女の俺は世界で一番エロ可愛い

椎木唯

文字の大きさ
26 / 26
一章 力で商人のヒモになる

上げて落とす悪女、アクちゃん

しおりを挟む
 前門の虎、後門の竜。とそんなことわざがある。意味的には八方塞がりである。文字数的にもそっちの方がわかりやすいじゃん。
 今の場合を表すなら前門のモルリ商会、後門のコロッセオ専属である。一端の女装高校生がどうしてこんな高待遇に…と、冷静になった頭でふと考えてみるが時既に遅しである。と言うかコロッセオでの戦いを振り返ると既に人では無いので人智外である。人のルールに縛られない変態ほど凶悪なものは無いのよ…。

 と、ビキニアーマーの試着が終わり、

「今日は解散だ。ちなみに明日は暇か?」

「ふっ…ニートに仕事の予定を聞くもんだぜ?」

「そ、そうか…」

 とのやりとりがあった為、帰路に帰っているところである。いやね、ニートって表現したけどモルリ商会の方から仕事の話ないんだもん。週に何回かの新作のモデル、とかそんなのは人伝てに聞いたけど…まあ、言って仕舞えばここは海外である。日本の尺度で測っている俺の落ち度だろう。

 それにしたって、もっと煮詰める話はあるでしょうに、と思ってしまう。だってコロッセオのオーナーに契約の穴をつかれたんだぜ? コロッセオのオーナーと言えば悪虐非道な限りを尽くして、自身の専属の美少女と駆け落ちしそうになっている主人公を法を使って、武力を使って脅して、最終的には殺されるような役回りだぜ? 知能戦で負けたら意味ないでしょうに…。
 まあ、モルリさんが俺の事をそこまで重要と思っていないのかもしれないが。

 結論としては、例え話で出たコロッセオのオーナーは正しい行動をしている、って事だ。自分の商品と勝手に駆け落ちしそうになっている主人公って…夢みがちなチェリーボーイである。世の紳士諸君は「大体十五を超えたら非処女である」を教えて差し上げないと。例え話の主人公は初物か否かで決める人ではないし、話の裏は存在しない。ソースは? と聞かれたら焼きそばの、としか答えられないだろう。



 と、まあ、ほぼ真っ暗な、魔法的な灯りだけが頼りな夜道をそんな妄想をしながら歩いていた訳である。妄想は妄想の域を出ないが…まあ、ダブルブッキング的に、二足の草鞋を履いている事は事実である。腹に溜まった食事の数々はクソとして実体を持っているし、何ならコロッセオの専属の件の契約書も持っている。拇印で良いよって用意周到かよ…。

 まあ、そろそろ認めよう。

 ジュリさんの店から出て、ナンパされるまではまだ帰りの道が分かっていたんだ。出てすぐ、真っ直ぐしか進んで無かったからね。で、ナンパから助けてもらってレストランに連れて行かれたのが運の尽きである。完全な迷子になっていた。だってしょうがなくない!? この街で生まれ育ったとかなら分かるけど、俺異世界転生者だぜ? 未開も未開、秘地も秘境よ。ファンタジー的なノスタルジーを感じるわとしか感じれない夜道を進んでいます。誰か、迷子の俺を助けて…。

 現在はビキニアーマー試着の時に新衣装としてメイド服を改造したエロチックな服を着ている訳で、全くの新体験をしながら迷子であるのだ。
 快感と、絶望感が入り混じった状況は、モザイクありと言われたAVでモザイク加工されずに海外の動画サイトにアップロードされた時と同じ…!! そんな奇天烈な体験はした事ないので例え話である。背徳感と絶望感のダブルアタックである。
 レストランで食事をとっている時に雨でも降っていたのか、水溜りが所々にあり、街灯で照らされた自身の姿が水の中に写る。とても映える。芸術作品として世に出さないと人類規模で損ではないのか? と、本気で思うような芸術性である。とても、儚く、それ故に美しい。
 ああ、俺が、俺で良かった……。

 一人で惚けていると見知った顔が曲がり角から出てきた。

「あれ、アクさん? どうしたんですか一人で。夜道で女性一人は危ないですよ?」

 モーリであった。
 そんな紳士的な発言をする彼の背後には一人、護衛として連れているのか屈強そうな男が斜に構えてこちらを見てくる。数秒目が合い、頬を赤く染め、目を逸らされる。照れるなら目を合わせるなよ…。
 ロングヘヤーになったアクである。清純さが表に出てきているのか、清純パワーで男の不純な感情が浄化されたのか。真剣そうな表情になって護衛の任務に向き合っていた。まあ、付き添って警戒だけなので向き合うもクソもないと思うけど。

 そんなモーリの護衛の男との青春ラブストーリーは数秒で幕を開け、幕を閉じた訳であるがモーリが知るところではない。無視されて、傷ついたのか少し表情が曇り始めたモーリを励ます。

「おお、ごめんなモーリ! 童貞なのに一丁前に紳士を気取るから驚いちまったわ!」

 肩をバンバン叩きながらのボディータッチ。想像するのは夜の街である。やはり行った事ないけど。
 少し体を近づけ、胸が当たるか否か、の間合いでか弱そうに言う。

「まあ、でも…心配してくれて嬉しい。心細かったから…」

 若干涙目で、小動物チックで。
 初めて会った時とのギャップがすごく、驚いているのかモーリの心配そうな表情が崩れる。頰が染まり、だらしなくニヤける。

「え!? えぇ!?」

 言葉にならないようで、単語ではない文字の羅列が壊れた機械のようにモーリから出てくる。

「な、何だよっ! 嬉しがっちゃいけねえってのか!?」

 と、追い討ちをかけるようにキレてみる。

 頬を染め、今度はツンデレのツンで反応を示すのだ。
 男は男まさりの女を男友達と見るが、それでも女は女である。ふとした女らしさに目を奪われ、変わったシャンプーの匂いで心奪われ、結局は男女の仲に戻ってしまうのが通説だ。情報源は恋愛ゲームである。
 俺がモーリに見せる顔として、エッチな事をさせてくれそうなお姉さんであると想像している。…自分で言ってて悲しく思う部分はあるが、女装した自分を認めてくれると考えると気分が良いモノになる。

 デレを、ツンを。
 ツンデレを見せた後は…

「でも、見つけてくれたのがモーリで良かった。モーリなら…」

「ぼ、僕なら!?」




「気兼ねなく家まで送ってくれそだもんな!! 良かったぜ、絶賛迷子中だったからな!!!! 一人寂しく徘徊するか、襲われて無理やり寝床に連れられるかの二択だったからな! 助かったぜ、モーリ!!」

 盛大に落とす。

 バカがッ!! 俺が真に心を許す相手は女装した俺って決まってるんだよ! どんなに輪廻転生してもそれは揺るがないし、マインドコントロールされてもそれは俺の魂に刻まれてるからな!!
 全身全霊で女装した自分しか愛せない、と語る俺はハナから見れば変態だろう。なんせ言ってる俺が変態だなー、と思うくらいである。

 気の迷いであったモーリのおちょくりも大詰め、そしてフィナーレを終える。残ったのは永遠と独り言を呟く抜け殻のようなモーリであった。

「…だろうと思いましたよ、ええ、だって相手はアクさんですよ? 奇想天外、奇天烈、悪鬼、メスガキの異名を持つアクさんですから勿論騙されているだろうな、イタズラだろうなっては思ってましたけど…お、お男の純情を弄ぶなんて…び、ビッチの所業じゃないですか…」

 その後はしっかりと家に送り届けてもらいました。家って言うかモルリ商会に部屋を貸してもらっているので、モーリとしては家に帰るだけって感じだと思うけど。まあ、からかって悪かったと、そこそこに余っているウィンドドラゴンの歯を渡したら機嫌を治してくれたので友達関係は継続である。それ以前に同じ職場で働く同僚だけどな。部署違うけど。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...