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第10章 アルテウル

静かな場所は?

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篤郎の午後は、話しを聞いたりが多かった。

人の昔話ほど、曖昧なモノは無い。
ただ、希に真実に近いモノもある為に、捜索は難航していた。

何故なら、近場に伝承と同じ場所が無いのだ。

伝承の多くは『凄いモノを地下に封印をした』事と、『深い穴』がどう様に伝わっている。

しかし、ダクネト国には深い穴は無い。

それは、宇宙写真からでも確認はしている。

取り敢えず、地下に存在している封印があると思いたい。


疑念するのは、地下水の事だ。

地下水を汚染しないか、不安になってしまう。
日本酒は稲と水によって出来ている。重要なのは水である。

凄いモノが、地下水に影響を及ばさないのか。新たな酒造りには必要な事なのだ。

因みに、ドワーフ、ノーム連合による酒造グループが魔国にはある。酒造りには、かの種族が関わってしまう。別にエルフや獣人が関わるのに問題は無いのだが、彼等程の情熱は無い。

勿論、日本酒の古酒は大人気な為に、稲作から作る者が多い。

ウイスキー、ビール、ワインと共に焼酎と日本酒を加えた銘酒が、魔国にはある。此れだけでも、戦争してでも、過去よりも未来を求めるのだ。篤郎式となった製法技術の取得と、その造れる名誉こそがご褒美なのだ。

人であれ、異業種であれ欲こそが、技術の発展を可能にする。

ともかく、篤郎に賛同する人は奴隷紋章を抜いても多いのだ。


魔国本土の人もそうだが、最初の3ヶ月は心が拒否をしていた。

風習を壊し、種族の意義も潰したのだから当然でもあった。しかし、篤郎式の新たな生活がそれらを過去にした。

清潔で安全な暮らしに、口にした事が無い食事。服も下着も無かった物があるのだ。それに、新たな祭りや正月(新年の迎え方)や盆とかの習わし方を推奨している。


新しい文化の侵略が、エレリーナ星の改革に繋がっている。

文化の急激な発展は、人を困惑させるのだが、奴隷紋章がブレーキになっている。

まさに、魔王の如くの蹂躙劇である。

しかし、その評価は低い。

魔国には、三人の臣下が断トツに信頼されている。

参謀魔将ルナ、防衛魔将レディ、連絡魔将アイ。

その下にも憧れる臣下はいるのだが、魔王だけは低い。

目立つ事をせず、仕事をしないとされているからか。

現実は、最前線で敵を奴隷にしてる。

魔国の領土も勝手に増やしたりもしている。

それも評価されないのが、魔王篤郎なのだ。



そんな、魔王篤郎もボーとする時間がある。

大抵は「あ~。」という声と共に灰になっている。

理由は簡単で、仕事中に果物や飲み物等の接待を受けるがレオンで、仕事全般をしているのが篤郎なのだ。メンテナンスや後の事を受け持つのが、官僚がやっているのだ。

メインをしている篤郎の印象は薄く、美形なレオンの印象は濃い。人間の脳とは、いい加減なもので、印象が深い人の事をいつまでも覚えている。それは、仕事もして人々から尊敬されていたと云う風に、間違った記憶に置き換えてしまうからだ。

篤郎がどれだけ龍に恐れられても、レオンがゴブリンを倒した方が人気となってしまうのだ。

その事が、篤郎にとっては辛いのだ。

「世界は、世知辛いよな。」

こんな状態も、臣下百人が来た時には篤郎と云う存在にスポットが当たった。

それは、レオンに負けず劣らずの美形が百人来たのだ。

それも、篤郎を褒め称えての登場に、篤郎は恥ずかしくなり逃げたのだ。

美形に信頼される、新国王はどんなに美形なのか!

そう噂になった。

篤郎が静かに出来る場所は、ダクネトには存在しないのだろう。
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