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激闘?フォルディスvsフォレストスパイター
しおりを挟む「フォル、大丈夫かな?」
「大丈夫だろう。あいつは強い」
「でもこの巣のフォレストスパイダーってアシュリーも見たこと無いくらい大きいんでしょ?」
「この巣の大きさから推測するしかないが、今まで見たどの巣よりも大きいことは確かだな」
「だったらフォルでも危ないんじゃない?」
アシュリーを軽々と放り投げたフォルディスの力は彼女も理解している。
だが、実際の所他の強力な魔獣と比べてどれほどの力を持つのかはアシュリーにもはかりかねていた。
なんせここに来るまでにフォルディスがアシュリーの目の前で倒してきた相手はアシュリーでも簡単に倒せる程度の魔獣と獣ばかりである。
「そうだな。急ごう」
「うん」
ディアナの心配が移ったのか、急にフォルディスの事が心配になったアシュリーの速度が上がる。
もしフォレストスパイダーが狩りを終え戻ってきて、さらに考えたくも無いがフォルディスが負けていたとしたら彼女たちにはもう逃げ場は無くなるのだ。
やがて巣穴からの出口の光が彼女たちの視界に入る。
「出口だ!」
外の様子を確認しようと速度を落としたアシュリーの横を、ディアナが走り抜ける。
「まて! 無防備に飛び出すんじゃ無い!」
慌ててディアナの手を掴もうとアシュリーが手を伸ばす。
が、その手は一瞬の差で届かない。
「フォルッ!!!」
勢いよく飛び出したディアナの目が一瞬光に目がくらむ
と、同時に彼女の耳にいつもの聞き慣れた、退屈そうな声が聞こえてくる。
「やっと帰ってきたかディアナ。我は暇すぎて眠ってしまう所だったぞ」
「フォル……」
「ディアナ! いきなり飛び出すなとあれほど……」
フォレストスパイダーの巣から飛び出した二人は、その場の光景を見て唖然とし、口を開いたまま動けなかった。
なぜなら――。
「それはまさか」
アシュリーが震える指で指し示したのはフォルディスの足下。
現在のフォルディスの大きさの倍はあるであろう大きな蜘蛛がその六つの脚を投げ出したような状態で倒れ込んでいたのだ。
その複眼には既に光はなく、脚もピクリとも動いていない。
「ああ、これか? 突然襲いかかってきたからな。思わず倒してしまったが、かまわんだろう?」
「倒してしまったって。そいつこの巣穴の主だぞ」
アシュリーのその言葉に、フォルディスは詰まらなそうに「それがどうした?」と答えて、ひょいっとフォレストスパイダーの背中から飛び降りて二人の方にやってくると、アシュリーの背負ったミューリに鼻を付けて臭いを嗅ぐような仕草をした。
「ふむ。ずいぶんと弱っているようだが生きてはいるな。おいディアナ」
「ひゃいっ!! あっ、フォル大丈夫だった?」
「何がだ」
「あんなおっきな蜘蛛相手にして、怪我とかしなかったのかなって」
「我があのような虫ころごときに後れを取るわけ無かろう。それよりも、その子供を回復してやれ」
フォルディスはディアナにそれだけ告げると、その場に伏せてしまう。
その適当な姿に少し文句を言うために口を開き書けたディアナだったが、アシュリーに肩を掴まれ言葉を飲み込んだ。
「えっ、何っ」
「お前、回復魔法も使えるのか!?」
「つ、使えるよ。光魔法が使えるんだからあたりまえでしょ」
アシュリーの迫力にタジタジになりながらも、ディアナはあっけらかんとした口調でそれに答える。
それを聞いたアシュリーは一瞬目を見開いた後、何かを諦めたように頭を振ると、ディアナを地面に寝かせているミューリの元まで引っ張っていく。
「お前の常識のなさを今はどうこう言っている場合じゃない。それより早くミューリに回復魔法を掛けてあげてくれ」
「わかった。任せて!」
どんっと胸を強く叩いた後、強すぎたのか少し咳き込んでからディアナはミューリの横にしゃがみ込む。
そして両手をミューリの体に向けるとゆっくりめを閉じ。
『ヒール』
ディアナの両手のひらが光に包まれたかと思うと、その光がミューリの体を包み込むように広がって行く。
やがてしばらくするとその光がゆっくりとミューリの体に吸い込まれるようにして消えると、フォレストスパイダーに掠われたときに付いたであろう傷がその体から消えていたのである。
「ふぅー。ちょっとがんばっちゃった」
浮かんでもいない額の汗を拭う仕草をしながらディアナがそう言う。
アシュリーはすっかり顔色の良くなったミューリの体を抱き起こす。
すると。
「ミューリちゃん?」
アシュリーの腕の中で、ゆっくりとミューリのまぶたが開いていく。
今の自分の状況がよくわかっていないのか、ミューリはゆっくりと周りを見回し、アシュリーとディアナの顔に順番に目を向ける。
そして最後に――
「ひいっ」
フォルディスの姿を見て、きぜつしてしまったのであった。
「我の顔を見て気絶するとは失敬な子供だ」
「フォルが怖い顔をしてるのがわるいんだよ」
「我は昔からずっとこの顔だ。それよりもお前たち、その子供はそれでいいとして、まだ巣穴の中にとらわれてる者たちは救わなくて良いのか?」
「は?」
フォレストスパイダーの巣穴の中には、ミューリの閉じ込められた繭以外にも何個もの繭がつり下がっていたのをアシュリーは思い出した。
あの中にはまだ他にも人が捕まっているらしい。
「そうだった。おいディアナ、もう一度穴の中に行くぞ」
「えーっ、私ここで待ってちゃ駄目?」
「お前に光魔法を使って貰わないと真っ暗で何も見えんだろうが」
「松明使えば良いじゃん」
「五月蠅い! それに捕まってる人を助けたらその場で回復もしてもらわないとな」
アシュリーはゆっくりと抱きかかえていたミューリを地面に横たえると、立ち上がってアシュリーの腕を掴んだ。
そして。
「繭の中に魔獣もとらわれておるようだから気をつけてな」
フォルディスのそんな人ごとのような呟きに顔を青ざめる二人なのだった。
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