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二章
20話
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狭い室内に置いて魔人の身体は酷く窮屈そうに映る。
もちろんここは魔人の家、廊下の高さも広さも人の世界の物とは全く違うが、住居というのはそもそも戦闘を想定して作られていない。
当たり前の話だが住居は生活を営むための場所であり、戦闘とはその生活を守る為に行う物だ。
それら2つは相反する物であり、同じ場所に点在する事は日常ではまずない。
この場にきて初めて──いや、リナと共に過ごした五年間で初めてアデルは構えをとった。
一部の隙の無い構え、どう打ち込んでも反撃されることが分かりきった様なその構えを前にして魔神と呼ばれた魔族は無造作に近づき、間合いのほんの少し手前で止まると言葉をかける。
「娘を下ろせ最強」
「別にこの子を担いでてもお前程度なら余裕なんだよ」
「そう言うことではない。お前が担いでいても万が一がある、下ろせ。この家のものには手出しさせんし、外におる魔王に護らせれば安全だろう。我はお前と全力でぶつかり合いたいのだ」
ハイベリア・オスガルドについてアデルが知っていることは二つ。
一つは油断できない相手だとアデルが思う程度には強いということ。
もう一つはやけに何かに固執していたということだ。
昔の自分ではそれがなんなのかまるで理解できなかったが、彼が固執しているのは強者との戦いである。
もし万が一負けた際にアデルがそう言わなかったとしても、周囲の人物から守っているものがいたからアデルに勝てたのだと言われる可能性を作ることが彼にとっては我慢ならないのだろう。
勝手に攻め込んでいる側だというのにリナを攻撃しないと従者の前で口にするとは、なんとも豪胆な男である。
「随分とまぁ好かれたもんだね。ほら下ろしたよ、これでいいのか?」
「スキルも何もかも使え、我の命を取っても構わん。武装も何もかも、本気でこい」
「リナ、俺のカバンとって」
「投げるぞ」
なればこそアデルはその相手に対して全力で応える準備を始める。
もちろん逃げたり不意打ちをしたりとすることは色々できるが、こういう手合いは正面から堂々と圧倒的な力で踏み潰さなければ無限に襲いかかってくるものだ。
だから端正に一つずつ実力差を知らしめ、もはやどう足掻いても勝てないと相手が思うまで何度も叩き潰す必要がある。
いくつかの小瓶を砕いて能力を発動させれば、アデルの身体はゆっくりと黒色の鎧によってその身体が纏われていく。
アデルが唯一竜王から渡された形ある遺物、武器と鎧で一対になったこれらは浴びた血の数でその強度を増すという性質を持っており、数百年間血を浴び続けたその強度はもはやこの世界に比肩する物など存在しない。
「それがお前の本気の姿か。凄いな、対峙しているだけで震えが止まらん」
「加減はしないぞ。狭い室内だけどいいの?」
「構わんさ、どうせすぐに外に出る」
ミシリとまるでガラスが割れる様な音が聞こえ、それよりも先に飛び込んできていたハイベリアの姿にアデルは落ち着いて手を向ける。
「──!!」
何かを叫んで武器を振るったのだろう。
勇猛な戦士の雄叫びは、だが残念なことにアデルに届く前に事切れてしまっていた。
どれだけ速かろうが堅かろうが、空間を断絶する力を持つアデルを前にすればそれらは全て無駄だ。
「スキルの使用は許可するべきじゃなかったな。こうなることなんてわかりきって──」
爆音と共に人影が壁をぶち破って外へと出ていく。
殴られた、誰が?
答えは単純明快だ。
言葉に先程までいた男、最強が外へと吹き飛ばされたのだ。
全身を切り刻まれ核だけにっていたはずのハイベリアはニコニコと嬉しそうな顔をしながら、殴り飛ばした瞬間に切り刻まれた手を嬉しそうに振るうって吹き飛んでいったアデルに声をかける。
「どうだ最強? 顔面をぶん殴られた感覚は」
「ゾンビにでもなったのか? 最悪の気分だよ」
吹き飛ばされるのなんていつ以来か。
そうアデルが考えなければわからないほどの昔のこと、油断してしまっていた自分を恥じながらアデルはゆっくりと立ち上がった。
鎧の力もあって負傷というほどの怪我はないが、それでも体に違和感は感じられる。
魔族の膂力というのはそれほどのものであり、アデルは構えを取り直すと慎重に視線を向ける。
「いくぞ最強」
再びミシリと音がしてハイベリアはアデルの方へと一直線に飛び込んでいく。
直線的過ぎる攻撃はいまから何をしたいのか予測することが簡単だが、極め過ぎたその一撃は何がくるか分かっていても対処する側にもそれなりの技術が求められる。
大ぶりの右拳を剣で切り落とすのではなく弾き飛ばし耐性を崩したアデルは、それ同時に足首、膝、腰の順番でハイベリアを切り分けた。
尋常とはないほどの回復速度を手に入れた様だが体制が崩れた状態で、かつ複数に分割されていれば回復にもそれなりに時間を要するだろうというアデルの判断。
だがそれは正解であり不正解でもあった。
確かに直すのに時間はかかる上に、もし治せたとしても拳を弾かれたことで再び殴るための予備動作を作る時間がハイベリアにはない。
だがそれはハイベリアが元通りに身体を取り付けようとした場合の問題である。
「──ッ! 痛ってぇな、口の中切っただろ」
「二度目、なかなかいい手応えだったぞいまのは」
ハイベリアは自身の上半身と下半身をあろうことか反対方向に癒着させ、回転する上半身の力をそのままに左拳でアデルの顔面を殴りつける。
クリーンヒットには程遠いが、それでも防御させずにアデルに直撃を与えたのはこの五百年間竜王を除けば唯一の人物が更新されたわけだ。
「最強も意外と遠くないのかもしれんな。それともそこの女が近くにいると本気が出せないか?」
「魔王、死ぬ気でリナを守れ。守りきったらなんでも話を聞いてやろう」
「任せとき。ウチの強さを見せたるわ!!」
「これで本気がだせるな最強──ッ!」
魔王が結界を構築したのを確認し、アデル初めて自分からハイベリアの方へと突撃する。
ハイベリアとは違い音もないアデルの前へのステップは、ほんの一瞬だけハイベリアの意識の外へと侵入した。
それから目にも留まらぬ速度での一閃。
切られた側のハイベリアですらも何をされたか分からないほどの一撃に強制的に吹き飛ばされていく。
「だらだら喋ってる暇なんかないでしょ。死ぬよ?」
「や、山が消えたぞ。あれ生きてるのか?」
「威力流されてたから生きてるやろ、あのおっさんが簡単にくたばるとも思えんし」
視界の端で余波によって吹き飛んだ山と庭を眺めていると、ほんの一瞬だけキラリと何かが光る様な仕草が目に入る。
それから瞬きの間もなく突撃してきたはイベリアを、アデルは剣によって迎え入れていた。
どれだけ攻撃したところで不死身の体を持つのであれば意味はない。
万を超える回数ハイベリアを切り刻んだアデルはそのことを実感させられていた。
「ぬうっ!! さすがに強いなッ!!」
「断絶」
「効かん! 効かん! 効かああぁぁぁぁっん!!!」
「痩せ我慢するなよ。年寄りの痩せ我慢なんて見てられないぞ?」
とはいえ回復になんのデメリットも無いわけがない。
先程から回復するたびにほんの少しではあるがハイベリアの回復速度は落ちてきているし、動きも徐々に悪くなってきている。
熟練の技で上手く隠しているが、戦闘経験で言えば魔界に引きこもっていたハイベリアよりもアデルの方がよほど多い。
とはいえこのままでは七日七晩戦ったところで決着がつくかどうかすらもあいまいだ。
仕事でもないのにそこまでして戦い続ける気もないアデルは、違う方法でもってハイベリアの耐久性能がどこまであるのかを試してみることにした。
「実際問題効いていないから聞いてないと言っているのだ」
「物理は一旦確認したけど、魔法はどうだろうなぁお爺ちゃん」
この世界の魔法というものについて詳しく説明するのであれば、個人が体内に保有している魔力を使用して外の世界の事象を曲げる行為だと覚えておけばいいだろう。
努力というものもある程度必要ではあるが剣術や弓術などとは違い、100%を才能によって決められるこの魔法というものは言い換えると才能さえあればすべてなんとかできるというものである。
足元へ広がる巨大な魔法陣に精製した端から魔力を注ぎ続けるアデルは、普通ならば長時間かかるはずの魔法を短略化させて発動した。
「ははっ。貴様は魔法でも最強か」
「違うよ。全部で最強だから最強なんだ」
「──おいおいおい! アデルこれ私達大丈なのか!?」
「信頼せぇや最強とそれに喰らいついてる魔神を」
ハイベリアが乾いた笑みを浮かべるのも仕方がないことだろう。
アデルの魔法によって生み出されたものは隕石。
もちろん本物の隕石ではなく概念的なものなので衝撃波や速度などというものは本来のものに比べれば大した事はないが、それでも隕石だ。
直径にして100メートルは楽に超える規模のその隕石を前にして、ハイベリアは屋敷の上に飛び乗ると両手を広げた。
こともあろうに彼は空から降ってくる隕石を受け止めようというのだ。
「があっっ!!」
「壊した!?」
受け止めてどうするのかと傍目から見ていたアデルを他所に、ハイベリアは落ちてきた隕石を弾き飛ばし続いて振るった攻撃で隕石を粉々にする。
さすがは魔神と言われるだけのことはある。
「いまのを防ぐか。やるねぇおじいちゃんっ!」
「若造にはまだ負けられねぇさ!!!」
「さすがにハイベリアももうキツいか。終わったな」
盛り上がっていく二人を他所に、魔王は冷静に勝敗を分析する。
すぐに目に見えるほどの差はないが一手を打つたびに徐々に差は開いていき、撃ち合いを重ねれば重ねるほどにハイベリアの敗北は濃厚なものへと変わっていく。
肉体の消耗から精神の消耗へと舵を切ったアデルによって、ハイベリアは身体中に傷を負い武器を構える腕すらも上がらなくなってきていた。
だがその目は死んでおらず、むしろ勝つための道筋を見つけたとでも言いたげだ。
「はぁっ…はあっ……最強、貴様の弱点…ッわかったぞ」
「参考までに聞かせてもらうよ。なに?」
自分に弱点などあるはずがない。
そう言いたげなアデルの言葉に対してハイベリアはあえてそんなことはないと声高に宣言する。
弱点がない生物など存在するはずがないのだ。
たとえそれが最強と呼ばれる生物であったとしても。
魔族の観点で言えばたとえ自分が死んだとしても相手を倒せばそれは勝ち。
この戦闘を魔王からの依頼の一環だとしかとらえていないアデルとは違い、ハイベリアはこの一戦に命をかけている。
「お前の弱点は……ッぐ……己の中の凶暴性を抑えようとするところだ。だからお前は我には勝てぬ、元祖帰り──」
「──ダメェッ!」
ハイベリアがおそらくは必殺技と呼べるようなものを使用する兆候を見せていたその時、アデルとハイベリアの間に一人の少女が乱入してくる。
金髪の綺麗な長髪をなびかせながら周囲から人気の出そうな可愛らしい顔を焦りと緊張感で固めた少女が来たことで死ぬ覚悟を決めていたハイベリアの顔が少し変化したことからも、どうやら彼女はハイベリアにとって大切な人物であるようだ。
先頭に入って来るタイミングとしては完璧、先ほどからちらちらと視線は感じていたので入って来るつもりなのだろうと思って居たアデルは、目の前の少女が焦っている割に意外と冷静であることをしっかりと見抜いていた。
「……なんだこの子」
「お爺様を虐めないで! そこまででいいでしょう!?」
「エリーナ、危ないから離れていなさい」
「お爺様にとって、命をかける価値のある戦いなのですかこれが!」
「そうだ」
違うとそういって欲しかったのだろう。
祖父が肯定の言葉を口にしたとたん、彼女は本気なのかと言いたげな顔になる。
魔族であるから好戦的だというわけではない。
そう説明したアデルの言葉通り、戦う事を至上だと考えていない魔族だってもちろん存在する。
彼女だってその例に漏れず戦闘で命を失うことは良くない事だと考える派閥の魔族なわけだが、残念なことに戦闘こそを自らの価値としてきた男であるハイベリアに対して戦闘で死ぬべきではないとどれだけ伝えたところで無駄な行為でしかないのだ。
怒鳴りつけ殴り飛ばさないだけハイベリアが彼女を本気で愛していることの証明だといってもいい。
頬に手を当て、彼女の目線まで腰を落としてハイベリアは己の意思をただまっすぐに伝える。
「我はかつてこの男に勝利し、見下し嘲り魔王など大したことがないとまで言った。その間違いを正すために我はこの男と戦うのだ」
ハイベリアの言葉を受けて驚くリナに視線をずらしたアデル。
アデルとしては話してほしくない過去だが、邪魔をできる雰囲気でもない。
「どうしてですか? お爺様が勝たれたのであれば、この戦闘はしなくても良いではないですか」
「お前は魔界へと一人で攻め込み、ありとあらゆる魔族を蹴散らし、単身で魔王を倒した上に後からやってきた人類にさえ命を狙われ、不意打ちで重傷を負った男と戦って私がギリギリ勝っただけの勝利に価値があると、そう思うのか?」
「それは……」
「この男が本気を出さないのであれば、我は命を奪うつもりでこの男に挑む。本気同士のぶつかり合いにこそ、我らの価値は存在するのだ」
勝ちは勝ち、それで割り切れるのであれば魔界最強でありながら鍛え続けるようなことはしないだろう。
涙を流しながらハイベリアの意思を変える事はもはや不可能だと判断したらしい少女がどこかへと走り去っていくのを眺めながら、アデルはハイベリアに対して言葉を投げかける。
「どうしても、本気でやらないとダメなのか?」
「どうしてもだ」
「分かった。なら本気を出す、だけどさっきの奥の手はやめろ。小さい子が泣くのは趣味じゃない」
「それでお前が本気を出してくれるのであれば、私はそれで構わない」
「死ぬなよ爺さん」
最強としての力を行使するにはそれなりの負担がかかる。
わざわざ命を賭けていない戦闘に本気を出そうと思えるほどアデルは戦闘狂ではないため抑えていたわけだが、どうしてもというのであれば力を行使するのもやぶさかでない。
かつて何度もそうしたように魔力によって己の限界を突破し、軋む体を回復魔法で直しながらアデルは物理限界すらも突破した人ではない何かへと変貌していく。
頭部の辺りから漏れだした黒い魔力はどろりと粘性の液体へと変化しており、アデルの全身をまとうそれはとどまることを知らずにあふれ出続ける。
尋常ではない魔力によって空気中の魔力が液体となって発生する超常現象であり、生物はその姿を見て逃げ出さずにはいられない。
がたがたと震える足を石の力で押さえつけ、魔王に肩を借りてもなを涙目になっているリナがそのいい証拠。
敵として前に立ち戦っているハイベリアが感じているだろう威圧感を考えるとそれだけで気絶してしまいそうになる。
「──ああ、やっぱりつえぇな」
そうやってハイベリアがつぶやいた瞬間。
彼の体は塵へと変わりその場所には彼のコアだけが残る。
こうして魔神ハイベリアと最強の戦闘は終了したのであった。
もちろんここは魔人の家、廊下の高さも広さも人の世界の物とは全く違うが、住居というのはそもそも戦闘を想定して作られていない。
当たり前の話だが住居は生活を営むための場所であり、戦闘とはその生活を守る為に行う物だ。
それら2つは相反する物であり、同じ場所に点在する事は日常ではまずない。
この場にきて初めて──いや、リナと共に過ごした五年間で初めてアデルは構えをとった。
一部の隙の無い構え、どう打ち込んでも反撃されることが分かりきった様なその構えを前にして魔神と呼ばれた魔族は無造作に近づき、間合いのほんの少し手前で止まると言葉をかける。
「娘を下ろせ最強」
「別にこの子を担いでてもお前程度なら余裕なんだよ」
「そう言うことではない。お前が担いでいても万が一がある、下ろせ。この家のものには手出しさせんし、外におる魔王に護らせれば安全だろう。我はお前と全力でぶつかり合いたいのだ」
ハイベリア・オスガルドについてアデルが知っていることは二つ。
一つは油断できない相手だとアデルが思う程度には強いということ。
もう一つはやけに何かに固執していたということだ。
昔の自分ではそれがなんなのかまるで理解できなかったが、彼が固執しているのは強者との戦いである。
もし万が一負けた際にアデルがそう言わなかったとしても、周囲の人物から守っているものがいたからアデルに勝てたのだと言われる可能性を作ることが彼にとっては我慢ならないのだろう。
勝手に攻め込んでいる側だというのにリナを攻撃しないと従者の前で口にするとは、なんとも豪胆な男である。
「随分とまぁ好かれたもんだね。ほら下ろしたよ、これでいいのか?」
「スキルも何もかも使え、我の命を取っても構わん。武装も何もかも、本気でこい」
「リナ、俺のカバンとって」
「投げるぞ」
なればこそアデルはその相手に対して全力で応える準備を始める。
もちろん逃げたり不意打ちをしたりとすることは色々できるが、こういう手合いは正面から堂々と圧倒的な力で踏み潰さなければ無限に襲いかかってくるものだ。
だから端正に一つずつ実力差を知らしめ、もはやどう足掻いても勝てないと相手が思うまで何度も叩き潰す必要がある。
いくつかの小瓶を砕いて能力を発動させれば、アデルの身体はゆっくりと黒色の鎧によってその身体が纏われていく。
アデルが唯一竜王から渡された形ある遺物、武器と鎧で一対になったこれらは浴びた血の数でその強度を増すという性質を持っており、数百年間血を浴び続けたその強度はもはやこの世界に比肩する物など存在しない。
「それがお前の本気の姿か。凄いな、対峙しているだけで震えが止まらん」
「加減はしないぞ。狭い室内だけどいいの?」
「構わんさ、どうせすぐに外に出る」
ミシリとまるでガラスが割れる様な音が聞こえ、それよりも先に飛び込んできていたハイベリアの姿にアデルは落ち着いて手を向ける。
「──!!」
何かを叫んで武器を振るったのだろう。
勇猛な戦士の雄叫びは、だが残念なことにアデルに届く前に事切れてしまっていた。
どれだけ速かろうが堅かろうが、空間を断絶する力を持つアデルを前にすればそれらは全て無駄だ。
「スキルの使用は許可するべきじゃなかったな。こうなることなんてわかりきって──」
爆音と共に人影が壁をぶち破って外へと出ていく。
殴られた、誰が?
答えは単純明快だ。
言葉に先程までいた男、最強が外へと吹き飛ばされたのだ。
全身を切り刻まれ核だけにっていたはずのハイベリアはニコニコと嬉しそうな顔をしながら、殴り飛ばした瞬間に切り刻まれた手を嬉しそうに振るうって吹き飛んでいったアデルに声をかける。
「どうだ最強? 顔面をぶん殴られた感覚は」
「ゾンビにでもなったのか? 最悪の気分だよ」
吹き飛ばされるのなんていつ以来か。
そうアデルが考えなければわからないほどの昔のこと、油断してしまっていた自分を恥じながらアデルはゆっくりと立ち上がった。
鎧の力もあって負傷というほどの怪我はないが、それでも体に違和感は感じられる。
魔族の膂力というのはそれほどのものであり、アデルは構えを取り直すと慎重に視線を向ける。
「いくぞ最強」
再びミシリと音がしてハイベリアはアデルの方へと一直線に飛び込んでいく。
直線的過ぎる攻撃はいまから何をしたいのか予測することが簡単だが、極め過ぎたその一撃は何がくるか分かっていても対処する側にもそれなりの技術が求められる。
大ぶりの右拳を剣で切り落とすのではなく弾き飛ばし耐性を崩したアデルは、それ同時に足首、膝、腰の順番でハイベリアを切り分けた。
尋常とはないほどの回復速度を手に入れた様だが体制が崩れた状態で、かつ複数に分割されていれば回復にもそれなりに時間を要するだろうというアデルの判断。
だがそれは正解であり不正解でもあった。
確かに直すのに時間はかかる上に、もし治せたとしても拳を弾かれたことで再び殴るための予備動作を作る時間がハイベリアにはない。
だがそれはハイベリアが元通りに身体を取り付けようとした場合の問題である。
「──ッ! 痛ってぇな、口の中切っただろ」
「二度目、なかなかいい手応えだったぞいまのは」
ハイベリアは自身の上半身と下半身をあろうことか反対方向に癒着させ、回転する上半身の力をそのままに左拳でアデルの顔面を殴りつける。
クリーンヒットには程遠いが、それでも防御させずにアデルに直撃を与えたのはこの五百年間竜王を除けば唯一の人物が更新されたわけだ。
「最強も意外と遠くないのかもしれんな。それともそこの女が近くにいると本気が出せないか?」
「魔王、死ぬ気でリナを守れ。守りきったらなんでも話を聞いてやろう」
「任せとき。ウチの強さを見せたるわ!!」
「これで本気がだせるな最強──ッ!」
魔王が結界を構築したのを確認し、アデル初めて自分からハイベリアの方へと突撃する。
ハイベリアとは違い音もないアデルの前へのステップは、ほんの一瞬だけハイベリアの意識の外へと侵入した。
それから目にも留まらぬ速度での一閃。
切られた側のハイベリアですらも何をされたか分からないほどの一撃に強制的に吹き飛ばされていく。
「だらだら喋ってる暇なんかないでしょ。死ぬよ?」
「や、山が消えたぞ。あれ生きてるのか?」
「威力流されてたから生きてるやろ、あのおっさんが簡単にくたばるとも思えんし」
視界の端で余波によって吹き飛んだ山と庭を眺めていると、ほんの一瞬だけキラリと何かが光る様な仕草が目に入る。
それから瞬きの間もなく突撃してきたはイベリアを、アデルは剣によって迎え入れていた。
どれだけ攻撃したところで不死身の体を持つのであれば意味はない。
万を超える回数ハイベリアを切り刻んだアデルはそのことを実感させられていた。
「ぬうっ!! さすがに強いなッ!!」
「断絶」
「効かん! 効かん! 効かああぁぁぁぁっん!!!」
「痩せ我慢するなよ。年寄りの痩せ我慢なんて見てられないぞ?」
とはいえ回復になんのデメリットも無いわけがない。
先程から回復するたびにほんの少しではあるがハイベリアの回復速度は落ちてきているし、動きも徐々に悪くなってきている。
熟練の技で上手く隠しているが、戦闘経験で言えば魔界に引きこもっていたハイベリアよりもアデルの方がよほど多い。
とはいえこのままでは七日七晩戦ったところで決着がつくかどうかすらもあいまいだ。
仕事でもないのにそこまでして戦い続ける気もないアデルは、違う方法でもってハイベリアの耐久性能がどこまであるのかを試してみることにした。
「実際問題効いていないから聞いてないと言っているのだ」
「物理は一旦確認したけど、魔法はどうだろうなぁお爺ちゃん」
この世界の魔法というものについて詳しく説明するのであれば、個人が体内に保有している魔力を使用して外の世界の事象を曲げる行為だと覚えておけばいいだろう。
努力というものもある程度必要ではあるが剣術や弓術などとは違い、100%を才能によって決められるこの魔法というものは言い換えると才能さえあればすべてなんとかできるというものである。
足元へ広がる巨大な魔法陣に精製した端から魔力を注ぎ続けるアデルは、普通ならば長時間かかるはずの魔法を短略化させて発動した。
「ははっ。貴様は魔法でも最強か」
「違うよ。全部で最強だから最強なんだ」
「──おいおいおい! アデルこれ私達大丈なのか!?」
「信頼せぇや最強とそれに喰らいついてる魔神を」
ハイベリアが乾いた笑みを浮かべるのも仕方がないことだろう。
アデルの魔法によって生み出されたものは隕石。
もちろん本物の隕石ではなく概念的なものなので衝撃波や速度などというものは本来のものに比べれば大した事はないが、それでも隕石だ。
直径にして100メートルは楽に超える規模のその隕石を前にして、ハイベリアは屋敷の上に飛び乗ると両手を広げた。
こともあろうに彼は空から降ってくる隕石を受け止めようというのだ。
「があっっ!!」
「壊した!?」
受け止めてどうするのかと傍目から見ていたアデルを他所に、ハイベリアは落ちてきた隕石を弾き飛ばし続いて振るった攻撃で隕石を粉々にする。
さすがは魔神と言われるだけのことはある。
「いまのを防ぐか。やるねぇおじいちゃんっ!」
「若造にはまだ負けられねぇさ!!!」
「さすがにハイベリアももうキツいか。終わったな」
盛り上がっていく二人を他所に、魔王は冷静に勝敗を分析する。
すぐに目に見えるほどの差はないが一手を打つたびに徐々に差は開いていき、撃ち合いを重ねれば重ねるほどにハイベリアの敗北は濃厚なものへと変わっていく。
肉体の消耗から精神の消耗へと舵を切ったアデルによって、ハイベリアは身体中に傷を負い武器を構える腕すらも上がらなくなってきていた。
だがその目は死んでおらず、むしろ勝つための道筋を見つけたとでも言いたげだ。
「はぁっ…はあっ……最強、貴様の弱点…ッわかったぞ」
「参考までに聞かせてもらうよ。なに?」
自分に弱点などあるはずがない。
そう言いたげなアデルの言葉に対してハイベリアはあえてそんなことはないと声高に宣言する。
弱点がない生物など存在するはずがないのだ。
たとえそれが最強と呼ばれる生物であったとしても。
魔族の観点で言えばたとえ自分が死んだとしても相手を倒せばそれは勝ち。
この戦闘を魔王からの依頼の一環だとしかとらえていないアデルとは違い、ハイベリアはこの一戦に命をかけている。
「お前の弱点は……ッぐ……己の中の凶暴性を抑えようとするところだ。だからお前は我には勝てぬ、元祖帰り──」
「──ダメェッ!」
ハイベリアがおそらくは必殺技と呼べるようなものを使用する兆候を見せていたその時、アデルとハイベリアの間に一人の少女が乱入してくる。
金髪の綺麗な長髪をなびかせながら周囲から人気の出そうな可愛らしい顔を焦りと緊張感で固めた少女が来たことで死ぬ覚悟を決めていたハイベリアの顔が少し変化したことからも、どうやら彼女はハイベリアにとって大切な人物であるようだ。
先頭に入って来るタイミングとしては完璧、先ほどからちらちらと視線は感じていたので入って来るつもりなのだろうと思って居たアデルは、目の前の少女が焦っている割に意外と冷静であることをしっかりと見抜いていた。
「……なんだこの子」
「お爺様を虐めないで! そこまででいいでしょう!?」
「エリーナ、危ないから離れていなさい」
「お爺様にとって、命をかける価値のある戦いなのですかこれが!」
「そうだ」
違うとそういって欲しかったのだろう。
祖父が肯定の言葉を口にしたとたん、彼女は本気なのかと言いたげな顔になる。
魔族であるから好戦的だというわけではない。
そう説明したアデルの言葉通り、戦う事を至上だと考えていない魔族だってもちろん存在する。
彼女だってその例に漏れず戦闘で命を失うことは良くない事だと考える派閥の魔族なわけだが、残念なことに戦闘こそを自らの価値としてきた男であるハイベリアに対して戦闘で死ぬべきではないとどれだけ伝えたところで無駄な行為でしかないのだ。
怒鳴りつけ殴り飛ばさないだけハイベリアが彼女を本気で愛していることの証明だといってもいい。
頬に手を当て、彼女の目線まで腰を落としてハイベリアは己の意思をただまっすぐに伝える。
「我はかつてこの男に勝利し、見下し嘲り魔王など大したことがないとまで言った。その間違いを正すために我はこの男と戦うのだ」
ハイベリアの言葉を受けて驚くリナに視線をずらしたアデル。
アデルとしては話してほしくない過去だが、邪魔をできる雰囲気でもない。
「どうしてですか? お爺様が勝たれたのであれば、この戦闘はしなくても良いではないですか」
「お前は魔界へと一人で攻め込み、ありとあらゆる魔族を蹴散らし、単身で魔王を倒した上に後からやってきた人類にさえ命を狙われ、不意打ちで重傷を負った男と戦って私がギリギリ勝っただけの勝利に価値があると、そう思うのか?」
「それは……」
「この男が本気を出さないのであれば、我は命を奪うつもりでこの男に挑む。本気同士のぶつかり合いにこそ、我らの価値は存在するのだ」
勝ちは勝ち、それで割り切れるのであれば魔界最強でありながら鍛え続けるようなことはしないだろう。
涙を流しながらハイベリアの意思を変える事はもはや不可能だと判断したらしい少女がどこかへと走り去っていくのを眺めながら、アデルはハイベリアに対して言葉を投げかける。
「どうしても、本気でやらないとダメなのか?」
「どうしてもだ」
「分かった。なら本気を出す、だけどさっきの奥の手はやめろ。小さい子が泣くのは趣味じゃない」
「それでお前が本気を出してくれるのであれば、私はそれで構わない」
「死ぬなよ爺さん」
最強としての力を行使するにはそれなりの負担がかかる。
わざわざ命を賭けていない戦闘に本気を出そうと思えるほどアデルは戦闘狂ではないため抑えていたわけだが、どうしてもというのであれば力を行使するのもやぶさかでない。
かつて何度もそうしたように魔力によって己の限界を突破し、軋む体を回復魔法で直しながらアデルは物理限界すらも突破した人ではない何かへと変貌していく。
頭部の辺りから漏れだした黒い魔力はどろりと粘性の液体へと変化しており、アデルの全身をまとうそれはとどまることを知らずにあふれ出続ける。
尋常ではない魔力によって空気中の魔力が液体となって発生する超常現象であり、生物はその姿を見て逃げ出さずにはいられない。
がたがたと震える足を石の力で押さえつけ、魔王に肩を借りてもなを涙目になっているリナがそのいい証拠。
敵として前に立ち戦っているハイベリアが感じているだろう威圧感を考えるとそれだけで気絶してしまいそうになる。
「──ああ、やっぱりつえぇな」
そうやってハイベリアがつぶやいた瞬間。
彼の体は塵へと変わりその場所には彼のコアだけが残る。
こうして魔神ハイベリアと最強の戦闘は終了したのであった。
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【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
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