無しなんだ。夫婦になっただけでも有り難く思ってほしいね。俺はバーバラと結婚をしたいんだ。俺の両親もお前よりも、美人で気遣いのできる彼女の方がいいと喜んでいたよ!」

バーバラはロバートの行きつけの娼館の中でも一番の売れっ子である為、美貌と巧みな話術で彼と彼の両親を篭絡したのだろ。

泣きそうになりながら俯くリリア嘲笑うような笑みを浮かべて、
「いままでご苦労様。これからは私がロバートの妻になるわ。あなたに変わってね。」

そういった彼女の傍には離縁状の書類を持って来たロバートが妻のリリアに、
「俺の言いたいことは分かったか。なら今からこの書類を書いて、さっさとこの屋敷から出て言ってくれ。お前の親が残した屋敷も俺の物だ。拒否することは絶対に出来んぞ!!」

剣幕した彼に告げらたリリアはただ泣いていた。

でも、両親を亡くした彼女を守ってくれる人はいない。

ロバートとバーバラに言われるがまま離縁状にサインをした。

その後も涙を流しながら俯く妻に冷めた目で見るロバートは振り向く事はせず、
「愛しいバーバラ、今日から君が俺の妻だ!」

笑顔で彼女に抱きつき、彼女も彼に笑顔を向けた。

幸せそうな二人に、リリアは黙って見つめることしかできずに、その日のうちに荷物をまとめて屋敷を出ることにした。


屋敷を出た彼女は身分を偽り小さな町の居酒屋で働く事となった。
初めのうちは慣れない仕事に戸惑いはあったけれど慣れてからは充実した生活を送っていた。
あの時の辛い生活とは違って、穏やかで幸せな毎日がこのまま続くのかなとも思っていた。

ある日、後ろから男性から声をかけられた彼女は後ろを振り向く。

声をかけたのはルイズ・フォルト公爵様だ。
「最近、君を見かけなくなってしまったからどうしたのかなって。それで、この町を探し回っていたんだ、ロバート伯爵令息と結婚をする前よくここで遊びに出掛けていたと知り合いから聞いたからね。その……一体何があったのか聞かせてほしい…ずっと心配してたから…。」

ルイズ・フォルト公爵は彼女がロバートと結婚をする前に、定期的に開かれている大規模なパーティで顔を合わせたことがあった。
若くして公爵になった彼は、優しく爽やかな青年で彼女に対して優しく接してくれた事を知っている。

そんな彼が、私の事を心配してこの町まで……わざわざ来てくださったの…?

不思議に思うわ…でも…それでも今の私には、ただ嬉しかった。

「実は、ロバートから離婚してほしいと告げられてしまいましたの。私には受け入れられなくて、どうして別れてほしいのかと問い出したところ彼は陰気臭くてつまらないお前とは、結婚なんてしたくなかった、愛人であるバーバラを妻にしたい……と怒鳴られた上に出て言ってくれと追い出されてしまいましたの……だから、今はこうして居酒屋で働いています。申し訳ありません…こんなお姿になってしまって……。」

深々と頭を下げて謝るリリアにルイズは、
「君は何も悪く無いじゃないか、悪いのはロバートの方じゃないか!!愛人を作り、尽くしてくれた妻である君に対して陰気でつまらないとはなんて酷い夫なんだ!!」
「リリアは、お淑やかでキレイで素敵な女性だ!!陰気でつまらないと言われる覚えはないよ!!」

自分の事の様に怒ってくれる彼に嬉しくて涙をが溢れてしまう。
その様子にオロオロする彼に彼女はフフッと微笑む。

顔を赤くしたルイズは、
「その…彼とは、もう離婚とかは済んではいるのかな……。」

「はい、もう、済んでいます…。」
彼の問いに彼女は答える。
「もし、私で良ければ結婚していんだ。」
プロポーズをした彼にリリアは、

「はい、お受け致します。」
顔を赤くしながら、微笑んだ。

しばらくすると、ロバート伯爵とその妻であるバーバラが投獄された。
原因は、彼らの浪費癖が主な原因だという。
彼等は、リリアが屋敷から出ていったあと、贅沢三昧を繰り返したため全財産を使い果たし、悪どい高利貸しに捕まってしまった。
切迫した状況になった二人と両親はあろうことか、国のお金にまで手をつけてしまった事がバレてしまった。

ルイズのプロポーズを受けたリリアは結婚した後、誠実で優しい彼の妻になり末永く幸せに暮らしている。



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