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第11章 モンスター

細工は隆々

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聖女エメリアは、小説家としてネタを書いていた。

どんなシチュエーションで、誰と誰を絡ますのか。そんな事を書き出していたのだ。

ネタを作るのは良いのだが、そこから広げるのか短話にするのか。

そんなエメリアに対して、周りの雰囲気が変わったのは感じていた。

何がでは無い。

ピリピリした感じを肌で感じてるから、部屋から外に出ることが出来ないでいた。

トイレや食事は、篤郎がついて来てくれるので安心はあった。

安全とは無理だが、安心は出来る。これでも男なのだから。

トイレは少し困るのだが、命を天秤にしたら聞かれるよりも安心の方がましなのだ。

たとえ、使えない者でも、こんな時は使える。

要は、使い処を見極めて効果的に使う事が重要になる。

自身の安全こそが重要であり、対策は必要なのである。それが、召し使いの一人の命を引き換えにしても、生き残る為には必要なのだから。

「召し使いに聞かれるのは、ノーカン、ノーカン。」

異性に音を聞かれるのは、良い気分に慣れない。ま、顔は三枚目だし、この世界でもモテる要素は無い無気力な人間だ。

そんな人間には、モテる人間の為に役に立つ方が良いから。

「父様、あの女の人・・・」

「しっ!ほっとくの!」

「でも、主様。阿保な考えをしてますよ?」

「魔王様以外の思念を読むとは。」

「あの子、臭いがきついニャ。」

「お前ら・・・・」

準備が終わった篤郎の元には、色々な人が篤郎を優遇してくれる。

エメリアの執事としての立場では、篤郎の存在も要らない人になるが、誰もが無意識に篤郎を優遇しなくてはならない。それが、奴隷紋章の力の一端なのだから。

立っている篤郎に、兵士が近付いて紙を渡した。

「ふむ、後続部隊は7日後になるか。」

「早速、効果が出てますな。」

「魔王様ですからな。」

「お前の力じゃないニャ。」

「父様、出て来ました。」

「了解。」

篤郎は、何事も無かったように立った。
エメリアが、トイレを出ながら、

「部屋に戻るわ。」

「はい。」

篤郎は、わざと深くお辞儀をした。
エメリアは無視をして、廊下を進んだ。

聖女であり、この城の解放者なのだから、ビクビクしてる訳にはいかない。

堂々とした態度こそが、聖女としての佇まいにしてしまった。

そんな理由で、強がってしまうエメリア。

部屋に入ると、鍵を閉めて一人になり創作に逃げた。

「書くわよー!」

空元気で何とかしようとしていた。

「あれは、ダメニャ。」

「そう言うなって、14歳の子供だぞ?」

「子供でも、調子に乗っていたらいけまへんで。」

「自業自得ですな。」

「おいおい。」

篤郎は、紙を出して何かを書くと、

「猫又、此を誰かに渡して来てくれ。」

「はいニャ!」

紙を咥えると、猫又は走り出した。

「どうなります?」

「馬鹿者、この場合はどうします?だろ。」

「うーん、どうしようかな?」

「あの子を見捨てるのですか?」

シラクラは、愛くるしい目で篤郎を見上げた。

「そうだよな、見捨てるのはちょっとキャラでは無いか。」

そう言って、シラクラの頭を撫でる。

「蚤、後続隊の状況を聞いて来てくれ。九尾は各地の動きを聞いて来て。」

「承知しました、魔王様。」

「給わりました。」

2妖怪が篤郎から抜け出て、城から消えるのを確認してから、

「シラクラに頼みがある。」

「なんでしか?」

このタイミングで、澄ましてから言ってしまうと、篤郎の顔が崩壊する。

「いやー、ちょっとね遠出を頼みたいの。」

「遠出?」

「そう、魔国に行ってほしいんだー。」

「魔国でしてすか?」

「そうなの!そこに居る機械人形からルナと話をしてくれるかな。」

「何て言えば良いのですか?」

「俺が此処に居ると言って欲しい。」



篤郎はデレデレした顔で、シラクラに頼んでいた。
さっきと違うのだが、

「分かりました!行きます!」

「頼むよー!でも、ちょっと待ってね!」

「はい!」

と言いながら、二時間もシラクラをもふりたおす篤郎だった。
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