天才橘博士の珍発明

A.Y

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第5話

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北原茂は倉田家の玄関前に立つとチャイムを鳴らして玄関の戸を開ける。

「すみません、こんにちは~。訪問介護に来ました」

茂が挨拶すると奥から若い男性と背丈の低い少女の姿が現れた。

「あ…こんにちは、お仕事ご苦労様です」
翔太が茂に挨拶をする。

「あれ…?もしかして、以前ウチで働いていた島崎さんですか?」

茂は翔太の顔に見覚えがあった。

「あ…はい、そうです。今は違う仕事をしていますが…時間のある時はボランティアみたいな感じで手伝いとかしています」
「そうですか…立派ですね」
「いや…そう言う意味では無いのですが…」

茂は「お邪魔します」と、言って靴を脱いで家に上がる。
翔太の隣にいる少女を見て

「お婆ちゃんのお見舞いに来たの?偉いね」

と、少女の頭を撫でて、茂は奥の部屋へと向かう。
家の奥にある介護用のベッドへと向かうと、寝ている筈の利用者の姿が見当たらなかった。

「あれ…?利用者様は今日、診察ですか?」

驚いた茂が翔太に聞く。

「あ…その、こちらにいます」
「どこですか?」

茂は周囲を見回す。

「ここです」
翔太が指を指す。

「どこですか?」

茂は翔太が指している方に視線をむけると、先ほど自分が頭を撫でた小さな少女を翔太は指していた。

「え…どう言う事?」
「私がミヨです」

少女は茂に言う。

「ええー!」


事の一部始終を茂に話すが…中々納得していない状況だった。

「若返りの薬で、老婆が少女の姿まで若返るなんて、SF小説でもあまり無い話ですよ」

茂の話に、ミヨが口を開いた。

「昔の映画で、老人達が若者になる映画があったけどね…最後は宇宙へと旅立ったけど…」
「コクーンて言う映画でしたっけ?」
「題名は覚えて無いな…。爺さんが生きている時、映画の途中でキスとかしてくれた作品は覚えているけど…途中で爺さんが寝てしまったのは、ほとんど覚えていないわ」

(偏った記憶力だな…)

翔太はツッコミを入れたかった。

「それで…今後はどうするのですか?彼女が本当にミヨさんなら、もう…我々が来る必要もなくなりますね」
「いきなり元の姿に戻る…と言う現象はなさそうだけど…、しばらくは様子見で良いじゃないかな?まあ…あとは息子夫婦と相談した上で決める事にしよう」
「分かりました」

そう言って茂は報告書の用紙を取り出す。

「で…内容はどう説明します」
「突然の若返りで、以後…訪問不要…で良いのでは?」
「具体的な内容で、お願いします」
「幼女退行化現象?」
「そんな内容で、説明が付きますか?」

2人が話し合っている中、ミヨが入り込んできた。

「ミヨは美少女に変身した…で良いのでは?」

その言葉に2人は何も言えなかった。
少し呆れた茂は、荷物を纏めて立ち上がる。

「取り敢えず施設に戻ってから、考えますよ」

玄関を出て車まで見送って来た翔太に茂は、ふと…呟いた。

「その薬って、全ての人間に効果があるのですよね?」
「博士はそう言ってたよ」
「もし…大量生産されたら、児ポとかの問題ってどうなるのでしょう?実年齢20歳以上の幼女の姿でも捕まったりするのでしょうかね?」

「まあ…頭の固い政府のお偉いさんとかが、また理不尽な提案を出してくるのではないかな?」
「40~80歳の少年少女が大量に現れると、教育機関等も大変になるでしょうね」
「少なくとも、実用化は当面無いと思うよ、医療の現場でも歯医者がドリルを使わずに液状で虫歯を治療する物だって、開発から実用化されるまで20年以上も歳月が掛ったし…。薬も…まだ開発の初期段階で、これからデータの統計とかを取って色々調べて行くのだから…最低でも、あと2~30年は掛かるのじゃないかな?」

それを聞いた茂が嬉しそうな表情を見せる。

「早く実用化出来ると良いですね」

そう言って茂は車のエンジンを掛けて、発進して帰っていく。


茂を見送った翔太は再び家に入る。
家のリビングに向かうとミヨがお茶を飲みながら、教育テレビを見ていた。

「介護の方、帰ったの?」
「はい、帰りました」
「そっか…もう少しゆっくりしていけばよかったのに」
「まあ…施設で報告書の内容に煮詰まると思うので、早めに帰って正解でしょう」
「そうなんだ…」
「あとは…息子さん夫婦に何て説明すれば良いか…ですよ」

その言葉にミヨが翔太をみて言う。

「別に難しく考えなくても大丈夫だと思うよ」
「そうですか?」

ミヨが教育テレビを何気なく見ている姿を見て、翔太はその幼い少女の姿に見とれた。今日の午前中まで高齢者だった彼女…。しかし…現在は紛れも無く年端の行かない少女…。
浴室で見た真っ白な全裸を思い出すと、心臓が高鳴る。

(実年齢は90歳…でも現在の彼女の姿は10歳を過ぎた少女…)

ソファーで何気なくテレビを見ていたミヨは欠伸しながら、テーブルの方に体を向ける。そしてジッと自分を見ていた翔太に気付き

「どうしたの?」
と…声を掛ける。

「あ…いえ、暇だな…て思って」
「ふ…ん。私とエッチしたいんだ…」

ストレートにミヨが翔太の心理を貫いて驚いた。

「そ…そんな、なんで?」
「一応90年生きているのよ、男の人の考える事ぐらい簡単よ。まあ…今の私の姿に見惚れるって事は、それなりに願望はあったのよね。最初は無理に断っていたけど、したい気持ちはしっかり持っているのね」
「ま…まあ、その通りです」
「フフ…最初から、そう素直に言ってれば良いのに。ちょっと安心したかな?」

そう言ってミヨは席を立ち、テーブルの上を四つん這いで歩いて、翔太の前へと接近して来る。

「目を閉じて」

翔太は言われた通り眼を閉じる。
やがて…自分の唇に軟らかく温かい感触が伝わる。
薄っすらと瞳を開けると目の前に肌がきめ細かい美しい少女の顔があった。

チュパ…。

唇を離すと、粘液の音が響く。

「私とヤッてみる?」
「でも…息子さん達が帰って来て事情を説明しないと…」
「まあ…そうよね」
「お楽しみは後に取っておいた方が良いですよ」
「分かったわ…」

少し残念そうな表情しながらミヨは翔太の隣に腰を下ろす。

「こうやって待っていると、結構時間って長く感じるわね。何時もはあまり考えた事は無いけど…」

ふあ…と、ミヨは欠伸をする。
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