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001 忌まわしき記憶
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ツー・ツー・ツー・・・・・
『東ヴェルーナ、ポリスが全面占領です!』
『もう無理やって。退くでオッサン。』
『黙れ<A4>!儂なら、儂らなら、まだ……』
『南ヴェルーナ、退避許可求めます!』
『ボス!皆死んでしまいますよ!ボス!』
『まだだ<A6>!まだ……』
『中央ヴェルーナ、ポリス突撃の模様!』
『ボス!逃げて!』
『クソ!クソ!クソォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』
ツー・ツー・ツー・・・・・・
◆
彼の額から溢れた汗が、瞳を痺れさせる。左手に込めた力に、一層力が入った。
『二番・・・スライダー・・・』
人差し指を、ボールの縫い目に寄せる。肩甲骨同士をすり合わせて、解放させる。何年も前からのルーティーン。
思い切り右足を上げ、左足で蹴り出した。捻った体に追随して、肩、肘、手首、そして指先に力が入る。
『完璧だ・・・』
勢いよく放たれた白球は、バッターの体に磁石の様に引き寄せられていく。
『勝った・・・』
はずだった。彼の思い通りに操られた白球は、見事打者の体に擦り寄っていった。しかしそれに対し、バットはまるで腕の延長かのように纏わりつき、飛び出し、芯に当たった。それは、空の彼方へ消えていった。
「お前が打たれたら仕方ないよ。」
皆がそう言う。しかし、彼にはそれが単純にそうは聞こえなかった。彼らには、まるで月のように、裏の暗い表情が有る気がしてならなかった。
校内を前を向いて歩くことができない。自分のせいだ。自分が戦犯なのだ。彼はそう思い込んだ。
「もう、野球なんて、辞めてしまおう。」
近くのゴミ箱に投げ捨てたグローブの音が、誰もいない廊下に随分と響いた。彼は目頭を抑えながらその場を後にしようとしたとき、野太い男の声が彼を呼ぶ。
「おいハクア、これ!」
一枚のビラを彼に突きつけた男は、満面の笑みで言う。
「ヴェトモン高校!推薦だよ!お前はまだ、野球ができるんだよ!」
不思議と疑問は出なかった。スポーツ名門校で、野球ができる。
戦犯からの、成り上がり。
彼の心は、踊るばかりだった。
「はい!行ってきます!」
彼の声が、誰もいない廊下に響き渡った。
『東ヴェルーナ、ポリスが全面占領です!』
『もう無理やって。退くでオッサン。』
『黙れ<A4>!儂なら、儂らなら、まだ……』
『南ヴェルーナ、退避許可求めます!』
『ボス!皆死んでしまいますよ!ボス!』
『まだだ<A6>!まだ……』
『中央ヴェルーナ、ポリス突撃の模様!』
『ボス!逃げて!』
『クソ!クソ!クソォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』
ツー・ツー・ツー・・・・・・
◆
彼の額から溢れた汗が、瞳を痺れさせる。左手に込めた力に、一層力が入った。
『二番・・・スライダー・・・』
人差し指を、ボールの縫い目に寄せる。肩甲骨同士をすり合わせて、解放させる。何年も前からのルーティーン。
思い切り右足を上げ、左足で蹴り出した。捻った体に追随して、肩、肘、手首、そして指先に力が入る。
『完璧だ・・・』
勢いよく放たれた白球は、バッターの体に磁石の様に引き寄せられていく。
『勝った・・・』
はずだった。彼の思い通りに操られた白球は、見事打者の体に擦り寄っていった。しかしそれに対し、バットはまるで腕の延長かのように纏わりつき、飛び出し、芯に当たった。それは、空の彼方へ消えていった。
「お前が打たれたら仕方ないよ。」
皆がそう言う。しかし、彼にはそれが単純にそうは聞こえなかった。彼らには、まるで月のように、裏の暗い表情が有る気がしてならなかった。
校内を前を向いて歩くことができない。自分のせいだ。自分が戦犯なのだ。彼はそう思い込んだ。
「もう、野球なんて、辞めてしまおう。」
近くのゴミ箱に投げ捨てたグローブの音が、誰もいない廊下に随分と響いた。彼は目頭を抑えながらその場を後にしようとしたとき、野太い男の声が彼を呼ぶ。
「おいハクア、これ!」
一枚のビラを彼に突きつけた男は、満面の笑みで言う。
「ヴェトモン高校!推薦だよ!お前はまだ、野球ができるんだよ!」
不思議と疑問は出なかった。スポーツ名門校で、野球ができる。
戦犯からの、成り上がり。
彼の心は、踊るばかりだった。
「はい!行ってきます!」
彼の声が、誰もいない廊下に響き渡った。
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