エンシェントドラゴンは隠れ住みたい

冬之ゆたんぽ

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王城1

グレンと閨係 ※

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 夜、王城。
 ここはグレンの自室だ。

 グレンはアンフェールとの『魔力循環』を行う日以外は、閨係と肌接触を行っている。あれほど避けていた接触も、魔力強化の為に必要ならば頑張れた。
 アンフェールが弟の為に協力しアドバイスしてくれたことも嬉しかった。
 グレンは結果を出してアンフェールに喜んで貰いたかったし、弟を離宮から解放し、一目でいいから会って『ずっと会いたかった』と伝えたかった。

 扉が開いて静かに男が入ってくる。
 十四の時からグレンの性処理をしてくれている男だ。
 日中は神父服を着ているが、今は脱ぎやすい閨係としての装いでいる。グレンより八歳年上の優しげな顔をした逞しい男だった。
 実際性格も優しい。神父としてグレンの悩みを親身に聞いてくれるし、読書の趣味もあう。普通の話をする分にはもっと話したいと思う位だ。
 グレンは死んだ父親の事をあまり覚えていないけれど、こんな父親だったら幸せだろう、と思う程彼からは父性を感じていた。

「殿下。本日はいかがいたしましょうか」
「いつものように」
「はい、畏まりました」

 男は着ていたローブを脱いで畳み、床に置いた。流れるような所作は教育された物だろう。こういった事が苦手なグレンでも、綺麗だと思うのだから。
 男の裸体は逞しく、至極男性的だ。
 本来閨係であれば、もっと女性的に見える者が務めるものだと思う。
 しかし、グレンにとって女性は恐ろしい存在だった。王として将来王妃を迎えねばならないのに、全く迎えられる気がしない。

(私は欠陥品なのだ……)

 だから宰相エックハルトが選んだ閨係が、男らしい男であった時、ホッとしたのが正直な気持ちだった。

 その上彼は無理にグレンの心と身体を拓こうとしない。
 日中は普通に会話するものの、閨の会話が苦手なグレンの為に、寝所では最低限のやり取りで済ませてくれていた。肌も見ないでくれるし、接触に対する拒絶を咎める事もしなかった。
 常に父親のような眼差しで見守ってくれる安心感があった。

 男はいつものようにベッドに腰かけ、ゆるく脚を開いた。その間にグレンは腰を掛ける。いつもの、背中とお腹を合わせる位置だ。

「殿下、失礼いたします」

 男はグレンの服の背中を捲った。露出した背に、男の硬い腹が当たる。着衣で包まれた部分にも、逞しい胸が当たっている。
 グレンは後ろから包むようにして男に抱かれている。

 以前は密着する事も無かったから分からなかったが、この姿勢でいると僅かに男のフレグランスと体臭が混じった様な香りがするのだ。
 それを感じるとズクリと腰が疼く。
 この香りに包まれた後、いつも手技を受け達している。香りと快感が強く条件づけられていた。

「すみません。前を寛げさせていただきます」
「よろしく頼む……」

 手慣れた所作で、グレンのパンツのボタンは外され、引き下ろされる。下穿きも下ろされて性器が露出した。
 既に半勃ちになっている。
 こうなるようになったのは、最近の事だ。
 以前はずっと萎えていて、刺激を受けてから何となく硬くなるか、といった状態だった。
 始まる前から膨らませるなんて、期待していたように思われてしまうだろうか、とグレンは恥ずかしくなった。

「少し大きくなられていますね。とても……嬉しいです」
「嬉しい……?」
「殿下のご成長が感じられて」

 男はいつものように、手に潤滑を塗布した後、優しくグレンのペニスを握ってくれた。大きな手で包まれると、自分の性器が小さくなったように感じる。
 アンフェールの手は人形のように小さく、彼のペニスも小指のように小さい。つるりとしていて、愛らしい形をしている。だから彼との『魔力循環』の時は自分の性器がひどく巨大で醜悪に感じるのだ。

 ――ああ、でも。とグレンの顔に翳が差す。

(私が幼い時の性器の形まで覚えてはいないが……。あの頃だって醜いと言われていたじゃないか。大きさは関係なく、私のここは醜いのかもしれない……)

「醜くはないだろうか。私のものは……」
「拝見していませんが、触った感じではとても立派で雄々しく感じられます」
「友人が……時折、私のものをじっと見るのだ……恐ろしいとか気持ち悪いとか……そう思われていたら、どうしようかと……不安で」

 男の手の動きが緩やかになる。会話をするつもりらしい。
 手は止めないのだ。
 淡く長く刺激されながら会話をする事が最近増えてきた。その、弱い刺激を長時間された後激しく追いつめられると、絶頂が激しく、吐く精液の量も多い事をグレンは体験で学んでいる。
 だから会話モードになっても、グレンの性器は萎えないのだ。

「『魔力循環』を教授して下さってる、ご友人ですか?」
「とても大事な友人なのだ。怖がらせたくないのだ……」
「大丈夫ですよ。殿下が優しいお気持ちを持たれているのは、ご友人も分かってらっしゃるはずです。お気持ちが優しければ、怖いという事はありません。私は殿下より身体が大きいでしょう? 殿下は、私を怖いとお思いですか?」

 男の言葉にグレンはビックリして、慌てて言葉を返した。

「怖くない! お前は、とても優しい!」

 グレンの言葉に、男から微かに笑ったような気配があった。

「ありがとうございます、殿下。ご友人もそう思っていらっしゃいますよ。目が行ってしまうのは、殿下のものがご立派でいらっしゃるからでしょう。私も大きい方ですが、教会にいた頃は、子供たちにジロジロ見られたものです。寮では、子供らの入浴介助をよくしていたので。
 ……教会を出た今でも、共同浴場に行けば視線を感じます。本能的に、大きい物に目が行くのかもしれませんね」

 グレンは男の言葉に肩から力が抜けた。
 男や、アンフェールと話すと、グレンの中にある淀んだ気持ちが軽くなって元気になるのだ。
 男と三年の間、閨の会話を持たなかった事を今では悔やんでいる。

 グレンはアンフェールに『もっと閨係と話すべき』と言われ、努力して閨で話すようになった。そして今では性に関して不安に思っている事を、自然と相談できるようにまでなった。
 性に関して忌避感の強いグレンにとっては、閨で性の不安が解消できるのはとても大きな事だったのだ。
 男との閨はすっかりグレンの癒しの時間なっている。

「んっ……」

 グレンは胸にチリリとした刺激を感じた。最近、衣服で胸先が擦れると、身体が疼くのだ。
 アンフェールと出会っておおよそ半年。
 ずっと乳首を弄られていた。何度も、乳首で射精を誘発させられてきた身体は、そこへの刺激を性器と同等と捉えるようになっていた。

「どうなさいました? 殿下」
「っ……胸先が……疼くのだ」
「そうですか。刺激いたしましょうか?」

 それはグレンにとって甘美な誘惑だった。

(軽蔑されないだろうか、胸を触って欲しいと思うなんて……。しかし、触れないと疼いて……言えない……でも触られたい……)

 グレンは羞恥と、疼きに対する苦痛に眉を寄せた。
 グレンを包んでくれている、この懐の広い男であれば、そんなみだりがわしい願いでも優しく受け入れてくれるだろう。グレンは男に対して、そんな信頼感を既に持っている。
 そうなると、欲望に折れるのも早かった。

「……済まない……たのむ」
「はい」

 男の指が、そっと胸の尖りを衣服の上から探る。
 有るか無いか分からないようだった乳首は、アンフェールによって育てられすっかり質が変わっている。
 大きさは大して変わらないが、しっかりとした形になって、刺激を受ければ硬くしこる様になっていた。
 男の指はすぐにグレンの乳首を探しあててしまった。優しく円を描くように乳首を捏ねる太い指は、アンフェールの刺激ともまた違う。王族につけられる閨係だけあってとても上手い。
 熟達した手技により、布越しであっても蕩けそうな快感が、上半身いっぱいに広がった。

「あ、あ」
「……最近、薄物を纏ってらっしゃる時に、殿下の胸先の尖りが気になっていました。ご友人がここをお育てになったのですか?」
「ん……っ、そう、だ。彼が……触ってくれて……」
「そうですか。とても可愛がってくださっているのですね。胸で気持ち良くなるのを覚えるには、時間が掛かりますから。いいご友人です」
「あっ……ああ」

 男の声のトーンが若干だが下がる。

「閨以外で薄物を纏う機会は無いかもしれませんが、お気を付けください。もうすでに尖りが布越しに分かるほど、お育ちになられている」
「はっ、あ。んぅ……」
「殿下は亡き妃殿下に似て美しい。お身体が善く成熟されたと思われたら、摘まみたくなる良からぬ者もおります。エックハルト卿がお守りになるとは思いますが、目の届かぬところもあるのです」

(そんな……服の上から尖りが分かってしまうなんて……いやらしい身体だと思われてしまうのか……? あの女も私をいやらしい子供だと言っていた……)

「あ、ああ、わかっ、た……きをつける……」

 チュクチュクと性器を擦る水音が聞こえる。男は器用に性器を扱きながら、乳首を弄っていた。
 捏ね、摘まみ、引っ掻く。
 緩急をつけて与えられる刺激に、グレンは激しく翻弄される。

「殿下はどのような刺激を好まれますか? 引っ張られるのがお好きですか? それとも引っ掻く方がよろしいですか?」
「……っ、あ!」
「引っ掻いた方が善い声が出ますね。そちらがお好きですか?」
「あ、っ、いえな」
「仰ってください」

 グレンが恥じる言葉を求められている。
 最近、男は少し恥ずかしい言葉をグレンに言わせるのだ。大体一晩にワンセンテンス。
 グレンが嫌になってしまわないように。恥ずかしくても、それと同じくらいの悦びを覚えるように、考えてくれている。
 グレンにもそれは分かっている。凄く恥ずかしく、泣きそうになるのに、口にすれば頭が溶けそうなほど真っ白になって、達してしまうからだ。
 男はそういった駆け引きが上手かった。

 グレンは羞恥で真っ赤になりながら、男にはしたない要求を伝えた。

「ひっ……ひっかいて……!」
「はい、畏まりました」

 布越しにカリカリと乳首を引っ掻かれながら、ペニスを激しく扱かれる。張り詰めたグレンのそこは先走りをダラダラと垂らし、今にも弾けてしまいそうだった。

「っ……いく……いく……」
「はい」
「……っ!!」

 グレンは弾けるように射精した。

 身体をグッと緊張させて、ギュッと目を閉じる。
 キュウキュウと収縮する腰が甘美な高みに至って、解き放たれる。何度も身体を折る様に動かしながら精を飛ばした。
 出し切り、ぐったりと男にもたれ掛かると、男は優しくグレンの頭を撫でてくれた。

「頑張りましたね。ちゃんと約束も守れて偉いですね」

 男はグレンが達すると、たくさん撫でてくれるし、褒めてくれる。
 約束とは絶頂する時はきちんと『いく』と口にする事だ。最初は言うのが恥ずかしくて、達した後は泣いてしまった事もあるけれど、今は自然と口に出来るようになってきた。
 この言葉を口にする事で、自分は快感を得た、と強く自覚できる。ただ、メソメソしながら精を吐き出していた時とは全然違う。
 男は、快感を言葉にする事を教えてくれた。

 ちょっとずつでも、変わっていきたい。
 グレンはアンフェールと出会って半年、随分前向きになってきた。
 男との閨での関係の変化も、グレンにとっては心地良い変化だった。

 グレンはベッドから立ち上がり、男に振り返った。
 グレンは行為中の顔を男に見せた事は無いし、事後も見苦しい顔を見せるのが嫌で俯いてしまっていた。
 でも、今日こそ勇気を出してちゃんとお礼を言いたいと思ったのだ。
 グレンは男に目を合わせて、礼の言葉を口にした。


「――ありがとう、とても気持ち良かった。ロビン」


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