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第一章
第6話 かりんの恥謀
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ふっふっふ。あ~~はっはっはっ!
藤崎かりんは、心の中で高笑いを上げていた。
なぜなら……私は、辿りついたのだ。
ライブ会場が、ファンタジー世界に様変わり、などという演出を行った謎。
疑惑の解明に、ついに成功した。
もうね、あれだよね。気づいてしまうと、どうということはない。
なぜ私が答えに辿り着いたか、少し振り返ってみようと思う。
ノイエさんが何処かに去り、私はアインツさんと二人で会話する機会を得た。
彼は、私のことを全く知らない様子で、
「年齢は幾つですか?」と訊ね、
「住んでる場所はどこでしょう?」と立て続けに尋ねてきた。
前者には「17歳です」と返し、後者には、
「ストーカーが怖いので住んでる場所は内緒です」と無難に答えておいた。
後者の質問に対しては「"シャドウ・ストーカーズ"に追われているのか!?」と酷く驚いた様子で心配されたけど。
……驚いたアインツさん微笑ましかったな。
思い返し、しばし見蕩れてしまった。眼福、眼福。コホン、話を戻します。
「ええ、たまになんですけどね」と返すと、彼は考えに耽り込むと沈黙してしまった。
会話が中座したため、時間のゆとりを得た私は左右の指を組み両腕を上に掲げ、一度背伸びをしたあと周囲を見廻す。
その時だ。兵士の格好をした人々をひとしきり眺めた辺りで、視界がある物を捉える。
地面に伏せられた物体を目にし、私の双眸はキラリと光った。
伏せられていたものは、立札だった。
(もしかして、プラカードかな?応援用のグッズなら私がこんなに近くにいるんだもの。揚げてなきゃおかしいし……)
──実際はプラカードではなく、布製の軍団識別旗であり非戦時のため降ろしているだけなのだが、近視の藤崎かりんは気づかない。
兵士の更に奥の人ごみの中に、奇妙な物体を肩に背負う人物を目敏く私は発見した。
黒い筒のようなものを私に対し向けていることに気づいたのだ。
近視のためぼやけた状態で映るため、よく見えるようにと思わず目を凝らす。
それに気づいたのか、遠間からでも解るほど何かを肩に背負った人物は慌てて黒いものを後ろに隠す。
(まさか……カメラ?私、撮影されてる?)
──実際は軍団長が危害を加えられそうな非常時に備え、簡易魔法で発生した空圧を用い筒から石を投射する投石機なのだが、近視の藤崎かりんは気づかない。
地面に伏せられたプラカード、隠し撮りを行うカメラ。
電球に電気が灯ったように脳裏にピンと閃く。
ここから導き出される答え──それは。
この茶番全てドッキリ番組の収録か~~!
神が降りてきたっていうんだろうか。
さすが私だ。天才……いや鬼才と呼ぶべき智謀だ。
自画自賛は止まらない。
洞察眼には自信があったのよ、昔からね!
いや~、この謎が解けるのは名探偵コバンか藤崎かりんくらいのものでしょ!
疑問が氷解し、すっかり上機嫌になる。
それにしても、番組制作費幾ら掛かってるんだろう?
絶対に億は下らないと思うんだけども。
私にそれだけの価値があるってこと?キャ~~!ビックリだね!
最初は喜んでいた私だったが、やがて気持ちが萎んでいく。
ある事に気づいたためだ。そして、気づいたことを酷く後悔した。
ドッキリは驚いた芸能人の反応を視聴者が楽しむ番組だ。
仕掛けられる側が予備知識を一切持っていないからこそ成立し、ドッキリと告げられるまでの過程を視聴者は手に汗握り見入るのだ。
それなのにタネに気づいてしまっては元も子もない。
ここまで大掛かりなドッキリを台無しにしたとあらば番組スタッフが浮かばれない。
数字が取れないなんてことになれば、私自身悲しくなる。
(くっ、番組だと気づかなければ)
私は悔しさを滲ませる。
意識せずとも我が身から溢れ出てしまう知性が恨めしい。
そこで、ふと私は気づきを得る。
待って?これ……チャンスじゃない?
アイドルではない女優"藤崎かりん"としての実力が試されている。
もしも、騙されたアイドルを最後まで演じきることが出来れば新たな扉、可能性の開拓につながるのではと考えた。
萎れた花が水と光を浴び再び甦るように、私の萎れた心もまた、みるみる生気を取り戻す。
私、やるよ!やっちゃうよ!がんばっちゃうよ!
アイドルとして女優としても新たなステージへ駆け上がってみせるよ!
お母さん、天国のお父さん見守っててね!
私のやるべきことは誰にも悟られない演技と、不安そうな表情を常に意識することだ。
リポーターがドッキリだと告げに来るその時まで、何が何でも演技で貫き通す。
藤崎かりんは人知れず、そして静かに燃えていた。
藤崎かりんは、心の中で高笑いを上げていた。
なぜなら……私は、辿りついたのだ。
ライブ会場が、ファンタジー世界に様変わり、などという演出を行った謎。
疑惑の解明に、ついに成功した。
もうね、あれだよね。気づいてしまうと、どうということはない。
なぜ私が答えに辿り着いたか、少し振り返ってみようと思う。
ノイエさんが何処かに去り、私はアインツさんと二人で会話する機会を得た。
彼は、私のことを全く知らない様子で、
「年齢は幾つですか?」と訊ね、
「住んでる場所はどこでしょう?」と立て続けに尋ねてきた。
前者には「17歳です」と返し、後者には、
「ストーカーが怖いので住んでる場所は内緒です」と無難に答えておいた。
後者の質問に対しては「"シャドウ・ストーカーズ"に追われているのか!?」と酷く驚いた様子で心配されたけど。
……驚いたアインツさん微笑ましかったな。
思い返し、しばし見蕩れてしまった。眼福、眼福。コホン、話を戻します。
「ええ、たまになんですけどね」と返すと、彼は考えに耽り込むと沈黙してしまった。
会話が中座したため、時間のゆとりを得た私は左右の指を組み両腕を上に掲げ、一度背伸びをしたあと周囲を見廻す。
その時だ。兵士の格好をした人々をひとしきり眺めた辺りで、視界がある物を捉える。
地面に伏せられた物体を目にし、私の双眸はキラリと光った。
伏せられていたものは、立札だった。
(もしかして、プラカードかな?応援用のグッズなら私がこんなに近くにいるんだもの。揚げてなきゃおかしいし……)
──実際はプラカードではなく、布製の軍団識別旗であり非戦時のため降ろしているだけなのだが、近視の藤崎かりんは気づかない。
兵士の更に奥の人ごみの中に、奇妙な物体を肩に背負う人物を目敏く私は発見した。
黒い筒のようなものを私に対し向けていることに気づいたのだ。
近視のためぼやけた状態で映るため、よく見えるようにと思わず目を凝らす。
それに気づいたのか、遠間からでも解るほど何かを肩に背負った人物は慌てて黒いものを後ろに隠す。
(まさか……カメラ?私、撮影されてる?)
──実際は軍団長が危害を加えられそうな非常時に備え、簡易魔法で発生した空圧を用い筒から石を投射する投石機なのだが、近視の藤崎かりんは気づかない。
地面に伏せられたプラカード、隠し撮りを行うカメラ。
電球に電気が灯ったように脳裏にピンと閃く。
ここから導き出される答え──それは。
この茶番全てドッキリ番組の収録か~~!
神が降りてきたっていうんだろうか。
さすが私だ。天才……いや鬼才と呼ぶべき智謀だ。
自画自賛は止まらない。
洞察眼には自信があったのよ、昔からね!
いや~、この謎が解けるのは名探偵コバンか藤崎かりんくらいのものでしょ!
疑問が氷解し、すっかり上機嫌になる。
それにしても、番組制作費幾ら掛かってるんだろう?
絶対に億は下らないと思うんだけども。
私にそれだけの価値があるってこと?キャ~~!ビックリだね!
最初は喜んでいた私だったが、やがて気持ちが萎んでいく。
ある事に気づいたためだ。そして、気づいたことを酷く後悔した。
ドッキリは驚いた芸能人の反応を視聴者が楽しむ番組だ。
仕掛けられる側が予備知識を一切持っていないからこそ成立し、ドッキリと告げられるまでの過程を視聴者は手に汗握り見入るのだ。
それなのにタネに気づいてしまっては元も子もない。
ここまで大掛かりなドッキリを台無しにしたとあらば番組スタッフが浮かばれない。
数字が取れないなんてことになれば、私自身悲しくなる。
(くっ、番組だと気づかなければ)
私は悔しさを滲ませる。
意識せずとも我が身から溢れ出てしまう知性が恨めしい。
そこで、ふと私は気づきを得る。
待って?これ……チャンスじゃない?
アイドルではない女優"藤崎かりん"としての実力が試されている。
もしも、騙されたアイドルを最後まで演じきることが出来れば新たな扉、可能性の開拓につながるのではと考えた。
萎れた花が水と光を浴び再び甦るように、私の萎れた心もまた、みるみる生気を取り戻す。
私、やるよ!やっちゃうよ!がんばっちゃうよ!
アイドルとして女優としても新たなステージへ駆け上がってみせるよ!
お母さん、天国のお父さん見守っててね!
私のやるべきことは誰にも悟られない演技と、不安そうな表情を常に意識することだ。
リポーターがドッキリだと告げに来るその時まで、何が何でも演技で貫き通す。
藤崎かりんは人知れず、そして静かに燃えていた。
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