村石君の華やかな憂鬱 Remake

A.Y

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交差編

第76話 復路

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因縁深き相手が捕らわれるのを見て凛は少し複雑な心境だった。

「これで少し落ち着けるね」

竜也は凛に向かって話す。

「そうね…」

少し物静かな凛を見て竜也は不思議そうな表情をする。

「どうしたの?」

そう尋ねると、彼女は人目の付かない場所に竜也を連れて、濃厚な口付けを交わす。

「あたしは、これから警察署に行き、彼の取り調べに付き添うわ。貴方は屋敷に戻って。多分…屋敷に仕立屋が来ている筈だから、背広に着替えて、お父様に会いに行って。あたしも後で追いかけるから…」
「分かった」

そう言うと、2人はその場で別れた。


~現在

一連の出来事を伝えた竜也は、鮎川夫妻を見る。

「貴方達にとっての因縁である者は捕らえました。彼がコレクションとして集めていた凛ちゃんや、その他の少女達の画像は、警察により没収されたので、もうこれで心配ないかと思います。後は…全て警察の方で取り調べを行うので、もう彼に付きまとわれる事はないかと思います」

茂は、無言のまま立っていた。

「では、自分はこれで失礼します」

彼は全員に一礼すると、立ち去ろうとする。

「ちょっと、竜也さん何処へ行くの?」

凛が慌てて竜也を呼び止める。

「不採用だから、アパートに帰らせて貰うんだ。元気でね、今まで色々とありがとう」

彼は凛に軽く手を振って立ち去る。

「へ…僕が、少女を淫行して罪になるなら、アイツだって同罪だろう!」
「何を言っている。彼は病気や怪我を治癒させる為に少女と交わっているんだ。お前とは根本的にやっている事が違う!」

彼を同行していた大川がいう。

「これから、コイツを取り調べするので、我々もこれで失礼します」

大川は鴉取を連れて立ち去る。

「凛ちゃん、またね。ウヒヒ…」

鴉取は不気味な笑い声を上げながら部屋を最後にした。
一連の騒動が収まると、室内はしんと静まり返り、親子3人だけになった。

「お父様、本気で彼を見放すのですか?」

椅子に腰を降ろした茂を見て凛は震えを堪えながら父を見る。

「アナタ、竜也さんは、我々の為に動いてくれたのよ」

隣で詩織が声を掛ける。
無言のまま沈黙している茂を見て、凛は我慢の限界に達した。

「見損ないました!お父様が彼を見放すなら、あたしは家を出て行きます。あたしは彼と一緒にアパートで暮らしますから。さようなら!」

そう言って凛は涙を流しながら走って部屋を出て行く。
それを見た茂が急いで立ち上がり。

「待て、凛!」
と、茂は娘を呼び止める。

出入口付近まで走った凛は、立ち止まり茂の方へと振り返った。


送迎ドライバーの車に乗った竜也は村松に軽く挨拶をする。

「お疲れ様でした村石様。面接の結果は如何でしたか?」
「不採用でした」
「へ?また…何故です?」
「鮎川家の当主も色々あって、今回は見送るとの事だって…」
「そうですか…では、お帰りはどちらに?」
「久喜川町のアパートまで送ってくれるかな?着いたら起こして欲しい…」
「分かりました…」

竜也は、車が発進するとウトウト…と夢の中に入って行く。
車を走行中、車のナビに着信が入るのを確認した村松はカップホルダーの場所に置いてあるワイヤレスイヤホンを耳に着けて、通話を始める。

「はい、現在運転中です…はい、そうです」

彼はルームミラー越しに後部座席で眠っている竜也を見た。

「了解致しました!」

彼は返事をすると、車を有料道路へと向かうコースへと車線変更した。


竜也はうたた寝しながら、今まで出会った少女達を思い出した。

(まあ、これから時間があるから、彼女達と再会しよう。そう言えば…スマホは、研究所に置きっぱなしだったなあ。しばらく、アパート開けっ放しだったし、色々やる事があるな。短い期間だったけど、随分色々あったな…)

そう思いながら、彼は眠りに入る。


1時間後…

「到着しましたよ村石様」
「ふあ…ありがとうね」

欠伸をしながら、彼はドアを開けると、目の前には鮎川家の民宿があった。

「あれ?ちょっと、アパートってお願いしたけど...何故鮎川家に来たの?」
「もう訳ありません。私は貴方を連れて帰る場所を、ここ以外は知らないものでして」

彼は微笑みながら言う。

竜也が呆気に取られて屋敷前に立っていると、後方から別の送迎用の車両が屋敷に入って来た。車は竜也の居る手前で停まり、車内から凛が飛び出して、彼に抱き着いて来た。

「お帰りなさい!」

涙を溜め込んだ瞳で嬉しそうに彼女は言う。

「ちょっと、これはどう言う事なの?」
「お父様は、貴方を採用してくれたのよ。これから貴方は客人で無く鮎川家の従業員として屋敷に住まうのよ!」
「え?」


~車が走行した直後の時…

式場に残って居た茂は凛を呼び止めた茂が彼女に声を掛ける。

「送迎ドライバーは、村松か?」
「ええ、彼でした…」

涙を吹きながら凛は言う。
茂は、村松のスマホに通話を入れる。

「茂だ、今は運転中か?」
「はい、現在運転中です」
「村石竜也は乗っているのだな?」
「はい、そうです」
「彼の今回の不採用を撤回する。彼を屋敷まで送って欲しい」
「了解致しました!」
「すまない、感謝する」

スマホの会話を聞いた凛は、父の側へと歩み寄る。

「お父様、ありがとう」
「礼を言われるまでも無い、彼の功績を称えてまでの事だ。今後は、彼にも役職を与える予定で行く。それと…鬼頭家にも挨拶しなければな…彼を雇うとなると、少し忙しくなるかもしれないな…」

茂は詩織を見て言う。

話の一部始終を聞き、予想外の展開に竜也は驚いた。

「え…良いの?ここで働く事になっても…大丈夫?」
「何か、問題でもあるの?」
「あ、いや…別に、何でもないけどね…」

その仕草を見た凛は竜也が別の事を考えて居ると察知するや否や。

パシンッ!

彼女の平手打ちが炸裂する。
竜也を迎えに集まった屋敷の一同は、庭で何か言い合っている2人の姿を見る。

「いきなり何をするんだよ!」
「貴方こそ、何を考えて居るのよ。せっかくこっちが色々手配たのに、変な事考えて、ああ…イヤらしい!」
「変な事って何だよ!」
「じゃあ、聞くけど…薫、ミカ、優奈って誰なのよ?さあ答えなさいよ今直ぐに!」

竜也は見事に凛が自分の考えを読み取った事に反論出来なかった。

「すみません…」
「全く、油断も隙もないんだから…少しはあたし達の事を思いやりなさいよ。それだと何時まで経っても女の子に従われる生き方しか出来ないわよ」
「あのね…ちょっと、別の事考えてただけで、どうしてそんなに言われるの?」
「言い訳は許しません、あたしは貴方の事を思って言っているのよ。口答えせず、ハイかイイエで答えなさい!」
「はいはい…」
「返事は1回で結構です」

彼等の対応を見ていた内藤と吉川は微笑みながら見つめる。

「あらあら…帰宅早々夫婦喧嘩とは仲が良いね」
「全くですな」
「竜也氏も新しい役職に就くそうですね」
「彼専属の役職のようです。後日、御当家当主が帰宅した際に彼に通達するそうで…」
「政府も彼に対して特例を措置するらしいし…これからは、何かと賑やかになるかもしれないわね…」

内藤が言うと、吉川が改めて竜也と凛を見る。

「鮎川家に新しい風が吹くかもしれないな…」

庭で言い合っている2人を、屋敷の人達は笑顔で眺めていた。
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