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第8章 魔王討伐

龍しばき

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「あー!面倒だ!」

篤郎は、目の前の駄龍の群れに怒りを覚えていた。

「篤郎様、全部、殺しましょう!」

「コロセー、コロセー。」

煽るように、セキちゃんと小声のリザイアが着いて来ている。ウザイ。
もちろん、駄龍達は人の言葉を喋らず、ギャーギャーとうるさい。

良く龍の素材はーと有るが、要る素材は意外と少ないのが龍なのだ。骨や鱗は死ぬと直ぐに灰となるし、肉も血抜きをしないと、臭くなる。内臓や目等も使え無い。唯一、逆鱗の鱗と魔石は使えると云う、強い癖に実入りが悪いモンスターなのだ。

その点、竜は捨てる素材が無い。血は魔法薬に、内臓は秘薬関係に、脳は魔法媒体、骨は魔道具に肉は食糧、皮と鱗は防具にと、全身が使える。

竜と龍は似ても無いから見分けるのも簡単だ。
竜は空飛ぶ獣で、龍は口煩い面倒な獣だからだ。

「ルナ!全滅でも良いか?」

『駄目ですよ、マスター。あれでも、地上を守る番犬ですから。』

「番犬?」

『はい。悪魔達の国境の警備をしてますから。』

「あ?たまに見かけて滅ぼしてるが。」

『ええ、たまにサボるようです。』

「よし、滅ぼしてしまおう。」

『だーめーでーすー。』

この騒動の発端は、セキちゃんからの依頼?連れ去りによる結果になる。要は、世界の境界の王が龍王で、その後継者がセキちゃんらしい。らしいとは、セキちゃんには、もう王に成らない事を宣言して、王に伝えた。
で、拒否されたので話し合いに来たのだが、今はこれである。

特に爬虫類主義者でも、変わった者好きでもない。変態と言われると、無下には否定出来ないが。

「もうね、まるごとサクッと全て灰にしたら良いと思うんだ!」

『面倒を増やさないで下さい!』

「そーだー、そーだー。」

「燃やしたら良いのよ!」

『貴女達!』

「「なんですか?」」

『貴女達も灰になりますよ。』

「「!」」

今までは篤郎側に着いて、煽っていた。が、巻き込まれると分かると、

「篤郎様、話し合いましょう!」

「平和!平和が一番です!」

「うるさい、よね?」

篤郎の怒りが、上がるのだけ二人は直ぐに分かる。

「へ、平和です!」

「あ、篤郎様、人の言葉で話させますから、落ち着いて下さい!」

「フー、シュー。」

篤郎の様子が・・・・・

「あなた方に言います!死にたくなかったら、人の言葉で喋りなさい!」

「ギャー、ギャー!」

「そんなこと!なら、貴殿方がしなさいよ!私は無関係ですからね!」

「ぎゃー!」

「当たり前でしょ!死にたくないの!」

「ギャギャー!」

「そうしなさい!」

セキちゃんはリザイアを掴んで逃げた。逃げたから、そこには篤郎と龍達しかおらず、篤郎を襲っていた。
が、

「ギャーギャーと五月蝿いわ!」

篤郎は怒りのままに、全力で先頭の龍を殴っていた。
グホー!と龍は周りを巻き込みながら、更なる天に向かってとんだ。

怒りを爆発させても、命のやり取りをするべき相手は分かっている。もちろん、即狩りしても良いが、生かす狩りもあるのだ。

知能ある生き物は何らかしら、何かを信じて祈る事が出来るからだ。

「ルナー!」

『了解しました!』

ヤバい笑い顔をしながらルナを呼んだ。

篤郎は、ただ話が出来ない馬鹿をどうにかするために呼んだのだが、ルナは全く違う事をする為に行動を開始しだしたのだ。
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