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1.元の世界~学生時代
(17)アイティマ王国とマランダ先生の体験談
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(語り手:エルージュ)
2回目の先生の体験談だ。
今回はマランダ先生だ。
マランダ先生はアイティマ王国の首都サイフィアにある東ギルドで活動をしていた。
首都サイフィアは水の都と呼ばれていて風光明媚な町らしい。
マランダ先生は東ギルドで最終的にはBランクになったそうだ。冒険者を続けていく道よりも、自分の経験を教育で生かしたいと思い学校の先生になることを選んだそうだ。
マランダ先生は魔法使いの冒険者だった。魔法使いを選んだのは派手な攻撃魔法に憧れていたからだった。魔法の中でも風の魔法が最も得意だったそうだ。それ以外の火や水の魔法はほとんど勉強することもなく使うこともしなかったという。彼女の当時の考え方だと、風魔法で全てを解決できるという考え方があったそうだ。
そんな中、ストリーナ大陸ではゴブリンによる被害が目立ち始めていた。
最初は小さかったゴブリンも悪事を繰り返し巨大なゴブリンに育ってしまった。そして群れを作って小さな村を襲うような事件が相次いでいた。国もそれを看過できなくなりギルドに討伐の依頼を出していた。
東ギルドとして大勢の冒険者が討伐に出向くという一大イベントが発生した。
マランダ先生は、それまで小さなゴブリンと戦うことは多かったので、このイベントに参加した。
派手な風魔法で多くのゴブリンを短時間で倒すためには風魔法が最も効率がよいと判断していた。だから自分のためにあるイベントであると感じていた。大活躍できるのは確定事項だという認識だった。
参加者たちは日夜を問わずにゴブリンたちを捜索し追い詰めていった。ゴブリンの中にも部族があるようで、ゴブリンの巣も広く様々な場所に点在していた。全てのゴブリンを駆逐する、すなわち絶滅させることは不可能であり、できる範囲で巣穴を潰していくしか方法はなかった。
ゴブリンがいて戦うのではなく、ゴブリンを探しながら戦うということだ。
当然死傷者はゼロというわけにはいかず、多少の死傷者や行方不明者は発生した。
ある日の捜索で、ゴブリンの巣穴を見つけた。近くに2、3の巣穴もあったようで多くのゴブリンと戦うことになった。
参加者のうちほとんどがゴブリンの生態を深く知っていたわけではなかった。
マランダ先生が対峙したゴブリンの部族には知能が備わっていた。火を扱い、武器や防具も身につけていた。
通常のゴブリンの群れなら風魔法を使い効率的に退治することは可能だったはずだが、火を扱っていたところに風魔法を使ってしまったので、枯れ葉や木々に火が燃え移り山火事になってしまった。
結果として、山火事がおさまるのに2週間程度の時間がかかってしまった。その後、ゴブリンの群れは生きているのか死んでしまったのか分からない状態になった。
一方で、ゴブリンによる被害件数は少なくなった。山火事とともに巣穴も利用できなくなった可能性が高い。
現在ストリーナ大陸ではゴブリンによる被害は再度増え始めている。
山火事とともに別の場所に移住して体制を立て直してきたと考えるのが最も現実的な考え方だろう。
マランダ先生の教訓
1.どんな状況にも対応できるように、全く対応できないような不得意な分野は作らないこと。
あのとき、もしも氷魔法や水魔法で対応していたら、あの場にいたゴブリンを全滅させることができたかもしれない。現在よりももっと少ない被害件数の未来が訪れていたかもしれない。
2.常識にとらわれすぎると対応できないことがあるので、「もしも○○だったら」という発想を持って欲しい。
知能があり火を扱うゴブリンを想定できていれば違った未来が訪れたかもしれない。
3.山火事の件で誰もマランダ先生のことを責める人はいなかった。本当にそれだけは運が良かった。
ゴブリン自体も恐ろしいが、最も恐ろしいのは人間だと思う。
ゴブリンとは、人間やゴキブリなどと同じで絶滅させることは非常に難しい。同じ地上で生きていく上ではすみ分けしていくしかないというのが今のベストな回答だろう。
前回のウエンツ先生と同じで、今回はマランダ先生の失敗談のような後悔の残るような話だ。
先生にだってプライドはあるだろうし、思い出したくもない隠しておきたい思い出もあるだろう。
そういうことを授業として私たちに話してくれるなんて、本当に良い教育者、良い学校なんだなと思った。
2回目の先生の体験談だ。
今回はマランダ先生だ。
マランダ先生はアイティマ王国の首都サイフィアにある東ギルドで活動をしていた。
首都サイフィアは水の都と呼ばれていて風光明媚な町らしい。
マランダ先生は東ギルドで最終的にはBランクになったそうだ。冒険者を続けていく道よりも、自分の経験を教育で生かしたいと思い学校の先生になることを選んだそうだ。
マランダ先生は魔法使いの冒険者だった。魔法使いを選んだのは派手な攻撃魔法に憧れていたからだった。魔法の中でも風の魔法が最も得意だったそうだ。それ以外の火や水の魔法はほとんど勉強することもなく使うこともしなかったという。彼女の当時の考え方だと、風魔法で全てを解決できるという考え方があったそうだ。
そんな中、ストリーナ大陸ではゴブリンによる被害が目立ち始めていた。
最初は小さかったゴブリンも悪事を繰り返し巨大なゴブリンに育ってしまった。そして群れを作って小さな村を襲うような事件が相次いでいた。国もそれを看過できなくなりギルドに討伐の依頼を出していた。
東ギルドとして大勢の冒険者が討伐に出向くという一大イベントが発生した。
マランダ先生は、それまで小さなゴブリンと戦うことは多かったので、このイベントに参加した。
派手な風魔法で多くのゴブリンを短時間で倒すためには風魔法が最も効率がよいと判断していた。だから自分のためにあるイベントであると感じていた。大活躍できるのは確定事項だという認識だった。
参加者たちは日夜を問わずにゴブリンたちを捜索し追い詰めていった。ゴブリンの中にも部族があるようで、ゴブリンの巣も広く様々な場所に点在していた。全てのゴブリンを駆逐する、すなわち絶滅させることは不可能であり、できる範囲で巣穴を潰していくしか方法はなかった。
ゴブリンがいて戦うのではなく、ゴブリンを探しながら戦うということだ。
当然死傷者はゼロというわけにはいかず、多少の死傷者や行方不明者は発生した。
ある日の捜索で、ゴブリンの巣穴を見つけた。近くに2、3の巣穴もあったようで多くのゴブリンと戦うことになった。
参加者のうちほとんどがゴブリンの生態を深く知っていたわけではなかった。
マランダ先生が対峙したゴブリンの部族には知能が備わっていた。火を扱い、武器や防具も身につけていた。
通常のゴブリンの群れなら風魔法を使い効率的に退治することは可能だったはずだが、火を扱っていたところに風魔法を使ってしまったので、枯れ葉や木々に火が燃え移り山火事になってしまった。
結果として、山火事がおさまるのに2週間程度の時間がかかってしまった。その後、ゴブリンの群れは生きているのか死んでしまったのか分からない状態になった。
一方で、ゴブリンによる被害件数は少なくなった。山火事とともに巣穴も利用できなくなった可能性が高い。
現在ストリーナ大陸ではゴブリンによる被害は再度増え始めている。
山火事とともに別の場所に移住して体制を立て直してきたと考えるのが最も現実的な考え方だろう。
マランダ先生の教訓
1.どんな状況にも対応できるように、全く対応できないような不得意な分野は作らないこと。
あのとき、もしも氷魔法や水魔法で対応していたら、あの場にいたゴブリンを全滅させることができたかもしれない。現在よりももっと少ない被害件数の未来が訪れていたかもしれない。
2.常識にとらわれすぎると対応できないことがあるので、「もしも○○だったら」という発想を持って欲しい。
知能があり火を扱うゴブリンを想定できていれば違った未来が訪れたかもしれない。
3.山火事の件で誰もマランダ先生のことを責める人はいなかった。本当にそれだけは運が良かった。
ゴブリン自体も恐ろしいが、最も恐ろしいのは人間だと思う。
ゴブリンとは、人間やゴキブリなどと同じで絶滅させることは非常に難しい。同じ地上で生きていく上ではすみ分けしていくしかないというのが今のベストな回答だろう。
前回のウエンツ先生と同じで、今回はマランダ先生の失敗談のような後悔の残るような話だ。
先生にだってプライドはあるだろうし、思い出したくもない隠しておきたい思い出もあるだろう。
そういうことを授業として私たちに話してくれるなんて、本当に良い教育者、良い学校なんだなと思った。
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