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第10章 アルテウル

言葉のすれ違い

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朝御飯を三回も御代わりをして、食べ終わると、

「さて、レオン。」

と、篤郎はレオン前に座った。

「この後は、別れるで良いな?」

と聞かれると、レオンは首を横に振った。それを、困った顔で篤郎は見ていた。

「では、どうしたいのか話して見ろ。」

と篤郎はレオンに迫った。

この時の篤郎は、男が何を答えるのかを見ていた。レオンは、

「お、れは。」

と声を聞いた瞬間に、篤郎は驚いた顔をした。
高く、凛とした柔らかい声に。

「俺は、一緒に居たい。」

レオンにとっては、最上級な言葉を言ったのだが、篤郎は違う内容に捉えていた。
何故なら、レオンが女達からの求愛の言葉であり、普通に言われてたのだ。その為のチョイスなのだ。

「俺は居たくないよ。知らないおっさんに居られても、俺が困るわ。」

篤郎は、拒絶を示したのだが、レオンは考えてから話した。

「南に行きたい。」

「南に?」

「そう。」

「一人・・・・は無理な格好だよな。あー、うん。連れて行くか。俺も戻らんと行けんからな。」

レオンは篤郎が一緒に来てくれると理解して、篤郎を抱き締めて頬にキスをした。

「な、何をするねん!変態が!」

篤郎は、強烈なビンタをレオンにかましていた。
ただ、レオンは頭をずらしただけで止まっていたのだ。


前にも書いたが、なまじ強いとドMな性癖がある。レオンは強くてイケメンでもあるのだが、初めてのビンタに脳から脊髄に掛けて、電撃が走った。

ド・・いや変態は直ぐに、直感的に『好き』になる。
レオンは目覚めてしまったのだ。

「うお?離しなさい!ううーん!ダアッ!」

抱き締めた腕をほどいて、篤郎は逃れた。
そして、

「てか、臭いし汚いから風呂に入れないとな。」

「ふ、ろ?」

「露天かー。一度の使いきりの露天風呂を作るぞ!」

篤郎は、森の中に魔法でお風呂を作り出していた。
レオンは、恋する乙女の様にポーと頬を染めながら見ていた。







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「な!何をしてるの!」

目が覚めて、状況を確認してみると、自分の手駒の失敗に愕然としていた。
更に新たに造った者も、恋をしているのだから。

「たく、どうなってるの?誰よ、あの醜男は?うん?ちっと、あれって昔、邪魔をしてくれた男じゃないの!生きて居たんだ。ふーん。何とかなるかしら。」

邪な考えをしてしまうのは、何時もの事だ。

「あれを従者代わりにして、魔王に会えれば木っ端微塵にしてくれるから!あははははは!」

一頻り、笑うとアルテウルは、ワインの瓶を取り出して、呑み始めた。

「私の駒達に、かんぱーい!もっと私を崇めなさい!」

一人なのに酒に呑まれる神、アルテウルの恥体だけがあった。
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