アベル、騎士団に入る。

桐谷 渚

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2 ガイルside

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「どしたのガイルく~ん、顔色が悪いゾ☆」

癖っ毛な赤毛の男が、大きな執務机のまえに向かい合わせに置かれた内の一つの机の前に座っている、黒い髪の男に話しかける。
ガイルと呼ばれた男は、フっ、とため息を一つつき、

「あんたのせいだろうが!?」

赤毛の耳元で叫んだ。
赤毛は猫のように「ふぎゃっ!」と叫んでガイルから離れたが、顔はニヤけたままだった。

「しょうがないじゃーん、陛下の命令で、魔王城付近まで偵察に行ってたんだから~」
「と言いつつ、二週間のうち半分くらいは遊んでただろ!」

さっすが乳兄弟~、と笑いながら、赤毛は執務机に腰掛けた。

「しっかりやってくださいよ、第二王子のエドワード様」
「んも~、昔みたいにタメ口でいいってば!」

エドワードと呼ばれた赤毛の男は、頬をぷくっとふくらませる。
その頬をパァンッ!と潰しながら、ガイルは「で、どうでしたか」と質問する。

「やっぱり、魔物たちが活性化し始めている。魔王の復活が近いのは明白だろう」
「では、やはり、聖女様の予言は的中していたわけですね」
「そういうことになる。…あー、めんどくせっ!なんで俺等の時代に復活すんだろうなァ」
「あんた王族でしょ、ちゃんとやってくださいね」
「へーへー、わかってるって~」

エドワードは話は終わりとでも言うように執務机から降り、自らの懐に手を伸ばした。

「それでだ、ガイル。今回もちゃんと例のブツを買ってきてやったぜ」
「言い方が悪いですが、感謝します。さっさと出してください」
「敬意がたりないなぁ、不敬だぞ、不敬」

むくれつつも、エドワードは懐からあるものを取り出す。

「こ、これは…!」
「へっ、手に入れるのには苦労したぜ、感謝しな、兄弟よ」

エドワードが持っているのは、一切れの光り輝くアップルパイだった。

「まさか、二ヶ月に一回、それも、限定三十個しか販売されていないという、幻の…!」
「そう、そのまさか。このパイのために、俺は一週間、わざと行程を遅らせて来てたってわけ☆」
「それは信じませんが、幻のアップルパイに免じて、許します」

このガイルという男、とにかく甘いものには目がないのであった。

「午後の執務も、張り切っていきましょう!!」
「ぅおー」
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