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第10章 アルテウル

ワルド宰相の知恵

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昔の諜報は、早く届けられた。

と言っても、近くにでも1時間、遠くなればそれだけ日数は掛かる。
現代の諜報と言えば、早い時は数分で、遅くても三時間と言う短時間決戦をしている。

違いは、電子機器の発達になる。

しかし、エレリーナ星には電子は無い。有るのは魔法になる。

魔力は、人から使う事が多い。
他の代用品が、魔石となる。
魔石の多くはモンスターから取れるので、枯渇する事が無い。
地球と違って、エネルギー資源は無限にあるとなる。

その為に、魔法の発達だけが進んだのだが、篤郎は知ってしまったのだ。
魔法に頼り過ぎた為に、全てが退化しているのだ。

火は赤いだけしか知らず、水に種類もなく、土も闇も光も有るだけしか知らないのだ。
人間の体の構造も、ツボも、血液型も知らない。

全ては、魔法で処理するので、他を必要としてなかったのだ。

そうなると、技術の発展も開発も無く、日々は変わらない事になる。

それが、エレリーナ星の悪い時代だった。

篤郎の転生とは、それらを打破する事になっているのだ。

アルテウルの捕獲は、篤郎の元にルナ達が遊びに来れる環境になっていた。

ワルド宰相は、篤郎を一度魔国に休養を取ってもらおうとしていた。

それをする為に、魔国と同盟状態を推進している。

それは、通信機の獲得になっている。

通信手段の確立こそが、ダクネト国の最重要事項としたのだ。
一般の人でも可能だからだ。

改めて説明するが、篤郎の連れて来た100人はエレリーナ星では、悪魔と恐れられる存在である。
心を蝕むとかでは無くて、龍よりも下に位置する他星人(?)なのだ。

人よりも優れて居るが、人数はギリギリなのだ。
防衛を考えたら数十人は増やして欲しいのだが、主からは増援するつもりが無いのだ。

せめて、通信手段があれば、人も警戒するには役に立つ。

因みに、国内の住居及び諸々な施設に区画整備、防衛用の壁に道路の整備から水源に下水までの整備は篤郎が済ませている。

篤郎の行いに文句は無いのだが、魔改造製造人間と呼ぶ者も多い。
いや、一種の人災なのだ。
良い方なのだが、理解の範疇を超える事を涼しげな顔で済ませているので、誰も感謝が出来ない。

それはそうだろう。

木の建物に地面むき出しの家が、現代建築に変わるのだ。

建物を理解していたら喜べるが、知識も見識もなければ恐怖しか出来ない。
分かっていたら篤郎もしないだろうが、そこは『奴隷紋章』により篤郎の行動を容認している。

主をする事に、奴隷が文句は言えないのと同じなのだ。

そんな事も、数日で感謝になる。
そして、篤郎の信者となっている。

「此で、準備は整ったな。アケルド!」

空間から一人の人が出てきた。

「ワルド・・・・宰相だっけ?」

「そこは、お兄ちゃんと言ってくれ!」

「・・・・宰相閣下。」

「意地悪!」

いきなり、アケルドの言葉にハンカチを口に咥えていじける。
何でも出来ていたのに、此処にきてゲシュタルト崩壊を見せた。

「まぁいいか、宰相閣下の命令です!お兄ちゃんと呼びなさい!」

「権力を無駄な事に使うな!」

「ふふふふ、宰相の地位を手にしたのだ。我が弟と親密な関係を取り戻して何が悪い!」

「権力以外でしろよ!」

「だって・・・・」

ワルドが後ろを向いたので、机にある書類を見てアケルドは気がついた。
書類から必要な物を掴むと、空間に消えた。

「避けるでしょ!」

アケルドの鋳た場所に顔を向け両手を広げての愛情表現をしたのだが、既にアケルドはいない。

「あ、アケルドー!」

ブラコン宰相のワルドと後に呼ばれる事になる。

アケルドが居ない時は有能だが、アケルドが居るとポンコツになる。
悪魔と言われても、人と似ているのは仕方がない。知能を深めれば、色んな考えが増え、色んな人が出来るからだ。

ポンコツ宰相の恥態は誰にも見られなかっただけを残す。
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