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第9章 ミネルシルバ

地獄道

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逃げ延びたと思っていた篤郎が、また走る事になったのは、歩き出して三時間後、スタートして六時間はたっていた。

まさか、魔道車で追い掛けて来るとは、篤郎でも考えてなかった。街の中での鬼ごっこ程度と観ていたからだ。

だから、マジになって追い掛けられると思っていなかった。

追い掛けられる恋愛は嫌いではないが、知らない人に追い掛けられる愛程、気持ち悪いモノはない。それが、美男美女だろうと変わらない。普通の脳なら、イカれた人種と観ているだろう。

しかも、

「魔王さーまー!待ってー!」

と黄色いどころか、糞色な声だ。

潰す?殺したい。なったって同性のマッチョでテカったホモ野郎だからだ!魔法さえ使えれば!塵も残さずに消し去る事も出来るのに!

と篤郎は考えていた。その中には、触りたくないが重要な部分として、大きく関わったいる背景もある。

だから、全力で走って逃げているのだ。
魔道車から大きく差を開けても、全力で逃げていた。

「どぉちくしょおぉぉぉ!」

これを、青春の一頁で片付けたくない程の黒歴史になることには、間違い無いだろう。篤郎の叫びはまだまだ続く!

差ほどの時間も掛からない内に、前から不思議な軍団が現れた。

それは、人だけで無くケモ耳があるマッチョな軍団である。

「「魔王ちゃーん!」」

「ゲゲッ!何か嫌!」

うん、もこもこは良いけど、筋肉質と勢り立つモノをおったてた集団は気持ち悪い。即座に進行を森に移して逃げる。速度百キロを余裕に超えるスピードで逃げるのは圧巻だった。そのスピードで森に入るのだから、堪まったものでは無い。

それと、追う方も必死になる。木や岩に当たるとは、死を意味しているのだから。

「何で、男ばかり?はっ!婿とか言っていたな・・・・・」

走り避けながらも思案は続く。

「まさか、俺の?俺は男だぞ?」

ルナ、レディ、アイの文字が頭を駆け巡るが、絶対に無いと盲信していた。

家族を信じる事は、篤郎の今世での絶対条件だ。親、妻、子を大切にしたいと思うのは、つまらない生き方をした事を後悔しての事である。だが、親は大切にしすぎて失敗をした。せめて、妻と子だけは守り抜くとしているのだ。
まさか、この騒動が子のしたことだとは、気付かない篤郎だったのだ。

逃げて、逃げて、逃げた。

その勢力は時間と共に拡大した。人も地域もだ。

魔国は、ほぼ惑星の四分の三は手に入れている。陸地だけで言うと約10分の9は魔国の支配地になる。土地改良も順調なので、餓える事も無く、仕事に溢れる心配も無い。税金の心配も無いのは、ルナの手腕になるが、国で全てを管理するからスタートしたのだ。要は1の物に対して1で行う事に戻したのだ。一番悪いとは言わないが、経済では当たり前なのだが、変な言い方をすれば、1を3や5下手をしたら10で売ったり、買ったりをするために経済になるが、富を得た者しか裕福に成れない決まりも出来る。で、魔国に吸収した時点で、奴隷から王族まで0にリセットをしたのだ。富を奪ったになるが、借金が無くなれば、大多数が魔国の味方になったのだ。

経済を変えるには、問題がある。衣食住だ。金を取られても衣食住では元富める者が勝つ。が、元々の衣食住が遅れて古い物になるとどうだろうか?機能も衛生面も生活面も向上して、安定した食も格段にグレードを上げ、服も格段に上がってしまえば、職人も職を投げ出してしまう程にカルチャーショックになる。

そう、一度全てを壊す事が国作りの荒治療にもなる。だが、決して平等ではない。最初に戻しただけで、此処からが勝負となる。

そう、1を3にも5にも10にも出来るからだ。気付くまで大分は掛かるが、特権階級を完全に潰す事が重要である。

そして、それらをクリアーにしたのが『奴隷紋章』である。

篤郎は、陰陽は十分に理解している。善と悪は表裏一体。悪が無くなる事は無いが、抑止は出来る。魔国は人が治めている国では無いのだ。無茶苦茶な軍事力を持って治めているのだ。

反乱をのんびり高みの見物にはしない。即座に処刑してしまうのだ。謝るから許せは通用しない。それは、契約なのだから。

だから、厳しいのは腐った人だけで、健全な人には天国である。働いた分だけ稼げるのだ。農業でも、出荷には国で管理をしている。クズ野菜でも国が買い取るのだ。買い叩き等はしない。それを製品にして国が出荷するだけなのだから。

人は国に売って、国や人から買う。

そう、魔国には金持ちや既得権益を持つ者は一人しかいないのだ!
マッチョな男達が嫁(?)に欲してる、篤郎だけなのだからだ。

ドッドッドッドッドッドッ・・・・

「いつ終わるのーーーーーーー!」

涙目の篤郎だった。
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