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第11章 モンスター

策謀

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「エマーソン公爵、トムハンクス公爵、ラブラス伯爵からの返書が届いています。」

「それで、出席の方は?」

「出席です。」

「そうか。」

「ドラルス侯爵を含めた四大貴族の出席されるので、全貴族の出席ですね。」

「漏れは無いのか?」

「小貴族達の出席ですか?」

「そこは無視しても良いが、ランクス男爵は?」

「宰相殿、四大貴族が出席されるのですよ?商人は当然に出席します。ランクス男爵も自分の商会が出て、ご自分が欠席などしませんよ。」

「出席の確認は?」

「もちろん、取れてます!」

「よろしい。では次は、飲み物の確認をして下さい。」

「あっ!はい。」

「時間が無いですよ?」

「急ぎます!」

兵士は、駆け足で確認しに行った。
リザリテは、口端を上げながら書類に目を走らせる振りをした。

(此れで、第2段階がなった。)

と、心で喜びながらも、努めて冷静にしていた。
そこに、

「宰相閣下、お客様です。」

「・・・・誰ですか?」

「ブライト商会の会頭殿です。」

「分かりました、会いましょう。」

この時、この場にいた誰もが不審に思っていた。
薬の商会と何故に会うのかと。
もちろん、間者達も不審に思い、リザリテの後をつけた。

「済まない、ブライト会頭。」

「いえいえ。」

「それで、あれは手に入ったのか?」

「もちろんですとも。」

「ふー、助かった。」

「あっ、ご使用は今日でしたか?」

「いやいや、早く欲しかったのだよ。」

「そうでしたか。」

「で、物は?」

「此方に。」

ブライト会頭は、懐から袋を取り出した。

「リザリテ様、量は杯に3滴。此れで相手はぐっすりです。」

「3滴だな。」

「しかし、リザリテ様も、ヒッヒッ。」

「あまり、口に云うな。」

「おっと、これは。」

「くれぐれも、内密にな。」

「分かってます。」

そして、別れた。
隠れた目が複数も在るなかで、隠れた買い物をしたのだ。
当然ながら、ブライト会頭から内容を聞き出した。王のお手付きと不義密通をしている為に、王に飲ませる睡眠薬の買い付けだと云う事を。
それも、半年前から続いている事も聞いたのだ。

そして、その事を主達に報告したのだ。

宰相の王への離反。

その事が広まるのに、時間は掛からなかった。


だが、此れも策であったが、ワンブーヘ王のSAN値はかなり引かれた。
言われもない事実無根な事だが、噂となって耳に入る。
しかし、この痛みも後少しで終わるのである。
そして、だからといって顔に出す事もしない。
喜ぶのは、終わった後にするからだ。

最中に笑うのは失敗する。笑うのは、嘘の笑いのみ。

それが、亡き師匠に教えられた教えなのだ。

王の座席に着いて約20年。

偽りの王として生きたのも、師匠に死を言ったのも、リザリテと嘘をつくのも、長く辛い時を待った策である。
そこに、魔王が現れ人が負け、勇者が敗れるのを見ても、この策を続けた。
まさか、聖女が現れるとは思わなかった。

この痛みは、あの時よりも弱い。この辛さも、あの時の辛さに負ける。

だから、真面目に書類を書いていられるのだ。

この、策を叶える為に!
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