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第9章 ミネルシルバ

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1日経っても、子供達も奴隷達も夢心地のままにしていた。

壁がある場所に住んで居る事なんて、捨てられた子供達には夢のまた夢だからだ。クラーク達も、目が覚めたら出来た物にどうすれば良いのか困っていた。

その中で、壁の外に誰か来たのが篤郎だけが分かった。壁の外では、

「頭、どうしやす?」

「奪う!こんな頑丈で、高い壁が拠点になれば、軍隊に怯える事も無くなるしな!」

盗賊の一団は大笑いしていた。もちろん、篤郎はニヤリと笑顔になり、周りを怖がらしていたが。

「どうしたのですか、篤郎様?」

クラークは、寒恐い篤郎の顔に反応して聞いた。

「うん、働かす者が来たので、ちょっと話してくる。」

「はっ?」

嬉々として行く、篤郎を見送るしかなかった。
東門から扉を開けると、男達が待っていた。
篤郎も笑い顔だが、盗賊達も笑顔であった。

「あぁ!俺達が怖くて降参しに来たのか?」

「なら、早く引き渡しな!」

と、笑い合う盗賊達。

「ふーん。奴隷にしよう。」

篤郎の言葉に怒り狂うはずの盗賊達は、苦悶の表情で馬から落ちて苦しみのたうち回っていた。

魔法を使ったのである。ただの魔法では無い。火や水、風や土魔法を使う者は派手に立ち回るだろう。篤郎は派手よりも実用性を重視してる。特に神経毒が好みで、毒の魔法の使い手は居ない。居ない理由は、魔法よりも実物を使う方が楽だと考えているからだろう。しかし、実物は問題も多い。風下に立ってはならない、実物を吸ってはならない、毒性に対しての免疫を着けなくてはならないなど。

だが、魔法なら自滅する事が無いからだ。

何故、使い手が居ないのか?になると、化学式を知らないからしか言えない。何毒にも化学式が有って、人体に対しての作用が知らないと魔法にならないからだ。篤郎は知っているし、魔法にもしているのだ。

その中でも、神経毒は痛みも匂いも無い、まるでアサシンの様にひっそりと落とす事が可能になる。科学と化学。2つの勉強もとい、知識が有ってこそ万能な魔法になる。

「さてと、今までの奴隷紋章よりも強固にしておくか。」

「な、なにを・・・」

苦しみながら、盗賊が聞いてきたので、

「お前達は俺のいや、ここ村の番犬にしようと思ってね。ま、契約を増やして飼ってやるがな。」

「ゆ、ゆるじて・・・」

「おいおい、今さっきまで強気に言ってたのが、許してか?」

「た、たのむ・・・」

「俺を殺そうとしたのに助けるか?出来ない相談だよね。」

篤郎の笑みは一層楽しそうになる。

「殺すよりは、生かしといて、あ・げ・る。」

盗賊達の首に青い光が放たれた。

「はい、整列。」

盗賊達いや、元盗賊達が並ぶ。

「住みかの持ち物を全部持って来ること。それと、他に仲間は?」

篤郎の質問に、一人が答える。

「はい、居ます。」

「そついらも縛り上げて連れて来い。早くな。」

「はい!」

奴隷達は篤郎の言うことに従順になった。

「そうだ、教会も作るか。ミネルシルバで作っておくか。」

見送った後に、篤郎は思った。どうせなら、奴隷にしておくかと。そう考えながら篤郎は戻った。

「クラーク!ちょっと。」

篤郎はクラークを呼んだ。そして、新たな紋章を掛けたのだ。それも、全員にだ。

そう、篤郎は怨み事は決して忘れない。怨みを返すべく、動く事を忘れる事は無い。

「クックックックッ、信者を減らしてやった。」

新しい教会を建て終わる頃に、奴隷達が帰って来た。
門を開閉して入らすと、ショボい荷物を馬車6台に乗せ、捕まえた元仲間等を2台に押し込めていた。

「こんなけか?」

「はい。」

「そうか。」

捕まえた者を全て奴隷紋章を施してから、

「名前を言ってなかったな。俺は藤並篤郎だ。お前達の役目は見張りだ。飯運びや休憩とかは後で考えるが、取り敢えず上に行け。」

「はっ!」

新たな奴隷達は、城壁から見張りに行った。

「あ、篤郎様?」

混乱しながらも、クラークは篤郎に駆け寄った。

「クラーク、奴隷達の名前を控えて来い。もし盗賊以外の者が居たら俺の所に連れて来い。」

「はぁ?!と、盗賊?」

「エスト!子供達と荷台の仕分けを頼む。」

「はい!」

混乱したままの住人は、とにかく破天荒な長の言うことを聞いた。そう、篤郎が長なのだ。

篤郎とて知らない事実だった。
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