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二部1章 ラビニット

龍に

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「お待たせ致しました!」

金龍の後ろに金龍が居る。しかも、かなり怒っている感じもある。

「あわあわあわあわ!」

リバクゼルの体は、強張って動けない。篤郎の後ろに隠れているが、腰も抜けたのだろう。
この状況も、篤郎は分かってはいない。

「ご苦労。魔石は?」

「4つだけですが、ここにあります。」

魔石を置いた。篤郎が、後ろは?と聞こうとしたら、

『長よ!この無礼な猿に、媚びへつらうのですか!』

「な!なんて事を言うの!主様、ごめんなさい!」

『何をしてるのですか、猿に謝るとは!』

「いやー!止めて、そんな口を訊かないで!」

『お姉様!稚拙な猿に何で!』

「何も言わないって言うから、連れて来たのに!本当に、済みません!」

長?お姉様?姉妹喧嘩か。

「おい、金龍。」

「はい!」

「喧嘩なら他の所でやれ。」

「はい!」

『この猿が!龍の長に向かって!死ぬがいい!』

「あっ!」

金龍が謝っている隙に、妹金龍が篤郎に襲いかかった。
龍の物質と人の物質の差は巨大だ。
それが、篤郎に襲って来た。





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リバクゼルは、主人である人が龍に襲われていた。

いや、厳密に言えば一匹の龍が謝り、もう一匹の龍が襲っているのだ。

その謝った方の龍の足が、魔石に当たりこちらに転がって来た。

篤郎から離れれば、手が届く所に悲願の龍の宝が在るのだ。

あれほど、腰が抜けて立てなかったのに、宝を見たら自然と立てて宝に飛び付いていたのだ。

まごうことなき宝を確認したリバクゼルは、手を噛み血を宝にこぼした。

「龍人の悲願の宝を手に入れた。」

そう言って、何故か主人を見た。

全てが、ゆっくりと動いてる様に見えた。

龍のアギトが、主人を食べようとしていたのだ。





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トカゲは皆、馬鹿なんだろう。

そう思うが、瞬時に高く飛んで龍の鼻に踵落としをかました。

『!』

床に当てると振動で迷惑をかけるので、牙を手にして転がして背中に乗った。

「金のトカゲは、襲うのが趣味かな?」

「ち、違います!」

「襲って来たらどうなるか、示すのが主の勤めだなぁ。」

「あうあう。」

鱗に手を掛けて、一枚一枚を剥がし始めた。

『ぎぁおぉぉ!痛い!いたーい!』

「泣いて許しをこうて、二度とせんようにしないとなー。」

「ひぃ、ひいぃぃぃぃぃ!」

妹金龍の鱗を剥がしに剥がした。30枚を剥がした所で場所の移動をしていた。

「鱗は金だが、肉は白いんだな。こっちも同じかな。」

『いや!助けてお姉様!』

「無理よ!無理なのよ!」

『いやー!』

「もっと剥がすかぁー!」

『止めてー!』

その姿を、リバクゼルは見た。

初めて、自分が何をしているのか疑問をもった。
万という年月も争ってきた結果が、主人に泣かされる運命が待つ未来なのか?

「あは、あは、嫌だ。こんな未来は嫌だ。」

リバクゼルは涙を流して、鱗を剥がされた龍を見ていた。
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