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二部1章 ラビニット

開けてしまった

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4日目の朝には、全員がご飯を食べていた。
女達と男達は、掻き込む様に食べている。
よって、毎回完食してくれる。

「あー、今日は畑は良いから。女達は呼ぶまで遊んでいろ。」

『はい!』

女達が外に出た後、残ったのは男だけになった。

「さて、お前達の処遇だが。」

『ゴクッ』

「家に帰れ。」

『はっ?』

「国に帰って、情報を集めろ。」

『?』

獣人達は、理解出来ない事を言われた。
が、確りとした事がある。脳の前頭部に通信用の魔石を埋め込んだのだ。見聞きした事を自然にアーカイブに流す事になる。

「まっ、情報を知る術が一つなのは気になるが、広範囲に広げるのも違うからな。」

「ご主人様は、我々を元の国に帰っても良いと?」

「良いよ。」

「しかし、道中が恐いので帰れませんが。」

「あー、んー。金龍に頼んどくか。」

奴隷の中から一人を選んで、金龍を呼びに行かした。

「ともかく、色んな人と話して噂でも良いから聞けよ。」

「は、はい。」

奴隷となったビースト種は、生まれて初めての経験をしている。
それは、最弱と言われた人間からの命令である。その命令を言われた事に、心地良さを感じて要るのだ。

王や王族、龍人種、司祭、上司から命令されても、高揚感はあっても心地良さを感じる事は無い。
言われれば、言われる程に心に染みるみたいな気持ちになる。

「金龍!」

「はい!」

「こいつらを、北の森の出口まで安全に連れて行け。」

「はっ!」

聞いていて、嫉妬するほど羨ましい。
真の主従の関わりなんだろうか。このテンポにも憧れを持つ。

「お前達も、道中気を付けてな。」

『はい!』

この高揚感こそ、蜜の味なのだろうか。
新鮮な気持ちを持って、金龍と外に向かった。

後の事だが、そこから森を出るまで走った結果、奴隷達の股関節を悪くしながらも、馬を買い城に戻る事となる。
高揚だけで、人はずいぶんと変わるのだ。

そして、篤郎は外に出ていた女達を地下に連れて行き、記憶をコピーする作業に取り掛かった。

「ま、初期の情報を眼鏡に加えてアーカイブとリンクさせるか。」

知識の鏡とアーカイブのリンクをした篤郎は、新たな扉を開けてしまったのだ。
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