5 / 7
メインディッシュをいただきに参ります
しおりを挟む
「このっ!! このっ!!! 何故当たらぬっ!!!」
無様にも何度も何度も長刀を大振りするガラハッド。
「その長刀はこの前のガラクタより少しはマシなものですの?」
「貴様ぁぁぁ!!」
「唾を飛ばさないでいただけます? 不潔ですわ」
私の簡単な挑発にすら乗ってしまうガラハッド。
本当にこんな男が最強であるわけがありません。
王都で定期的に行われる武闘会で何度優勝したのかはわかりませんが、辺境の守りを担っている四大辺境伯領からは誰もそれには出場しておりません。
というのも、伝統ある武闘会に辺境の野蛮人など出場させては格式が下がると先々代の王が出場を禁止したせいなのですが。
そのおかげでこのような勘違い男が生まれたのでしょう。
「さぞかしルールがあるお上品な遊戯ではお強かったのでしょうけれど」
私はそう口にしながらガラハッドの振るった長刀を足の裏でたたき落とします。
少しはしたないですが、実戦ではそんなことを考えていたら即命取りでございますし。
「ぐあっ!」
蹴った長刀に引きずられるように馬上から落ちそうになるのを必死にこらえるガラハッド。
ですがそのよろめいた彼の顎は、私にとっては絶好の獲物でした。
「がふっっっううっ」
私は愛馬を操り狙いを定めると長刀をたたき落とした足とは逆の足で、軽くガラハッドの顎を蹴り上げます。
同時に、彼の口から何本かの歯が飛んでいくのが見えました。
「手加減しましたのに」
なんという脆さでしょう。
これでしたら北の国の兵士の方がまだ頑丈ですわ。
「がはっ、きひゃまっ」
歯が抜けてしまったせいでしょうか。
ガラハッドの言葉がかわいらしくなってしまわれました。
ですが、今度は唾だけでなく血まで飛んで来るではありませんか。
「下品な血で汚されてはかないませんわね。イザベルたちの方もそろそろ終わりそうですし、貴方との遊びもこれくらいにしますわ」
「なんひゃと!!」
「だって弱すぎてぜんぜん面白くないんですもの」
「びゃっ、びゃきゃにしゅるにゃあああ!!」
私はガラハッドが飛ばす血の混じった唾を避けながら愛馬の背を蹴って彼の馬に飛び移ります。
「なっ!」
そして驚きの表情のガラハッドの後ろに乗り込むと、その後頭部を拳で殴り地面にたたき落としました。
「っっっ!!!????!!!???」
言葉にならない声を上げて地面をのたうち回るガラハッドを、私は彼の乗っていた馬の上から見下ろします。
この馬も中央では名馬なのでしょうが、この辺りの訓練された馬と比べると貧相と言わざるを得ませんわね。
「こんな馬、奪っても仕方ありませんわね」
私は馬から飛び降りると、馬から馬具を一瞬で取り外し野に帰してあげました。
「がふっ」
「あら、ごめんあそばせ」
馬から飛び降りた拍子にガラハッドの背中の上に乗ってしまったけれど、こんな所に寝ている方が悪いのです。
「アンネ様」
「ちょうど良かったわイザベル。このゴミをテントに放り込んでおいて」
「それでは他の者たちと同じく拘束してから運ぶように部下たちに指示しておきます。それでお嬢様はこれから王族の元へ行かれるのでございましょう?」
「もちろんですわ。あの人たちに、いったい今まで誰がこの国を守ってきて、そして誰に弓を引いたのかわからせてあげないといけませんもの」
私はそう言ってイザベルに笑いかけるとフォルスト領軍がバリケードを築いている方へ目を向ける。
そこでは既に領軍と王国軍との戦いが始まっているようで、剣戟の音がここまで聞こえてきます。
「さて、メインディッシュをいただきに参りますわよイザベル」
「お供します」
私たちはそう言って頷き合うと、王族が率いている王国軍へ向けて走り出しました。
無様にも何度も何度も長刀を大振りするガラハッド。
「その長刀はこの前のガラクタより少しはマシなものですの?」
「貴様ぁぁぁ!!」
「唾を飛ばさないでいただけます? 不潔ですわ」
私の簡単な挑発にすら乗ってしまうガラハッド。
本当にこんな男が最強であるわけがありません。
王都で定期的に行われる武闘会で何度優勝したのかはわかりませんが、辺境の守りを担っている四大辺境伯領からは誰もそれには出場しておりません。
というのも、伝統ある武闘会に辺境の野蛮人など出場させては格式が下がると先々代の王が出場を禁止したせいなのですが。
そのおかげでこのような勘違い男が生まれたのでしょう。
「さぞかしルールがあるお上品な遊戯ではお強かったのでしょうけれど」
私はそう口にしながらガラハッドの振るった長刀を足の裏でたたき落とします。
少しはしたないですが、実戦ではそんなことを考えていたら即命取りでございますし。
「ぐあっ!」
蹴った長刀に引きずられるように馬上から落ちそうになるのを必死にこらえるガラハッド。
ですがそのよろめいた彼の顎は、私にとっては絶好の獲物でした。
「がふっっっううっ」
私は愛馬を操り狙いを定めると長刀をたたき落とした足とは逆の足で、軽くガラハッドの顎を蹴り上げます。
同時に、彼の口から何本かの歯が飛んでいくのが見えました。
「手加減しましたのに」
なんという脆さでしょう。
これでしたら北の国の兵士の方がまだ頑丈ですわ。
「がはっ、きひゃまっ」
歯が抜けてしまったせいでしょうか。
ガラハッドの言葉がかわいらしくなってしまわれました。
ですが、今度は唾だけでなく血まで飛んで来るではありませんか。
「下品な血で汚されてはかないませんわね。イザベルたちの方もそろそろ終わりそうですし、貴方との遊びもこれくらいにしますわ」
「なんひゃと!!」
「だって弱すぎてぜんぜん面白くないんですもの」
「びゃっ、びゃきゃにしゅるにゃあああ!!」
私はガラハッドが飛ばす血の混じった唾を避けながら愛馬の背を蹴って彼の馬に飛び移ります。
「なっ!」
そして驚きの表情のガラハッドの後ろに乗り込むと、その後頭部を拳で殴り地面にたたき落としました。
「っっっ!!!????!!!???」
言葉にならない声を上げて地面をのたうち回るガラハッドを、私は彼の乗っていた馬の上から見下ろします。
この馬も中央では名馬なのでしょうが、この辺りの訓練された馬と比べると貧相と言わざるを得ませんわね。
「こんな馬、奪っても仕方ありませんわね」
私は馬から飛び降りると、馬から馬具を一瞬で取り外し野に帰してあげました。
「がふっ」
「あら、ごめんあそばせ」
馬から飛び降りた拍子にガラハッドの背中の上に乗ってしまったけれど、こんな所に寝ている方が悪いのです。
「アンネ様」
「ちょうど良かったわイザベル。このゴミをテントに放り込んでおいて」
「それでは他の者たちと同じく拘束してから運ぶように部下たちに指示しておきます。それでお嬢様はこれから王族の元へ行かれるのでございましょう?」
「もちろんですわ。あの人たちに、いったい今まで誰がこの国を守ってきて、そして誰に弓を引いたのかわからせてあげないといけませんもの」
私はそう言ってイザベルに笑いかけるとフォルスト領軍がバリケードを築いている方へ目を向ける。
そこでは既に領軍と王国軍との戦いが始まっているようで、剣戟の音がここまで聞こえてきます。
「さて、メインディッシュをいただきに参りますわよイザベル」
「お供します」
私たちはそう言って頷き合うと、王族が率いている王国軍へ向けて走り出しました。
17
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されるのらしいで今まで黙っていた事を伝えてあげたら、一転して婚約破棄をやめたいと言われました
睡蓮
恋愛
ロズウェル第一王子は、婚約者であるエリシアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、エリシアはそれまで黙っていた事をロズウェルに告げることとした。それを聞いたロズウェルは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
悪役令嬢カタリナ・クレールの断罪はお断り(断罪編)
三色団子
恋愛
カタリナ・クレールは、悪役令嬢としての断罪の日を冷静に迎えた。王太子アッシュから投げつけられる「恥知らずめ!」という罵声も、学園生徒たちの冷たい視線も、彼女の心には届かない。すべてはゲームの筋書き通り。彼女の「悪事」は些細な注意の言葉が曲解されたものだったが、弁明は許されなかった。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
秋月一花
恋愛
「リディア、きみとの婚約を破棄することを、ここに宣言する!」
その宣言を聞いて、私は思い出した。前世のことを。
そして、私が殿下ルートの悪役令嬢だということを!
とはいえ、私……断罪されるようなことをした覚えはないのだけど?
まぁ、婚約破棄されたのなら、もう次期王妃教育を受けなくてもいいのよね、やったー!
……って思ったら、竜の国、ユミルトゥスの公爵家令息からプロポーズをされちゃって……
一途に愛されちゃってます!?
※ベリーズカフェさまに投稿した小説を、改稿しました。約11万字の物語です。
「そうだ、結婚しよう!」悪役令嬢は断罪を回避した。
ミズメ
恋愛
ブラック企業で過労死(?)して目覚めると、そこはかつて熱中した乙女ゲームの世界だった。
しかも、自分は断罪エンドまっしぐらの悪役令嬢ロズニーヌ。そしてゲームもややこしい。
こんな謎運命、回避するしかない!
「そうだ、結婚しよう」
断罪回避のために動き出す悪役令嬢ロズニーヌと兄の友人である幼なじみの筋肉騎士のあれやこれや
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる