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第1章 転生しました!

キャンプ一日目前半

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キャンプ初日。

朝4時に起きている篤郎には苦も無く、洗濯を始め、掃除を簡単に行い、ベッドメイクをしてから乾燥機で乾かして、軽い朝食を食べて、洗濯物を畳んで棚に戻して6時前に余裕で家を出た。
拾うべき人間(竹下、文雄)を回収しつつ、6時40分に駅に到着した。合流地点は先の忍ヶ丘駅で8時に集合にしている。
合流して目的地点へは危険だ。学校毎とかは良いが、文雄と竹下には土台無理な話なのだ。
休日は貪るように眠る、だらけた人種だからだ。

「「眠いよー、起きたくないよー。」」

の合唱も、問答無用の水攻めで撃退。

「「行きたくないよー。」」

も、チョイと絞めて落として連れ出している。
此も、高校試験で散々していたので、親姉弟公認で出来る。

6時50分の忍ヶ丘行きに間に合うと、電車の長椅子に二人を寝かした。特着まで30分。7時半前には到着した。
一番乗りみたいだ。寝坊助達を放置して、外で朝の一杯コーヒーを作り出す。
5分で一人ベンチに座りながらのんびり皆の到着を待つ。
此処で私の姿だが、ジーパンにトレッキングブーツ、厚手の長袖と帽子をしている。勿論、母親のガジェットは各所にしまっているし、お気に入りの工芸品はベルトにしている。世界の物も素晴らしいが、日本のガジェットも素晴らしい。大抵は玩具だが、弱い箇所を鉄等に変えたり、長さを調節すると恐ろしい武器にもなる。
物造り日本は本当に恐ろしい世界だ。

因みにコンドームはゼリー無しを常備している。此れは、性よりも野戦で役に立つのだ。世界の物は製品が悪く、破裂しやすい。日本製は恐ろしい伸びて破裂しないので何でも使えるのだ。
使わないと良いが、何が起こるか解らないので。
さて湯だが、水は水道からもらって沸かす。ボンベ用の簡易コンロでやる。
愛用のコーヒー用の水筒を使う。水筒も二層式になっていて、引いた粉を入れる所にシートを敷いて粉を入れて手で固めておく。沸いた湯をゆっくり流して蓋をする。コンロ等を片付けて、蓋ではなくて水筒の半分を外すと、コーヒーが出来てそのまま飲めると。上の分はもう一杯用に置いておくのは、貧乏性の性だろうか。
父親と同じ用にしているだけなのだが。

のんびりとしていると、電車から次々と集まって来た。
8時には8人は集まっていた。
篤郎以外はイライラしている。篤郎は次の電車が来るまで、のんびりとコーヒーを楽しみながら待つ。時間を見て椅子を片付けて、水筒をリックに差し込んだ。
篤郎はまだ寝ていた竹下と文雄を起こして、集合させる。
遅れて来たのは藤木と山田だ。と言っても5分遅れなので遅刻ではない。
8時に着く電車は鈍行7時55分着か準快速8時5分着になるからだ。
どうせ身延山の登山口行きのバスは8時15分なので十分に間に合うので心配はない。なので怒る事ではないのだが、両会長は怒っていたが、

「バスに乗り遅れるなよ。」

の篤郎の一言で、皆は落ち着いた。いや、怒る以前な事態に全員が驚いていた。
当然、バスに全員が乗ったのだが、竹下と文雄以外は篤郎に話せないでいた。

「あっ君、その荷物なに?」

バスが出て暫くしてから、文雄が話しかけて来た。

「ん、あぁ。俺はコテージに泊まらないからな。食事も寝床も別々何で宜しく。」

篤郎の発言に慌てふためていた。

「あっ君、食事は?」

「ん、別だろ?」

「へっ?いや、別とか、作ってくれないの?」

料理は壊滅的な竹下が不安がってしまったが、

「これだけの女性が居るから何とかなるでしょ。」

の、言葉に何故かバスの女性人が固まっている。

「それにカレーならお前でも何とかなるだろう?」

「いや、なるけどさ。」

「朝もパンとかだし、昼も何とかして。」

「待ってくれ、あっ君!雪絵にも料理させれないぞ!」

「そこは、彼氏のお前がどうにかしろ。俺は登山のサポートが主要で、他には義務はない。コテージに泊まるし、他も備えてあるから問題ないだろう。俺は俺のキャンプを楽しむだけだ。」

此処で凰価の生徒会長が動いた。

「済まないが、参加出はなくてオブザーバーのはずだが、来た以上は我々のキャンプに参加したのでは?」

と言ってきたのだ。

「あんた馬鹿だろ?オブザーバーを調べろ。携帯繋がるならググれ。オブザーバーなだけで、何もない私は参加義務はないの。それ以外は文雄と竹下に行動計画表と料理のレシピ、登山ルートと原生する植物と動物の観察のレポートも付けた。それだけしたんだから、君達にとやかく言われる筋合いはない。」

此処で、聖進の厚木会長も参加してきた。

「そ、そうね。藤並君だったかしら。貴方のレポートが無くても私達は貴方以上のレポートを書いてみせるわ!貴方の手を借りなくても立派にキャンプをしてみせるわ!」

「そ、そうだ!我々凰価と聖進のエリート集団が一般人に負けるはずがない!エリートのキャンプをみせてやる!」

と、話題は終わったようだ。
荒木会長と厚木会長は其々の元に戻って称えられていた。
長年の親交ある二人は篤郎に小声で話をしてきた。

「あっ君、聞いてくれ。雪絵からの情報と俺からの情報を合わせても、誰も料理が出来ない。俺は味見は出来ても何を入れるか解らない。雪絵は壊滅的だ。で、情報では、聖進は女子の学校だが、料理はしていない。寧ろお嬢様できているから、包丁も触った事がない。加えて凰価の女子も残念女子で料理は雪絵級だ。会長も男子台所に入らずを公言する人だ。これを俺が見れるか?」

「じ、自業自得だな。諦めろ。」

「それよりあっ君。何でリックがデカイの?」

「此れは俺用の道具を持って来た、キャンプ道具だ。それと食糧だな。」

「おまえは相変わらずだな。」

「あっ君!今回の食事は?」

此処で竹下が食いついた様に聞いてきた。文雄も興味深々だ。

「今回は直ぐに登山だ。昼は腹持ちがよいトマトパスタかな。晩はバーベキュー。明日の朝は飯盒と味噌汁と山菜の浅漬けで昼はカレーかな。」
「「あっ君、友達だよね~。」」

「一人分しかないぞ。」

「天下のあっ君が一人分の食糧はないよね。」

「面倒見が良いから人数分はありそうですな。」

「「あー、安心した。」」

悪友達は安堵して席に戻って行った。
篤郎の頬は紅いが、のんびりコーヒーを楽しんでいた。
その匂いは美味しそうな匂いだったのが余計に火を付けたようだ。
あからさまに大声を出す凰価と聖進の生徒会達。
その内に登山口にバスが到着して全員が降りた。
篤郎は最後になっていたので、運転手に謝りながら降りた。当選、誰も篤郎を待つこともなく、登山道を登って行った。
篤郎は慌てずに準備運動をしてから背負子を背負い登山道を軽やかに駆け上がっていた。ルートをそれてだが。

身延山はそれほど高い山ではない。と言っても本家の身延山みのぶさんと違い此方は身延山と書いて『みのぶやま』である。標高856M有るが、登山用の道では678Mの第三の山を目指す。元々、第一と第二はロッククライム達が挑む山で、天然の岩肌で密かに人気の山でもある。一般人には登山不可なので、第三の山を山頂にしている。自然が多く手入れも入っていない山になっていた。

エリート集団は最初の頃は元気もあったが、既に元気もない。元々降りたバス亭の標高は355Mなので、普通の登山者は二時間のコースであった。二時間は過ぎてしまって疲れ果てていた。そして、亀裂も入ってしまっていた。

竹下雪絵と田渕文雄の二人は元気である。当然、歩く速度の注意と水分の取り過ぎにも注意をしていた。
それらを無視した結果が今の現状なのだから。

「と、登山をなめていた。」

は荒木会長の言葉で、今は虫の息である。

「登れませんわ。」

は厚木会長で以下同文。
他の生徒達も水分がなければ、昼の弁当も食べれない状況だ。

「会長、登山は諦めてコテージに行きませんか?」

の言葉でも動けない。三時間たった頃に笑顔の篤郎が山から降りてきた。

「こんな処で潰れていたのか。」

「み、みず。みずを・・・」

水を求めて荒木会長が、篤郎に助けを求めた。
長が求めれば、手下達も当然求めてくる。
篤郎は竹下と文雄を使い倒れた馬鹿達にお茶を飲ませた。
飲み終わって一息がついて、荒木会長達は篤郎に、

「大変に申し訳ない。代表して、ありがとう。」

礼をしていた。
そして、この場で昼食の弁当を取り出したのだが、篤郎は器具を取り出して調理を始めていた。

「雪絵、あの人何をしているの?」

菓子パンを食べていた驫木由美は篤郎を指をさした。

「昼食よ。トマトパスタを作るんだって。」

「火なんかないのに?」

「見ててよ。あっ君は凄いよ。」

由美は雪絵の言葉に従い見ていた。
篤郎は背負子から簡易コンロボンベとフライパンと麺が水と入った袋とホイールトマトソースが入った袋を取り出した。フライパンに麺の水を入れて沸かし麺を茹で始めた。
直ぐに茹で上がったのか、また袋に湯ごと入れた。熱いのに慣れた手つきで入れていたが、袋には木の棒を袋の口先にセットされており、生徒達は感心していた。袋に串で穴を開けて湯切りをしだした。それをリックに差しての湯切りは放置。直ぐにフライパンを火に戻していたので水気も無くなっていたのでホイールトマトソースを投入して軽く温めて麺を入れた。袋から棒を取って、棒で調理を始める。リックから木でできた塩入れと胡椒入れとオリーブ油を取り出して、入れていく。

工程を見せられて、凰価、聖進の惨めな弁当を恥じてしまう。

料理が出来ていくほど、トマトとオリーブ油で煮込まれた良い薫りが届いて来るからだ。
最後にオリーブ油をかけてから、フライパンを皿にして食べていた。竹下と文雄は待ってましたとおにぎりを平らにして、

「トマトプリーズ!」

「私は肉多めで!」

と迫って分けてもらっていた。
彼等が食べると直ぐに、

「「うまー!」」

とハフハフと言いながら、旨そうに食べていた。
皆が羨ましそうにしていると、シュシュの音とチーズの匂いが広がっていた。当然皆は匂いの元を見ると、木の棒からチーズが出ていた。篤郎は振りかけた処を食すのを全員が見ていた。鈴木副会長から「いいなー。」の一言には全員が頷いていた。
その言葉に篤郎は、一気に食べて片付けをしてから、

「この後の予定なんだが、どうするのエリートさん。」

篤郎の勝ち誇った様に聞いた。厚木会長と荒木会長を筆頭に項垂れていた。

「僕達で決めれないので、君に従うよ。」

荒木会長は従順な事を言ったのだが、篤郎は違った。

「先にも言ったが、私は君達の先生でも、引率者でもない。ただのオブザーバーだ。資料は渡したし行動表も渡している。私は意見を言う資格もないが、次の行動予定は聞いても良いだろう?このままなのか、コテージまで行くのか、帰るのか。」
「き、君は、何を言っているの!?」

篤郎は声の主である、浅生副会長の方を向くと、

「私はこれからキャンプをします。貴女方と行動をしているので、遭難されたら報告しなければなりません。私は二泊三日のキャンプをします。ただそれだけでは?」

「しかし、助ける義務はあるだろう!」

「荒木さん。私を置いて登山をしていた貴殿方を救助ですか?十人も居て一人に助けを求めるのですか?」

「そうだ!助けろ!」

荒木会長は怒りながら言っていた。他の者は俯いてしまう。

「助ける理由がありません。私は山を登る。貴殿方は竹下と文雄が居るので、最悪、救助されるだけでは?私は登山の場所を此処に変更されただけで、貴殿方と行動を共にする訳がありませんから。」

「しかし。」
「会長、お手上げですよ。」

文雄が荒木会長を制してからの発言だ。勿論、竹下も同調している。

「厚木会長も敗けですよ。あっ君に頼らなかった時点でキャンプは失敗なんです。」

「ええ、その通りよ、雪絵さん。確か藤並さん、でしたよね。私達のキャンプは失敗しました。どうぞ先に行って下さい。」

厚木会長は立ってお辞儀をした。他の生徒も同じ様にして、荒木会長もそれに習った。

「何だ、普通に礼儀は知っているではないか。」

篤郎の声と、

「あっ君、オブザーバー終了で引率を頼む。」

「料理もお願い!」

「少しは自分たちで何とかしろよ。」

竹下と文雄の冗談混じりの会話になる。

「ま、登山は明日に仕切り直しだ。今日はコテージまで行くぞ。辛かったら呼べ。死ぬ気を出せば乗り越えれる。」

既にあの日の鬼になった篤郎に、キュンとときめく馬鹿が3人と恐怖を思い出す二人、やる気が戻っている五人がいた。
そして、篤郎の指示の元、登山が再開した。キャンプ地の『みのぶガーデン』に向かってだが。そして、ときめいた3人とやる気の5人は後で思い知ったのである。鬼軍曹は居たのだとゆうことを。

コテージに着くまで追い立てられる、恐怖を知ることになるのだ。
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