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第6章 魔王誕生

宣戦布告

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晴天の青空のもと、
ゴーン、ゴーン、ゴーン
鐘が厳かな式典を表すように、鳴り響いた。

『「魔王陛下のおなーりー!」』

マイクからスピーカーへと出力される。
魔族領域に元から住んでた人や、領地外から来た人が大勢居る人々に、声は届いている。
ドラムとトランペットが高らかと響いているようだ。

「さ、テラスに行きます。」

そして巨乳美人のメイド風執事さんが、篤郎の背中を押して来るのだ。どちらかと言えば、胸が。
それよりも、歩きながら、篤郎は思っていた。

何で俺が魔王なのさ?

である。
更に、元の世界に戻って魔王?いやいや、魔王は無いわー。そりゃ、アニメやラノベとかに主人公が魔王とかあるけどさ、ハートフルな魔王や名前だけの魔王とか、18禁の魔王とか居るけど、俺は何の魔王なのさ?てか、魔王が居た世界で、魔王名乗るって、馬鹿になるやん俺。

と、篤郎の頭は考えていたが、光の元に出て気が付いたのは、大勢の声援が現実へと戻してくれる。ファンファーレが鳴り響き、臨場感を更に盛り上げてくれる。

『「此より、新王よりお言葉を賜る!」』

司会には、見た事がない人が居た。身なりや仕草からは高貴な人なんだと思った。

(で、何で俺がこんな場所に居るのか?)

篤郎の悩みは尽きないが、

(マスター、私が原稿を読みますので、口を合わせて下さい。)

(ルナ?!)

懐かしい(?)声を聞いて驚いた。

(ルナ、何処に居るんだ!助けてくれ!)

(先程からマスターの後ろに居ますが?)

との答えに、篤郎は後ろを見た。信じられない人を見ていた。

(ル、ルナ?)

(はい。マスター前を向いて下さい。)

篤郎の頭は、再び真っ白になったが、驚いた事を誰が止める事が出来ただろうか?

『「嘘おおぉぉぉぉぉぉぉぉん!」』

マイクから勢い良く拾われた言葉は、スピーカーを通して大勢に聞かれていた。

(はいはい。落ち着いて下さい。先にスピーチを終わらしましょう。)

「う、うん。」

ルナに首を戻されると、一生の恥のスピーチを言い始めた。

『「我が国民よ、我は立つぞ!」』

『「我はリディシを制圧し、新国を起こしたのは、旧魔族の不等な地位回復と奴隷達の意味が違うのと、貴族の特権を廃止する事にある。我は、人は人であり、優劣をもって地位を決めるのではなく、努力と頑張りで、当たり前の権利を言える世界にしたい。そして、人が人であるべき主張する為に貴族の廃止をする。

奴隷にしても、誘拐や売買によって売り買いされる奴隷の廃止と悪徳奴隷商人の壊滅が必要である。リディシ一国だけで変えられぬ現実もある。その為に、他国への進行が不可欠になる。同胞を助け、権力を潰し、新しい世界を作るのだ!」』

(何これ、共産?社会主義か?)

『「我は新国を魔国と定め、我は魔王となる!」』

(はっ?!ちょっ!)

『「我と我が武力は、一大革命となろう。それは人類による支配となろう。しかし、王は我一人のみ。目的の為に支配もする。その理由は、そなたらならば知っていよう!新しい改革は不幸も呼ぶが、考え一つで変わる!」』

(変える前にルナさん?)

『「我の考えに賛同した、元リディシ王もいる。」』

(はっ?)

『「リディシの国民が、受けている利益も分かっていよう。」』

リディシも涙を流しながら、頷いている。

(おーい!王?!)

『「それを他にも知ってもらう為に、我は挙兵する!我が民よ!我らの使命を理解出来るまで、勉学に励むのだ!戦いを、新たな世界をその目で見させてやる!我に着いて来るのだ!」』

ルナによって両手を空に上げられた。そして、大勢の人が、

「「「「「おおおー!魔王様ー!魔王様ー!」」」」」

と歓声を更に挙げているのだ。

はっきり言って、中身がある演説出はない。意味も理論も幼稚であり、聞いただけでブーイングが出てもおかしくない。しかも言った事になって要るのが篤郎である。

「ルーナー。」
(辛抱です、マスター。)

取り敢えず、最後まで付き合う魔王であった。

後に、改編されて教科書に載ってしまうが、歴史は改竄されて記される事に納得してしまう篤郎であった。
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