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第2章 転移しました!

ゼウントの妙計

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鬼か修羅か分からない者になりつつある篤郎は、迷子になっていた。
篤郎のいや、リザイデントの記憶の王都には居たのだが、そこは野原であったのだ。

「王都は、王都は何処だー!」

と、そこいらのモンスターを倒しながら人里を探した。既に1日のロスが出ていたが、王都を探した。昼前に猟師を見つけて王都を聞き出して、そちらに向かった。既に篤郎の怒りは沸点を超えていた。超えたので、レクッチへの怒りがバイシュ国の王都に怒っていた。

王都を勝手に変わったのと時間を使わせた事に怒りを乗せていたのだ。
既にレクッチが危ういのでは無くて、王都に危機が訪れようとしていた。



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ゼウント騎士伯は夜を徹して王都に馬を走らせた。防具を減らして最低にして、騎士達も追従した。

普通はノライ町から王都まで3日かかるのだか、一昼夜で着くと云う荒業を見せた。

騎士伯の地位を利用して王都に入ると、伝令を城に走らすと騎士見習いの場所から息子達を迎え、王城に入る離れ技をしたのだ。英雄とて城に家族を無断で連れて入れないのだ。
そして、ゼウントはついていた。

王、ロイシュナー・ハイド8世とサイカ・タウンゼント・ライナー伯・宰相とキンベルト・ロングゼント・フォフナー侯・軍部卿と息子のレント・キャンベルト・フォフナーだけが居たのだ。
入城にはゼウントの不手際も有ったが、概ね受け入れらる事に成功した。

「して、ゼウントよ。この愚行は、何の真似ぞ?」

ハイド8世はゼウントを睨んでいた。それもそのはずで、キンベルト軍部卿が息子を陛下に会わせる程度の事だったのが、国の英雄に軟禁状態にされてしまったのだ。しかも息子達を引き連れて。前代未聞の事態なのだから、ゼウントの愚行が気になったのだ。

「陛下に申し上げます。国の一大事で御座います。」

丁寧に威圧的に会話がスタートした。

「ゼウント殿、貴殿は何をしたのか分かっておるのか?」

「ライナー宰相、国の一大事と言いましたぞ。」

「国の一大事?どう、一大事なのか英雄殿。」

フォフナー軍部卿の言葉にゼウントは息を吐き言った。

「3ヶ月前に我が領地で、マイティンコアが出た事を報告しましたが、あれには一部に誤りがあります。」

「マイティンコアがか?」

「陛下、マイティンコアではありません。討伐した人数で御座います。」

「あれは貴殿を含めて200騎で仕留めたのではないのか?」

「はい、フォフナー軍部卿。」

「では冒険者達を含めて何人だったのだ!」

「一人で御座います。」

フォフナー軍部卿は何かの間違いかと考えていた。マイティンコアは最低一個師団は必要なモンスターだ。200騎でも馬鹿げて要るのに、一人。

「ひ、一人?!貴殿は、なにか。Aランクのモンスターを一人で討伐したのか?」

「フォフナー軍部卿、私が討ったのではなく、さるお方が討たれたのです。」

「ゼウント、誠か?」

「そして。」

「まだ有るのか!」

「そのお方は、Sランクのロックタートルを10体も討たれました。」

「なっ!ゼウント、その方とは?!」

「アツロウ様と申します。」

「アツロウ?聞いた事がない名前だが?」

「何処の人だ?」

「で、何故に一大事なのか、申してみよ。」

「はっ!時間が欲しいので簡潔ですが、私はレクッチ商会から脅されています。後ろには、リヒッテット侯爵がいます。そして、レクッチはアツロウ様の昵懇にされたご家族を殺害。その怨みを晴らす為に王都に向かわれました。私共も一昼夜で王都に着き、愚行をしました。アツロウ様が暴れられたら王都が滅びます。」

「は、ははははっ。王都には一個師団の兵が二千と親衛隊が五百も居るのだぞ!たかが一人でその者がどうか出来るのか!語るに落ちたな英雄殿!わはははははは。」

「陛下。私はアツロウ様に報酬として白金貨を贈りました。」

「なに!ゼウント、貴様は正気か!」

「『4つの王の金貨』を報酬にだと!」

「あの白金貨を使われたら!」

「其だけのお方だから渡しました。どのみち、リヒッテット侯爵に寄与を迫られましたでしょう。」

「なっ!王よ、此れは反乱ですぞ!」

「リヒッテット侯爵がか。」

「フォフナー軍部卿、直ぐにリヒッテットを捕らえよ。」

「御待ちください!リヒッテット侯爵一人ではありません。他にダレット男爵、ボナー男爵も関与しております。他にも関与の疑いある者もいましょう。」

「ゼウントよ、どうするのだ?」

「はっ!私奴に一案があります。」

「ほう。聞かせよ、ゼウント。」

「はっ!」

ゼウントほハイド8世に作戦を伝えた。




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悪鬼となった篤郎は、教えられた王都を目指した。
午後3時を回った頃に目的地である、王都が目に入ってきた。

「ア、アツロウ様!」

リーベットが馬を走らせて向かって来る。

「リーベット。えっ、リーベット?」

篤郎の足を止めてくれたようだ。リーベットも篤郎の前で馬を降りて、篤郎に向かって歩いて来た。

「アツロウ様!お探ししました!」

リーベットは泣いた。

「えっ!ちょっとリーベット、泣くなよ。」

「泣かずにおれません。アツロウ様がレクッチを追ったのを聞きました。旨聞亭の亡き旦那に料理の手解きを受けたのに、、、」

「あぁ、敵は俺が討つよ。あの王都を滅ぼして!」

「わぁー!アツロウ様は何をされるのですか!?」

「ふっ。王都を潰す!」

「待ちましょう、落ち着きましょう!」

「安心しろ、腸は煮えくり返っているぞ。」

「待って、待って!アツロウ様、王都にも住人が住んでいるのですよ?」

篤郎の思考が止まった。

「アツロウ様は旨聞亭のご家族と同じ様に殺すんですか!」

「すまん。」

「ほっ。分かってくれましたか。」

「俺の思慮が足らなかったよ。」

「お分かり頂けたら安心です。」

「貴族と王を殺すとするよ。」

「わー!理解していなかった!」

「なに、町や住人には被害がいかない様にするから。」

「『するから』ではありません!」

「赤いショーを見せてあげるよ。」

「アツロウ様!気を確かに!敵は一人では無いのですから、落ち着きましょう!」

「な、なんだと?」

「落ち着いて下さりましたか?」

「レクッチだけでは無いのか?」

「はい。ゼウント様も王都に入られ犯人を追っておられます。」

「やはり王都を!」

「待ちましょう!」

必死に篤郎を止めていたリーベットの後ろから騎士が現れた。

「リーベット、アツロウ様!」

「ベルエントさん、アツロウ様を止めて下さい!」

「わはははははは。直ぐにレクッチ以外も滅ぼしてくれるわ!」

ベルエントは水が入った水筒を篤郎にかけた。

「アツロウ様、落ち着きましたか。」

「何をするのかな?」

悪鬼の氣を辺りに撒き散らす。ベルエントは怒った。

「アツロウ様の前では私は死にます。でも、デニー一家を考え、仇を討つなら知られる方が良いでしょう。」

「下らないことか?」

「はい。下らない権力争いです。我が主のゼウント様の元に参りませんか?」

「裏切ったら死のみだぞ?」

「分かっています。命は如何様にしても構いません。主の元にご足労して下さい。」

篤郎はリーベットの馬に乗った。

「連れていけ。」

「分かりました。」

ベルエントと篤郎は馬で駆けて行った。リーベットはほっとしながらも、走って後を追うのだった。
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