秘密のギフト【クラフトスキル】で領地開拓しながら楽しくスローライフを目指したい僕は、わざと無能のフリして辺境へ追放されました

長尾 隆生

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来訪者たち

閑話 【コップコミック版&クラフトスキル1巻発売記念閑話】二人の創造者 前編

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※まえがき※

自著『追放領主の孤島開拓記』の1巻と、漫画版『水しか出ない神具【コップ】を授かった僕は、不毛の領地で好きに生きる事にしました』の1巻発売を記念して、両作の主人公が出会う閑話を書きました。

あくまでもお祭りのようなもので本編に関わってくる内容ではありませんので、興味のない方は読み飛ばして貰って構いません。


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「ここは……何処だ?」

 昨日、拠点になる場所に領主館を建設した。
 その後みんなと共に新しい地での出発を祝い、ささやかなパーティを開いたのは覚えている。
 それから色々作業をして疲れ切っていた僕は少し酔ってしまい、テリーヌに肩を貸して貰いながら部屋に戻り眠ったはずだ。

「部屋のベッドで眠ったはずなのに、どうして僕は床に枕も布団も無いまま横になってるんだ」

 辺りはかなり明るいらしく、いきなり目を開いたせいで僅かに目が眩んでしまう。
 おかげで周りの様子を確かめるのに少し時間が掛かってしまった。

「白い天井? 僕の部屋の天井じゃないぞ」

 真っ白で全く継ぎ目のない天井が、仰向けに転がった僕の目に映る。
 いったいどんな素材を使っているのか全く見当が付かない。
 つまり、作り方も材料もわからない僕が【クラフト】したものではないということだ。

 僕はゆっくりと上体を起こすと、今度は周りの様子を確認する。
 どうやら、ここは部屋の中らしい。
 天井と同じ素材と思われる真っ白な壁に四方を囲まれた空間で、部屋の端と端にはそれぞれ一枚ずつ扉らしきものがあった。

「多分扉で良いんだよな」

 真っ白な壁にスッと黒い線で描かれたような長方形の何か。
 ドアノブは付いていないが、多分あれがこの部屋の出入り口に違いない。
 といってもドアノブが無ければ、中から開けることも出来なさそうだが。

「まぁ、あの扉が開くかどうかはあとで調べるとして……だ」

 僕はゆっくりと立ち上がると、部屋のある一点に目を向ける。

「あいつは誰だ」

 そこには一人の少年が横たわっていた。
 着ている服からすると平民ではなさそうだ。
 だけれど僕の知る限り王国では彼が着ているようなデザインの服は見たことが無い。

「とすると他国からの客人の子供か?」

 僕は恐る恐る横たわる彼に近寄った。
 するとその気配を察したのか、彼はゆっくりと目を開けると、先ほどの僕と同じように目をしばたかせ眩しそうに目をこする。

「やぁ、お目覚めかい?」

 なるべく相手に警戒されないように注意した声音で声を掛ける。

「誰かいるんですか?」

 どうやらまだ目が眩んでいるかれは、目の前に立つ僕のことがよく見えていない様だ。

「私の名前はレスト。レスト=カイエルだ。エンハンスド王国のエルドバ領という地で領主をやっている。君は何処の国の者なのかな?」

 相手が貴族の子だとしたら、礼儀として自らの身分も伝えておくべきだろう。

「エンハンスド王国……。浅学せんがくなもので恐縮なのですが、それはエステレラ王国からどちらの方角にある国なのでしょう?」
「エステレラ王国? 聞いたことが無い国名だが、それが君の国の名前なのか?」
「はい。申し遅れましたが僕……私はエステレラ王国エリモス領の領主を務めているシアン=バードライと申します」

 エステレラ王国という名前は聞いたことが無い。
 それに、今この少年は自らをその国の一領地をまかされている領主だと言ったのか。
 つまり、このまだ幼さすら残した少年は僕と同じ領主だと。

「どうかしましたか?」

 明るさに目が慣れてきたのだろう。
 少年……シアンは僕の顔を見上げながらそう尋ねた。

「い、いや。君のような若い領主は初めてで驚いてしまったんだ」
「ははっ、私はこう見えても成人の儀は終えている成人なのですけどね。それにカイエル殿も十分お若いじゃないですか」

 この少年が『成人』だと。
 いや、成人というものの定義は国によってかなり違うはずだ。
 きっと彼の国では彼くらいの若さで成人に認定されるということなのだろう。

「ああ、確かに私も多分だが国内では一番若い領主かもしれないな」

 僕はシアンに向かって手を伸ばしながらそう笑う。
 彼がその手を掴んだのを確認すると、引っ張って立ち上がるのを手伝った。
 立ち上がると彼の背丈は僕より頭一つ分は小さく、とても自分と同じ領主という立場の者とは思えない。
 だけれど彼の所作は僕よりは遙かに貴族らしく、ちゃんとした教育を受けてきた人物であることは疑いようが無かった。

「ありがとうございます」
「お礼は要らないよ。それよりもだ――」

 僕は立ち上がったシアンに聞きたいことがあった。
 それはこの部屋のことだ。

「シアン殿はこの場所がいったい何処なのか、なぜ我々がここに倒れていたのかわかるか?」
「いいえ、まったく覚えがありません。確か昨日は魔獣狩りに同行する準備をして、少し早めに自分の部屋のベッドで眠ったはずですが」
「私も部屋のベッドで眠ったまでは記憶がある。と言うことは私たち二人を何者かが眠っている間に運び出してこの場所に連れてきたと言うことか」

 だが、改めて僕は自分の体を見下ろす。
 眠る時はきちんと寝間着に着替えたはずだ。
 だと言うのに今の僕は昼間、領主館をクラフトした頃の格好をしている。
 多分目の前のシアンも僕も何故か寝間着から普段着に着替えさせられた上で連れてこられたということになる。

「とにかくいつまでも立ち話も何だな。椅子にでも座りながらお互いのことを少し話さないか?」
「そうですね。お互いの情報を出し合えば何かわかるかも知れません、ですが――」

 シアンは部屋をぐるりと見渡してからこう言った。

「この部屋の中には椅子も何もないようですし、床に座りますか?」

 たしかにこの部屋には椅子も机も何も無い。
 だけれど僕にとってはそんなことは関係が無いことだ。

「少し待っていてくれ」

 僕はシアンにそう告げると、手のひらを床に向ける。
 そして心の中で発動してくれよと願いながら「クラフト」と口にしたのだった。
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