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第10章 アルテウル

攻め手

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「どうする?」

「ダルテ殿を信じましょう。」

イライラしながらも、安否を心配している。
今は橋の様な物が、引っ付いて幅を広げられている。
人の云う、驚異のスピードでだ。
一時間で、横に一メートル距離一メートルと云うのを魔法で進めている。

「此のままでは、私は・・・・」

震えるアナスタシア。アルケニーも汗を拭きっぱなしだ。

「大丈夫です!ダルテ殿ならば!」

天を仰ぎたくなるのを我慢して、アナスタシアを励ましていた。

「キョー!」

「落ち着いて!落ち着きましょう!」

そんな阿鼻叫喚な門側に対して、外では、

「門から魔軍の兵も、壁からの矢も来ないのは気になります。」

「それは距離があるのと、高い壁だからでは?」

「何らかの強襲が無いのは、解せないのですよ。」

「何でですか?」

「魔族は、連携や連体などの行動が苦手のはずです。独断専行の行動をするのですが。」

「此も策ですか?」

「どちらとも言えませんが、槍兵達の準備は怠らない様に。」

「分かりました。」

「間者の報はどうですか?」

「今の所は、見た報告はありません。」

「引き続き、警戒を怠らない様にして下さい。」

「了解しました!」

策と策の戦いに、アリテウルは高揚していた。

攻め手には不利な状態は、アリテウルには燃える。困難であればあるほど、勝利した時の快感は最高だ。まして、有利な敵の心を折った時の瞬間の顔を見た時は最高なのだ。アリテウルのステータスも1000オーバーになっていて、魔族や魔王とも互角以上の強さにもなる。レベルが上がれば、更に強くなる。

剣の殺しとは、性欲などの欲を満たしてくれる。

セックスでも気持ち良いのが、死ぬ前と云うがあれは『本当』である。女性の首を締め付けてとは、まさに最高のセックスなのかもしれない。だが、剣の殺し合いとは、その最高のセックス以上の快感が得られる。良く、『剣の魔力に囚われた剣客』の話はがある。そして、剣の道を極める者の多くが、性よりも殺に囚われる。

剣の道で身を律してとあるが、殺の道(外道)に進まない為の法としている。剣の道は生にして死にあらず。それが、日本の剣道になる。西洋でも剣の道があり、騎士道が有名だろう。

話は逸れたが、要は殺し合いとは、人間の欲を高めて行う為に、殺を行うと元に戻る事は出来ない。

異性の体に触れるよりも、剣激を合わし紙一重で生きる方が何倍ものエクスタシーを得れるからだ。

それを知る者は、戦に取り憑かれる。

戦とは、行為なのだから。今は、まだ前戯でしかない。
だから、異常までに人に優しく接していられるのだ。

「次の一手。」

アリテウルは考える。
そして、

「撹乱?魔族の癖に、人の様な事を?」

もしかしての考えも、人が多いのだから余裕でカバーも出来ると踏んで、

「誰か!」

「はっ!」

「警備を厳重体制にして、人を増やしなさい。そして、間者を探すのです!」

「えっ!間者をですか?」

アリテウルは頷いた。それを見た兵は、直ぐに外に出て部隊を組んだ。
そして、アリテウルの勘が当たったのだ。

「アリテウル様!間者を捕らえました!」
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