2 / 11
2 ガイルside
しおりを挟む
「どしたのガイルく~ん、顔色が悪いゾ☆」
癖っ毛な赤毛の男が、大きな執務机のまえに向かい合わせに置かれた内の一つの机の前に座っている、黒い髪の男に話しかける。
ガイルと呼ばれた男は、フっ、とため息を一つつき、
「あんたのせいだろうが!?」
赤毛の耳元で叫んだ。
赤毛は猫のように「ふぎゃっ!」と叫んでガイルから離れたが、顔はニヤけたままだった。
「しょうがないじゃーん、陛下の命令で、魔王城付近まで偵察に行ってたんだから~」
「と言いつつ、二週間のうち半分くらいは遊んでただろ!」
さっすが乳兄弟~、と笑いながら、赤毛は執務机に腰掛けた。
「しっかりやってくださいよ、第二王子のエドワード様」
「んも~、昔みたいにタメ口でいいってば!」
エドワードと呼ばれた赤毛の男は、頬をぷくっとふくらませる。
その頬をパァンッ!と潰しながら、ガイルは「で、どうでしたか」と質問する。
「やっぱり、魔物たちが活性化し始めている。魔王の復活が近いのは明白だろう」
「では、やはり、聖女様の予言は的中していたわけですね」
「そういうことになる。…あー、めんどくせっ!なんで俺等の時代に復活すんだろうなァ」
「あんた王族でしょ、ちゃんとやってくださいね」
「へーへー、わかってるって~」
エドワードは話は終わりとでも言うように執務机から降り、自らの懐に手を伸ばした。
「それでだ、ガイル。今回もちゃんと例のブツを買ってきてやったぜ」
「言い方が悪いですが、感謝します。さっさと出してください」
「敬意がたりないなぁ、不敬だぞ、不敬」
むくれつつも、エドワードは懐からあるものを取り出す。
「こ、これは…!」
「へっ、手に入れるのには苦労したぜ、感謝しな、兄弟よ」
エドワードが持っているのは、一切れの光り輝くアップルパイだった。
「まさか、二ヶ月に一回、それも、限定三十個しか販売されていないという、幻の…!」
「そう、そのまさか。このパイのために、俺は一週間、わざと行程を遅らせて来てたってわけ☆」
「それは信じませんが、幻のアップルパイに免じて、許します」
このガイルという男、とにかく甘いものには目がないのであった。
「午後の執務も、張り切っていきましょう!!」
「ぅおー」
癖っ毛な赤毛の男が、大きな執務机のまえに向かい合わせに置かれた内の一つの机の前に座っている、黒い髪の男に話しかける。
ガイルと呼ばれた男は、フっ、とため息を一つつき、
「あんたのせいだろうが!?」
赤毛の耳元で叫んだ。
赤毛は猫のように「ふぎゃっ!」と叫んでガイルから離れたが、顔はニヤけたままだった。
「しょうがないじゃーん、陛下の命令で、魔王城付近まで偵察に行ってたんだから~」
「と言いつつ、二週間のうち半分くらいは遊んでただろ!」
さっすが乳兄弟~、と笑いながら、赤毛は執務机に腰掛けた。
「しっかりやってくださいよ、第二王子のエドワード様」
「んも~、昔みたいにタメ口でいいってば!」
エドワードと呼ばれた赤毛の男は、頬をぷくっとふくらませる。
その頬をパァンッ!と潰しながら、ガイルは「で、どうでしたか」と質問する。
「やっぱり、魔物たちが活性化し始めている。魔王の復活が近いのは明白だろう」
「では、やはり、聖女様の予言は的中していたわけですね」
「そういうことになる。…あー、めんどくせっ!なんで俺等の時代に復活すんだろうなァ」
「あんた王族でしょ、ちゃんとやってくださいね」
「へーへー、わかってるって~」
エドワードは話は終わりとでも言うように執務机から降り、自らの懐に手を伸ばした。
「それでだ、ガイル。今回もちゃんと例のブツを買ってきてやったぜ」
「言い方が悪いですが、感謝します。さっさと出してください」
「敬意がたりないなぁ、不敬だぞ、不敬」
むくれつつも、エドワードは懐からあるものを取り出す。
「こ、これは…!」
「へっ、手に入れるのには苦労したぜ、感謝しな、兄弟よ」
エドワードが持っているのは、一切れの光り輝くアップルパイだった。
「まさか、二ヶ月に一回、それも、限定三十個しか販売されていないという、幻の…!」
「そう、そのまさか。このパイのために、俺は一週間、わざと行程を遅らせて来てたってわけ☆」
「それは信じませんが、幻のアップルパイに免じて、許します」
このガイルという男、とにかく甘いものには目がないのであった。
「午後の執務も、張り切っていきましょう!!」
「ぅおー」
0
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる