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001 忌まわしき記憶

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ツー・ツー・ツー・・・・・

『東ヴェルーナ、ポリスが全面占領です!』

『もう無理やって。退くでオッサン。』

『黙れ<A4>!儂なら、儂らなら、まだ……』

『南ヴェルーナ、退避許可求めます!』

『ボス!皆死んでしまいますよ!ボス!』

『まだだ<A6>!まだ……』

『中央ヴェルーナ、ポリス突撃の模様!』

『ボス!逃げて!』

『クソ!クソ!クソォォォォォォォォォォォォォォォォォ!』

ツー・ツー・ツー・・・・・・



彼の額から溢れた汗が、瞳を痺れさせる。左手に込めた力に、一層力が入った。

『二番・・・スライダー・・・』

人差し指を、ボールの縫い目に寄せる。肩甲骨同士をすり合わせて、解放させる。何年も前からのルーティーン。

思い切り右足を上げ、左足で蹴り出した。捻った体に追随して、肩、肘、手首、そして指先に力が入る。

『完璧だ・・・』

勢いよく放たれた白球は、バッターの体に磁石の様に引き寄せられていく。

『勝った・・・』

はずだった。彼の思い通りに操られた白球は、見事打者の体に擦り寄っていった。しかしそれに対し、バットはまるで腕の延長かのように纏わりつき、飛び出し、芯に当たった。それは、空の彼方へ消えていった。

「お前が打たれたら仕方ないよ。」

皆がそう言う。しかし、彼にはそれが単純にそうは聞こえなかった。彼らには、まるで月のように、裏の暗い表情が有る気がしてならなかった。

校内を前を向いて歩くことができない。自分のせいだ。自分が戦犯なのだ。彼はそう思い込んだ。

「もう、野球なんて、辞めてしまおう。」

近くのゴミ箱に投げ捨てたグローブの音が、誰もいない廊下に随分と響いた。彼は目頭を抑えながらその場を後にしようとしたとき、野太い男の声が彼を呼ぶ。

「おいハクア、これ!」

一枚のビラを彼に突きつけた男は、満面の笑みで言う。

「ヴェトモン高校!推薦だよ!お前はまだ、野球ができるんだよ!」

不思議と疑問は出なかった。スポーツ名門校で、野球ができる。

戦犯からの、成り上がり。

彼の心は、踊るばかりだった。

「はい!行ってきます!」

彼の声が、誰もいない廊下に響き渡った。

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