幽霊の恋人

柚木 かつお

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花火大会③(前編)

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「こっち。」

レイが手招きして、近くに来て、という合図をした。

「なに?」

「ここは名前が言えないから、迷子にならないように。はい」

そう言ってレイは手を出してきた。

「早く握ってよ。」

‥そういう意味ですか!

「うん」

ぎゅっと、離れないようにレイの手を握った。

「ねえ、おれ、金魚すくい行きたい!」

「え?あ、うん!行こ」

人が多くて、屋台に挟まれた道は隙間がないくらいお面で埋まっている。

…花火、よっぽどきれいなのかなぁ....

いろんなお面をつけた人がいる。

猿、雉、犬‥鬼もいる…

って…これじゃ桃太郎じゃない!?

もしかして桃太郎もいる…?

ふと、レイのお面を見る。

....いたーーーっ!桃太郎はお前かーーっ!?

‥じゃあ私はなに‥?

「ねえ、金魚すくいもうすぐだよ」

「あ、ごめん」

「ねえ、なんでよそ見ばっかりしてんの?」

「えっと…」

「景色よりおれ見なよ~」

「あ‥違…」

「違くない!」

「‥分かったよ~っ…」

喋りながら歩いていくと、やっと金魚すくいの看板が見えた。

「ねえ、相当奥にあると思わない?屋台とか…ほら…」

「そーだねえ。あ、山まで道が続いてる!やっぱおれ此処から花火見る!」

「え…!?もう真っ暗だよ…!?」

「大丈夫」

そう言ってレイは何処からか提灯を出した。

「どこから出てきた‥?」

「さあ」

「ま、行こ」

「う‥うん…」

月の灯に照らされながらも、真っ暗な山の道を見て、少し鳥肌がたった。

「怖…」

「ねえ、暗いとこ、苦手?」

「あ‥うん…」

「そっか…じゃあ戻る?」

「え‥!?大丈夫!だってもう、山の中間ぐらいでしょ?」

「うん」

「だから。大丈夫!」

「ほんとに‥?本当は足挫いてるでしょ。」

「う…」

「はい」

レイはしゃがみ込んだ。

「えっと…」

「乗らないの?足痛いんでしょ?」

「じゃあ…よろしく‥お願いします....」

「よっと」

私は、山の頂上までレイにおぶってもらった。



「あ、凄い‥!よく見える!」

「ほんとだ~。花火も凄そうだね~」

下を見ると、絶壁になっていた。

‥こんな山だったっけ‥?

もっと下は、山を囲むように屋台が円状に並んでいた。

「なんか寒い‥」

「結構上だからね~。これ羽織りなよ」

レイは自分の羽織っていたカーディガンを貸してくれた。

「ありがと‥」

なんか今日、レイにいっぱい助けられてない‥!?

「あ、花火始まるらしいよー」

とレイが言った瞬間、バーンと大きな音が聞こえた。

「わ!?」

びっくりしてレイにもたれ掛かる。

レイは私を支えながら言った。

「ほら、見て。あれ。綺麗だね‥」

「うん‥凄い」

紺色の空に広がる花火は、物凄く綺麗だった。




「‥終わったみたい」

「うん」

「じゃあ、帰ろっか。」

そう言ってレイは地面に落ちている枝を使って、地面に文字を書き始めた。

「何書いてるの?」

「これ」

円の中に入って、と言って、レイはなにかの呪文を言った。

「目、つぶっててね。」

周りが明るくなった。

「もう開けていいよ。」

恐る恐る目を開けた。

するとそこはさっきの山の入り口だった。

「‥????」

「さっきのは移転陣。どこでも移動できるの。」

「へえ‥」

「凄いでしょ!」

「うん!凄い!」

レイと喋っていると、アナウンスが聞こえてきた。

『…コレカラ、オニゴッコをヤリマス。オニヤクノヒトハヒロバに、ホカノヒトハヤタイノチカクデ…キュウニオニガハナタレマすノデオキオツケクダサイ‥』

「なにが始まるの?」

「鬼ごっこだよ。おいで、早く逃げよ。」

私はレイについていくようにして走った。

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