とある少女の日常 ー朝議薫子の場合ー

如月圭

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 月曜日、学校では、四時限目、私は、Sクラスの女の子と合同体育だった。それを、修一君は、国語の授業中、校庭が見える窓際の席で、外を見て、私の姿を見つけると、フッと口元が綻んだ。私の体育の時間は、外でハンドボールだった。私のシュート練習を見ていたらしい修一君は、私の運動神経が良い方だと、認識したようで新たな発見をしていたみたいだった。そんな時間を過ごしていると、修一君の方の授業の教師が、


 「花岡、四十二ページから読んでくれ」

 と言い、修一君は教科書を持ち、立ち上がると、現代文を良い声で読んでいたようだった。四時限目のチャイムが鳴ると、修一君はそそくさと、お弁当を持ち教室を出た。高等部の校舎を抜けて、けもの道をズンズン進むと、旧図書館に着く。旧図書館の中には、まだ、私は居ない。なので、修一君は館内の本を見ていた。

 五分程して、私が旧図書館に来ると、修一君が居て、

 「修一君、来てたの?」

 と声をかけた。修一君は、持っていた本を本棚に戻すと、私を見て、

 「はい、今日もご一緒して、良いですか?」

 と尋ねる。私は、別に構わなかったので、

 「うん、良いけど、……修一君、一緒に食べてる友達の子は良いの?」

 疑問をぶつけた。修一君は、笑い、

 「はい、断りは入れてますから」

 そう言った。私は、お腹がすいたので、早速、

 「じゃあ、食べよっか、ハァ、お腹すいた」

 お弁当を開いた。私は修一君のお弁当を見て、

 「バランスのとれたお弁当だね、お母さんお料理上手なの?」

 と聞いてみた。修一君は、

 「はい、そうですね。上手な方だと思います。薫子さんのお弁当は、お母さんですか?」

 「ううん、お祖母ちゃん、とお姉ちゃんと、私が少々、今、お母さん、妊娠七ヶ月なの、大変だから、私達で家事の分担してるんだ!」

 と笑う。修一君が驚いた顔をすると、私は、苦笑し、

 「ほら、ウチ五人姉妹なの、男児が今度、産まれてくるから、後継ぎが出来て、やっと、お母さんも、肩の荷が下りるんじゃないかな」

 「六人姉弟ですか、凄いですね」

 感心していると、私は、姉のことを考えて、やるせない気持ちになった。それが表情に出ていたのか、修一君が、

 「大丈夫ですか?薫子さん、顔色が悪いようですが?」

 そう指摘され、私は、修一君に家族の事を話した。

 「うん、私のお姉ちゃん、高二なのに、もう、十二歳も年上の婚約者がいるの。……本当に長女だからって、お祖母ちゃん、お姉ちゃんに完璧を求めててさ、次女の私は、何もないの。理不尽だよね、好きでもない人と、婚約なんて……」

 表情が暗くなる私に、修一君は、

 「薫子さんは、お姉さんが好きなんですね」

 と微笑んだ。私は苦笑して、

 「ううん、私、お姉ちゃんに対して、コンプレックス持ってるよ。お姉ちゃん、美人だし、頭いいし、器量良しだし、完璧でしょ?それに引き換え、私は、顔も頭も平凡、勉強してるけど、とても、Sクラスには、入れないし、顔はね、何ともならないよ」

 と話す。すると、修一君は、

 「薫子さんは、素敵ですよ!」

 と笑顔で言った。私は、

 「どこが?」

 と偏屈になる。修一君は、真面目な顔で、

 「薫子さんは、笑顔が素敵です。それに、可愛らしい顔をしています。もっと、自分に自信を持って良いと思いますよ!」

 そう言った。私は、

 「そうかな?……うん、そっか、そうしてみる。ありがとう、修一君」

 少しだけ自分を信じてみることにした。修一君は笑顔で、

 「薫子さんは、笑っている方が、素敵ですよ」

 と言った。私は、照れていたが、

 (どうして、私とお弁当食べてるんだろう?修一君、友達として居るけど、私なんかと友達になって、どうするんだろう?)

 そんな事が気になったが、お弁当を食べ終えると、すぐに予鈴が鳴り、私達は慌てて、自分のクラスに戻って行った。

 部活帰りに、私は、旧図書館へ寄り道をしていた。それは、チョビ達にエサと水を与えるためで、本まで借りにいこうとは、思わなかったものの、フッと、図書館内を覗くと、夕子さんと松原君が居た、夕子さんは泣いていて、松原君が夕子さんを抱き締めていた。覗くのも悪いので、見なかった事にしようと思ったが、ギィッと、扉が鳴る。すると、二人は、ぱっと離れた。私は、

 「ごめんなさい、夕子さん、もしかして、邪魔しっちゃった?」

 と聞くと、夕子さんは涙を拭いて、

 「ううん、邪魔じゃないわよ」

 と言うが、松原君が、

 「チッ、もう少しだったのに」

 ボソッと言った。夕子さんは、松原君の頭を小突くと、

 「行くわよ、二三斗!」

 と言って、松原君を連れて、出て行った。私は、

 (邪魔しっちゃったか、ごめんなさい)

 そう思いながら、本を見て、面白そうな物を二冊持ち、旧図書館から出ると、修一君が外に居て、猫と遊んでいた。

 「修一君、どうしたの?」

 と聞くと、修一君は、

 「いえ、薫子さんが、けもの道を行くのが見えまして、それで、僕も来てみました」

 と笑う。私は、チョビを撫でながら、

 「一緒に帰る?もし、よければだけど」

 すると、修一君は、笑って、

 「はい、帰りましょう!」

 そう言って、私達は、旧図書館を後にした。
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