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次の日。
クレアからもらった指輪を右手の中指につけたアベルは、開店前の掃除をしていた。
「春の匂いがするなあ~」
そうひとりごちながら、箒を片手に店の前のホコリを散らす。
あらかた終わった、と思ったアベルが店に戻ろうとしたとき、風が吹いた。
それと同時に前髪が舞い上がり、アベルの目と通りを歩いていた女の子の目があった。
が、女の子はなにごともなかったように歩いていく。
「え?」
こうなると、例外なく女の子は頬を赤らめて黄色い歓声をあげるのに…
少し不思議に思ったものの、とくにアベルは気にかけることもなく、上機嫌で店の中へと戻っていった。
***
「アベル、今日は厨房じゃないんだな」
「あー、うん。なんか今日はそんな気分だったから」
昼時を少し過ぎた頃。アベルは、珍しく2日連続で訪れたカイと話していた。
「なあアベル、お前、騎士団に興味ないか?」
アベルはギョッとした。
「なんでマスターとおんなじようなこと言ってんのさ!別に、ないことはないけど、女性騎士って少ないじゃん…」
「大丈夫だって、俺がしっかりサポートしてやるからさ」
カイが親指をグッとあげて、微笑んだ。
「何様!?」
思わず目を剥いたアベルに、カイが言った。
「一応、これでも王国騎士団の端くれなんだけどなぁ」
王国騎士団とは、全男子の夢。エリート中のエリート。
オーマイガッ!と膝から崩れ落ちるアベル。
相変わらず笑っているカイ。
接客をしながら横から見ているアリス。
「いやぁ、実は色々あって、女性騎士の増加を検討しててさ、俺が知ってんのって、アベルしか居ないから」
自分より背の高いイケメンに微笑まれたアベルは、思わず「検討します…」と答えた。
「ありがとう、じゃ、1週間後の午前10時、ほんとは城内の特別訓練場なんだけど、広場の噴水前に俺が迎えに行くから、動きやすい服装で来て。」
一方的に告げたカイに、思わず文句を言おうとしたが、彼の一点の曇りもない笑顔に、アベルは勝てなかった…
「ところで、その指輪って?」
膝をついて涙していたアベルだったが、カイからの質問に、彼を見上げた。
「え、クレアからの誕生日プレゼントで、昨日もらったんだけど…」
カイの瞳があまりにも真剣なものだったから、アベルは動揺した。
「ああ、宿屋の娘さんか」
真剣さは一瞬で消え、もとのカイにもどったが、アベルはまだドキドキしていた。
こ、こんなタイミングでそんなことを聞くか…?
アベルが頭の中で叫んでいるのも知らずに、カイは「じゃ、また来るわー」などと手をひらりと振り、さっさと帰ってしまった。
呆然とするアベルの横では、アリスがレターセットを持ちながら、サムズアップをしていた。
クレアからもらった指輪を右手の中指につけたアベルは、開店前の掃除をしていた。
「春の匂いがするなあ~」
そうひとりごちながら、箒を片手に店の前のホコリを散らす。
あらかた終わった、と思ったアベルが店に戻ろうとしたとき、風が吹いた。
それと同時に前髪が舞い上がり、アベルの目と通りを歩いていた女の子の目があった。
が、女の子はなにごともなかったように歩いていく。
「え?」
こうなると、例外なく女の子は頬を赤らめて黄色い歓声をあげるのに…
少し不思議に思ったものの、とくにアベルは気にかけることもなく、上機嫌で店の中へと戻っていった。
***
「アベル、今日は厨房じゃないんだな」
「あー、うん。なんか今日はそんな気分だったから」
昼時を少し過ぎた頃。アベルは、珍しく2日連続で訪れたカイと話していた。
「なあアベル、お前、騎士団に興味ないか?」
アベルはギョッとした。
「なんでマスターとおんなじようなこと言ってんのさ!別に、ないことはないけど、女性騎士って少ないじゃん…」
「大丈夫だって、俺がしっかりサポートしてやるからさ」
カイが親指をグッとあげて、微笑んだ。
「何様!?」
思わず目を剥いたアベルに、カイが言った。
「一応、これでも王国騎士団の端くれなんだけどなぁ」
王国騎士団とは、全男子の夢。エリート中のエリート。
オーマイガッ!と膝から崩れ落ちるアベル。
相変わらず笑っているカイ。
接客をしながら横から見ているアリス。
「いやぁ、実は色々あって、女性騎士の増加を検討しててさ、俺が知ってんのって、アベルしか居ないから」
自分より背の高いイケメンに微笑まれたアベルは、思わず「検討します…」と答えた。
「ありがとう、じゃ、1週間後の午前10時、ほんとは城内の特別訓練場なんだけど、広場の噴水前に俺が迎えに行くから、動きやすい服装で来て。」
一方的に告げたカイに、思わず文句を言おうとしたが、彼の一点の曇りもない笑顔に、アベルは勝てなかった…
「ところで、その指輪って?」
膝をついて涙していたアベルだったが、カイからの質問に、彼を見上げた。
「え、クレアからの誕生日プレゼントで、昨日もらったんだけど…」
カイの瞳があまりにも真剣なものだったから、アベルは動揺した。
「ああ、宿屋の娘さんか」
真剣さは一瞬で消え、もとのカイにもどったが、アベルはまだドキドキしていた。
こ、こんなタイミングでそんなことを聞くか…?
アベルが頭の中で叫んでいるのも知らずに、カイは「じゃ、また来るわー」などと手をひらりと振り、さっさと帰ってしまった。
呆然とするアベルの横では、アリスがレターセットを持ちながら、サムズアップをしていた。
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