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第7章 魔王進行

デカイ魔石

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「たくっ。役に立たない従者だよ。」

篤郎は、『フルクリーン』をかけて汚れを落とした。出された珈琲は、既に冷めていた。
リザイアとセキちゃんの頭には大きなたん瘤が出来ている。

「痛いです。」

「勝手に休んでいるからだ!」

「篤郎様、カードを。」

「ほらよ!」

乱暴に黒いカードを放り投げた。
人類の為にカードを作ったのは、古の神ミネルシルバであるのは、龍族も知っている事だ。弱い人類の為に、カードを作り強さを教えたのが、後のギルドカードになる。

そのカードが黒くなり、能力を見れないのは、力が人類と掛け離れているのか、能力で表せないのかのどちらかになる。人に伝承されてる『間抜け』では無いからだ。デーモンオーガを余裕で倒す存在が主だからだ。

「ありがとうございます。」

「黒いだろ?たくっ、意味が無い身分証だよ。」

「アツロウ様、身分証にもならないですよ。」

「わーてるわ!」

「キャー!」

逃げるリザイアを見ながら、セキちゃんは困っていた。もはや、そんな馬鹿話をしているレベルでは無いのだ。

「篤郎様。ルナ様から聞きましたが、アルテウルを倒すのですか?」

「いや、相手は神様だよ?倒せないから、仕返しはしたい。」

「えっと、どのような?」

「信仰を止めさせる。」

「はぁ?」

「アルテウルだけ、人類から信仰を捨てさせるのよ。」

「なるほど、それでルナ様が動かれているのですね。」

「そ。しかも俺、魔王だってよ。おかしいよねー。」

「そうですね、魔王とは。」

「ま、ルナに任せているんだ。適当にしていれば、仕返しが出来るらしいよ。」

「なるほど、なるほど。」

「ま、俺は出来る事をして、ルナの支援をするだけさ。さしずめ、魔石集めがお仕事なのさ。」

「承知しました、篤郎様。」

「あ、リザイアのご飯抜きにしといて。仕事してないから。」 

「アツロウさん、それはひどいー!」

リザイアと篤郎は遊び出した。
こんな危険な場所でだ。リザイアはただ分かって無いだけなのは、全力で遊んでいるからだ。篤郎は全方位を気にしていた。ティムモンスターをも無視してである。

「サクサク行かないと、寝床がまた此処になるな。急いで回避したいから、走るか。」

走る体制になる篤郎を見て、セキちゃんはリザイアを抱えた。
主人たる篤郎を追い掛けていたが、精々見失わない程度であるが。




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「な、まだ見えないの?」

「変だな。自分達の信者が見えないのは、変だよね。」

四畳半の部屋から、大豪邸に移った神達は焦っていた。神としての力が戻っていないが、6神が揃って地上に現れるまでは回復したのだ。が、肝心なリザイデントを見失ったのが、分かった。そして、信者達と信者達が住む地上が、『信仰の目』に写らなくなっている。わざとと言うよりも、神を排除したようになってるのだ。

「ねぇ!『神の庭』に何も生えないよ!」

「水も無理。」

「何にも出来ないよー。」

神と呼ばれている者の悲惨な状況である。広くなったのに何も出来ないのだ。それと、長く狭い部屋に居た為に、弊害もあった。

「どうする。」

「ま、出来ない事よりも、出来る事を考えた方が良くない?」

「確かに。」

「とりあえずは探検かな。」

「作物出来ないかなー。」

「井戸も掘らないと。」

「しかし、見れない方が心配だよ。」

「確かに。」

「魔王か?」

「魔王だな。」

「アルテウルは勇者を召喚したのか?」

「してるね。」

「しかし、勇者か。一度、覗いておく?」

「だな。」

神達は一つの部屋に居続けた。
そう、弊害とは、長い間狭い部屋に居た為に、広いはずの部屋が落ち着かないのだ。







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地下1500階。
豪華な扉が目の前にある。

「これは、ボス&コア?」

「でしたら、終わり?」

「終わりですね、篤郎様。」

拍子抜けというか、物足りないし、中途半端な階層だ。裏設定とか無いのか?
そんな事を考えながら、扉を開けた。
重厚な音が響きながら、大型のモンスターの気配があった。

「あれは!ヒュドラガニ」

ヒューン、ドドドドドカァーーーン!

爆風が篤郎達に襲ってきた。

「ギャー!アツロウさーん!」

「・・・・・」

「し○く○ぼ○!」

ドッドッドッドッドッドッドッドッ!

「ア、アオー、ガクッ。」

それは、ファンタジーの戦闘と無縁な戦闘風景だった。

因みに、モンスターは特殊なヒュドラガニデニック。16の首と8本の足を持つ。16の首は各自別系統の魔法を使い、回復魔法も使用する嫌なモンスターである。弱点は全ての首を同時にはねること。龍王でも数年掛けてたら倒せると言う厄介なモンスターなのである。

それが、スプラッタになっているのである。何故か?


「どうよ!」

「篤郎様。」

「ん?」

「何をされたのですか?」

「あー、このAー1の銃を使ったんだ♪」

「ソ、ソーナンデスカ。」

Aー1。篤郎が初めて異世界で作った銃である。フルバーストはレーザーに値するので、三点バーストにしての攻撃だ。先ず、ピンポイントで付属のホット爆弾を打ち込み、直ぐに発砲。それで勝負はついた。強い、最強は塗り替えられる。それを目に焼き付けてしまったのだ。
先ほどまでは、篤郎が生きている内は人類に危害をくわえない!だったが、今は人類と仲良くしよう!とセキちゃんはなったのである。

「やっぱりヒュドラなら木っ端微塵になるか。ま、全て『四次元部屋』に送っとくか。」

人類恐い!龍族が生きる道は、共存共栄しかないよね!
とセキちゃんは思っていた。

「ほほーう!ダンジョンコアが大きいな!これも回収!」

ついでに、セキちゃんはルナの言葉を思い出していた。

『マスターは凄いですよ。』

短い言葉に大量の意味を込めるとは、セキちゃんは思いもしなかったからだ。
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