ウラルロイドの世界冒険記

K:ニトロ

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1章 「目覚めし鼓動」

13節 分岐A-3 届かぬ未来

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 戻りは、比較的簡単だった、道は覚えてあったし、行きよりも「捻れ」が深刻化して、「捻れの獣」が増えていたからだ

「な-んか、嫌な予感がするな?」

 この賊どもがこれだけの規模でい集まっていると言うことは、少なくとも筈である、だと言うのにこの数の獣が発生するのは些か異常である
 それこそまるで俺が入ってきたのを見計らってこの空間を消去しているかのような

「神の力?いや、それにしては違和感が…」

 そう考えながらも、牢屋に到着し、【魂魄交換】を解除する、この魔法、不便なことに、戻る時は元の器に触れるという絶対条件がある、この器にとって【可能を不可能に、不可能を可能にする能力】は負荷が大きすぎる為、使用できないのだ

「よし、異常ないな、やはり本来の器に限る、もう弱い肉体は御免被るな」

 身体の調子を確認し、牢屋の格子を壊す、その時に少し電流が走ったが、微弱(強)だったので、無傷だ
 次は倉庫に向かう、囚人服では動きにくいし、現状よりも優れた装備品があるかもしれない

 道中、何人かと遭遇し、戦闘になったりもしたが先の行動によって、大半は管理室や、司令室などの要所に移動している、中には逃走準備に移った者もいるだろう、その為、遭遇するのはごく稀で、難なく倉庫らしき部屋を見付けた

 倉庫の中は、ひどく混沌としていた、恐らく、あまり利用しない場所だったのだろう、主人の認識が薄まり、空間が元の姿に戻ろうと侵食を始め、今となっては、ここ等を基点に歪みが広がり続けている有り様だった、時空間外に大きな拠点を置く際の最もありきたりな脅威的現象だ、時空間より先に出てしまったものは、時も、座標も、概念も、理もぐちゃぐちゃにされ、永遠の中の一瞬で無に帰す、理の外の世界だ、いつかはそこも調査したいところだが、行くとしても数億年先の話になる

 そんな倉庫を漁ってみても、特に良い品はなかった、まぁ、忘れかけるレベルだ、しょうがないだろう、それであってもまともな衣類と、簡単な防具が手に入ったのは僥倖だった
 今の装備はこんな感じだ
・町人の服(物防+1 速+5 火耐-10)
・傷んだ革の胸当て(物防+5 火耐-5)
・小さなポーチ(容量+3)
・欠けた鉄剣(粗悪品 物攻+5 速-3 命中-10)
・欠けた短剣(粗悪品 物攻+1)
合計補正値 物防+6、物攻+6、速+2、命中-10、火耐-15
  と、なっている
 お世辞にも良いとは言えない装備だが、あるのと無いのでは、大分変わってくる、生身の方が強い人型生物なんて、そうそういないのだから

 装備を終えたら、再び敵の主要部屋を探して回る、見付かると面倒なことになるので、当然隠密行動が基本になる
 部屋から出ると、入る前に比べ、捻れがより悪化している、先程までは、少しひろめの四角い小部屋だったのが、壁が波打ち、天井が滴り、床が蒸発している、色彩が反転し、気味の悪い配色になっている、今までいなかった魔獣共の幼体が徘徊し、近くをみれば、一部変化した壁にびっしりと蟲型魔獣の卵が孵化した残骸が残っている、それらもまた、波に呑まれて消えてしまった
 ここまで来れば、一人や二人の力でどうこうできる次元ではない、数十人の実力者が意思を統一し死に物狂いで儀式を行えば、2割の確率で安定するだろうが、まぁ、あり得ないか、それなら脱出優先でいた方がいい
 現在はあの場所からそれなりに離れた部屋まで来たが、状況は芳しくない
 少し前までは、風に揺らぐ水面のような状態だったのに対し、現在は、天変地異もいいところな状態だ
 一方の壁はマグマに置き換わり、そこから無数の半透明な腕が生者を求め、蠢いている、みれば、もともと組員であっただろう骨が黒く崩れながら浮かんでいる
 もう一方は、一面に仮面が掛けられ、動かない口からおぞましき呪詛を呟いている、それを聞いたであろう者は、この上ない笑顔で笑いながら、自らの手で両足をもぎりとり、首をネジ切った
 天井には孔が空き、そこから獲物を求める深紅の触手が蠢き、捕らえられた者は穴の中に消えた
 床はどこまでも飲み込み続ける底無しの流砂で、一度嵌まれば脱出はほぼほぼ不可能だ、それだけでも大変危険なのに、強酸性の液体が滲んでいて、時折間欠泉のように吹き出ている
 空気には、思考出来なくなる劇毒と、自律神経を破壊する猛毒が含まれている、さらにこれらの毒には、【解毒不可】の付与効果のおまけ付きだ
 他の部屋に移動しても、危険性は変わらず、むしろ危険性が増していく
 管理室であった部屋には、木々が生い茂り、捻れの獣たちが徘徊していた
 武器庫であったのであろう場所は、幾何学模様の線が浮かび、光る線は、色によって様々な損害を生み出している
 寝所であろう場所は、隅々まで肉肉しい物質になり、その一部からは、人の腕や足が飛び出ていたり、小さな隙間からは、白眼を剥いた顔が覗く、天井からは血が滴っていて、付着すると、強い悪臭を放ちながら肉体を腐らせている
 もはや判別つかない場所では、あり得ないほどに引き伸ばされた人々が老若男女問わずその部屋を型どっていた、腕や足、中には胴体が裂けかけていたりしているが、全員生きている、それらは皆一様に苦悶の声をあげていた、助けようにも、それぞれに強力な呪いが付与されているため、下手に触れれば、俺もこいつらの仲間入りしてしまう可能性がある
 更に、床すらも人体だ血生臭く、一歩進む毎に鳴る呻き声は、とても凄惨で、悲壮的であった
 暗い部屋があった、扉周りや天井に、ランプや魔灯が設置してあるのに、その明かりは10cm先までしか照らせない暗闇、その闇に触れれば、1秒でやるせない気持ちになり、5秒で鬱の症状が出始める、30秒もいれば自殺願望が増幅され、1分経てば、闇に溶け行く
 そして、何よりも恐ろしいのは、今までの捻れの景色は、ということだろう、他の生でも捻れの中に潜入することはよくあったが、ここまでの危険地帯に出くわすことは、ほぼ無かった、この世界は相当命の価値が低そうだ

 進んでいる内に、とうとう俺の身体にも異常が表れ始めた、今はまだ変色だけだが、変形してしまうのも時間の問題だろう

ーーーー30分後ーーーー

 意識が朦朧もうろうとしてきた、息苦しく、視界もぼやけている、手足の感覚は薄くなっている、出口はどこだ?

ーーーー更に30分後ーーーー

「・・・・・・・・」
[本体の意識が途絶えました、緊急生命維持機能を起動します]
[選別中・・・選別中・・・最適意志は現在封印状態、目覚めたものの中から選別されます]
[選別完了【◼️◼️◼️】『創り壊す狭間の主Lv.1』が暴走します]
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